遊戯王VRAINS 幻影の咆哮~青き天使との日常~   作:kajoker

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第54話後編です!

別の世界の自分から、未来を変える方法を教えられた侑哉…果たして、未来は変わるのか?

それでは、本編をどうぞ!


第54話 ~ある世界の物語 続(後編)~

「…あっちの俺は大丈夫かな?」

 

別の世界の俺へとメールを送ってから、しばらくしてそう呟く。

 

とりあえず、俺に出来るのはここまでだ。

 

後は、あっちの俺次第だ…上手く成功させろよ、神薙侑哉。

 

「侑哉?もしかして、さっき話してくれた別の世界の私達のことを考えてたの?」

 

「あぁ、上手くいってると良いんだけど…」

 

葵に尋ねられそう答える。

 

あっちの葵が元の世界に戻った後、しばらくして葵が目を覚ました。

 

葵はここ数時間の記憶が抜け落ちていたらしく、最初は混乱していたが別の世界の葵が来ていた話しをすると、納得してくれた。

 

「むぅ…」

 

「葵?何で怒っているんだ?」

 

「…別に」

 

「まさか、別の世界の自分に嫉妬してるとか?」

 

「………」

 

図星かよ…別の世界の自分に嫉妬か…うん、何というかそういう葵も可愛いと思ってしまう。

 

あはは…我ながら葵にベタ惚れしすぎじゃないかと思う。

 

「…心配しなくても、俺が1番好きなのは今、俺の目の前に居る葵、ただ1人だけだよ」

 

「…本当に?」

 

「こんな状況で嘘をつく必要はないだろ」

 

「…っ~!侑哉!」

 

俺の言葉に葵は顔を真っ赤にしながらそう口にする。

 

やばいな、葵が可愛すぎて、俺の理性が持つか心配になってきた。

 

…まぁ、ともかく頑張れよ、別の世界の俺…こっちはこっちで頑張るからさ。

 

俺はそんな風に別の世界の俺にエールを送りながら、自分の本能との戦いを続けることになった。

 

//////////////

 

「…そんな…また失敗した…せっかく別の世界の侑哉が力を貸してくれたのに…」

 

スペクターとのデュエルに勝利した葵は、倒れている俺の姿を見て、そう口にする。

 

…ごめんな、葵、これも未来を変える為なんだ。

 

今、まさに俺は意識を失っているフリをしている…罪悪感が半端ないけど、未来を変える為に必要なことだ。

 

「…まだ、こんなところで諦めるわけにはいかない!タイムリープマシンを使って、今度こそ侑哉を助けないと…待っててね、侑哉…絶対助けてみせるから!」

 

葵はそう言って、ログアウトしていった。

 

うわぁぁぁ!罪悪感が半端なさすぎるよ!申し訳なさすぎて、思わず葵にネタバレしそうになっちゃったぐらいだよ!

 

『侑哉さん、葵さんがログアウトしましたよ…もう起きても大丈夫です』

 

「あ、あぁ…何というか罪悪感が半端ない」

 

『あはは、確かにそうかもしれませんね…私も最初に聞いた時はびっくりしましたし』

 

そう言って、レイは苦笑にも似た微笑みを浮かべる。

 

別の世界の俺からメールを受けとった後、レイに作戦の概要を説明した。

 

最初こそ、レイは驚いていたが、ムービーメールを見せたら信じてくれた。

 

そんなこんなで、今に至るわけだ。

 

『そういえば、この後はどうするんですか?ログアウトして葵さんに真実を話すんですか?』

 

「…いや、まだ早い…1ヶ月間、リンクヴレインズにログインして、その後に話すよ」

 

『なるほど…確かに現実世界で1ヶ月も意識を失ってるフリをするのは不可能ですしね』

 

「あぁ、絶対どこかでボロが出るからな…もし、意識を失っていないと葵にバレたら今までの苦労が全て無駄になっちゃうからな」

 

現実世界で1ヶ月も意識を失ったフリをするのは不可能だ、だけど、リンクヴレインズにログインしている間は現実の俺は意識を失ったままだ。

 

これが、俺の考えた葵を騙す方法だ。

 

「この1ヶ月の間はレイ、お前に現実世界とリンクヴレインズを行き来してもらう事になるけど大丈夫か?」

 

『はい!お任せください!これは私にしか出来ないことですから!』

 

そう言って、レイは笑みを浮かべる。

 

そんな風に自身満々に言ってくれるなら安心できるな…本当にいつも頼りになるな、レイは…

 

