星河スバル(偽)の戦闘録   作:星屑

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 ーーヒルズ前通りーー

 

 バスに揺られて数十分、ボク達はロッポンドーヒルズの入り口へとたどり着いていた。相変わらず凄い賑わいだよね、ホント。

 っと、ここは人通りが多すぎる。親子連れ云々から、天国のママさんを思い出されてしんみりするよりも、今は楽しむことが優先だ。

 

「さぁ、行こう行こう!」

 

「わわっ!?どうしたのスバルくん!?」

 

 申し訳ないが少々強引にミソラちゃんの背を押し進み、ヒルズ入り口のエレベーターへと急行する。

 

「いいからいいから!早く行けば、それだけ長く居られるでしょ?」

 

 ちょっと無理矢理な感は否めないけれど、多分これは正解なハズ。大切な人を忘れないことは大事だけど、その度にしんみりされちゃあ天国のママさんも浮かばれないだろう。

 

「……もうっ、しょうがないなぁ……!」

 

 困っているようにも見えるけど、何処か嬉しそう?いや、気のせいだよね。とにかく、ホント申し訳ない。

 

 

 ーーロッポンドーヒルズーー

 

「さて、ドコ行こっか?」

 

「今日は基本的にミソラちゃんにお任せ……だけど、何かリクエストがあれば応えるよ。美味しいパフェの店、とかね」

 

 ぶっちゃけボクの欲求なんだけどね。確かゴン太の情報網にいくつかロッポンドーヒルズのレストランがヒットしていたハズだ。特にパフェ!

 

「パフェね…………あっ、ねぇスバルくん、あそこのカフェに行こ!有名なお店なんだよ!パフェが美味しくて、テレビとかで紹介されてるの」

 

 そう言ってミソラちゃんは、ヒルズ内にあるお店の一つを指し示す。おおっ、この店は……

 

「ボクも知ってるよ!美味しいパフェなんだってね!」

 

 この店だ!ゴン太が言ってた美味いパフェがある店は……キザマロも結構甘党だったので、三人で暫く談義したのを覚えている。ゴン太が食べたいって言ってたのは……確か『フジヤマクリームパフェ』だっけか?

 

「あれ、そういうの興味あるんだ?結構意外だった、カモ?」

 

 本当に意外そうな顔で聞いてくるミソラちゃん。まぁ確かに、マイプロフィールに好物はハンバーグって入力しているし、分かりづらいと言えば分かりづらいのかもしれないけど。

 

「あはは……ゴン太やキザマロとたまにご飯食べに行ったりするんだけどさ、どうにも男子だけだと行きづらくって……よく話題にはなってるんだけどね」

 

 因みに数日前、ポップコーンリベンジを果たすために、映画館まで足を運びました。映画は見ていないんだけどね。ゴーストクライシスは未だに人気で、客が来てしょうがないらしい。たまたま会った、プロペラ事故が起きた時に現場にいた責任者……費用 減削さんが嬉しそうに語っていた。

 

「へぇ~、でもルナちゃんを置いてけぼりにしちゃったら後でオオメダマ……になったりはしないの?」

 

 がおーっと、可愛らしく委員長の真似をするミソラちゃん。全然似てないよ。委員長はもっと怖いから。怒りの日だから。ガチで雷落ちるから。ブルブル……

 

「う~ん、それは男同士の秘密ってヤツになるのかな?でも、結構楽しいんだ」

 

「それじゃあ今度、ワタシもルナちゃん誘って何処かご飯食べに行ってみようかなぁ……」

 

 所謂ガールズトークというヤツだろうか?気になると言えば気になるけど、貴方は知りすぎた……になるのも嫌だしね。プライベートって大事だと思うよ。まぁ、プライベートを売るのがアイドルと言えばそうなんだけど……ミソラちゃんはアイドル(?)の歌手だしね。

 

「それがいいよ!委員長もミソラちゃんのコト、もっと知りたいだろうしさ!」

 

「うん!……って、立ち話もなんだし、まずはカフェに行ってみよ!」

 

 あんまり立ち話してると、周りの目を集めちゃうしね。それはミソラちゃんも望んではいない。だって肩肘伸ばせなくなっちゃうもの。

 

「了解!」

 

 ーーカフェ店内ーー

 

「いらっしゃいませ!こちらがメニューとなります!」

 

 元気な店員さんが表示してきたメニューには、色とりどりの美味しそうなパフェが映し出されていた。うわっ、中々迷うな……これは美味しそうだ。値段もボリュームの割に安い。そりゃあ人気店にもなるわけだ。

 

「ねぇ、スバルくん見て見て!どれも美味しそう!スバルくんは何頼む?」

 

「むむむ……これもいいけど、これも捨てがたい……」

 

 き、究極の二択ってヤツだ。どっちを食べても、食べなかったもう片方に未練が残りそう……

 

「あ!コレ、ワタシも食べたいと思ってたやつだ!それじゃあスバルくん、ワタシがこれ頼むから、スバルくんはそっちを頼めばいいんじゃないかな?」

 

 そう言って、ボクが悩んでいた片方を指すミソラちゃん。つまり、これは。

 

「も、もしかして……!」

 

「フフッ、チョットだけ分けてア・ゲ・ル!」

 

 華麗にウインクを決めながら、イタズラっぽい顔で天恵をもたらしてくれるミソラちゃん。後光が見えるよ……

 

「やった!ありがとう、ミソラちゃん大好き!」

 

 ホントミソラ大明神様々だ!今ならラブコールだって唱えられそう!L・O・V・E!ミ・ソ・ラ!

