星河スバル(偽)の戦闘録   作:星屑

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 ーーTKタワー内部・美術館ーー

 

「こちらに展示されていますのが、滅びの文明展の目玉……オーパーツですわ!」

 

 心なしか、ガイドも胸をはっているように見える。マテリアルウェーブは意思を持っているから、自分の職場を誇りたくもなる……ということなのだろうか?

 

「オーパーツ?」

 

 ミソラちゃんが不思議そうにガイドに尋ねる。まぁ流石にオーパーツなんて言葉は、普段生活している中じゃあまず聞かないよね。 確かオーパーツってのは略称で、正式にはout of place artifacts(場違いな工芸品)。そこからOOPARTSの略称になったという流れだったはず。記憶違いかもしれないけれどね。

 

「発掘された年代ではありえない材料や方法で造られた遺産、それが『オーパーツ』ですわ」

 

「それって、どういうコト?」

 

 イマイチ実感が湧かないみたい。

 

「例えば大昔って、車みたいなモノは無かったでしょ?それなのに車の化石が出てきたりしたら、変だよね?そんな感じで、歴史的に考えれば絶対ありえないんだけど……それにも関わらず、発掘されてしまった遺産がオーパーツなんだよ」

 

 ま、スバルくんも知ってたみたいだけど。どうやらダイゴさんによく、こういう展示を見に連れ回されていたらしい。中々印象的なイメージとして残っている。

 

「へぇ、スバルくん結構博識なんだね……!」

 

「こんなの情報サイトや専門書の受け売りだよ。ボクが何かしたワケじゃない」

 

「フフッ、ワタシ、スバルくんのそういうトコロ……結構好きだよ?」

 

 アハハ……と笑いながら、何やら慰めてくれるミソラちゃん。別に褒められたくて解説したワケじゃないから、そんなに過剰に持ち上げられちゃうと……なんだか照れる。

 

「ハイハイ、続き聞こ?」

 

「あ~!スバルくんヒドーイ!……ってあれあれ?顔赤いよ?」

 

 照れくさいんだよ言わせんな!

 

「…………」

 

「あっ、もう……拗ねないでよぉ……!」

 

 ちょっと涙目になってきたな。罪悪感が凄いけど、幼気な男子を弄んだ罪は重い。ボクの自爆っぽい気もするけれど。

 

 ーーギロッ!

 

「そろそろよろしいのですわ?」

 

 アッハイ。怖い、ガイドが怖いよ!

 

「「すいません……」」

 

「ゴホン!ここに展示されたオーパーツは……ベルセルク達が造り上げたモノだと考えられていますわ」

 

 おっと、オーパーツが眼前にあるのを忘れていた。というか、一応チカラを貸した存在が目の前にいるというのに、オーパーツ側で特に反応が無いとはどういうことだろうか。もしかして忘れてるとか?

 

「これがオーパーツかぁ……浮いている以外、他の展示物と大差ないように見えるね」

 

 マテリアルウェーブ特有の輪郭を電波で覆ったような違和感が無ければ、初見の人間はタダのガラクタと評すかもしれないね。後は浮いていなければ。

 

「このオーパーツには大きな秘密があるのですわ。材質を詳しく調べてみたところ……現代でも解明出来ない、未知の物質で構成されているらしいと判ったのですわ」

 

「未知の物質で構成って……ホントにそんなモノあるの?」

 

 宇宙から降ってきたとか言わないよね?

 

「最新の研究で、『あるもの』に似ていることがわかったらしいのですわ。そのあるものというのが……マテリアルウェーブなのですわ!」

 

 マテリアルウェーブに似ていると言っても、マテリアルウェーブそのものではないから、依然として未知の物質であることに変わりはないってワケか。

 

「へぇ……じゃあ、大昔にマテリアルウェーブが存在してたってコト?」

 

 それを考えると、マテリアルウェーブを発明した人ってやっぱり凄いよね。何せ、古代の電波文明からやっと進歩出来たってことなんだから。

 

「そんなコトは歴史的に絶対ありえないですわ。でも実際、遺産として発掘されてしまったのですわ。おかげで、学者たちはいまでも頭を抱えているということですわ」

 

 どことなく哀愁を浮かべながらそう話すガイド。もしかして、その学者さんとやらが見学にでも来て、苦労話を聞かせていった……のかもしれない。所詮はタダの妄想だけどね。

 

「こんな不思議なコトってあるんだね」

 

「そうだねぇ……」

 

 ビジライザーを通して見ると、まるで電波が溢れているように見える。これだけのオーラを纏っているというのに、意思らしきモノは感じられない。……もしかして、寝てる?

