遊戯王VRAINS 幻影の咆哮~青き天使との日常~ 作:kajoker
ここまで来れたのはいつもこの小説を読んで下さっている皆様のおかげです!ありがとうございます!
というわけで、今回はUA10万突破記念の話しになります!
今回の話しは今までの突破記念の話しのように明るい話しではなく、少々暗い話しになっているかもしれません。
それでは、本編をどうぞ!
これはあり得たかもしれない可能性の物語、果たして、その先に待つのは希望か絶望か…それは誰にもわからない。
では、見届けよう、この可能性の物語を。
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「葵ちゃん…入るわよ」
「…入って来ないでください」
「…わかったわ」
そう言って、花恋さんの声は扉から消えていった。
私が今いるのは侑哉の部屋…私の大切な人で、大好きな人の部屋。
ただ、目の前に居る侑哉はベッドで寝たまま、目を覚まさない。
どうして侑哉がこんな状態になっているのかというと、ハノイの塔事件の影響だ。
私はプレイメーカー達とハノイの塔を止めるために戦った。
侑哉はダメージが快復していなかったから、私や花恋さん、そして、レイの意見でリンクヴレインズに行くのを禁止した。
…だけど、私がスペクターにデュエルで負けたせいで侑哉は私を助ける為にリンクヴレインズへと来てしまった。
そして、私の代わりにスペクターとデュエルをすることになり、結果として侑哉はスペクターに勝利した…でも、そのデュエルのダメージが大きく、現実の侑哉の体にまで影響を及ぼし、侑哉は意識不明の状態になってしまった。
…あの時、私がスペクターに勝っていれば!侑哉はこんな風にならずに済んだのに!
結局、ハノイの塔はプレイメーカーによって止められ、ネットワーク世界は救われた…でも、そんなことはどうでも良い。
「…侑哉、あれからもう1ヶ月経ったんだよ…もうすぐ夏休みに入るし、侑哉と色々なところに行きたいな…だから、目を覚まして…」
そう言っても、侑哉は何も返してはくれない…わかってはいるけど、希望を捨てられない。
いつもみたいに、まるで何事もなかったかのように目を覚まして、私に笑いかけてほしい。
心配かけて悪かったって、私を抱きしめて、優しくキスをしてほしい。
「侑哉…侑哉…どうしてこうなっちゃったんだろ…」
気づけば、私の頬には大粒の涙が伝っていた。
感情が抑えきれなくて、涙がとめどなく溢れてくる。
「侑哉…あなたの声が聞きたいよ…笑顔が見たい、料理を一緒に作りたいし、デートだってしたいよ…まだまだやりたいことがいっぱいあるのに」
もし、あの時、私がスペクターに勝てていたら…そうすれば侑哉は…
もし、あの時に戻れたなら…そんなあり得ない考えが浮かんでくる。
だけど、もし、私に侑哉の持つ覇王の力があればカードの力を使って過去に戻れるかもしれない。
そう何度も、もしもの可能性について考えては現実に引き戻される。
結局、どれだけもしもの可能性について考えてもそれはifの世界でしかない。
だから、侑哉が目を覚ますことはない、それが現実…
「ううん、違う…まだ、希望を失っちゃダメよね…侑哉は絶対に目を覚ましてくれる」
私はそう自分に言い聞かせるように呟き、侑哉の様子をもう一度見直すことにした。
自分の中の恐怖に抗うように。
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『葵さん、ずっとあの調子なんですか?』
「そうなの、私が部屋に入ることすら許してくれなかったし」
『そうですよね…私だって侑哉さんが目を覚まさなくてすごく悲しいですから…葵さんは尚更ですよね』
レイちゃんはそう言って、悲しそうな表情を浮かべる。
それも当然だ…だって、今までだって侑哉は意識を失うことがあった、でも、短期間で目を覚ますことが多くて私達は心のどこかで侑哉ならすぐに目を覚ますと思っていたのかもしれない。
だけど、今は違う…侑哉はあれから1ヶ月も目を覚ましていない。
それに…
「レイちゃん、また少し体が薄くなってきたわね」