『そういえば侑哉さん、ハノイの塔の影響でリンクヴレインズを復興させるためにリンクヴレインズを閉鎖する可能性が高いですけど…それはどうするんですか?』

 

「…さすがに閉鎖を止めることは出来ないから、リンクアクセスの力を使って、俺達専用の空間を作りあげるつもりだ…そして、そこで1ヶ月間過ごす」

 

俺の持っているリンクアクセスはあらゆるネットワークシステムを自在に操ることができる力だ、その力を使えば、俺達専用の空間を作りあげることも可能なはずだ。

 

まぁ、いくらアバターでも空腹とかは感じるだろうから覇王の力で非常食のカードを出したりして、過ごすしかないな。

 

はぁ、この作戦思ったよりも難しいな…俺がリンクアクセスや覇王の力を持っていなかったら不可能だったぞ…いや、持っていると確信していたからこそ、この作戦を考えたのか、別の世界の俺は。

 

「…なぁ、レイ…あっちの俺の印象ってどんな感じだ?」

 

『…あちらの世界の侑哉さんですか?そうですね……一言で言うならすごい人ですかね…』

 

「…うん、俺もそんな感じだ…ただ、正直心配にもなるんだよな…あっちの俺は凄すぎる…それだけに色々と苦労もあるんじゃないかってさ」

 

『そうですね…なら、今度は侑哉さんがあちらの侑哉さんを助けてあげれば良いんじゃないですか?』

 

「俺が…?まぁ、確かにあっちの俺を助けたい気持ちはあるな…うん、そうだな!こっちの問題が解決したら今度は俺があっちの俺を助けるか!」

 

『はい!今度は私達があちらの侑哉さんを助けましょう!』

 

「あぁ!」

 

まぁ、どこまであっちの俺の助けになれるかはわからないけど、助けてもらったお礼をしないわけにはいかないよな。

 

俺はそんな風に思いながら、1日を終えた。

 

/////////////

 

「花恋さん…タイムリープマシンは完成しましたか?」

 

「もちろんよ…ねぇ、葵ちゃん、本当に行くつもりなの?」

 

そう言って、花恋さんは心配そうに私を見る。

 

こうして、花恋さんに心配されるのは何度目だろう…タイムリープを繰り返していたせいで、もう正確な数なんてわからない。

 

諦めるつもりは毛頭ないけど、後何度繰り返せば私達の未来は変わるのかな…このまま、永遠に未来は変わらないのかな。

 

「…ううん!変えなきゃ!私は絶対に諦めない!」

 

そう言って、再び私は自分を奮い立たせる…必ず侑哉を助ける、それだけを思い続けて。

 

「…待てよ、葵」

 

「え…?」

 

聞き覚えのある声にタイムリープマシンを着けようとした手が離れる。

 

今の声は…!

 

「よっ、葵…えっと、ただいま?」

 

思わず後ろを振り返ると、私がずっと助けようとしていた…ずっとこんな風に声を掛けて欲しかった大切な人の姿だった。

 

「侑哉…!」

 

私はそう名前を呼んで、最愛の人を抱きしめる。

 

目の前が霞んで見えなくなる…あぁ、泣いているんだ…私。

 

そう思うと同時に、涙が溢れて止まらなくなる…とっくに涙は枯れてしまったと思ってた…何度もタイムリープを繰り返して、何度も侑哉の結末を見て、徐々に心が壊れていくのを感じていた。

 

だから、こうして涙が溢れてきて、ようやく私達の時間が動き始めたんだと実感できた。

 

「侑哉…おかえり…!」

 

「あぁ、ただいま…葵」

 

そう言って、侑哉は私を抱きしめて、私が落ち着くまで頭を撫で続けてくれた。

 

/////////////

 

「落ちついたか?」

 

「うん…ありがとう、侑哉…」

 

「それなら良いんだけど…」

 

「うぅ…また泣きそう…」

 

「え!?」

 

私の言葉に侑哉がそんな驚きの声を上げる。

 

しょうがないじゃない!侑哉とまたこんな風に話せるなんて夢にも思ってなかったんだから!