 

 

 ーーヴィィィーン

 

「あら、なんの音かな?」

 

 歌手故に、普段から様々な音を聞いているのだろう、ミソラちゃんがコテンと首を傾げて不思議そうな顔をする。萌え~…………じゃなくて!ということはつまり……来るか、『カミカクシ』が!

 

『な、なんだコリャ!』

 

 この声は……費用さんだ。声に反応し展示スペースを見ると、先程ロックが触りそうになった古代のスターキャリアーを中心として、黒い穴のようなモノが発生している。美術館を半時計回りに進行してきたので、進行ルートの最後にあったオーパーツ展示スペースから、入り口近くのムー大陸に関する展示を目視することが出来た。

 

「この黒い穴はなんだ?いつの間に?」

 

 ーーズズズズズ……

 

 何か引っ張られるような音を出して、無情にも展示されていた古代のスターキャリアーは、黒い穴へと飲み込まれていった。今気づいたけれど、電波兵器だからなのか、黒い穴は波立っているようにも見える。だからどうだっていう話なんだけど。

 

「ゲゲゲ!!て、展示品が……吸い込まれた!!」

 

 漸く、事態を理解するに至った費用さんが慌て始める。やっと美術館のプロデュースから展示まで漕ぎ着けたんだ、その悲しみはひとしおだろう。少し、頑張ってみようかな?

 

 ーーヴィィィーン

 

 そして、そんな費用さんを嘲笑うように、隣に展示されていたムーの人々が送っていた生活様式を紹介するかなりリアルな顔付きのマネキンの下にも、黒い波紋が広がった。

 

「こ、こっちにも……!」

 

 ーーズズズズズ……

 

 今度は割と間髪入れずマネキンに着せられた当時の服ごと飲み込まれてしまった。ここからでも、費用さんの顔がドンドン青くなっていくのがわかる。こちらも動き出したいところだけど、今動くと向こうに察知されるかもしれない。少し、収まってからの方がいいだろう。

 

「ヒィィィー!!展示品がぁっ!!」

 

 ーーヴィィィーン……ズズズズズ……

 

 今度は一度に複数体のレプリカを持っていかれてしまった。多分、ハトリゼンゾウとベルセ・ルーク、あとはマジカミツイタロサウルスだろう。こうして考えると、ハトリゼンゾウが普通過ぎて逆に浮いているように感じる。命名者どもめ!どうしてあんな名前を付けたんだ!

 

「や、止めてくれぇー!!」

 

 今にも泣き崩れそうな費用さんを、ボク達はただ眺めることしか出来ない。だって今飛び出したら、ついでに吸い込まれてポイッとかありそうだし。

 

「け、警備員は何をやっているんだ!!」

 

「ウウウウ……!」

 

 マテリアルウェーブの警備員……ミスタープロテクト×3は、カミカクシの発生させた黒い穴に体を半分程吸い込まれ、身動きが取れていない。完全に吸い込まないのは、マテリアルウェーブ自体に用はないから……?

 

「こ、ここの展示品は貴重品なんだぞ!?費用がぁ……!費用がぁ……!ひぃぃよぉうぉーー!!」

 

 貴方まで騒ぎ出したら、カミカクシに目をつけられるぞ!

 

「展示品がどんどん吸い込まれている……!」

 

「スバルくん、さっきのプロデューサーの人、かなり困ってる。これってヒーローの出番じゃない?」

 

 ニヤリと笑って肘でボクをつつき、やっちゃう?やっちゃう?みたいな顔になるミソラちゃん。思いっきりノリノリじゃないか。

 

「……うん、わかってる。良くしてくれた人が不幸になるのは、ボクとしても忍びないしね」

 

「よし、決まり!モチロン、ワタシとハープも手伝うからね!」

 

「ありがとう、ミソラちゃん!それじゃ、まずは電波変換しなくっちゃね」

 

「了解です!……それじゃ、行こ!」

 

 ビシッと敬礼をして、いち早く美術館入り口近くにあったウェーブホールへと向かっていく。元気だねぇ……っと、こっちも急がないと!

