私立幻想学園   作:黒鉄球

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 失踪しかけた黒鉄球です。もうヤダ受験とか考えた奴鬼畜すぎ。ほんともう……おくれてすんませんした。


4話 : 物語の始まりは突然に

 物語の始まりというのはいつも突然だ。アニメや漫画の連載のように予告されることはなく、予期せぬ形で始まる事の方が多い。そのせいで心の準備だとか備えることがほぼほぼ出来ない。そう、例えば………。

 

 「……………」

 

 「……………」

 

 そう、例えばクラスで人気の高い人物と狭い部室で二人きりの空間になっている事とか。いや、そんな状況ほぼほぼねぇよ。なんでこのタイミングで来たんだこの人は。気まずいにも程があるだろうが。

 

 「あの………」

 

 「あ、はい」

 

 突然話しかけて来たこいつは我が1-2組で……多分1番人気だと思われる人物。名前は………忘れた。だがその銀髪は見覚えがあるぞ。見覚えてるのだが人の名前と顔を覚えるのは苦手なもんで正直ピンとこない。おい、モジモジするな。したいのはこっちだ馬鹿野郎。

 

 「ここって学園生活支援部よね?依頼があって来たのだけど……あとの二人はどちらに?」

 

 粛々と話を進める銀髪美少女。どうやら飲み物を買いに飛び出した霊夢と魔理沙が目的らしい。ごめんな、俺が残ってて。でも仕方ないんだ。あいつらが「依頼こないし暇だから飲み物買いに行ってくる」とか言って出てったからな。俺は悪くねぇ。あ、因みに構図としては四つの机を向かい合わせにして俺の前に依頼者たる彼女が座っている。小学生の時の給食の時の形だ。

 

 「悪いな。あいつらは飲み物探しの旅に出たんだ。タイミングの悪いことにな。だからもう少し待っててくれ」

 

 俺も淡々と話す。しかし内心は心臓ばくばくである。割と本気でキンチョールしてる。ヤベェわ殺されちゃいそうだわ。そんな事を知らない依頼者は「そう」と一言だけ言って背筋を伸ばし、目を瞑って待機した。その姿は淑女としか見えなかった。こいつ育ちいいな。流石はスカーレット財閥のご令嬢の側近だな。それに比べて俺は漫画を片手に適当にやってる。黙々と漫画を読んでいるとドアが開く音がした。ふぅ、ようやく来たな待ちくたびれたぞ。

 

 「……………」

 

 「……………」

 

 「おい、何フリーズしてんだよ早く入ってこいよ」

 

 何故か固まる二人。まぁ分からんでもないが。何せ期限1週間を設けられた中で既に4日経ってるのだからそりゃあ依頼者が来たらフリーズするよな。俺はしないけどな。そんな二人を横目に依頼者たる彼女が口を開いた。

 

 「依頼…………お願いできるかしら?」

 

 「あ、あぁ、勿論だぜ!」

 

 漸く現実世界に戻って来た魔理沙。霊夢は………いつの間にか俺の隣に座っている。何こいつエスパーなの?白井黒子なの?斉木楠雄なの?いつ隣に来たんだよお前。口から胃袋が出るかと思ったわ。誰がラクダじゃ。

 

 「それで何の用かしら?」

 

 心の中でノリツッコミをしていると、隣にいる霊夢が依頼についての質問をした。すると依頼者は口を噤んだ。顔を落としていることからかなり深刻なことが伺える。俺も霊夢も黙って彼女が話すのを待った。暫くして漸く彼女は口を開いた。

 

 「お嬢様を助けて欲しいの」

 

 「「「……はい?」」」

 

 ほらな?物語の始まりってのはいつも突然だろ?

