星河スバル(偽)の戦闘録   作:星屑

77 / 131
17

 ーーゲレンデ・スキーコースーー

 

「イヤッホォォォッ!!」

 

 風が気持ちいいよ!ウォーロックアタックで高速移動は慣れ親しんでいるけれど、これはこれで悪くない!

 

『前方200メートル先、二人組……カップルだぜ』

 

 轢き殺してやろうかァッ!?スキーヤーの戦場で、堂々とイチャイチャしやがって!……万死に値する!

 

「了解!……チェッ」

 

 ーーザシュッ!

 

 ……と、物騒な事を考えてはみたものの、結局はカップルを避けてコースを滑り降りていく。……今日は見逃しておいてやる!次はないからな!(憤怒)

 

『後はゴールのグルメタウンまですぐだぜ!コースを間違えるなよ?』

 

「わかってるさ!!」

 

 既にゴン太とキザマロのことは抜き去っている。背後に二人が迫っているということもない。これなら……!

 

 

 ーーグルメタウンーー

 

 ーーザシュッ!

 

「……よし!ボクの勝ちだ!」

 

 圧倒的だったね。

 

 ーーザシュッ!

 ーーザシュッ!

 

 数十秒後、悔しそうな顔のゴン太とキザマロが追い付いてくる。フハハ!悔しかろう、悔しかろう!

 

「クッソー!やられたぜ!」

 

「でもキモチ良かったです!」

 

 それはわかる。最高の爽快感だったものね。

 

「上に登って、もう一回勝負しようぜ!」

 

「今度はジュースでも賭けない?」

 

 負ける気がしないね。

 

「そうやって余裕ぶってられるのも、今の内だけですよ!」

 

「フフフ、それはどうかな……?」

 

『アハハハハハ!!』

 

 あー楽しい。でも、何だか天候がおかしいな。ってことは……そろそろ来るか。

 

 ーービューーーーー!!!

 

「これは……」

 

「わわ!上の方で、雪が降りだしましたよ!」

 

 ーービビューーーーー!!!

 

 どんどん強く吹雪いてきてる!これはあんまり猶予がないかもしれないな……!

 

「し、しかも凄い風だ!」

 

 うわ、この辺りも吹雪いてきたぞ!

 

「うう……!」

 

 ゆ、雪が目に入る……!早く、電波変換しないと!

 

「前が見えません!」

 

「か、風に飛ばされるな!!」

 

 キザマロなんか特にマズイよ!軽すぎて飛ばされちゃうかもしれないじゃないか!

 

 ーービビビューーーーー!!!

 

 も、もっと強くなってきた……!

 ビジライザーで対降雪防御を!

 

 ーーカチャッ!

 

 ーー数分後ーー

 

「ふぅ……どうにか収まった……か?」

 

 ゴン太の言う通り、一過性のものだったらしい。多分屋外にいる人間を、屋内に誘導するためのブリザードだったんだろう。……嫌らしい手を使う!

 

「でも上の方はまだ、吹雪いてるみたいですよ」

 

 ーーピンポンパンポーン!

 

 アナウンスだ。

 

『ホテルより、スキーをお楽しみの皆様にご案内します。ただいま、リゾート全体の天気を制御している電波システムに原因不明の異常が発生しています。そのためリゾート内で吹雪が発生し、ゲレンデ方面、特にプロコースの辺りは猛吹雪になっています。大変危険ですので、お客様はゲレンデに立ち入らないようにしてください。なお、間もなくリフトの運転を中止しますので、現在リフトに乗られている方以外はリフトに乗らないでください……』

 

 システムの方に異常?いや、どっちにしろイエティ・ブリザード(ゴリ)をぶっとばせば済む話だ。

 

「上の方はかなりマズイことになってるみたいだね……」

 

「ひょっとしなくても、ヤバいですよね?」

 

 確かにヤバい。プロコースで滑っていない人はなんとか下山してこれるだろうけど、プロコースにいるアイちゃんが自力で脱出出来るとも考えにくい。それに、アイちゃんのことはイエティ・ブリザード(ゴリ)が見張っているのだし。

 

「……アイちゃん!!」

 

「バカッ!止まれ!」

 

 ーーガシッ!

