ーーグルメタウンの電波ーー
「ブルルォォーーー!!!」
『キャァーー!』
ヤバい、もうホントに暴れだすギリギリだ!早くなんとかしないと、ゴン太への負担も大きくなってしまう。それは誰も喜ばないだろうし。任された……いや、知ってて促した以上、最大限被害を出さずにオックス・ファイアを鎮圧しなければならない!
「待て!!」
人混みの上を電波人間の跳躍力で飛び越え、我を忘れ暴れそうなオックス・ファイアの眼前に着地する。
「!?」
オックス・ファイアは困惑しているけど、明確な意思はないと思われる。やはり、完全な覚醒にはノイズドカードが必要ってことか……!
『な、なんだ?あの青い少年は!?』
『ちょっと危ないわよー!!』
周囲の観客にも見えているらしい。バケモノ扱いされたオックス・ファイアしかり、ここはビジブルゾーンであるってことだ。それに確か、強力な電波体同士が一ヶ所に集まるとビジブルゾーンが発生しやすいって、コダマタウンにいる物知りデンパくんが言っていた!
「皆、ボクのコトが見えているのか!」
「ああ、そうらしいな。ビジブルゾーンに入っちまったようだぜ。……まさか野次馬がいるからって、ビビったりしねぇよな?」
「冗談!」
ロックも面白いジョークを言うようになった!意思なきオックス・ファイアじゃもう、スパーリングの相手にもならないってのにさ!
「ヘヘッ、上等だ!」
『皆さん!あれはロックマンです!一見するとただの少年ですが、実は凄いヒーローなんです!だから皆で応援しましょう!!……ウップ』
お腹一杯だろうに……ヤムチャしやがって!でもありがとう、キザマロ!
『そ、そんな話信じられないけど……』
『今はキミに賭けるしかない!』
『頑張ってー!ロックマーン!』
ーーワーー!!ワーー!!
黄色い声援で、ボクのパワーも大幅アップだ!……なんてやってるから、毎回委員長にどやされるのか。反省反省。
「凄い注目ってヤツだね……」
「クククッ、これは負けられねぇな!」
ボクだって、公衆の面前で赤っ恥をかく趣味はないよ!
「それにオックス・ファイアのヤロウ、大分イラついてるみたいだぜ!」
「ブル……ブル……ブルルォォーーー!!!!」
これだけイラついているのなら、動きの誘導はかえって楽かもしれない。観客への被害も、抑えやすいだろう。願ったり叶ったりってヤツだ!
「わかってる!周りに被害が出る前に……コイツを止める!ウェーブバトル・ライドオン!」
「ブルルォォーーー!!!」
「いくよロック!」
「おう!」
オックスの主な攻撃方法は突進、パンチ、オックスフレイム!。ただし残留電波のような自我の薄い状態だと、手っ取り早い突進……オックスタックルを多用する傾向がある。そのオックスタックルにも分かりやすい隙……突進前に行う、前傾姿勢への移行時間がある。つまりは……
「(
「おうよ、任せなァッ!」
いくら自我の薄い残留電波といっても、前傾姿勢も取らずに突進してきたりはしないだろう。体に染み付いた動きってヤツだからね。
「ブルルォォーー!!」
ハイ今!
「ロック、オン!」
「ソイヤッ!」
それはフルーツの方だって!
い、いや、ウォーロックアタックはちゃんと発動している。前傾姿勢になったオックスが晒した刹那の無防備状態を見切り、懐に飛び込む。左腕にはヒートアッパーを展開。歯ァ食いしばれよォッ!
「うおぉぉぉぉっ!!!」
ーーバギィッ!
「ブッ、ブルォォッ!」
前傾姿勢のために俯き、ボクの姿が視界から外れた瞬間を狙ってのカチ上げアッパー!コイツは脳天に響くよ!
「ブル……ォォォオッ!」
おっと、持ちこたえたか。アッパーを食らい、後ろにふっ飛びそうな体を無理矢理足で支え、耐えきる。
しかし、ダメージは受けてもらう!