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 お嬢様を助けてほしい。銀髪美少女メイドこと十六夜咲夜(名前はさっき霊夢に聞いた)はそう言った。何から救うのかと尋ねたら意外や意外、なんと親の束縛から解放してほしいとのことだった。どうやらお嬢様ことレミリア・スカーレットは次期スカーレット家当主として英才教育を【強制的】に受けさせられているらしい。彼女の父親の方針だとかなんとか。そして現在大きな紅色の館の門前にいる。それも俺と十六夜の二人で執事とメイドの格好で(・・・・・・・・・・)。ハァ、なんでこんなことに……。

 

 

 

 

 

 

 

 

          ―――――――――――溯る事一時間前――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 「お嬢様を助けろってどういうことだぜ?」

 

 至極全うな質問をする魔理沙。まぁそりゃそうだ。いきなりそんなん言われてもそう答えるしかないもんな。俺だってそうする。見ろよ、霊夢なんて口をあんぐりあけて左眉毛が上がって某名探偵みたいな顔になってるから。

 

 「言葉の通りよ。お嬢様を助けてほしいの」

 

 「なにから?」

 

 「スカーレット家現当主であるディオラ・スカーレット様からよ」

 

 いきなり話がぶっ飛んだぞ?ディオラ・スカーレットなる人物からレミリア・スカーレットを助けろ?それに今現当主って言ったぞこいつ。ってことはあれだろ。父親から娘をぶんどれって事か?無茶言うなよ馬鹿野郎。ぬらりひょんの畏れじゃないとほぼ無理だわ。

 

 「「………」」

 

 ほら話がでかすぎて霊夢も魔理沙もFREEZEした。一日に二度も固まるとか普通ねぇぞ。れいとうビームかふぶきを食らったら二回くらいは固まるが。エンペルト!れいとうビーム!!……懐かしいな。

 

 「あの…やはり無理……でしょうか」

 

 霊夢と魔理沙の反応を見て申し訳なさそうにいう依頼者。ここははっきり言って断るのがbetterでbestなのだろうが一つだけ気にかかったことがあったから聞いてみた。

 

 「なんでそれを俺らに依頼をしたんだ?明らかに俺たちの、子供の関わるレベルを超えてると思うんだが。それにこういうのは適当にそれっぽい理由をこじつけて警察にでも行けよ」

 

 「それは………」

 

 俺の一言でまた俯く依頼者。いや、普通俺らみたいなやつよりも警察だとかメディアだとかそっち方面のプロの方が100%マシだ。いい仕事をしてくれる。だからこの質問をぶつけた。なぜ俺達に依頼したのか(・・・・・・・・・・・)、と。しかし彼女は口を開かなかった。だから俺は、少し酷ではあるが無理やりにでも吐かせる方法をとった。

 

 「なにも言えねぇんならこの話は蹴る。そもそもとしてあのお嬢様のお家事情なんざ知ったことじゃねぇからな」

 

 「!」

 

 俺の言葉に反応して目を細める依頼者。やはり何か織行った理由があってここに、ただの高校生たる俺達に依頼してきたんだろうな。それの証拠に一瞬絶望した顔をした。だが理由を直接聞かないと少なくとも俺は手助けはしない。一瞬正気を取り戻した魔理沙が俺に突っかかろうとしたが霊夢がそれを制止した。俺はそれを横目に更に言葉を続けた。

 

 「お前が何を思ってレミリア・スカーレットを救いたいのかは知らんが俺には関係ない」

 

 より残酷に、そして淡々と。

 

 「そ ん な に 救 い た い な ら て め ぇ で な ん と か し ろ よ」

 

 「それが出来てたら苦労はしないわよ!!!!」

 

 その瞬間依頼者は叫び声をあげ、俺の胸ぐらをつかんできた。それも涙を流しながら(・・・・・・・)

 

 「あなたに何が分かるの!?警察や弁護士に駆け込んでも拒絶され、スカーレット家には恩があるから逆らえないと蹴られた私の気持ちが!お嬢様がどんな思いで学園生活を送ってきたのか!どんな思いで部屋に閉じ込められて教養を強いられているのか!そんなお嬢様のお側でただただ見る事しか出来ない私の気持ちが!あなたなんかに!何…が……分かると…言うの………」

 

