星河スバル(偽)の戦闘録   作:星屑

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夏休み入りました!ヒャッホー!課題終わってません。ヒャッホー……

イエティ編、開幕です。


第ニ話『ミスフォーチュン・オブ・イエティ』
9


 ーー10日後・星河家ーー

 

 ボクたちの学校は、夏休みに突入していた。当然の如く出された大量の宿題に、ゴン太がマジ泣きしていたのは余談である。兎も角!遂に入ったのだ。学生・生徒達最大の長期休暇である夏休みに!ああ、夏休み。なんて甘美な響きだろうか。ボクは知るだろう。ロックマンに休みなど無いことを……何だか悲しくなってきたな。

 それにしても驚いたのは、提出課題にデータ以外のものがあったことだ。自由研究等がそれに該当するけれど、完成したものは廊下に張り出すらしい。結構楽しみだ。

 

「ふぁーあ……実に清々しい気分だ。歌でも一つ歌いたいような、いい気分だよ……」

 

「待ちに待った夏休みってヤツが始まったもんな」

 

「そうそう。だからあのハイドってヤツの件さえ無ければもっとゆっくり出来るんだけどねぇ……」

 

「ああ、あの『更なる恐怖』ってヤツか。だが今は、情報が少なすぎるぜ。考えたってしょうがねぇ。……それに、もっと色んなヤツと戦えるかもしれねぇだろ?」

 

 ロックはもうちょっと警戒とかさぁ……いや、ロックらしいっちゃらしいけれど。

 

「取り敢えず、不意討ちや拉致関係には気をつけよう。ボクたちは一度、それで痛い目を見てるからね」

 

「あぁ、アンドロメダのカギの時か。だがアレは仕方ないんじゃねぇのか?流石に他人まで気を配り続けることは出来ねぇぜ」

 

「まぁそうなんだけどさ。可能性として頭に入れておく位はしようってこと」

 

「ヘイヘーイ……」

 

 気のない返事だなぁ。そういえばロックも夏バテとかするんだろうか。電波体が夏バテってのも面白いけど。

 

 ーープルルル!!

 

 あ、電話だ。

 

「ブラウズ!」

 

 ーーブゥーン!

 

 相変わらずハエが飛ぶような音で出現したエア・ディスプレイ。出現するときの音とかって要るの?盲目の人用の機能だったりするのだろうか。

 

「あ、委員長。おはよう」

 

『おはようスバルくん。今日はね、スバルくんに提案があって電話したのよ』

 

 ああ、旅行先を決める件か。決定事項ではないところが少し驚きなんだけど。

 

「提案……どこかに遊びに行くとか?」

 

『そ、そうよ!折角の夏休みだし、何もしないんじゃもったいないから、皆で旅行に行こうと思ってね。どうかしら?』

 

 それゃあ、行くけど。行かなかったとしても、結局雪男の件で行くことになりそうだし。

 

「もちろん、と言いたいところだけど……」

 

『え……?そ、そんな……!』

 

 一気に冷や水でもかけられたように勢いを失う委員長。一々反応が面白い。

 

「一応母さんに話を通しておかないといけないでしょ?母さんがOKを出してからなら、いいよ」

 

 画面の向こうで委員長が安堵の息を吐く。どれだけ心配だったというのだろうか。

 

「ホッ……ならいいのよ。それじゃ行き先を皆で決めるから、これからウチに来てちょうだいな」

 

 あれ、あかねさんがOKを出すのは決定事項なの?いや、まぁそうなんだけどさ。

 

「うん、わかったよ」

 

「あっ、そうそう……アナタスターキャリアーのプロフィール機能、使ってないでしょう!?」

 

「そうだっけ?」

 

 結構ものぐさなところもあるから、放置してたかも……

 

「そうよ!折角ブラザーになったのに、相手の好きなものとかわからないと困るじゃない!」

 

「それって、何が困るの?」

 

 ぶっちゃけ、別に知らなくてもいいことなのでは……?