「コイツ……ゴン太が入ってる影響か、中々タフだぜ!」
ロックの言う通りゴン太の精神的な強さの影響なのか、アッパーを食らって頭を振るという絶好のチャンスだってのに、あまり隙には見えない。むしろ罠……?のような気さえする。
「大丈夫。油断さえしなければ、負けはない!」
「ヘヘッ、オレらに勝とうなんざ、十年は早いんだよ!この亡霊電波がァッ!」
それじゃボクたちの方が悪者じゃないか……っと、今回は衆目もある。なるべく優雅に?倒さないといけない。
「ブルル……ブルォォッ!」
よし、戦闘再開っぽいぞ。オックスの場合、完全に暴走してると逆に遣りづらいんだ。動きが読みにくくなるからね。
「よーし、ばっちこい!」
左腕にはシールドを、右腕にはロングソードを展開!正にナイトスタイルってヤツだね!特に何か、スペックが上がるワケじゃないけれど!気分だ気分!
ーーワーー!!ワーー!!
まるで
「いくぞ!」
「ウラァッ!」
ウォーロックアタックで再びオックス・ファイアの眼前に出現する。今度は正攻法だ!
「ブルルォォーーー!!!」
激昂し、殴りかかってくるオックス・ファイア。強烈な右ストレートを、左腕に展開しているシールドで回転しながら衝撃を流していく。完全に右腕を振り切り、再び無防備な姿を晒すオックス。もう慣れてるんだよ!
「おおっ!セイッ!セァァッ!」
回転の勢いそのまま、右腕のロングソードを横に薙ぎ、ついでに逆袈裟に斬り裂いていく!斬撃なので衝撃は少ない。だが切れ味は(以下略)
「ブルッ!ブル、ブルルォォーーー!!!」
「コイツ、完全に怒り狂ってやがるぜ!まるで暴走列車ってヤツだ!」
「ブルルルォォォォッ!!!」
ゲッ、そのまま突進してくる!凄いスピードだ。セレクトしているカードは……よし、イケる!
「ハァッ!」
右に跳躍し、回避すると同時にバトルカード『モエリング』を左方に放つ。燃え盛る車輪に目を取られたオックス・ファイアの視線を、一瞬だけど釘付けにして動きを止める。
「そこォッ!!」
着地と同時にウォーロックアタックを敢行し、モエリングによって急停止したオックス・ファイアの側面へと、音速を越えて跳躍する。そのまま左腕を右腕に添えて、ロングソードをオックスの腕ごと胴体に突き刺す!終わっちまえ!
「うおぉぉぉっ!」
「ブ、ブルルォォーーー!!!」
怒りの猛牛が放つ、苦し紛れの断末魔がグルメタウン全体に響く。フゥ……お疲れ様、ゴン太。
ーー暫くしてーー
「あ、ゴン太くんが目覚めました!」
ホテル側の申し出を断り、介抱すること数十分。遂にゴン太が目を覚ます。
「オレ……確か大食い大会で優勝して、その後……そうだ!大食い大会はどうなったんだ!?」
自分が大食い大会で優勝したことは覚えているらしい。
「実は……」
ーー少年説明中ーー
「……というワケなんだ」
「オレ……やっぱりあの牛みたいなヤツに取り憑かれちゃったのか……折角優勝出来たってのに……」
説明を受けたゴン太は沈んでいる。因みに優勝者が意識不明になってしまったため、巨大ハンバーグは会場の皆さんで美味しくいただきました。ラッキー。
「そうでもないよ。ね、キザマロ?」
「ええ。アイちゃんなら、ゴン太くんのことを心配してましたよ。それに優勝おめでとう、とも言ってました」
「流石にゴン太がオックス・ファイアになったのは見間違いだと思ってるみたいだけどね」
これは本当に幸運だった。会場中の注目がゴン太に注がれていたんだもの。しっかり見られていたから、お仕舞いかと思っちゃったよ。
「そうかぁ……アイちゃんて、やっぱいいコだなぁ……よし!オレ決めた!ここにいる内に、絶対なんかでアイちゃんの役に立つぞ!」
リフトで猛吹雪に突貫するのは止めるけども。というか、リフトに乗っても上級者コースまでは10分以上かかるわけだから、直ぐ後ろに乗れば追い付けないことはないはずなんだよね。でもスキー場にはウェーブホールは存在していないハズだったし……やっぱりゴン太は止める方向かな。ちゃんと延命措置は用意してあるし。
「もう十分な気もするけどなぁ……」
「まぁまぁ。立直りが早いのはゴン太くんの長所ですよ。じゃあそろそろ夜ですし、部屋に戻りましょう」
部屋……つまりはマジギレ委員長か。あんな捕獲レベル80の般若パンダみたいな状態をどうしろって言うんだろうか。普通に
「委員長は……どうにか、しなくちゃいけないんだよね?」
「……………………」
「…………ス、スバルなら大丈夫だぜ!……多分」
多分ってどういう意味さ!