 

「……ホント、スバルくんはズルいよ……」

 

「ズルい?」

 

「ううん、なんでもない!……それじゃ頼もっ!」

 

「あ、ボクが頼むよ。……すいませーん!」

 

 一応有名人なんだし、目立つコトは控えるべきだ。まぁ、無駄な足掻きなんだろうけど。

 

 

 ーー30分後ーー

 

「……フゥ!」

 

「美味しかったぁ!」

 

「だね!期間限定で出張開店してたみたいだし、今度来るときもやってたらいいな……」

 

 凄い量だったけど、お昼ご飯だと思えば……そうでもないような。電波人間として動き回ると思ったよりカロリーを使うみたいだから、これからを考えると丁度いい、のかな?

 

「フフフ、今度はルナちゃんも入れて四人で来たらいいかもね!やっぱり男の子だけじゃあ、入りづらいみたいだし……」

 

「確かに。店内には女性客とカップルばかりだったよね。委員長と一緒なら、四人で行っても……いや、ミソラちゃんも予定が合えばどう?」

 

 あんまり大所帯になりすぎても落ち着かないけれど、数人で少しだけワイワイやるなら良さそうだ。もちろん他の客の迷惑にならないようにはするけれど。

 

「もちろん!でも最近はチョット忙しいから、暫くは難しそうだけどね……」

 

 申し訳なさそうに言うミソラちゃん。ああ、いや、そんな気持ちで言ったワケではなかったんだけど……

 

「ゴメン、ちょっと無神経だったね。忙しいのに休みを催促するようなコト言っちゃって……」

 

 ミソラちゃんは歌うのが好きだから歌手をしているんだということを忘れてはいけない。もちろん友達だから、こういう謝罪は要らないのかもしれないけれど、ちゃんと自分の気持ちを伝えるって大切なことだと思うから。

 

「ううん、いいの。……さぁーて!次はどうしようか!?」

 

「うーん、お腹は膨れたし、腹ごなしに何処か見て回れるところとか、どうかな?」

 

「いいよ!ニュースでも確か、ロッポンドーヒルズで展示をやっているとか……あ!ニュースで思い出したんだけどさ、最近報道されてる青いヒーローって、スバルくんのコトでしょ?」

 

 どうなのどうなの~?と肘でツンツンしてくるけれど、別にそんなことしなくてもミソラちゃんに隠すつもりはない。だってブラザーだから。いや、スターキャリアーのブラザーバンドはフォーマットされているから、ソウルブラザー?どちらにせよ、ミソラちゃんはボクの大切なブラザーだ。それに変わりはない。

 

「あはは……判っちゃう?」

 

「フフッ、隠したって無駄なんだからね!ワタシ、スバルくんのことだったらなんだってわかっちゃうんだから!」

 

 ええっ!?ホントにござるかぁ……?部屋に盗聴機とか仕掛けてないよね?い、いや、ミソラちゃんに限ってそんなこと……ないハズだ。多分。

 

「やっぱりミソラちゃんには敵わないよ。まぁ、色々あってさ……」

 

 簡単に何があったかを、ミソラちゃんに話す。

 

「へぇ~、でも凄いよ!ニュースで紹介されるなんてさ!」

 

「そうかなぁ、物珍しさってだけのような気もするけど……」

 

 掌ドリルは止めてほしいもんだけどね。

 

「そんなことないって!だって世間じゃ『ヒーロー』って言われてるんだよ?カッコいいじゃない!」

 

 ミソラちゃんに言われると、そんなに悪い気はしないような。いや、まぁ役得?

 

「あはは、ありがとうミソラちゃん。これなら頑張った甲斐があったかもしれないね」

 

 ちゃんと人となりを知ってる人から貰う励ましって、割と無視できないレベルで活力源になったりするよね。ソースはボク。

 

「もう、大袈裟だよ……アレ?」

 

 モニターが近づいてくる?いや、違うな。

 

「これは……CM用のエア・ディスプレイだね」

 

『ただいま美術展では、「滅びの文明展」を開催しております!是非お越しになってください!』

 

「『滅びの文明展』だって……面白そうだね」

 

 遂に来てしまったな……ボクはオーパーツを制御しきれるのだろうか。ベルセルクに飲み込まれて暴走、なんてオチはゴメンだけども。

 

「あ、コレだよ。ニュースでやってた展示のやつは。スバルくん、こういうの好きなの?」

 