 

「え?あ、そうね……プレゼントだったり、料理の練習の参考にしたりとか……た、例えばの話よ!?」

 

 イヤに具体的な話だったな。それに……

 

「料理?」

 

『あ……いや、何でもない!何でもないのよッ!ううっ……』

 

 画面の向こうで委員長が半べそをかき始めたので、これくらいにしておこう。

 

『ううっ……グスン。と、とにかく!スターキャリアーをバージョンアップして「プロフィール機能」を使えるようにしておきなさいよね……グスッ』

 

 確か天地さんにお願いすればいいんだったよね。それに、そろそろアレが……!

 

「大丈夫?委員長……」

 

『ア、アナタに心配されるようなことなんてないからッ!ウチにはスターキャリアーをバージョンアップしてから来ること。……いいわね!?…………グスン』

 

 ーーブツッ!

 

 切れてしまった。委員長大丈夫かなぁ……

 

「どうするんだ?」

 

 ロックが若干の困惑を滲ませながら聞いてくる。流石のロックも委員長の半べそには面食らったようだ。

 

「取り敢えず、天地さんのところに持っていこうよ。もしかしたらあっちの方も終わってるかも……」

 

「おおっ!マジか!?」

 

「まだわかんないけどね。進捗状況くらいは知れるんじゃないかな」

 

 既にお祭り騒ぎのロック。騒がしいな……

 

「よっし、それじゃとっとと天地のところに行こうぜ!確か……ロッポンドーヒルズのショッピングプラザに居たはずだ」

 

「うん、それじゃ行こうか!」

 

 実はボクも結構楽しみだ。……スキー旅行の話だよ?

 

 ーーピロン!

 

 あ、メールだ。確かここで初アビリティを貰えるんだっけ?燃費が結構良いやつだったような……

 

「メールだぜ?読んでみろよ」

 

「うん。ええっと……ビビビッ!やぁどうもです!センジツはおセワになりました!……デンパくんからじゃないか!」

 

 わかってても普通に驚きだよね。デンパくんが勝手にメールを送ってきた相手なんて、ボクくらいなんじゃないの?

 

「続きを読むよ。……えっ、オボえてらっしゃらない?ほら、TKタワーでのオバケソウドウの時、オバケにやられてノびてたデンパです!TKタワーをマモってくれたおレイにこれをおウけとりください!」

 

 データが入ってる。内容は……『HP+50/50』だ。

 

「これは『アビリティウェーブ』、リャクして『アビリティ』といって、ワレワレデンパのセカイではなくてはならないヒツジュヒンです!なんとソウビするだけでジブンのノウリョクがアップしちゃうスグれモノなんですよ!」

 

 HPメモリの存在を忘れてはいけない……!

 

「たとえば、ワタシなんかTKタワーからサイシンのジョウホウをハッシンしているのですが、トレンドアンテナというアビリティをソウビしているおかげで、ヒトビトのクチコミでヒロがっているリュウコウやトレンドをいちはやくキャッチできるのです!」

 

 それってHP強化系よりよっぽど凄くない?情報収集能力の拡張ってことだよね?悪用すればかなりヤバそうなアビリティに聞こえるのは気のせいだろうか。

 

「なぜこのようなモノがうまれたかというと、かつてワレワレがスむデンパセカイは3つのサテライトによってアンゼンがマモられていましたよね?しかしそのサテライトはヤクメをオえ、イマはもうソンザイしません」

 

 そういえば、AM三賢者のいなくなったサテライトってどうなったんだろう。NAXA辺りにでも回収されたんだっけ?

 

「そのサテライトのカわりにデンパのチアンをマモるため、スベてのデンパたち、それぞれをパワーアップさせようとカンガえられたのです。それでウまれたのがアビリティというワケですね。きっとアナタもソウビできるはずですよ!あ、そうそう……もしもワタシのナカマがタスけをモトめていたら、タスけてやってくれるとウレしいです!カナラずおレイはイタします。おレイといってもアビリティをさしあげるくらいしかできませんが……ま、そんなこんなでよろしくおネガいします~それでは!ビビビッ!……だって。ハァ、ハァ……」

 

 なげーよ!何でアビリティ渡すのにこんなに長文なんだよ!長文スマソ位入れてよ!