 

「……よし、ここだね。いくよミソラちゃん!」

 

「何時でも!」

 

「「電波変換!星河スバル(響ミソラ)、オン・エア!」」

 

 

 ーー美術館の電波ーー

 

「「イエーイ!」」

 

 二人でなんとなく決めポーズをしながら電波変換を完了し、なんとなくハイタッチする。特に意味はないんだけれど、ノリでやってしまった。

 

「ポロロン……仲良くやりましょ、ロック」

 

「フン、足を引っ張んじゃねーぞ」

 

「あら、心外ね。この『ハープ・ノート』のチカラ……忘れたわけじゃないでしょう?」

 

「…………チッ」

 

 前から思ってたんだけど、ハープってロックのコトをどう思ってるんだろう。仲良くしたいのかからかっていたいのか、イマイチハッキリしないんだよね。

 

「まぁまぁロック、落ち着いて……」

 

「フン、さっさと解決しちまおうぜ。あのヤベェ残留思念どもが起きないウチによ」

 

 やっぱりロックも寝てると思ってたのか。チカラを分割した影響なのか、なんとなく反応が鈍い……ような気もする。ま、オーパーツの意識なんて誰もわからないんだろうけど。……本人達を除いては。

 

『……キキキッ!』

 

「待って、スバルくん……何か音、いや声がするよ」

 

 ハープ・ノートの強化された聴覚が、カミカクシの声?を聞き取ったらしい。ボクにはあんまりよく聞こえないけれど、これも音系統特化による恩恵なのだろうか。

 

「うん、ボクも聞こえた……ええっと、音の発生源は……」

 

 美術館奥のウェーブロード上に、巨大な目玉のようなモノを発見した。多分あれが亜空間物質転送装置……じゃなくて物質転送装置『カミカクシ』なんだろう。デザインはシンプルにキモい。こんなの使いたがる人なんていないだろうに。

 

「な、なにかしら、アレ?気持ち悪い……」

 

 遠目でしか見えないけれど、カミカクシのキモさはミソラちゃん……もといハープ・ノートにもしっかり理解出来たらしい。

 

「アレが、この騒動に関係しているのかも……側に近づいて、調べてみよう。ダメなら破壊で」

 

 破壊一択なんだけどね。ホント気持ち悪すぎる。絶対製作者はマッドの付くサイエンティストだと思う……

 

「うん!」

 

「それじゃ、まずはあの目玉のある場所に繋がるウェーブロードを……アレ、ないね」

 

 確か……シノビの掛け軸の先が通路になってるんだっけ?一体誰が使うんだ、そんなモノ……変なトコロで拘ってるよね。

 

「ええっ!?……どうするの?」

 

「……職員用の通路があるかもしれない。多分一般人が間違って通らないように、隠されているはず。と、なると……」

 

「と、なると……?」

 

 ゴクリ……と、ミソラちゃんが唾を飲む音が聞こえた気がする。ホントノリいいな。

 

「多分、『滅びの種族』エリアだ」

 

「…………あっ!展示されていた掛け軸!ならスバルくん、急がないと!!」

 

 頭の回転が早くて助かる。というか本当に小学五年生?何はともあれ、シノビの展示エリアまで急がないといけない。出来れば盗られた展示品も回収したいトコロだけど、それは余裕があれば、かな。

 

 ーー美術館の電波・滅びの種族エリアーー

 

「……ここだね。よし、捲るよ……」

 

「……ドキドキ」

 

 口で言わなくてもいいから。ええっと、クルクルクルっと。やっぱりあった。隠し通路だ。ここからコントロールルームを通って、カミカクシまで行けるハズ。

 

「流石はシノビだな!正に隠密の種族だぜ!」

 

「多分偶然だと思うけど……」

 

 実際わざと造ったのだろうか?……考えても仕方のないコトなんだけどね。

 

「とにかく、先へ進もう!」

 

 なんだか賑やかな感じだ。一人より二人、二人より四人ってコトなのかな?まぁ、電波人間はソロを除いて二人で一人ってイメージなんだけどね。

 

 ーーヴィィィーン

 

「……って、これは!」

 

 足元に黒い穴!?……カミカクシは、こちらを既に捕捉しているのか。ということは、さっきの笑い声?は恐らく、お前ら全員引きずりこんでやるっていう嘲笑の意味だったのか。なんか腹立ってきたな。

 

「チィッ、なんだこのチカラは!?引きずりこまれちまう!!」

 

 確かに……凄い、引力、だッ!

 

「スバルくん大丈夫ッ!?」

 

「オイスバル!左右に動いて、この変な引力をなんとか振り払うんだ!」

 

 ちょっ、これはかなりキツい……というか、もう無理だ!

