ーーTKタワー前ーー
色々と考えさせられることがあったりしたものの、当初の目的通り、ボク達はTKタワー前へとたどり着いていた。それにしても、やっぱり凄い高さだよね……この高さを徒歩で登りきったなんて、今でも信じられないくらいだ。
「あ、ワタシ美術館はタワーの最上階に設けられているって、ニュースで見たことあるよ」
「最上階かぁ……また凄い場所に美術館をつくったもんだよね。万が一倒壊したりでもしたら、かなりマズイコトになりそうだ……」
しかも美術館には窓が無かったハズだから、ぶっちゃけそんな場所で開催する必要は無かったのでは?まぁ、マーケティングだとか経営論的な知識はボクの専門外なので、稚拙な予想しかできないのだけど。専門と言っても、ウィルス系に関する知識に限っているけれどね。
「フフフ……スバルくんは心配し過ぎ!大丈夫だって。さっ、早く中に入ろうよ!」
「そうかなぁ……」
結構このTKタワーって、厄ネタだと思うんだよね。だって、世界征服系の組織に狙われたし……オリヒメ陣営以外にも、狙ってる組織とかいそうで怖い。ていうか銃火器とか持って来られたら、普通に為す術がない。
ーーTKタワー内部・最上階ーー
TKタワーの最上階に設けられた美術館は窓が無く、照明頼りで辺りを見渡すことが出来た。足元に敷き詰められた暗色のパネルも、未知の文明を展示するというコンセプトに合っているような気がする。キャー怖ーい!みたいな部類ではないのだろうけど。
「ここが美術館かぁ……」
確か日光が当たると、色褪せちゃったりするんだっけ?今の科学力ならなんとか出来そうな気もするけれど。
『おや?』
おや?この声は……美術館受付の向こうから、初老に差し掛かっただろか、という年頃のおじさんが近づいてくる。その足取りには微塵の躊躇いもない。というか、以前映画館で再会した費用 減削さんだ。
「おや?おや?おや?確かキミは……!」
「あ、こんにちは費用さん。ゴースト・クライシスの方は、もういいんですか?」
「ああ、実はあの『ゴースト・クライシス』、本物のオバケが出る、なんて噂が立って公開中止になってしまったんだ」
「あれ?でも以前行ったときは上映してましたよね?」
ポップコーンリベンジで映画館まで行った時のコトだ。ハーフ&ハーフはとても美味しかったです。
「それはだね……今話題の青いヒーローが出るという噂も同時に流れたみたいで、一時的に動員数は増えたんだ。だけど、やはり不安要素は取り除きたいらしくってねぇ。残念ながら『ゴースト・クライシス』の公開は中止ってわけさ。それに公開後直ぐに中止となってしまったから売上的には酷い大赤字でさ、おかげで私は映画プロデューサーという肩書きを失ってしまったんだ……」
「そ、それはお気の毒に……」
この人も、電波社会における被害者なんだよね。まぁ、利便性にだけ目を向けていてはいけないよっていう教訓なのかもしれない。
「グフフ……そう慌てないでくれたまえ。私は世の中の渡り方を熟知している男だ。転んでも、タダでは起きないぞ……!」
やってやる、とばかりに拳を握りしめる費用さん。か、可哀想に。この滅びの文明展も……ぶっちゃけ全てを止めるには人手が足りないし、御愁傷様としか言えないのがなぁ……なるべく、奪われたモノも回収してみようかな?余裕があれば、だけど。
「今度はね、美術館のプロデュースをするコトになったんだ」
「じゃあ、この『滅びの文明展』って……」
「そう、私のプロデュースだ!」
「せ、成功するといいですね……」
「ああ!もちろんだとも!君には以前助けてもらったし、この『滅びの文明展』には無料で招待しよう。ホントは入場料をキッチリ取るんだがね」
おお、太っ腹だ。流石に世渡り上手を誇るだけはある。経営と言うか、プロデューサーとしての才能はあるんだろうけどな。いかんせん、幸運E並の不運に巡り会っているのがね……
「いいんですか?その、費用が……」
かけた費用がもったいない、とか言い出したりはしないだろうけど。
「ああ、気にしないでくれ。受けた恩は返す、これも私の処世術……というか信条みたいなモノだからさ。……まずは受付にいる係員に言って、入場の手続きを済ませるといい」
「……そうですか、ありがとうございます!」
「ああ、心ゆくまで楽しんでいくといい。序でに学校の友達にでも、この展示のコトを宣伝してくれると私としては嬉しいがね」
流石はプロデューサー、抜け目ない。費用P……あんまり響きはよくないな。やっぱり費用さんで。
「あはは……伝えておきますね。では!」
委員長の父母さんにも紹介してみようかな?確か同じような職種だったはずだし。いや、プロデュースのノウハウを独占したがるのだろうか?
