私が十五になった年だった。
常連客でそれなりに歳の近いお妙ちゃんとはよくお喋りをする仲で、私にとってはお姉さん的な存在なのだが、私のこれまでの境遇を知った彼女はいやに熱心に、兄を探すように言った。
彼女自身、弟がいるからそう考えてしまうのだろうが、少なくとも兄がお妙ちゃんほど私の事を気にかけていたようには思わなかったし、ほとんど会う機会などなかったから、兄にしては、私が生きていようが死んでいようがさして問題ではないような気がするのだ。
私がいくらそう訴えたところで、お妙ちゃんが引くはずもなく、半ば強制的に万事屋なるものに連れて行かれた。
「ねえお妙ちゃん…万事屋って何?なんで私お妙ちゃんに引きずられてるの?」
「万事屋は新ちゃんの仕事場よ。名前の通りなんでもやるわ。どーせ暇してるだろうし、最近金欠で困ってるって聞いたからちょうどいいわ!」
いやいや。ちょうどよくない。要するに私は体のいいカモか。
「銀さーんー!」
ぴーんぽーん。
インターホンの音が間延びして響いた。返答はない。続けて、お妙ちゃんの細い指がもう一度インターホンを押した。
ぴーんぽーん。
これまた返答はない。
「留守みたいだね。仕方ないからまた出直そ…」
ガチャッ。
お妙ちゃんが扉に手を掛けて、昼間にも関わらず鍵がかかっていることを確認した瞬間、ドアを破壊した。迷いなく破壊した。
「どわぁぁぁぁああ!!何すんだお前!」
「あら、銀さん、いたんですか?昼間から鍵がかかってるから、てっきりいないのかと」
吹き飛んだ扉の前で尻もちをついている銀髪の男性は、顔を青くして引きつった顔で愛想笑いを浮かべた。それに釣られるようにお妙ちゃんも笑った。
にっこり笑ってるけどお妙ちゃん…笑えない…笑えないよ…。
「せっかく依頼人を連れてきたのに、居留守ですか?」
「あぁ…月末だから、ババァが来たのかと思ってよ。わりーわりー」
「また家賃滞納してるんですか?まったくもう…」
呆れたように額に手を当てるお妙ちゃんを他所に、銀髪の男性は、何を考えているのかよくわからない顔で家の中を指差した。
「ま、とりあえず、上がれよ。依頼だろ?」
「はい」
促されるままに草履を脱いで、家に上がろうとしたとき、あ、そうだそうだ、と言って私を振り返った。
「俺、万事屋やってる坂田銀時。よろしくな」
「…よろしくお願いします」
いくらお妙ちゃんの知り合いで、お妙ちゃんが信頼している人だと言えど、家賃滞納した挙句、大家さんに居留守を使おうとした人って…どうなのだろう。
いまいち信用に値しない人だけど、この人に任せて本当に大丈夫なのだろうか。
十六歳→十五歳に変えました。