ーーコダマタウンの電波ーー
星河家の庭隅にあるウェーブホールで電波変換を済ませ、コダマタウンの電波にウェーブインする。黒い穴が発生している以外は、特に普段と変わりのない電波世界だ。ただ、なんて言うか……
「(何だか、いつもより調子が良い?)」
オーパーツを取り込んだ影響だろうか、やけに調子がいい。体の奥底からチカラが湧いてくるようにも感じる。しかし、未だオーパーツは沈黙を保ったままなので、どうにも不気味さが先行してしまう。
「オイ、大丈夫か?」
ロックが、若干の心配を滲ませた声をかけてくる。少し、呆けているように見えたのかもしれない。今回はタイムアタックの要領でいかないと、委員長達が意図せざる場所に飛ばされてしまう可能性がある。それだけは、何としても避けないと……!
「あ、うん。ゴメン、もう大丈夫だよ。……それじゃ、発生源のデカ目玉を探そうか」
「デカ目玉ァ?」
結構的を射た例えだと思ってたんだけど。目玉親父でもいいんだけど、手足が付いてないから違和感が凄いんだよね。
「ほら、アレだよ。美術館に現れた、趣味の悪い目玉みたいなヤツのこと。……分かりづらかった?」
「クククッ……いぃや、確かにアイツはデカ目玉って感じだったよな。そう思うと、大して恐ろしく感じねぇからオドロキってヤツだぜ」
どうやら気に入ってもらえたらしい。今日の結果如何では、クソ目玉にランクダウンしそうだけど。ここで会ったが百年目ェーッ!とかなったり……それはないか。
「で、そのデカ目玉は何処に……」
「そうだな……お、見ろよスバル!1、2……3。今度は3体もいやがるぜ。全く、厄介なヤツらだよな」
うわっ、BIGWAVEの屋根上にもいるよ。……結構面倒な位置にバラけたな。先ずはあのカミカクシからデリートした方が良さそうだ。屋外で高い場所にいるってことは、それだけ黒い穴の有効距離が広くなるってコトだらかね。
「……ありがとロック!それじゃあ行くよ!」
「おう!」
公園に隣接しているBIGWAVEの方向へと走り出す。公園にはまだ委員長達がいるので、破壊対象としては最優先だ。
『……ツカエル……ツカエルゾ。……コノニンゲンハ……ワガシュゾクノ……フッコウニ……!』
ーードクン……!
「アレ?ロック、何か言った?」
「アン?オレは何も言ってねぇぜ。オマエのソラミミじゃねぇのか?」
……これ、凄く嫌な予感がするんですけど。もしかしなくてもオーパーツさん、狸寝入りを決め込んでいたんじゃないのか!?戦闘中に乗っ取りとか、ホント止めて欲しいんだけどなぁ……
「そう?……ならいいんだけど」
「ヘッ、オマエは心配し過ぎだっての!もっと気楽に暴れようぜ?」
それはちょっと極端過ぎやしませんかねぇ。いや、今回は暴れないとマズイかもしれないけど。
「兎に角今は、あのデカ目玉を破壊するコトを優先しなくちゃ……!」
「なら、油断するんじゃねぇぞ!あの異次元空間で足止めを食らってる暇はねぇんだ」
ロックこそ!止まるんじゃねぇぞ……!
ーー十分後ーー
「……これで、最後!ハァッ!」
「……キィィィィ!!」
バーストグローブによって強化されたチャージロックバスターをデカ目玉……もといカミカクシの瞳中心部に叩き込み、破壊する。よく考えると、カミカクシって電波世界でしか破壊出来ないから、現実世界側では打つ手ナシってのが恐ろしい。正に電波兵器だ。
「よし!」
「おう、これで全部だろうな。しかし、最後のヤツは往生際が悪かったよな」
「全くだよ。殺られそうになったら逃げるなんて!撃っていいのは、撃たれる覚悟のあるヤツだけだ……とはよく言ったものだよね」
「そんなコトを言ったヤツがいたのか?」
あ、この世界じゃやってないんだっけか。学習プログラムの件を鑑みて、洗脳系のコンテンツはテレビ側が放送を避けるようになってしまった……はず。
「い、いたような……?」
「スバルにしちゃあ、珍しくハッキリしないが……まぁいい。周りを見ろ、スバル。どうやら一件落着らしい」
お、確かに。取り溢しはなかったようで、無事に怪奇現象は収まっている。……だけど、ここからだ。ここからが本番なんだ。
「うん、皆無事みたいだ。よかったよ」
因みに現在地はコダマタウン、ゴン太宅の前だ。往生際の悪いカミカクシがいたせいで、ここまで追いかけるハメになってしまった。いや、カミカクシを操作しているソロが、戦いやすい場所へと誘ってたとか?なんとなく、ありそうな気がしてきたぞ。……さすソロ?