 

 何とか、ゴン太のスキーウェアを掴むことに成功する。あ、危なかった……!

 

「離せよスバル!オレは……オレは!アイちゃんを助けに行くんだ!!」

 

「初心者が何言ってるんだ!ミイラ取りがミイラになっちゃうよ!」

 

 ここは止めないといけない。ゴン太が行く必要なんて、ないんだから。暖房器具も持っているから、あと30分程は問題ない。それまでになんとかすれば……!

 

「何言ってんのかわかんねぇよ!でも、でも……アイちゃんが……!」

 

 ーーピンポンパンポーン!

 

『ただいまをもちまして、リフトを停止しました。復旧まで暫くお待ちください』

 

 よし、時間稼ぎはできた!

 

「……クソッ!これじゃあ……!」

 

「ボクが行くから!電波体なら吹雪の影響はほとんどない!それにアイちゃんを見つけても、ゴン太まで一緒には運べないんだよ……!」

 

 ゴメン……だけど、こっちにも譲れないものがある。被害はなるべく少なく、だけどルートから外れきらない程度に、だ!アイちゃんには申し訳ないけれどね。

 

「……わかった。すまねぇな。オレ、ちょっと熱くなりすぎてた…………フゥ、それじゃ任せるぜ、スバル!」

 

「(どうやらお呼びのようだな……へへッ、それじゃ行こうぜ!!)」

 

「よし!……っと、それじゃあ行ってくる!」

 

「スバルくん、頼みましたよ!」

 

「アイちゃんに変なコトするなよー!?」

 

「ちょっと!?どういうことさ!」

 

 一体どんな変態認定を受けてるって言うんだよ!?腫れ物扱いは暴蒼(ライオット・ブルー)で十分だ!

 

「(ほら、さっさと行くぜ)」

 

 またかよ!?ロックまで、なんだか最近、ボクに対して塩対応過ぎない……?

 

「ここなら周りに人もいない……電波変換!星河スバル、オン・エア!」

 

 久しぶりにちゃんと口上を言えた気がする。いつもは人目を避けるために小声でいってるからね。仕方ない。

 

 ーーグルメタウンの電波ーー

 

「先ずはスキーで滑ったコースを登っていこう!この辺りはまだ吹雪が弱いから、進めるはずだよ!」

 

「おう!」

 

 出来ればゲレンデ2……プロコース前までは登っていけるといいんだけど……

 

 ーーゲレンデ1の電波ーー

 

「酷い吹雪だ……」

 

 やっぱりスキーコースを直接登っていくことは不可能か。どうにもこの吹雪、通信速度に影響を与えるみたいだ。具体的に言うと、トランサー程じゃないけれど地面の上での行動に制限がかかる。この状態でウィルスの相手をするのは楽じゃなさそうだ。つまり、ウェーブロードを伝って行くしかない。いつものパターンと言えば、そうなんだけどね。

 

「だがウェーブロードはちゃんと伸びてるぜ。これは多分、リフト間でやりとりするためのウェーブロードだな。だから多分、頂上のプロコースまで繋がってるぜ」

 

 ああ、なるほど。ロクに電子機器もないのにどういうコトかと思ったら、リフト同士で通信していたのか。リフト自体が停止したとしても、使用されていたウェーブロードは残留電波として残る……って感じなのかな?

