星河スバル(偽)の戦闘録   作:星屑

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めちゃくちゃ難産でした……

ゲームで牛狩りながら動き見て書いたんですけど、あまり関係なかったですね。

6/23、チェインバブルのカードについて後書きに追記しました。
描写不足ですいません。

すいません!バブルフックとチェインバブルを勘違いしてました……以降はバブルフックで通します。

修正しました。



9

 ーートラックの電脳2・最深部ーー

 

「ここが、トラックの電脳……最深部」

 

「ああ、見ろよ……ウシヤロウのオデムカエってヤツだぜ!」

 

 トラックの電脳、その最深部に待ち受けるオックス・ファイアは既にこちらに気づいているが、装甲の配置の関係で首をほとんど動かすことが出来ないため、首を傾げるという動作を体を揺らすことで表現している。

 困惑しているためか、いつもは肘から吹き出る炎も不規則に漏れ出ている。そりゃあ、もやしを探していたら突然青い装甲に身を包んだ少年が突入してきたんだから、誰だってそうなるよね……。

 

「このニオイは……?」

 

 ヤバい、気づかれたか……?

 

「ブルルッ!!何者だ、オマエは!?」

 

「けっこうデカイね……装甲も厚い。攻撃が通るといいんだけど……」

 

「ブルルルッ!……んんん?オマエ、何処かで会ったコトがある気がするんだな……?」

 

「…久しぶりだな、オックス!」

 

「ブルルルッ!?キサマ、ウォーロックか!?」

 

「地球に来ているFM星人は、オマエだけか?」

 

「(ロック、敵から情報を抜き出すならもっと遠回しにだね……)」

 

「(黙ってな!……問題はない、いいから黙って聞いていろ……!)」

 

 いくらオックスが脳筋だからって……

 

「そうだ、オレ様が一番のりだ。……だが、もうしばらくすれば第2、第3のFM星人がやってくるだろうよ!」

 

 何……だと……?

 

 そこまで言っちゃいます……?いや、ラッキーなんだけども。FM王はどう考えても人選を間違っているよね……

 

「ブルルッ!まぁ、そんなことはどうでもいい。……それにしても、えらく貧弱なヤツに取り憑いたものだな!!取り憑くならパワーのありそうなヤツにしておけば良いものを!」

 

「うるせぇ!誰に取り憑こうがオレの勝手だろうが!……それにコイツは中々やるからな……オマエの宿主もどっかのもやしヤロウにしてやられてたんじゃねぇのか?」

 

「ちょっと、ロック……ボクに取り憑いてたの……?もうちょっと、こう、言い方ってモンがさぁ……」

 

「ブルルルッ!!ならばオックス・ファイアのボディが見かけ倒しでないことを教えてやる!!」

 

「うわぁ……」

 

「ガッハッハ!ビビってるのか?」

 

「オイ、スバル、ビビってんじゃねぇよ!」

 

「うん、わかってるけど……」

 

 反応しきれるか……?オックスの突進を……!いきなりベルセルクのカードは切りたくはない、けど……

 

「取り憑く相手はしっかり選ばねぇとな、ウォーロック!キサマを倒して『アンドロメダのカギ』は返してもらうぜ!」

 

「チッ、やはりこの星を攻撃するつもりか……!」

 

「王のメイレイは絶対だ!地球攻撃作戦のノロシとして、ゴン太の体を使い、この町を破壊してやるのさ!……ゴン太……いや、オックス・ファイア!そいつを倒せ!そいつを倒せば委員長もオマエを認めてくれるぞ!!」

 

「ブルルルルッ!!オレは強いんだ!オレの強さを見せつければ、委員長はオレを必要としてくれるんだ……!ブルオォォッ!!」

 

「来るぞ、迎え撃つぜ!」

 

「ああ、二人の命がかかってる……ここは引けない!……行くよロック!ウェーブバトル、ライドオン!」

 

「ブルルルォォォッッ!!!」

 

 不意をついての突進!?いや、無我夢中なんだ!単純だけど、速い!……技を越えた純粋なパワー、それが力だ!なんて言いそうなスタイル、まさしくNOUKIN!

 だが対策は既に用意してあるぞ!………今はまだ来てないけどね!