まぁ、飯の種ってヤツだし、仕方ないのかも。
「よし、行こっか?……ゴメンね、蚊帳の外にしちゃってさ」
「ううん、別にいいの。ワタシ、お金に拘る人ってまだちょっと苦手で……」
うっ、確かに。ちょっと無神経だったか。お金に拘る人って多分、例の元マネージャーのことだよね。そういえばあの人、今は何をしているのだろう。
「そっか。でもあの人、普段は結構いい人なんだよ。前にちょっと話したコトがあるんだけどね、お金が絡まなければかなり好印象だったかも……」
気前はいいし、子供だからって侮ることもしない。ホントお金で凄い苦労したんだなぁ……って位お金に神経質で無ければ、欠点とか無さそうなんだけどね。キズナリョクも260と、一般人では高い方だったし。
「スバルくんがそう言うなら……って、先ずは受付に行こ?今日は楽しまなくっちゃ!」
「それもそうだね。ええっと、受付の人は……すいませーん……!」
受付の女性に話しかける。確かマテリアルウェーブが貰えるんだっけ?益々太っ腹なコトだよね。
「はい!……『滅びの文明展』へようこそ!この地球の歴史を紐解くと……過去に滅んでしまい、今はもう見ることの出来ない文明や生物が、数多く存在します。ここでは、そうした文明や生物が残した遺産を展示しています!どうぞご覧になっていってください!」
ぶっちゃけシノビとか滅ぶ要素あったの?って感じだけど、キズナリョク云々で説明するなら裏切りが相次いで一族内で殺し合いにでもなったってところだろうか?うわっ、そう考えるとシノビのオーパーツじゃなくてホント良かった……
「へぇ……結構面白そうだね!」
「うん!」
ミソラちゃんの反応も上々だ。美術館の密閉された空間独特の雰囲気も相まって、かなりそれっぽく感じる。やっぱり費用さんって、かなりやり手のプロデューサーだったんじゃ……
「展示をご覧になる前に、こちらをお受け取りください!ガイドのマテリアルウェーブですので、館内ではガイドの誘導に従ってお進みください。では、ごゆっくりお楽しみくださいませ!」
「ありがとうございます」
「ねぇねぇ!早速使ってみようよ、そのマテリアルウェーブ!」
オラ、ワクワクすっぞ!みたいなノリで催促するミソラちゃん。そういえば、入館するのは二人なのに、配布されるガイドは一人なのか。一団体につき一人ってことなのかな?
「うん、それじゃあいくよ……マテリアライズ!美術館のガイド!」
ガイドのマテリアルウェーブ、スタンバイ!
『展示品の解説を行いますわ!よろしくお願いしますですわ!』
名前はシャベクリンっていうらしい。多弁そうな名前だ。
ーーバシュッ!