「ちょっと!今多分って言ったでしょ!?ボク聞こえたんだからね!?」
「き、気のせいだぜ。なぁキザマロ?」
「え、ええ。きっとスバルくんの空耳ですよ。ここは一応、地形的には山に分類されますからね、高山病には注意してくださいよ?」
クソッ、いけしゃあしゃあと……なんでこんな時だけ抜群のコンビネーションを発揮するんだよ!?うう……どうしてボクばっかり、こんな役回りなんだ……
「(自業自得ってヤツだぜ、スバル。あ、オレはあのオンナの機嫌が直ってない方に1000ペリカだ)」
ボクに味方はいないのかッ!?
ーースウィートルームーー
「い、委員長~?」
さっきと全くプレッシャーの圧力が変わってない。というかより鋭くなってないか!?立ってるだけで足が震えてきそうだ……
「ちょっと!!!今日はもう寝るんだから入ってこないでよ!!」
ん?もう寝るってことは……
「あれ、先にお風呂入っちゃったの?」
随分と早風呂だなぁ……
「~~ッ!……このバカ!変態!エッチ!アナタなんかソファーで寝ちゃえばいいのよ!!」
委員長に罵倒されると、なんだか背中の辺りがゾクゾクっと……危ない。何か新しい扉でも開きそうになってしまったな。引き返せてよかった。ホントに。
「仕方ない。それじゃあゴン太たちのところに戻るか……」
ゴン太達はキッチンルームやトイレのあるリビングで待ってくれている。ここで付いてきてくれない辺りが……いや、二人だって怖いんだ。ボクが原因なんだし、仕方ないと思って享受するしか……
「……おっ!スバル、どうだった?委員長の機嫌は」
た、他人事だと思って……!
「ううん。完全に聞く耳持たずってヤツだよ。ソファーで寝ろってさ」
「そうか……じゃ、頑張ってな」
「ハイ、応援してますから!」
え?
「ちょっと酷いよ二人とも!」
完全にお開きムードじゃないか!なんだよ、この面倒ごとは取り敢えずスバルに任せとこうみたいな雰囲気は!
「だって、なぁ……?」
「ええ、そうですよ」
慈悲ナシ?あんなに頑張ったのに!?
「ボクもベッドで寝たいんだけど!?」
マテリアルウェーブのベッドなんて、もう一生使えるかわからないってのに!
「悪いなスバル。このベッド、一人用なんだ」
「すいませんね」
「」
う、嘘だろ……ホントにソファーで寝ろって言うの!?
「それじゃあおやすみだぜ、スバル!」
「グッドナイトですよ、スバルくん!」
そこはゲーム準拠じゃなくてもよかったよ!……チクショウ!慈悲など要らぬ……!
「(ほら、諦めて寝ようぜ)」
「わかったよ……」
ああ、夢の高級ベッドが遠のいていく……
ーー10分後ーー
よし。取り敢えず、寝る準備は完了した。ビジライザーは……近くのテーブルに置いておくか。
『やあ』
!?
「うわぁぁっ!?……な、何!?」
って、テーブルはマテリアルウェーブなんだっけか。よく見るとデフォルメされた顔がある。ビ、ビビった……
『キミもボクの上に物を置くんだね』
「…………………」
えぇ……何でこんなイヤそうっていうか、辛そうなの?
『別にいいけど……』
それ嫌ってことだよね!?でもテーブルの上に置いておかないで、寝惚けたゴン太辺りにでも踏まれたら致命傷だし……
「それじゃあ、遠慮なく……」
『………………いいけど』
無理だろこんなの!もういいよ!ふて寝してやる!
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