「それにしても……あの黒い穴は、一体なんだっだろうな。本体の方にはどうも、意思があるようだったが……あのデカ目玉自身、そこまで高い知性があるようにも見えなかったしな」
「ボクに聞かれてもわからないよ……五陽田さんは、神隠しじゃないか……って言ってたけど」
というかそもそも、ムー大陸の技術で造られた物質転送装置の名前が『カミカクシ』っておかしくない?完全に日本名だと思うんだけど、当時ニホンはニホンとして存在していたのだろうか?
『……見つけたぞ』
「ッ!!」
ソロ!貴様ッ!見ているなッ!?
ーーゴゴゴゴッ……
「これは……」
空気が、震えている?
「な、何だ?空気がピリピリしやがる」
やはりロックもそう感じているみたいだ。何とも言い難い、得体の知れないプレッシャーを感じる。
ーーゴゴゴゴッ!!!
「や、ヤベェぞ!」
「……わかってる。ロックも、周囲に気を配って……」
ーーヴィィィーン
「「上だ!!」」
凄く、大きな穴が空に空いている。ソロ一人通すだけなら、こんなサイズにする必要ないだろ!……傍迷惑なことをするよ!まったく!
「黒い穴だ……!」
『……食らえ!』
「来るよ!」
来るとわかっていて、対処しないバカはいないよ!って、何かビームのようなモノが降ってきたぞ!?
取り敢えず、シールドでガードをしなくては……!
ーーチュィィン!
「……グッ!」
やはりこの重量感……人だ。つまりはソロってことになる。なんて無茶なコトをするんだと思う。キミはマサラ人か!
「…………」
衝撃によって発生した砂埃が晴れた後には、小柄な人影が一つ、佇んでいた。ムー特有の模様が入った装束……やはりソロだ。
「空から、人が降ってきた……」
「……なるほど。困っている人間がいると、姿を現すという情報は本当だったようだ。そこまで他人を気にかけるとはな……オレには到底理解出来ない」
そこでふと、
「凄く、冷めた目だ……」
「……さぁ、大人しくオマエの持つオーパーツをこちらに渡せ」
フン、と小さく鼻を鳴らし、本題に入ってくる。今はあまり私情を挟む気はないらしい。
「どうしてボクがオーパーツを持っているって、知っているんだい?」
ここにきてシラを切る必要はない。
「アレは元々オレが狙っていたシロモノ……オマエが邪魔さえしなければ、オレが手に入れていたはずだ」
若干鬱陶しそうに、ソロは此方を睨んでくる。計画を邪魔されたことに、少々苛立っているようだ。……私情ありありじゃないか!
「それじゃあ、あの黒い穴を操っていたのは……キミか」
「今頃気づくとはな。……ハイドはこの程度の男に苦戦していたのか」
自分は安全圏に籠って、カミカクシの操作だけやってたクセにね。気づく方が無理に決まってる。小学五年生に対するハードルを、あまり上げないでもらいたいね。ボクは褒められて伸びるタイプなんだ。
「ハイドだと!?」
「やっぱり。美術館で古代のスターキャリアーを狙っていたから、何かしらの関係はあると思っていたけれど、まさか仲間がいたなんて……」
「仲間……だと?ふざけるな。……言葉には気をつけろ。仲間等というつまらない言葉を、オレに向けて発するな」
どうにも仲間というワードに強く反応するらしい。……知ってたけど。手酷い態度を取られてしまった。
「……」
「……」
改めて見ると、ホントに冷たい目だ。人がここまで冷たい目を向けられるなんて。実際に相対してみるとよくわかる。コイツは、完全に自分一人で完結しているタイプの人間だ。ラプラスみたいな例外でもない限り、ソロが心を開くことは恐らくないのだろう。
「全く、イヤな視線を向けられたもんだぜ……」
ロックもソロの視線の冷たさ故か、若干引き気味だ。普段はあれほど威勢がいいというのに。それほどソロの雰囲気が油断ならないってことなのだけど。
「オーパーツは、オマエでは到底扱えるモノではない。自滅するのが関の山だ。さぁ、こちらに渡せ」
「そいつはおあいにくさまだったな!……オーパーツは渡せねぇよ!」
「…………」
「オーパーツは、このオレがカラダの中で大事に保管してる。貴重なパワーアップパーツとして、精々利用させてもらうぜ。クックックッ!」
酷い悪役染みたセリフだ。完全にボク達が小悪党みたいじゃないか。多分、ソロとしては優しく忠告したつもりなんだろうな……全然伝わってこないんだけどね。