 

 頭のポジションを下げた前傾姿勢のまま脇目も振らず突っ込んできたオックス・ファイア。既に回避出来るタイミングじゃない!

 …先ほどデリートした、モエローダーからリザルトで手に入れたモエリング1を発射する。ダメだ!炎を扱うだけあって耐火性能も高い……!

 クソッ!こうなったら、アレをやるしかない!

 

「うおぉぉぉぉぉっ!!!」

 

 オックス・ファイアに向かって走りだし、接触する直前にスライディング……!オックス・ファイアはその巨体故に、前傾姿勢でも股下に空間が出来る……そう、人間大のもやし一本分程度のね!

 

「ハァッ!ハァッ!ハァッ!」

 

「オイ、大丈夫か、スバル!?」

 

「ハァッ……うん…さっきのはちょっとヤバかったよ」

 

 ボクだってやりたくなかったさ!

 

「パワーでは圧倒的に不利なんだ……今回は回避主体でいくよ、ロック!」

 

「おう!」

 

 さて、なんとかやり過ごしたファーストコンタクト、次も上手くいくとは限らない……行動の前兆を見極めなくっちゃ……

 

 恐らくゴン太が変身しているオックス・ファイアはまだウェーブバトルに慣れてない、はず。意表を突ければ、装甲の薄い場所に当てることも出来る、と思う。

 ……ウルフ・フォレストと、違ってシールドでガード出来ないのがキツ過ぎるぞ……!

 

「ブルルルォォォッッ!!!」

 

「オイオイ、さっきの芸当で相当お冠になったようだぜ!」

 

 またさっきの前傾姿勢で突進してくる……今度は肘の炎が噴出してる!?……まさかスラスター代わりにしただって!?ゲームでは常に噴出してたから、使い方なんて考えもしなかった……!ボクの油断か……!

 

「ロック!」

 

「おうよ!いくぜぇぇっっ!!」

 

 バトルカードをセレクトし、ウォーロックアタックを発動。ロックの超スピードによる突進で、オックス・ファイアの左方に移動し、展開したロングソードで右足を切り裂く……!

 

「ブルルルッ!?」

 

 右足を切られたことに気づいたオックス・ファイアだが、HPプログラムによる再構成で瞬時に戦闘体が修復される。……ボクたち電波体に共通する、HPが切れない限り大きな傷は再構成する能力だ。これによってソードで切り裂いても、ソードは相手の体を貫通し通り抜け、HPが削られる……やはり浅い!

 

「ブルルルォッ!」

 

 攻撃に気付いたオックス・ファイアが突進を無理やり中止し、拳を振り上げボクをミンチにしようと振り下ろしてくる……!ここだっ!

 

「ロック!」

 

「わかってる!」

 

 ウォーロックアタックで一瞬だけ加速、振り上げた拳にヒートアッパーをお見舞いする……ウルフ・フォレストとの戦いが役に立つとは……って倒れない!?

 

「ブ、ブルルッ!」

 

 踏みとどまりやがった!

 

「クッ!」

 

 仕切り直しか……このままじゃあ……!

 

……カスタムゲージが満タンだ、あのバトルカードが来てくれれば……!

 

「来たか!……再度攻撃を仕掛けるよ、ロック!」

 

 ウォーロックアタックで今度は真正面に躍り出る!

 ……コイツを食らわせれば終わりだッ!右腕に展開し、フックの構えをとる……!

 

「ブルルルォォォッッ!!!」

 

 何だっ!?……ってまた肘のスラスター!?手を組んで正面に向けてきた……!?まさか!

 

「ぐぁっ!熱いっ!」

 

 ……あの牛野郎、正面に全開で爆炎を噴出させやがった!これがファーストダメージ……!痛い、痛いじゃないかァッ!!しかも炎の噴出で若干だが後方に飛んでいる……!まだ、射程圏内!