 

「ゴメン、ちょっと落ちてくる…………うぁぁぁぁあぁぁぁ!!!」

 

「スバルくんッ!……行かないでよッ!!」

 

 さよーならー……一度は落ちなきゃいけないと思ってたんだけどね。飲み込まれた遺産を回収出来るかもしれないし。なんとか被害を減らす方向でいきたいものだ。オーパーツを持っていく罪滅ぼしのようなものなのかもしれない。

 

 ーー異次元空間ーー

 

 なんというか……四方八方が紫の壁?で覆われた世界って感じだ。電波兵器らしく、波打っているようにも見える。あんまり気分のよくなる場所じゃないな。

 

「チッ!異次元空間に飛ばされちまったらしい……出口を探すぜ!」

 

「ロック、ゴメン……」

 

「気にすんな。あれは不意討ちだった。多分オレでも引っ掛かってたぜ」

 

 ロックが慰めてくれるなんて、珍しいこともあったもんだ。ぶっちゃけ来るってわかってたとしても、結構危なかったかも……

 

「……ありがと。それにしても……」

 

「ああ、黒い穴に飲み込まれた展示品が、そこかしこに置いてあるな。どうやらあの黒い穴で飛ばされた先は、すべて繋がっていたらしい」

 

 これは助かった。最悪、何度かサルベージをしなくてはいけないかと思ってたからね。

 

「それじゃ……よっこらしょっと」

 

 取り敢えず、ムー人の服付きマネキンとハトリゼンゾウ?の模型を脇に抱えて発光している出口を目指す。残念ながら、古代のスターキャリアーの方は小さすぎて見つけられなかった。後は重すぎて無理だ!……マジカミツイタロサウルスや全身鎧を着ているベルセ・ルークの模型とか、どうやって運べって言うんだ!?

 

「オイオイ……いや、スバルらしいっちゃあ、らしいけどよ。……ウィルス共には見つかるんじゃねぇぞ?」

 

「うん、わかってる。……よし、出口だ。飛び込むよ」

 

「おう!」

 

 なんとか無事に出られそうでよかった。こんな状況でウィルスに袋叩きとか、割と洒落にならない。

 

 

 ーー美術館の電波ーー

 

「……よし、脱出完了!」

 

 取り敢えず、通路脇に回収した展示物を置いておく。また吸い込まれたら、その時は御愁傷様としか言えないのが心苦しいが。

 

「スバルくんッ!!」

 

「うわっ、ちょっとどうしたの!?」

 

 仕事を終えて、一息ついたと思ったらミソラちゃん……ハープ・ノートが抱きついてきたでござる。意味がわからないけれど、とにかく凄い力だ。これが女の子のパワーだって!?信じられない!というか、く、苦しい……

 

「ダメだよ、勝手にいなくなっちゃ……ワタシ、スッゴくスッゴく心配したんだから!!」

 

「ゴ、ゴメンナサイ……」

 

「わかってない!わかってないよ、全然……」

 

 ヒェッ!何でこんな目に!?そりゃ、ドジったのは悪かったけどさぁ……

 

「あの……そろそろ先を急いだ方が……」

 

「……ウン、わかった」

 

 そう言って抱擁を解いてくれるハープ・ノート。

 ……ちょっと泣いてる?そんなに心配だったのか。悪いコトをしてしまったな。

 

「心配かけちゃってゴメン。でもね、転んでもタダじゃ起きないよ。ほら、向こうで見つけて回収してきたんだ。これであのおじさんも、号泣から半泣きくらいには回復するはずさ」

 

そう言って側に置いた展示品を指す。

 

「……フフッ、そうだね。あーもう、心配して損しちゃったかな~?」

 

「ええっ!?結構大変だったのに……」

 

 脇に抱えて忍走りって、結構骨だったんだけどなぁ。デスサイズみたいなウィルスを見たときは、気が気じゃなかったよ……

 

「先行っちゃうよ!♪~♪~」

 

 そう言ってハミングしながら、スタスタと歩き出してしまった。さっきここでボクが吸い込まれたのを見ていた……よね?

 

「あっ、さっきの黒い穴には気をつけてよ!」

 

「モチロン!……あっ、いやぁぁぁぁッ!」

 

 余所見していたミソラちゃんは、案の定異次元空間へと飲み込まれてしまった。そら、言わんこっちゃない。

 

「お前も苦労背負ってんな……」

 

ノ、ノーコメントで……




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『デスサイズ1』『ヒートアッパー1』
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