「その程度で、このオレが諦めるとでも思ったか?それならば……オマエの体ごと持ち帰るまでだ!」
カチャリ、と懐から携帯端末らしきモノを取り出す。電波体が共通して持つ、基礎感知能力向上の恩恵としてソロが手に持っている携帯端末を、ハッキリと目に捉える。どうにもハイドたちと同じ、古代のスターキャリアーを使っているようだ。ハッキリとした違いは見受けられない。
「あれは……古代のスターキャリアー?」
「ああ、ハイドが持っていたモノと同じように見えるな。ハイドはあそこからオバケの電波体を出しやがった」
「……言っておくが、オレは電波体のチカラなど借りない。誰かに頼って闘うなどという、そんな無様な真似は、オレには耐えられないからだ。何より……オレの体に流れる"血"が、それを許さない!」
そう言いながら、古代のスターキャリアーのアンテナ部分を筆のように使い、空中にムー文字を描く。描いた文字は消えることなく空中に留まり、所有者であるソロの言葉を待っているかのように沈黙している。
「……!」
「どうした?」
「美術館に展示されていた文字にそっくりなんだよ。やっぱり、あの文字には意味があったんだ」
「ハッ!」
ソロの気合いを込めた吐息に反応してか、空中に描かれたムー文字がソロの周りを囲む。敵対することを抜きにすると、純粋にカッコいいと思う。
「覚悟しろ、青い男よ。……電波変換!ソロ、オン・エア!」
辺りを電波変換時特有の閃光が走る。このエフェクトは、電波体全てに共通するらしく、ロックマンになる時も発生しているらしい。電波体か、その関係者にしか感知出来ないらしいので、最近はあまり気にすることをやめている。
「…………」
閃光が晴れた後に立っていたのは、ムーの遺産による恩恵を受け電波変換したソロ……ブライだった。カラダの周囲には黒いオーラを纏い、圧倒的なプレッシャーを発してくる。コイツは口だけじゃなさそうだぞ……!
「バ、バカな!一人で電波変換しやがった!電波体なしで、どうやって……!?」
ロックが驚愕を隠しきれないといった様子でブライに問い掛ける。恐らく、ロックも現実を受け入れられないあまりに口を突いて出ただけで、回答があるとは思っていないと思われる。
「オレは、オマエらとは違う。自分の意思のみで電波変換が出来る。これはオレの、生まれ持った能力だ」
あれ、そうだっけ?てっきり遺産のチカラにおんぶにだっこの状態で電波変換しているのかと思ってたけど、ムーの末裔にはスターキャリアーだけで電波変換するチカラがあったらしい。
「つまり、こっちと同じ土俵に立てるってことか……油断は出来ないな」
「ああ……!」
『ロックマン様~!』
ここで委員長達の登場か。どうにも胸糞悪いけど、多分ここで助けたら結果的に後悔する。最後に笑って帰ってくるためには……クソッ。
「皆、来ちゃダメだ!」
説得も虚しく、公園で待っていたはずの四人がきてしまった。しまった、じゃないな。本気で止める気なんて無かったんだ。来させた、が正しいだろう。
「ここは危ないんだ、どこか安全なところへ……」
「ロックマン様の活躍を、側で見たいのよ!」
「この目に刻みますから!」
「そんなヤツ、いつもみたいにふんじばってくれよ!」
思ったけど、ここ普通にビジブルゾーンになっているよね。多分、強力な電波体同士が対峙しているからだと思うんだけど……
「いや、でも……」
「ワタシ達なら大丈夫!だってロックマン様が側にいるじゃない!」
委員長……子供故の過信なんだろうけど、電波体同士の戦闘ってかなり激しいから、こんな時でもない限りは近寄らせたりしないよ。今回は近接同士だから平気なワケで……
「スバルよ、随分と期待されているようだな」
「……わかってる。だけどその代わり、そこから動かないでね」
そう言ってブライの方へと振り返り、ファイティングポーズをとる。これからやりますよっていう合図だ。
「いくよロック!」
「……アレはオマエの仲間か?」
確認するように、問い掛けてくる。
「アレ呼ばわりは心外だけど……そうだよ」
「フン……下らないな」
ああ、もう。無性に腹が立ってきたな。一々否定されるのって、結構ストレスになる。
「……どういうこと?」
「"血"が酷く疼くんだよ。『馴れ合いは排除しろ』……とな」
ブライが手を振ると、側にカミカクシが出現した。……遠隔操作も出来るのか。やっぱり物質転送装置にしてはオーバースペック過ぎない?