 彼女の叫びは……間違いなく本物だ。多分彼女が抱えていたこの感情は一年やそこらの感情じゃない。恐らく十年、それくらいのものだろう。それを証拠に彼女の涙は自分に対する怒り、俺に対する怒り、そして彼女がレミリア・スカーレットに対する忠誠心の深さを表していた。俺が悪態をつかなけりゃこうして本性を現さなかっただろう。俺達の前で、本音を漏らすことはなかっただろう。だが、それじゃあ意味がない。彼女の深層心理にある「本気度」を確認するためには、追い込んで、怒らせて、本音を出させるしかない。だから俺は追い詰めた、怒らせた、泣かせた、喚かせた。そうでなければ俺達を頼った理由が聞けないから。

 

 「正直、俺にはわかんねぇよ」

 

 「!!」

 

 更に力を込める彼女。でも俺は続ける。なぜなら俺の意志は初めから決まってたからな。

 

 「後継者だとか、お前らの気持ちだとか、そういった小難しいことは俺には分からん。どれだけの苦にあったのかとかどれだけの年月気を揉んでいたのかとか俺には分からん。でも、俺は似たような状況にいた奴を知ってる。親に強要され、つらい思いをしたどっかの巫女を。俺はそん時、彼女を救いたいと思った。そして今まさにその気持ちがこみ上げてきた」

 

 更に言葉を続ける。

 

 「だからその依頼、しかと承る。いいだろ、魔理沙部長?」

 

 目線を魔理沙に逸らして許可を得た。魔理沙はへへっ、と笑ってその依頼を受理した。正直彼女に対する罪悪感でいっぱいだがそんなことは今はいい。後でDOGEZAをかませばいい。

 

 「それで、策はあんのか?」

 

 「え、ええ。それについては……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 「なぁ十六夜」

 

 「なんでしょうか?」

 

 「なんで執事?」

 

 「作戦だからです」

 

 「じゃあ俺じゃなくて霊夢をメイドにしろよ!なんで俺が正面切っていかにゃならんのだ!」

 

 「……私を泣かせたバツです」

 

 「うぐっ……ほんと、すまんかった」

 

 いや、ほんとおかしいから。作戦内容マジでヤバいから。まさかの堂々と侵入してレミリア・スカーレットを部屋から拉致って家出させよう大作戦!……マジであほすぎる。あほガールでもかこんなの思いつかねぇよ。ってなわけで今や新米執事になりきって反省している俺。まったく、霊夢が「いや、あんたの方が強いんだからあんたが逝きなさいよ。それに咲夜の事泣かせたでしょ?詫びで行ってきなさい」とかいうからお蔭でこんなことに。ん?漢字?気にすんな、霊夢の戯言だ。

 

 「まぁ、結果として受理してくれましたから良いですけど」

 

 「へいへい。んで、俺はどうすればいいわけ?」

 

 十六夜の説明によるとまずはメイド長である十六夜が俺を新米執事だと言って館内に入れ、その後十六夜は外へ。俺は掃除と称してお嬢様ことレミリア・スカーレットの部屋へ侵入、拉致、そして撤退という算段だ。部屋までの道は十六夜がトランシーバー越しで案内してくれる。これは魔理沙の実家である「霧雨道具店」から貰ってきたものだ。親父さんに事情を説明したらすんなりくれた。逃げ道は今霊夢と魔理沙で確保中。連れ出す方法は俺に任せるらしい。おいおいこんながばがばな策でいいのかよマジで。因みに懐には脱出用のロープしかない。怪盗キッドを見習え!用意周到に!グライダーを用意しろよ俺!

 

 「……ふふっ」

 

 「んだよ、急に笑い出して」

 

 「いえ、その燕尾服が思いのほか似合ってたものですから。期待してますからね?」

 

 ニコッと笑って何故か俺を褒める十六夜。……その笑顔は卑怯だぜ。だって可愛かったもん萌え死にするかと思ったわ。

 

 「……早く行こうぜ。脱出経路はもう確保されてるだろうしいつまでも呆けてるわけにはいかねぇからな」

 

 「ええ、それでは参りましょうか劉斗」

 

 「……了解したよメイド長」

 

 俺達学園生活支援部、[お助け隊]の物語が幕を開けた……!!

 

 

 

 

 

 

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