「ワタクシ……当美術館のガイド……シャベクリンと申しますわ。よろしくお願いしますですわ!!」
無理してですわ口調にしなくてもいいような気がする……
「よろしく!」
「よろしくね!」
「はいですわ!それでは早速、参りますですわ!」
だから、無理しない方がいいと思うんだけどなぁ。多分そういう風にプログラミングされているのだろうけど。
ーー展示スペースーー
「まず、最初の展示は『ムー大陸』についてですわ」
ムー大陸。ついに出たな。そういえばムーメタルって結局なんだったんだろう。というか、地球人としては『宇宙に誇る、我らがムー大陸!』って開き直った方がいいのだろうか?だってどう考えても、アシッドやジョーカーを抜いたら純地球産の対抗戦力って足りてないしなぁ……ガチガチのバトルウィザードでギリギリってところだろうか。バトルオペレーション!セット!すればなんとでもなりそうな気はするけど。
「ムー大陸?」
「かつてこの地上には、現代を遥かに上回る科学力を持った……とある文明が存在したらしいですわ。それをムーと呼称しているのですわ」
「現代を遥かに上回る科学力かぁ……社会の授業でも教わってないし、教科書にもそれらしき記述は無かったような……」
まぁ、知ろうと思えばネットで知れるんだけどね。実際検索して、簡単な情報なら集められたし。
「ムーが本当に存在したかどうかは、まだ判っていないのですわ。仮説では……ムーはある時期を境に、突如その姿を消したと言われているのですわ」
不確定な情報を教科書に載せるワケにはいかないってことか。ということは、来年からは教科書にムーのことが載るんだろうな。だって大陸ごと出現しちゃうし。学習要領の変更とか、受験生泣かせだと思う。おのれムー!
「へぇ~、不思議な話だね」
「(多分、ボク達の方が不思議な生き物なんじゃないかなぁ?……宇宙人と生活してるなんてさ)」
「(アハハ!それもそうだね!)」
「ムーのモノと思われる遺産が各地で発掘されているのですわ。それらが、ここに展示されているのですわ。ゆっくり、ご覧くださいですわ!」
取り敢えず、この辺りにある展示品なら……
「じゃあ、この石板みたいなのは?」
先ずはこのムー文字の描かれた石板だ。確かソロもこれと同じ模様を宙に描いて変身していたハズ。ということは、ぼっち的な単語である可能性がワンチャンあるかな?
「ゴホン、この石板に刻まれた模様は……ムーの人々が用いていた文字の一つだと言われていて、何を意味しているのかは未だ解明されていないのですわ」
やっぱりまだ解明されていないのか。ソロ辺りが解説してくれればわかるんだろうけど、それは贅沢っていうか失礼なことだよね。滅んだ先祖をその末裔に解説させるなんて、流石に鬼畜が過ぎるような……
「現代の技術でも解明されていないなんて……よっぽど難解につくられていたのかな?」
「う~ん、どうだろ?ワタシには『門』みたいに見えるけど……」
確かに、割と近い例えだと思う。『門』以外だったら、『弓』の字を左右対象に並べたような見た目だろうか?いずれにしても、さっぱりわからないことに変わりはない。雰囲気を楽しむ位でいいんじゃないかと思う。
「ホントだ。……もしかしてミソラちゃん、暗号解読の才能があるんじゃない?」
「大袈裟だって!」
「あはは……冗談だよ。でもさ、案外ボクらみたいな素人の想像が真実だったり……なんて考えると楽しくならない?」
考えても仕方ないことだからこそ、いくらでも想像できる。このムーの模様だって、もしかしたら十字架のようにムー大陸の人々にとっては神聖な模様なのかもしれないし。
「アハハ、確かにね!……よし!それじゃ、次の展示行ってみよ!」
「うん、それじゃあ……これは?」
「こちらに展示されている遺産は、ムーの人々が使っていたと思われる、携帯端末らしき装置なのですわ!」
正しく、ハイドの使っていた古代のスターキャリアーだ。……中身は入ってないよね?