 

「お、おう、ご苦労だったなスバル。取り敢えず、ソイツを装備してみようぜ」

 

「わかってるよ……」

 

 何だかくたびれたな……

 

「ええっと……はい、装備したよ。キズナリョクの限界を超えた装備は出来ないみたいだね」

 

『HP+50/50』で50使ったから、残り250。もっと送ってくれれば良かったのに。

 

「なるほどな……そういえばデンパどものキズナリョクって、どうなってんだ?」

 

 それは永遠の謎だよ……

 

「さぁね。同じ職場のデンパくん同士でブラザーにでもなってるんじゃない?」

 

 電波体同士でブラザーとはこれ如何に。

 

「うーむ、不思議だぜ……っと、あんまり油を売ってる暇はねぇな。あのツインドリルにどやされる前に、バージョンアップを済ませちまおうぜ」

 

 ああ、そういえば天地さんのところに行こうとしてたんだっけ。完全に忘れてたよ……

 

「それじゃ、ロッポンドーヒルズに行こっか……」

 

「おう!」

 

 

 ーーロッポンドーヒルズーー

 

 バスに揺られること数十分。ボクたちはロッポンドーヒルズに来ていた。

 

「よーし、大分持ち直してきたぞ」

 

「(天地のヤロウは……まさか夏休みの休暇中とか言わねぇよな?)」

 

 それは洒落にならない。

 

「じゃないといいけど……」

 

 社会人に長期休暇を期待してはいけない。(断言)

 

 

 ーーショッピングプラザ2階ーー

 

 ショッピングプラザの2階には、変わらぬ様子の天地さんがいた。天地さんに夏休みがなくて助かったよ。何だか酷いことを考えているような気がするけど。

 

「天地さん!」

 

「おや、スバルくん。どうかしたのかい?ああ、例のカードならもう少し待ってくれ。もう殆ど解析は終わっているから、今日明日には出来ると思うけどね」

 

「そうなんですか!?って、そうだ。今日は別件で来たんです」

 

「もちろん、話を聞こうじゃないか」

 

 ーー少年説明中ーー

 

「なるほど……スターキャリアーのバージョンアップ。……それならお安いご用さ!ちょっと貸してくれ……よし、完了っと!これで『プロフィール機能』が使えるようになったぞ。入力したプロフィールはブラザー間で確認出来るから、お互いの新しい一面を知れるかもしれないな」

 

「それじゃあ、早速好きな食べ物でも入力してみますね……ええっと、じゃあハンバーグっと」

 

「(ハンバァァァァグッ!)」

 

 止めてよ!

 

「フフッ、スバル君の好みは重要な情報かもしれないぞ。特に、キミのブラザーにとってはね」

 

「……どういうことですか?」

 

 ボクの好みなんてゴミみたいな情報を欲しがる人がいるのなら、一度その顔を拝んでみたいもんだね。

 

「いいや、独り言だよ。さて、用件はこれで終わりかい?」

 

 なんか釈然としないなぁ……

 

「そうですか……それじゃ天地さん、ありがとうございました!」

 

「ああ、気をつけるんだよ!」

 

 ブランクカードは無しか。いや、まぁ仕方ないんだろうけど。ウェーブコマンドカードっていう概念が無さそうだし。

 

「(そろそろ帰ろうぜ)」

 

 ロックもなんかダレてきたな。

 

「(だね。委員長、キレるとヤバいからなぁ……)」

 

 具体的にどうヤバいかは発言を控えさせて頂く。

 ただ、かなり怖かったです。

 

 

 ーーコダマタウン・白金家ーー

 

「……と、いうわけで天地さんにバージョンアップしてもらったよ、スターキャリアー」

 

 委員長の家には、既にゴン太とキザマロが揃っていた。さっきまで旅行先の話し合いでもしていたのだろうか、部屋にはメモが散乱している。

 

「お疲れ様。ちゃんと『プロフィール機能』は使えるようにしたみたいね。じゃ、旅行の計画を立てるわよ!」

 

「……と、言ってもオマエが来る前に行き先は決めちまったんだけどな」

 

 ゴン太が若干の申し訳なさを滲ませて教えてくれる。

 

「あ、やっぱり?遅れちゃったからね、仕方ないよ」

 

「それじゃあスバルくんに、行き先のヒントをあげるわ。そうね、暑い夏と言えば……?」

 

 海しかないじゃん!