 

「ならラッキーだ。アイちゃんが持っているカイロの熱が切れる前に駆けつけないと。凍傷で壊死、なんてことになったら目も当てられないからね」

 

 実は結構、危ない橋を渡ってるんだよね……

 

「おう、それじゃ急がないとな……!」

 

 ま、基本はタイムアタックみたいなモノだから、急ぐことに変わりはない。でも確かこのゲレンデって、アイテムが落ちていたような……プロコースにあるリフト乗り場の部分だっけ?まぁ、今回はスルーかな。

 

 

 

 

 

「で、コレどうしようか?」

 

「何だこりゃ?」

 

「多分、電波の結晶だと思うんだけど……」

 

 ウェーブロードに上がってすぐ、道を塞いでいるボールのような電波を発見したボク達。これ、多分電脳スキーをしなくちゃいけないヤツだ……

 

「この玉の中からスゲー数の電波体を感じるぜ」

 

 やっぱりか……いや、やるしかないな。ウォーロックアタックでショートカットしてもいいんだけど、それじゃあ電波体に厳し過ぎる。バランスが難しいな。

 

「何とか退かせない?」

 

「スゲーエネルギーだぜ。中からどうにかしねーとダメだろうな。この中に飛び込んでみるか?」

 

「もちろん!」

 

 

 ーー電波の結晶内部ーー

 

「……ここは」

 

「スゲェ眺めだな」

 

 ワケがわからないよ。結晶内部にウェーブインしたと思ったら、スキー板とストックを装着して遥か上空にあると思われる、ウェーブロードで出来たスキーコースの頂上にいたなんて。

 

『……すけてー!』

 

 蚊のような声が聞こえる。助けて?……デンパくんか。

 

「何だ!?」

 

『たーすーけーてーーっ!!SOS!!SOS!!』

 

 元気なデンパだね。

 

「助けて?……この声は、下から?」

 

『ユキのシタデース!!SOS!!SOS!!ボクたちー!!カンゼンにウまってマース!!』

 

 電波体がウェーブロード上で雪に埋もれるモノなのだろうか?いや、今はそんなことどうでもいいよね。

 

「今助けるからッ!!ちょっと待っててねー!!」

 

『タスかりまーーす!!あとチョットでデられそうなのでー!ナニかボクたちにショウゲキをクダさーい!!』

 

 よし、スキーで踏むしかないな。

 

「衝撃か……どうする?」

 

 一応聞くという形をとってはいるけれど、半ば確認のようなものだ。だって、状況が全てを物語っているもの。スキーセット、ウェーブロードのコース、埋まっているデンパくん。……これは滑るしかあるまい!

 

「雪の中なんだろ?スキーで滑って踏みつければいいんじゃねぇか?」

 

「だよね!デンパスキーなんてボクやったことないけど、中々楽しめそうだ!」

 

 今だけは全てを忘れて電波の風になっても、文句は言われまい……!というか、下手に慎重になっても長引きそうだし。

 

「二重の意味でな……よし、いっちょやるか!」

 

 ああ、電波(デンパくん)スキーってことね。

 

「……じゃ、今から行くよーー!!」

 

 ワクワク。

 

『あ、「キ」とか「スノーゴロン」にはキをつけてクダさーーい!!』

 

 物騒なスキーコースだな……

 

『「キ」にぶつかったらとってもイタいしーー!!「スノーゴロン」にぶつかったらボクたちがまた、ウめられちゃいまーーーす!!』

 

 スノーゴロンに関しては、散らばった雪が云々ということなのだろうか?まぁ、当たるつもりはないんだけどね。何か特殊なエフェクトとかだったら嫌だな……

 

「わかったー!!気をつけるよーー!!」

 

 一々大声で叫ぶのも、そろそろしんどくなってきたな。喉が枯れそうだ。電波体の喉が枯れるかは知らないけどね。

 

「行くぜ!!3!2!1!……スタート!!」

 

「イヤッホォォォォッ!!」

 

 ライディングスキー!アクセラレーション!!

 

 

 ーー1分後ーー

 

 

「イエェェェェイッ!!」

 

 ーーザシュッ!

 

 フッ、またつまらぬコースを滑ってしまったな……もしかしてボク、割とスキーのセンスがあったり?いや、調子に乗りすぎか。

 

『ゴーーーール!ありがとーーーーっ!!』

 

 ーーワーー!!ワーー!!

 

 救出されたデンパくん舘が、大声援を送ってくれる。そういえばなんだってこんなところに、こんな数のデンパくんが一度に集まったんだろう。普通に不自然じゃない?