「凄いね、この展示品……スターキャリアーにそっくりだ。というか……」
「(ああ、ハイドが電波変換に使ってたシロモノにソックリだぜ)」
「(確かハイドは『古代のスターキャリアー』とか言ってたよね。もしかしなくても、関係がある……と考えるのが自然かな)」
というか盗品だし。もちろんハイド達のほうが、だけど。
「(そうだな……その展示品を、もっと詳しく調べてみろよ)」
無茶ぶり酷いよ。
「(それはダメだって、セキュリティが……)」
「(オイオイ、ビビってんのか?……なら、オレがやってやるぜ!)」
そう言って古代のスターキャリアーに近づこうとするロック。どうせ後でいくらでも触れるようになるってのに。カミカクシの中で、だけど。アレって結構脱出するの面倒だったんだよな……
「(バカ!ここのセキュリティはマテリアルウェーブの警備員だから、電波体のロックだって普通に感知されちゃうんだよ!)」
入り口のパネルに表示されていたのをちゃんと確認しているから、間違いはない。まぁ向こうにとっては問題ないのだろうけど。
「(チェッ、しょうがねぇな……)」
ふぅ、なんとか止められた。ボクはいいけど、ミソラちゃんまで目立っちゃうのは避けないと。迷惑だって、なるべくかけたくないし。いや、カミカクシによる拉致を黙認する時点で今更か。でも、不必要なコトはするべきじゃない。
ーー五分後ーー
「続いては、『滅びの種族』についての展示ですわ」
ああ、ベルセルク、シノビ、ダイナソーね。それにしても、なんだかピリピリしてきたような……オーパーツの影響かな?
「……滅びの種族って?」
「現代では存在しない、既に滅んでしまった三つの種族のコトですわ。その種族達は強力なチカラを持ち、長く繁栄を築いていたと言われていますわ。この展示では、その種族達を紹介しているのですわ」
ムー大陸についての展示の先、通路を渡ると先ず目に飛び込んできたのは、巨大な恐竜……多分ダイナソーのレプリカだった。何で出来ているんだろう、本物感が凄い。
「へぇ……なんというか、分かりやすく凄いよね」
デカイ恐竜だとか、戦士の決闘の再現だとか、素人にも分かりやすく展示されている。
「うわぁ……この模型、凄くおっきいね……」
ミソラちゃんが言うと何故か凄くエッチに聞こえるのは、多分ボクが汚れきっているからなんだろうね。まぁ、まだアレは来てないし、特に反応することもないんだけれど。でも、逆に怖くなってきたな……
「こちらは、太古の昔に栄えたという、ダイナソーと呼ばれる種族ですわ。滅びの原因は諸説あるのですが、隕石の落下が有力といわれていますわ!」
この辺は同じなんだな。そういえばダイナソーのオーパーツって、誰がどうやって製作したんだろう。ガチの恐竜に、そんなモノを造れる知恵はないハズなのだけど。
「この展示品は、マジカミツイタロサウルスとクビナガスギリュウの壮絶な闘いを再現しているのですわ」
「ブフッ!ちょっ、ちょっとそれ反則……!」
どんな名前だよ!マジカミツイタロサウルスとクビナガスギリュウって!そこは普通にティラノサウルスとフタバスズキリュウとかでいいでしょ!?
「スバルくん、どうしたの?」
ええ!?これ笑うトコロじゃないの!?嘘ぉ……
「いや、ちょっと……むせちゃってさ!」
酷い言い訳だ。なんだよむせるって。
「ふぅん……大丈夫?背中擦ってあげようか?」
本当に心配そうな表情だ。こ、心が痛む……
「あ、いや……もう平気だから!」
「そう?」
「あはは……それじゃガイドさん、これは?」
全身に鎧を纏った戦士の展示を指して説明を求める。露骨な話題逸らしなんだけどね。これは……多分ベルセルクかな?全く電撃を操っている風には見えないけれど……
「中世を生きた、ベルセルクと呼ばれる闘いの種族ですわ。闘いに明け暮れた日々が、彼らを滅びの運命に導いたと言われています」
それボクらのコトじゃね?いや、そこまで殺伐とした日々は送っていない、ハズ。いやしかし、戦闘狂と言われてもあんまり否定できないような……
「この展示品は、戦士ベルセ・ルークと戦士アクノ・キーシの決闘の様子を再現していますわ」
「ブフッ!」
何で的確にコチラのツボを突いてくるのだろうか。ベルセ・ルークって最早ただの種族名じゃないか!