 

「海……もしくはプールとか?」

 

「日焼けはお肌の大敵なのよ……!それにプールなら、マンション用のがあるしね」

 

 ああ、そういえば白金家のある高級マンションにはプールがついてるんだっけ。マンションの住人は、いつでも使用できたはず。いいよね、専用プール。因みに修学旅行は常夏のビーチです。(笑)

 

「暑い夏と言えば……スキーよ!」

 

 普通、夏にスキーへ行こうとは思わないんじゃないかなぁ……小学生の考えることはわからんですよ。

 

「スキー……今って冬だっけ?」

 

「夏バテも程々にしなさいな。……キザマロ、説明なさい」

 

 ジト目で見られてしまった。ボクの発言は至極全うなものだと弁明させていただく。

 

「目的地は『ヤエバリゾート』!『マロ辞典』によれば、夏でもひんやりな大型人工スキー場と名物グルメタウンを備えた、今話題のクールなメガリゾートということです」

 

 多分今は別の話題でホットなんじゃないかな……

 

「うぉーーー!!今から腹がなるぜ!」

 

 圧倒的ゴン太!ぶれないね。グルメタウンはちょっと楽しそうだけど。確かグルメタウンオリジナルのハンバーガーとかがあったはず。

 

「あんたね!さっきからメインはスキーだって言ってるでしょ!」

 

 ですよねー。

 

「スキーかぁ……ボクはやったことないんだけど……」

 

「言っておくけど、アナタに拒否権はないわ」

 

 凄く良い笑顔で言われました。にっこり。

 

「ああ、違うよ。転倒とかしたら危ないじゃない?誰か教えてくれる人とかはいないかな……って」

 

「あぁ、そっちね。多分、向こうの人が教えてくれるんじゃないかしら?ヤエバリゾート側も、スキーで商売してるワケだしね」

 

 だといいけど……

 

「それに、ですよ!この『マロ辞典』によりますと、ヤエバリゾートでは現在、UMA絡みの事件が起きているらしいですよ」

 

 ボクと!ロックで!オーバーレイ!ロックマン・ZEXAL!シャイニングドローでいつでもギガクラスカードを創造出来るぞ!……チート過ぎるね。

 

「UMAって、あのUMA?ユーフォーとか、ネッシーとかの……」

 

「UMA、正しくはアンデファインド・ミステリアス・ア ニマル。つまり未確認生物ってヤツですね。この間のオバケもUMAの一種と言えるでしょう。ヤエバでは雪男が目撃されているらしいです。この雪男の件、もしかしたらTKタワーのオバケ騒動と何か、関連があるかもしれません」

 

 ロックマンもUMAの一種なのだろうか。ロックはもろUMAだけど。

 

「な!?これは行ってみるしかないだろ?」

 

「なるほど!つまりボクがロックマンになって、その雪男を捕獲すればいいんだね?これは腕が鳴るぞ……!」

 

 イエティの捕獲レベルってどれくらいだろう。捕獲レベル……8くらい?ガララワニよりは弱そう。あと不味そうだ。食わないけど。食えないけど。

 

「バカ!そんなことしてどうするのよ!」

 

 イエティを捕獲すれば、ボク自身がイエティ・ブリザードになれるよ。なりたくないけど。でも、ちょっといい案かもしれない。イエティとかブラキオは要らないけれど、コンドルの飛行能力はちょっと魅力的だよね。

 ……今度、天地さんに電波体を捕まえるアイテムでも頼んでみようかな?

 

「あはは……つい」

 

「つい、じゃないわよ……もう!兎に角、旅行の行き先はヤエバリゾートで決まり!」

 

『オーー!!』

 

 委員長の部屋に、ボクたちの叫びが響いた。委員長は呆れた目をしている。

 

「出発は明日の朝。皆、家の人にOKをもらっておくのよ、いいわね?」

 

 そういえば、あかねさんに聞くのを忘れてた。帰ったら聞いておかないと。

 

「了解!」

 

「オレはもう、OKもらってるぜ!」

 

「ボクは帰ってからですね……」

 

 よし、帰ろう。宿題はちゃんとやってるし、今日はゆっくり眠れそうだ。




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