「好きというか……ちょっと無視出来ないというか……」

 

 オーパーツさんに再会するのがちょっと怖いんです、ハイ。実際何言われるかわからないから怖いんだよな……

 

「へぇ……ちょっと意外だけど、いい機会だし、行ってみようよ。場所はえっと……TKタワー内部の美術館だって。じゃ、早速TKタワーに行こ!」

 

「うん……あ、ミソラちゃんが映ってる。これは栄養ドリンクのCMかな?」

 

 空中に浮いたエア・ディスプレイからは、ミソラちゃんの元気な声で栄養ドリンクを宣伝しているのが聞き取れる。これはバカ売れ間違いなしだね。

 

「あはは……やっぱり恥ずかしいな、自分が出てるCMって」

 

 まぁ、なんとなくわかるけど。ボクも今朝はなんだか、身体中がこそばゆかったから。

 

「そう言えばさ、ミソラちゃんって歌手活動に復帰してからはこういう宣伝によく出演?したりしてるよね。歌手一本でやってるのかと思ったから、結構意外だったんだ」

 

「ああ、それは…………もっと多くの人に、ワタシを知って貰うためかな。ワタシね、歌手を引退して自分で少し、考えてみたんだ。自分のやりたいコトを、ね。」

 

「自分のやりたいコトか……」

 

 そう言えば、ボク自身がやりたいコトってなんなんだろう。あかねさんの為に、ダイゴさんを救出するのはやりたいコトだ。でもそれは誰かの為であって、自分の為ではない。ダイゴさんを救出した後に何をやりたいか、そして何をしたいか。それらを考えていく必要が、きっとボクにはあるのだろう。

 

「うん、自分のやりたいコト。自分に出来るコト。時間はかかったけど、漸くそれを見つけたの。それはね……世界中には、ワタシやスバルくんのように親を亡くした人だってたくさんいる。そういう人たちのために、歌を作りたいの。……スバルくんはちょっと特殊だけどね。親を喪った気持ちを知ってるワタシなら、その悲しみを和らげる優しい曲が作れるんじゃないか……って」

 

「そっか……凄いね、ミソラちゃんは。自分のやりたいコトを、ちゃんと自分で見つけられて。……ボクは何一つわからない。何故ボクが、ここにこうして存在しているのか。そしてボクは一体、何を為せばいいのか……」

 

 わからないから、取り敢えず生きる為に世界を救う。もちろん、あかねさんの件を優先させるけど。

 そうだ、ボクは一体何のために……何のためにこの世界にいるんだ?誰かの意思?まさかこれもゲームの一種だとか?……フフッ、確かに二次創作なんかではありそうなジャンルだ。ま、考えてもしょうがないだろう、こればっかりは。

 

「スバルくん。……別に、いいと思うよ。わからなくっても」

 

 わからなくっても?

 

「それは、どういう……?」

 

「事情が事情だし、スバルくんの場合は、まだ半年も過ごしてないんだよ?そんな状況で自分を決めるのって、凄く難しいコトだと思う。だからね……ゆっくり、ゆっくり色んなコトを知って、わかっていけばいいと思うんだ。時間をかければ、それだけ自分に納得出来ると思うの。……ワタシみたいに」

 

 自分のやりたいコトを、しっかり考えたミソラちゃんだからこその言葉なんだろう。

 

「そっか……ありがとう、ミソラちゃん」

 

 きっと、答えを出すのを急かし過ぎたってコトなんだろうな。それに色んなコトを知る……か。既にこの世界の流れは概ね知ってはいるけれど、多分まだボクの知らない世界(コト)がたくさんあるんだろうな。色んなコトを知って、そうしてボクを決めていく……ああ、なんて素晴らしい響きなんだろうか。

 

「ううん、気にしないで。ワタシは以前、スバルくんに助けられた。だから今度は、ワタシがスバルくんにエールを送ってあげたいんだ」

 

 ……カッコいいな。惚れちゃいそうだよ。ボクならこうはいかないだろうし。きっと何処かで茶化しちゃうだろう。

 

「フフッ、そっか。……なんだかミソラちゃんって、ボクのヒーローみたいだよね」

 

「あっ!ヒドイ!ワタシ、オンナのコなんだよ!?ヒーローじゃなくて、ヒロインが適役なんじゃないかなぁ!?」

 

 おっと、申し訳ない。でもミソラちゃんが(性格的に)イケメン過ぎるのが悪いと思う。今のミソラちゃんを見ていたらきっと、女の子でミソラちゃんに憧れる子も出るだろうね。ビッキーって呼んでいいですか。

 

「あはは、ゴメンゴメン。なんだか湿っぽくなっちゃったね。それじゃそろそろ、TKタワーに行こっか?」

 

「うん!」

 

 流石はアイドル(?)、いつでもシャイニースマイルというヤツだね。ボクも見習った方がいいかな?

 

「…………」

 

「スバルくん、笑顔引きつってるよ?」

 

 ダメでした。




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