『はい…多分、侑哉さんが長い間目を覚ましていない影響だと思います…もうすぐ私の姿が皆さんから見えなくなるかもしれません』
「そう…それなら尚更、早くあれを作りあげないと…レイちゃん、頼んだものは用意できた?」
『はい、それは用意できました…でもこれでうまくいくんでしょうか?』
「やってみる価値はあるわ……まぁ、確証は持てないけどね」
そう言って、私はレイちゃんから例の物を受けとる。
…これで侑哉を救えるかもしれない。
だけど、これはあくまで推測に過ぎない…失敗するかもしれない。
それでもやるしかない…侑哉と葵ちゃん…それにレイちゃんを助ける為に。
「それじゃあさっそく取り掛かりましょう!」
そう言って、私は作業に取り掛かかることにした。
希望への道標を示す為に。
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「う…ん…あれ?もしかして寝ていたの…」
目を覚ますと、辺りが夕日に沈んでいた。
どうやら、侑哉の様子を見ている内に寝ちゃったみたいね。
「葵ちゃん!ちょっと来て!」
私がそんなふうに考えていると、扉の外から花恋さんの声が響いた。
「何ですか?」
「…良いから、着いてきて!そこで詳しく説明するから」
「え?ちょっと待ってください!」
そうして、私は花恋さんに言われるがまま、部屋から飛び出した。
「一体何ですか?花恋さん…」
「これを見て!」
そう言って、花恋さんは部屋の中央にある装置を私に見せる。
その装置は、以前、花恋さんが作った異世界に行くことができる装置に似ていた。
「これは…?」
「…タイムリープマシンってところかしら、これを使えば、侑哉が意識を失う前の時間に跳べるわ」
「え…?それって本当なんですか!?」
「本当よ…これを作るのは骨が折れたわ、前に作った異世界に行くことができる装置を過去へと跳べるように改良して、それに必要なエネルギーをレイちゃんに集めてもらったの」
「レイに…」
そう呟いて、辺りを見渡すと今にも消えそうなほど姿が見えないレイが目に入った。
「レイ…どうしたの?そんな姿になって…」
『私はもうすぐ皆さんの目から姿が見えなくなってしまいます、元々私が実体化できていたのは侑哉さんのおかげですから…』
「そんな…」
「…この装置を作った後、問題は過去に跳ぶ為のエネルギーをどうするか、それが問題だったの…そして、侑哉の精霊の力を借りることにしたの…だけど、私達じゃ精霊の力を使うことはできない、だからレイに侑哉の精霊の力を集めてもらったの」
「そうだったんですか…」
花恋さんの話しを聞いて、そう返すことしかできなかった。
私が失意の底に沈んでいる時に、二人は諦めずに侑哉を救う方法について考えていた…それなのに私は…
「葵ちゃん、これには私達の思いが込められているわ…これは謂わば私達の希望…そして、この希望を葵ちゃんに託そうと思っているわ」
「私に…」
「そう…これを使って、この結末を変えるの…これは他の誰でもない葵ちゃんにしかできないことよ」
「私にしかできないこと…」
…これを使えば侑哉を助けられるかもしれない。
侑哉が意識を失う前に戻れる装置…それは先ほど私が想像していた、もしもを実現できるもの。
だったら、私の答えは1つ…
「わかりました、やってみます!少しでも可能性があるなら私はそれに賭けたい!」
「そうこなくっちゃね!それじゃあ葵ちゃん、この装置を着けて」
そう言って、花恋さんが私に装置を手渡す。
そして、私はその装置を頭に装着する。
「頑張ってね、葵ちゃん…侑哉のことよろしくね」
「任せてください!私は絶対に侑哉を助けてみせます!」
私の言葉を聞いた花恋さんとレイは笑みを浮かべる。
この装置には二人の…ううん、二人と侑哉の精霊達の思いが込められている。
その思いに応えるためにも、私は過去へと跳ぶ。
「それじゃあ、装置を起動させるわ!」
「はい!」
花恋さんが装置を起動させると、視界が揺れた。
そして、徐々に意識が朦朧としてくる。
その感覚はリンクヴレインズにログインする時に似ている気がした。
待っててね、侑哉…あなたを助けて、私はこの結末を変えてみせる!