「大丈夫?」
「ホント大丈夫だから!よ、よし、次行こう!」
これじゃあミソラちゃんに変人扱いされてしまう。抑えろ、抑えるんだ、笑いの衝動を……!
「うん!」
ーー五分後ーー
「あっ、これは知ってるよ。忍者でしょ?」
忍者は結構有名ドコロで、よくアニメーション化だったり、ドラマ化したりしており、よく知っていても別に不思議ではない。正確にはシノビなんだろうけどね。
「こちらは、センゴクジダイを暗躍したシノビと呼ばれる種族ですわ。一族間の強力な結束と、恐ろしいオキテによって種族の秘密は守られ、その結果歴史の表舞台から滅び去ったと言われているのですわ。ニホンでは、このシノビをモチーフにした創作物が数多く製作されているのも特徴と言えばですわ」
秘密が守られたのなら、普通に末裔が生き残っていてもおかしくないような……忍界大戦でもあったのだろうか。多分その辺りも秘匿されたのだろうけど。
「この展示品は、ハトリゼンゾウとカザマコジロウが闇夜に行った果たし合いの様子を再現しているのですわ」
「へぇ~、凄い。クナイや忍刀なんかもあるよ」
「あ、ワタシ知ってるよ!この巻物を口にくわえて……カトンノジュツ!ってするんでしょ?」
ニンニン!といった感じで手を組むミソラちゃん。可愛いだけです。闘う役よりも拐われる役の方が似合いそうだと言うのは、ちょっと気が引けるので黙っておく。
「ミソラちゃんは可愛いから、目立っちゃってあんまり忍べないかもね……」
ピンク色の忍装束とかを着て、敵にすぐ見つかっちゃいそうだ。そしてそのままライブでも始めそう。ワタシの歌を聞けェーッ!ってね。
「……フフッ、ありがとスバルくん!」
照れくさいのを誤魔化すようにウインクしてくるけれど、耳まで赤くなっているのを隠しきれてはいない。
「どういたしまして……っと、そろそろ『滅びの種族』に関する展示は終わりだね」
時代を再現したようなセットが現代風のモノに変わり、そして益々ピリピリしてくるような気がする。
これは多分、普段からベルセルクを使用しているから、その影響でオリジナルの電波に対して敏感になっているのだろうね。
「シノビ 、ベルセルク、ダイナソー……この三つの滅びの種族には共通するコトがありますわ。それは、それぞれの種族が滅びる直前に、『キズナが弱くなった』コトですわ」
ダイナソーのキズナってなんだろう。仲間意識とか?縄張り意識の方が強そうなんだけどなぁ……
「キズナが弱くなったというのは?」
「種族が繁栄するに連れて……仲間同士の繋がりが薄くなっていったらしいのですわ。その結果、争いや戦争が起き、これらの種族は滅んでしまったのですわ」
全く関係ない隕石で滅んだダイナソーを、忘れてはいないですかね……?アレもキズナが弱くなったせいなのだろうか。解せぬ。
「仲間同士で争っちゃったんだね」
というか、今の人類そのままでは?規模と数は縮小されたとはいえ、未だにそういう国や団体がいるのも事実だし。……ジャックやクインティア(先生?)がいい例だ。
「滅ぶ直前にキズナが弱くなる……このコトを、専門家は『滅びの前兆』と呼ぶのですわ」
「滅びの前兆……なんか怖いフレーズだね」
ミソラちゃんはなにか嫌な想像でもしたのか、体を掻き抱くようにする。若干震えているようにも見える。具体的な例を見て、怖くなってきたのだろうか。
「……さて、では次の展示に行きますですわ。次の展示はこの美術展の目玉、『オーパーツ』ですわ」
「(オイ、スバル)」
「(わかってる。多分そのオーパーツだよ)」
「(何かしら、変なコトでもされなきゃいいが……)」
だといいんだけどね。なんだか緊張してきたな。
今のキズナリョク的に、心配は要らないと思うんだけど……
GET DATA……ナシ