 

「うおぉぉ!!」

 

 右腕に展開したバトルカード「バブルフック2」を発動!フックは空振りだが、腕の振りによって発生した泡がオックス・ファイアを包み込む……やっと、捕まえたァッ!……バブルに閉じ込めたオックス・ファイアの背後に回り込み、ベルセルクのカードフォースを発動。

 

「行くよロック、全開だ!」

 

「おう!トドメだぜ!」

 

「サンダァッボルトッブレイドォッ!」

 

 身動きの取れないオックス・ファイアを左右から素早く二度切り裂き、正面から剣の振り下ろしとともに特大の雷をぶち落とす!HPが0を刻み、デリートに成功したことを知らせてくれる。

 

「ロ、ロック……!!オレ様を……倒したからといっていい気になるんじゃ……必ずや……ア…ドロ…ダの…グォォッ!」

 

 そこまで喋って限界だったのか、オックス・ファイアの電波変換は解け、オックスは消えてしまった…ゴン太のリカバリーを急がないと!

 

「リカバリー30!」

 

 オックスと融合していた名残なのか、ギリギリで通じたようだ…ああ…もう疲れた……ベルセルクを解除する。

 

「勝ったね、ロック」

 

「へっ!宿主勝負はオレに軍配が上がったようだな……スバル、オレたちのチカラはどうだった?今までで一番苦戦しただろ?だが、勝てた。あんな巨体を相手にしてだぜ?やっぱ最高だよ、オマエ!」

 

 それコーヴァスの考え方じゃない!?

 

「よし、全部解決したし、そろそろずらかろうぜ!こいつらはオックスが連れ込んだヤツらだからな……その本人がいなくなった以上、直に現実世界に戻るだろうよ」

 

「そっか、よかったよ……あーあ、安心したらなんだかお腹すいてきちゃった!母さんに夜食頼んだら作ってくれるかな……?」

 

「オイオイ、今からメシの心配かよ……」

 

 って、ああ、そうだ。アンドロメダのカギについて聞いておかないと……。

 

「ねぇ、ロック。ところでオックスが言ってた『アンドロメダのカギ』ってなんのコト?」

 

「…………へっ、ヤツらの大事なモノさ……」

 

「ふーん、それを持ってるから、FM星人が襲ってくるってこと?」

 

「だろうな……だがオレがカギを手放したらもっと大変なことになるぜ……」

 

「そっか……」

 

「またFM星人が襲ってきたらさっきみたいに闘って倒せばいいじゃねぇか。……オレたちなら出来るぜ。ベルセルクのチカラもあるしな……」

 

 うーん、確かにベルセルクはチート過ぎるんだよな……使っててわかるけどスペックが違い過ぎる……試さなかったけど、オックス・ファイアの突進も正面から止められるんじゃないかなぁ……

 

「うん……いいよ、手伝ってあげる。その代わり、ボクと友達になってくれる?」

 

「…へっ!オマエは相棒にわざわざ友達になろう、なんて誘うのかよ?」

 

「ふふっ、そうだね……ボクが変だったよ」

 

「どうした?いつものスバルらしくないぜ?……なら、ここは景気づけに新しいウィルスでも狩りにいくか!」

 

「ちょっと待って、もうクタクタだよ……」

 

 少しは鍛えないと。……この体は体力がちょっと低いのが難点だね……さぁ、帰ろう……

 

「う、うーん……ゴン太は……」

 

 委員長さんが起きた……!?ヤバい、今正体を知られていいんだっけ!?

 

「……彼なら大丈夫、元にもどったよ」

 

「ア、アナタが、助けて……くれたの……?アナタは……誰……?」

 

 大分意識が朦朧としている……これなら大丈夫かな?

 

「ボクは……ロックマン!じゃあね。……最後まで面倒見れなくてゴメン!」

 

 バイザーで鼻辺りから上は見えないが、精一杯笑顔と謝意のある声をだし、ボクはウェーブアウトした。

 

「……ロックマン」

 

 ーーコダマタウン・夜ーー

 

「二人とも、起きなさい!……起きなさいってば!」

 

「う、うーん」

 

「ア、アレ…?」

 

「やっと目が覚めたみたいね……ワタシを守るはずのアナタたちがいつまでも伸びててどうするのよ!」

 

 ここで、白金ルナは直立不動となった牛島ゴン太に目を合わせる。言わなくてはならないことがあったからだ。

 

「ゴン太!!」

 

「い、いいんちょう……アレ……?オレ、なんでこんなトコロに?」

 

「アナタ、ゴン太よね?なんか夢の中で大きな怪物になってた気がしたけど……」

 