そう決意したのを最後に私は意識を手放した。
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「…はっ!こ、ここは?」
意識が覚醒し、周りを見渡す。
「ここは、侑哉の部屋…そうだ!侑哉は!?」
ベッドの方を見ると侑哉の姿はなかった。
…これは成功したの?
そんなふうに考えていると、扉の開く音が聞こえてきた。
「待たせてごめんな、葵…飲み物とか用意するのに時間が掛かっちゃってさ」
「侑哉…?本当に侑哉なの?」
「何言ってるんだよ、正真正銘、神薙侑哉だよ…寝ぼけてるのか?まだ眠いなら寝てても―――」
「侑哉!」
気づけば私は走り出していた。
そして、そのまま侑哉へと抱きついた。
「ちょっ!?危ないって…どうしたんだよ、急に…」
侑哉の声が聞こえる、侑哉の体温を感じる。
たったそれだけのことなのに嬉しくて涙が溢れてくる。
生きてる…侑哉が生きてる。
もちろん未来でも死んではいないんだけど、今みたいに侑哉が生きていると実感はできなかった。
だから、今のこの瞬間が嬉しくて堪らない。
「良かった…本当に良かった…!」
「…よくわからないけど、安心してくれ…俺はここに居るからさ」
そう言って、侑哉は荷物を持っていない右手で私を抱きしめる。
それが嬉しくて、私はついに泣き出してしまった。
普通なら意味のわからない状況なのに侑哉は私が泣き止むまで、ずっと抱きしめてくれた。
「落ち着いたか?」
「う、うん…ごめんね、急に泣き出したりして…」
「いや、別に気にしてないよ…それで、何かあったのか?さっきの葵の様子、普通じゃなかったし…」
侑哉はそう言って、私のことをじっと見つめる。
…やっぱり、侑哉には敵わないわね。
「…うん…信じられないような話しだけど聞いてくれる?」
「もちろん!当たり前だろ?」
「ありがとう…実はね…」
そうして、私はここに来るまでの経緯を侑哉へと話した。
私がスペクターとのデュエルで負けてしまったこと、そして、侑哉が私を助けるためにリンクヴレインズに来て、スペクターとデュエルをして意識不明の状態になったこと。
そして、その結末を変えるために花恋さんの作ったタイムリープマシンを使って、ここに来たことを話した。
「…なるほどな、時間軸的には明日、ハノイの塔が起動してリンクヴレインズがパニックになるのか…そして、ハノイの塔を止める為の戦いで、葵はスペクターに負けて、俺がスペクターと戦い、意識を失う…そして、その結末を変えるためにタイムリープしてきたと」
「うん、大体そんな感じ…」
「なるほどな…それにしても、やっぱり花恋はすごいな…タイムリープマシンを作るなんてさ…それにレイと他の精霊達にも感謝しないとな」
「っ!…こんな話し、信じてくれるの?」
「そりゃあもちろん信じるさ…葵がこんな嘘をつくとは思えないしな…それに、花恋ならタイムリープマシンぐらい作れそうだしな」
侑哉はそんな言葉を何てことのないように口にする。
そのことが嬉しくて、心の奥が温かくなっていく。
「お、やっと笑ってくれたな…」
「え…?」
「だって、さっきから全然笑ってなかったからさ…まぁ、未来でそういう経験をしたなら仕方ないかもしれないけどな…」
侑哉はそう口にして、少し間を空けてから言葉を続ける。
「でも、今の俺はこうしてピンピンしてるし、何も起きちゃいない…だからさ、笑ってくれよ…俺は葵の笑顔が大好きだからさ」
そう言って、侑哉は照れくさそうに笑みを浮かべる。