「あれは……黒い穴を発生させていたデカ目玉だ!」
「………………やれ」
ーーヴィィィーン
短く指示を出すと、カミカクシが反応して委員長達の足元に見慣れた黒い穴を発生させる。完全に不意を突かれた形で、誰一人範囲外に逃れた様子はない。
「……し、しまった!」
ーーズズズズ……
黒い穴から引力が発生し、四人を異次元空間に引き込もうとする。人間用に出力が調整されていたようで、抵抗しているためにその沈むスピードはかなりゆっくりだ。それでも、完全に切り離される前に委員長は助けないといけない。委員長が引き込まれた場合、何処に飛ばされるかわからないからだ。
「キャーー!」
「み、みんな!…………止めろ!皆は関係ない!!」
「なぜ、オレがオマエの指図を聞かねばならない」
わかっているとはいえ、相変わらず人の神経を逆撫でするようなヤツだ……!
「止める!……チカラずくでもだ!」
「……いいだろう。身の程を思い知るがいい」
「いくよ!って、うわぁっ!?」
コイツ、いきなり足払いをかけてきたぞ!?
……ちょっと、油断し過ぎたか?それにしても、向こうだって冷静だ。
「クソッ……!」
「ロックマン様!!」
まだ、時間はある。大丈夫、落ち着いて対処すればイケるハズだ。委員長だけは、助けられる!
「大丈夫、こんなの平気だから……!待ってて、必ず……!」
「聞こえていなかったのか?馴れ合いは目障りだと言ったハズだ。……フン、いいだろう……今すぐ断ち切ってあやる!オマエらの美しい『友情』ってヤツをな!」
「!!!」
ーーズズズズ……
ブライが指示したのだろう、強制的に黒い穴へと四人は沈みきってしまった。やっぱりやりやがった!人間用の出力を変更したな!?
ここからが、タイムアタック。カミカクシが展開したのは巨大な黒い穴だ。完全に閉めきるにはかなりの時間がかかる。美術館の時も、使用した黒い穴はいつまでも残っていた!
「そんな……!」
「心配するな。オマエも、今楽にしてやる」
マズイ!既に眼前まで移動している!?なんてスピードだ。なんとか、時間を作らないと……!
「皆は、返してもらう……!」
「……仲間が気になるのか?ハッ!」
シールドッ!
ーードガァッ!
「ぐあぁっ!」
ガ、ガードブレイク性能か……クソッ、キックは回避するしかないみたいだ。それにしても……キックを受けた腹部が割と痛むな。打撃系の攻撃が、こんなにも体中に響くなんて!
「…………ま、まだだ!」
「そんなに馴れ合いが大事か?オレから見れば、それは弱い証拠だ。強ければ他人など必要としない。違うか?」
あまり調子に乗られても……困る!絶対にノゥだ!
「違う!人は、人間は……誰かの為なら無限に強くなれるんだ!今はチカラを失っているけれど……この体に宿るスターフォースがそれを証明してくれる!だから、ボクはボクで在れるんだ!」
ペガサスだって、言っていた。人間のキズナは無限のエネルギーを生み出せるって!……そんなニュアンスだったけど、ボクは信じてる。少なくとも、ここは負けられない!
「……?」
ーードクン!!
チカラが湧いてくる。今だけは、オーパーツの気まぐれに感謝しないといけない!
「まだやるというのか……まぁいい。……今度は、楽にくたばれると思わないことだ!」
「うぉぉぉぉッ!亡霊擬き……チカラを貸せェッ!!」
ーードクン!ドクン!
凄い、体の中にあるオーパーツから、エネルギーだけが流れてくる感じだ。エネルギー源の底がまったく見えない。正に、無限と呼ぶに相応しいくらいの性能だ……!
「これは……まさかオーパーツのチカラ?なぜ突然……!?」
「……これが、人が生み出す、キズナのチカラだからだ!」
やはりキズナリョク700はハッタリではないらしく、息苦しさも感じない。なんだか、ボクに都合が良すぎて逆に怖くなってくるくらいだ。終わった後に変な代償とかがないといいけれど……今はブライを撃退することが先決か。
「……フン、キズナのチカラだと?……なるほど、どうやらオマエは、オレの一番気にいらないタイプのようだな!!」
知るかそんなこと!一々人の好みに合わせていられるか!ボクは、来年以降も皆と一緒に笑っていたい……そのためにも!メテオGを破壊するまで立ち止まってはいられないんだよ!
「スバル、気をつけろ!」
そんなの、今更だ!
「キミを倒して……そこのデカ目玉を止めさせてもらう!今日のボクは、いつもの3倍は強いぞ!ウェーブバトル!ライド・オンッ!」
感想・評価が私の体力ブースターです。
GET DATA……ナシ