 おそらく夢ではないと当たりをつけながら、ゴン太に問う。

 

「いいんちょう、オ、オレ…いいんちょうにかくしてることがあって……じつはさいきん起こったいろんなモノがこわされたじけん。……たぶん、はんにんはオレなんだ……この間いいんちょうにおこられた後、おかしなマボロシを見て……牛みたいな怪物がオレにチカラを貸してくれるっていうんだ……いいんちょうにブラザーを切られたくなかったらチカラを見せつけろって……そうすればいいんちょうもみとめてくれるって……!」

 

「そう……そうだったの……」

 

「その日から、夜になるとなんかウズウズして……外をうろついていたんだけど、そのときに赤いモノ見るとアタマがまっしろになって……気がついたら家のふとんで目が覚めるんだ……ずっと夢だって思ってたけど……部屋にこわれたクルマのパーツとか、レンガのかけらが落ちてて…………ご、ごめんなさい……ウグッ、ウグッ…オ、オレ…みんなにあやまるから……ブラザーは……切らないで……」

 

「フン!」

 

「い、委員長……」

 

「ゴン太!キザマロ!明日は6時30分に迎えに来てちょうだい!……ゴン太が壊したモノを修理して回るわよ!………遅れたら、承知しないから!ったく、手間のかかるブラザーを持つと大変だわ。…………それとゴン太、アナタのチカラはもっとワタシの役に立つように使いなさいよね!」

 

「い、いいんちょう……」

 

「うぅ、ううぅ……ゴン太君、よかったです……!」

 

 

 

「いいんちょう……オレ、一生ついていくぜ!」

 

「僕もお供させてくださいね!」

 

「コラ、アナタたち、落ち着きなさい!暑苦しいわね!」

 

 

 

 

 

 ーー少し離れた木陰ーー

 

「うん、一応起きるまで見ておいたけど、特に何か起こらなくて良かった」

 

「スバルがそんなこと言うなんてな……明日は槍が降るぜ」

 

「ちょっと!酷いよロック!」

 

「フン!いつものコトじゃないか……それより、あのゴン太ってヤツ……チカラを誇示することでしか、自分の存在価値を表現することができなかったんだな……そしてオマエに足を払われて、自分の居場所を失いかけた……」

 

「どうしたんだい、ロック?」

 

「いいから聞け……!…………自分の居場所を失いたくないと、必死だったところをFM星人に利用されたんだろうよ……FM星人はココロに孤独を抱える人間に取り憑く。孤独を抱えた人間は自分のココロに空いたスキマを何かで埋めたいのさ。……そしてオレたちFM星人はそのスキマに入り込むわけだ。1人じゃ自分のスキマを埋めることすら出来ないんだ。人間ってヤツは弱い生き物だぜ……とはいえオレたちも地球人と融合しないと、本来のチカラが出せねぇ……自分の居場所ってヤツが必要なのは、地球人もFM星人も同じなのかもしれないな……」

 

「自分の居場所、ねぇ……」

 

 …ボクも本来この世界にいるべきココロじゃないんだ。一体どれだけのスキマが空いてるんだろうか……

 

「人と交わるから、守らなきゃいけないモノが増えるんだ。だけどボクはまだそれらを守れる強さを持っていない…………」

 

 何か求道者みたいな感じになってるけど、これでいいのかな?

 

「……………………」

 

 ロック黙っちゃったじゃないか!あー、もう!

 

「ほら、ロック!早くウチに帰ろう……ボクもうお腹空いちゃったよ」

 

 ーー星河家ーー

 

「ただいま、母さん」

 

「お帰りなさい、スバル」

 

 うん、やっぱり帰りを待ってくれてる人がいるってのは良いことだ。

 ……スバル君のお父さんもそう思ってたのかな?




一応、オックスにベルセルクの情報を与えないため、バブルに閉じ込めて、背後から斬るという手段を取っています。

バブルフック・・・空白の時間に二人が行っていたのは、ドリームアイランドでした。次回は事件の前日にバブルフックを取りに行く話を投稿したいと思います。

・・・ゴン太の話なのにゆっくり見てたら泣けてきてしまった……やっぱり委員長は最高ですね!

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