そんな表情を見るのも久しぶりで、もっと色んな表情を見たくなる。
もっと侑哉を感じたくなる。
「ねぇ、侑哉…」
「どうしたんだ?葵」
「キスしても良い?」
「直球だな…まぁ、それぐらいならお安い御用だよ」
侑哉がそう呟くと同時に、私と侑哉は唇を重ねる。
だけど、私はそれじゃあ満足できなくて、侑哉を感じていたくて…私は半ば侑哉を押し倒す形でもっと深くキスをする。
「侑哉…どうかした、の…」
私が侑哉とキスをしていると、扉が開く音が聞こえてきて、思わず視線を移す。
そこには、放心状態の花恋さんの姿があった。
「…あ、うん…えっと邪魔したわね…それじゃあ私は戻るから、後は若い二人で楽しんでね…本当にごめんね!!」
そう言って、花恋さんは足早にその場を後にした。
「………」
「………」
「ごご、ごめんね!!侑哉!!私、嬉しくて、つい…」
「…いや、大丈夫だよ!悪い気はしてないしさ…」
そう、少し照れくさそうな表情をしながら侑哉は言葉を紡いだ。
「そ、そう…?それなら良いけど…」
「…そ、そうだ!未来を変えるための作戦を考えよう!」
「そ、それもそうね!作戦を考えないと!」
そうして、お互いに赤面しながら未来を変える作戦を考えることにした。
「オホン…えっと、未来を変える方法としてはまず、葵がスペクターに勝つことが前提だ…それに関しては葵のデッキを編成すればなんとかなると思う…スペクターのデュエルについて知っている範囲で教えてくれないか?」
「わ、わかったわ…」
そうして、私はスペクターのデュエルに関して、知っている範囲で侑哉に話した。
「なるほど…サンアバロンのカードを中心とした防御タイプのデッキか…確かに、葵のデッキとは相性が悪いかもな」
「…うん、結局スペクターのライフを削りきれなくて負けちゃった…」
「…なるほどな、だけど逆をいえばサンアバロンの効果を無力化できれば倒せるな…よし、それじゃあ対スペクター用のデッキを考えよう!」
「うん!スペクターに勝って、侑哉を助けるためにも!」
「あぁ!そうだな!」
そうして、私達は私がスペクターとのデュエルで得た情報を基にデッキを編成した。
…これならきっと未来を変えられる、侑哉を助けて最悪の結末を変えてみせる!
私はそう強く思いながら、1日を終えた。
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――――侑哉を助けられる、そのはずだったのに
「嘘でしょ…」
何で?変えられるはずだったのに…侑哉を助けて、最悪の結末を変えるはずだったのに。
確かに、少しだけど未来を変えられた。
私はスペクターに勝った…だから、侑哉が意識を失う理由はないはずなのに…
「何で侑哉がまた意識を失ってるの?」
何で?どうして?どうしてこうなっちゃったの?
「…タイムリープマシン…花恋さんに作ってもらわなくちゃ…タイムリープマシンでもう1度侑哉を助けにいかなきゃ…」
助けなきゃ…助けなきゃ…タスケナキャ…
待っててね、侑哉…花恋さんにタイムリープマシンを作ってもらってまた助けに行くから。
何度失敗したって、何度だって助けに行く…未来を変える時が来るまで、何度だって。
だから、待っててね…私の大好きな人。
といった感じの突破記念の話しでした!
私はシュタインズゲートが大好きで、今回の話しはシュタインズゲートのような感じになってると思います。
それでは、今回はここまで!ここまでの拝読ありがとうございます!