 

「よし!粗方デンパを掘り起こしたぜ!これで先に進めそうだ!!」

 

「うん!!それじゃあ、ウェーブアウトしよう!!」

 

 歓声が五月蝿くて、大声で叫ばないとお互いに聞こえない!

 

 

 ーーゲレンデの電波1ーー

 

 ……よし、戻ってこれた。電波の結晶も消えている。さっさと進まないと!恐らくだけど、リミットはあと30分程だ。

 

「先を急ぐよ!」

 

「おう!」

 

 でもこれがあと、3~4個くらいあるんだよね。正直、結構ダルい……

 吹雪も強くなってきたな。頂上はもっと酷いんだっけか。元々人間だったゴリにとっても、結構遣りづらいんじゃないのか?

 

「……ここもかっ!さっさと電波を掘り起こしちまおうぜ!!」

 

「了解!それじゃあ、飛び込むよ!」

 

 それにしてもこの電波結晶、以前見たプラズマボールの色違いにしか見えないな。費用削減……いや、気のせいだろう。とにかく、今は滑るしかないな……

 

 ーー10分後ーー

 

 よし、そろそろ上級者コースの頂上が見えてきたぞ。この先にあるプロコースの頂上に、イエティ・ブリザードと気象制御システムがあったはず。

 それにしても、気象制御システムか。もしかして、シーサーアイランドみたいな天候完全制御のテストケースだったりして?……考え過ぎか。

 

 ーープルルルル!!

 

 おっとこれは……通信か。

 

「スバル、通信みたいだぜ。……回線を開くぞ」

 

「うん。ありがとう」

 

「いいってことよ。……そら、繋がったぜ」

 

 ーーブゥーン!

 

 相変わらずハエみたいな(以下略)だけど、電波体時は叫ばなくていいのか。これはかなり便利、かも?いや、四六時中電波体で居続けるのは難しいんだけどね。それに、間違い電話で正体がバレるのも馬鹿らしい。エア・ディスプレイってやっぱり不便だ。なんでオンオフ切り替えられないんだろう。やはりまた、黒服お姉さんの有能さが際立ってしまったな。

 

「……あ、ゴン太!どうしたの!?」

 

 吹雪が酷くて、大声じゃないと互いに聞こえないのは結構な弊害だ。スターキャリアーの集音機能が高いのは、とても助かるんだけどね。

 

『スバルか!さっき、アイちゃんに電話したんだけどよ!通じたんだ!!』

 

「え、通じたの!?」

 

『ああ、何とか無事らしい。ただ、カイロの熱が切れたらチョット危ないって……!それにどんどん吹雪が強くなってきているらしいんだよ!』

 

「アイちゃんの場所は!?ボクは今上級者コースまで見てきたけど、人っ子一人いなかったよ!?」

 

『ああ、今いるのはプロコースの一番上の方らしい。横に天気の電波システムが見えるって……』

 

 やっぱりそこに居たか。一応確認しながら進んで来たけれど、確証が取れて良かった!頑張ってプロコースの頂上にたどり着いたけど、そこにアイちゃんはいませんでした……じゃ笑えない。

 

「ありがとう!それじゃボク、急ぐから!」

 

『ああ……頼むぜスバル!』

 

 ーーブツッ!

 

 よし、ゴン太まで向かっていないから、どうなることかと思ったけど、何とか良い方向に向かっている。ただ、吹雪の中で持ちこたえられるかどうかって、二人以上であることが重要らしいし、そこには注意しないと。やっぱり励まし合いって大事だよね。

 

「よし、プロコースはこの先だ!パパっと救出しに行こう!」

 

「おう!ヘヘッ、腕が鳴るぜ……!」

 

 全く、子供の負傷を乗っ取りの計算に入れるなんて!

 このド畜生がぁーーッ!!って気分だよ。まぁ、ゴリラって畜生なんだけどね。いや、雪男だっけ?




感想・評価が私の経験値です。

前書きは水着イベで爆死した、憐れなマスターの戯れ言だと思って聞き流していただいて結構です。お目汚し、失礼しました。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。