 

侑哉が居る…私の目の前に…

 

「グスン…侑哉…本当に良かった…良かったよぉ…」

 

「安心しろって!ちゃんと俺はここに居るから!だから落ち着け…葵」

 

「う、うん…わかってはいるんだけど…やっぱり…嬉しくて…」

 

ダメだ…また涙が出てきちゃう。

 

「…お疲れ様、葵…よく頑張ったな…お前が諦めなかったから、別の世界の俺も作戦を考えられたし、その作戦のおかげで俺達の時間は動き出したんだ…ありがとな、葵」

 

「うん…本当に良かった、諦めなくて良かった…」

 

もし、どこかで私が諦めていたらこの未来は訪れなかった…でも、そんな風に諦めずにいられたのは侑哉が居たから…諦めそうになった私を侑哉が励ましてくれたから。

 

「そうだ…結局、葵には作戦のことを話してなかったよな…聞きたいか?」

 

「…うん!聞きたい…聞かせてくれる?」

 

「あぁ、もちろんだよ!」

 

そう言葉を返して、侑哉は別の世界の侑哉が考えた作戦について話してくれた。

 

どうやら、別の世界の侑哉が考えてくれた方法は確定した過去を変えずに結果を変えるというもので、その為に別の世界の侑哉は私を騙す為に意識を失ったフリをするように侑哉へとムービーメールで伝えた。

 

それを聞いて、別の世界の侑哉が口にしていた言葉についてようやくわかった。

 

『それは、すべてが終わってからわかると思うよ…それまでのお楽しみさ』

 

本当にすべてが終わってからわかった…だけど、あえて、あのタイミングで私に話さなかったのは、別の世界の侑哉がムービーメールで言っていた通り、私に計画を知られると、計画そのものが成り立たなくなるからなんだと思う。

 

だからこそ、私には詳しい説明はせずに侑哉にムービーメールを送った。

 

「…なるほどね…本当に別の世界の侑哉には感謝しないといけないわね」

 

「あぁ、俺もそう思う…だから、今度は俺達があっちの俺に協力しよう」

 

「うん、そうね…でも、どうやって協力するの?」

 

「とりあえず、花恋に別の世界の俺に何かしらのメッセージを送れるようにしてもらうつもりだ」

 

「なるほど…確かにそれならこっちからあっちの侑哉達に色々とアドバイスが出来るわね!」

 

「そういうこと!正直、それ以外に俺達に出来ることって思いつかないしさ」

 

「確かにそうかもしれないわね…」

 

実際、侑哉の言う通り私達に出来ることはそれぐらいしかない。

 

「ま、この話しはとりあえず終わりにしてっと…今からどこかに行かないか?」

 

「…今日は良いわ…今日は侑哉と家でゆっくりしたいから…ダメ?」

 

「いや、それで良いよ…それじゃあ、今日は一緒にお家デートといこうか!」

 

「うん!」

 

 

―――こうして、私達の時間を越えた長い旅はようやく終わった。

 

ようやく動き始めた時間の先に何が待っているのか、それは誰にもわからない…だけど、今はこの幸せを噛みしめたい、そう思った。

 

「ねぇ、侑哉…」

 

「うん?」

 

「大好き…この世界の誰よりも、侑哉のことが大好き!」

 

「…俺も誰よりもお前が大好きだよ、葵」

 

//////////////

 

こうして、この世界は一つの結末を迎えた。

 

所謂、ハッピーエンドという形の結末で。

 

だが、救われた世界があるならば、救われなかった世界もまた存在する。

 

 

「…はぁ、嫌な夢を見ちゃったな…」

 

『マスター、またあの夢を見たのか?』

 

「そ、別の世界線の夢…いや、財前葵の夢かな…本当に迷惑な記憶…」

 

そう言って、少女は心底迷惑そうな顔をする。

 

その少女はダークナイトプリンセス、神薙侑哉を愛してやまない少女だ。

 

「この記憶のせいで、どれだけ私が嫉妬に狂いそうになったことか…まぁ、ある意味そのおかげで自我を保てたとも言えるけど」

 

『まったく、お前という女は…』

 

ダークナイトプリンセスの精霊である、オルフェゴール・ロンギルスは呆れたようにそう呟く。

 

「まぁまぁ、それよりも楽しみだね♪私がいきなり現れたら、侑哉はどんな反応をするのかなぁ♪」

 

『そもそも、あの少年がマスターを覚えているかはわからないがな』

 

「は?いきなり何を言い出すのかなぁ…侑哉が私を覚えていないなんてあるわけないじゃん…♪」

 

『っ…!』

 

ダークナイトプリンセスの急激な変化にロンギルスは思わずたじろぐ。

 

彼女の声音には明らかに殺意があり、それを隠すつもりもなく、笑みを絶やさない。

 

その光景がとても恐ろしいものに見えて、ある程度彼女のことを知っているロンギルスでさえ、恐怖した。

 

(…相変わらず神薙侑哉に関することには、過剰に反応を示すな…極力、マスターの地雷を踏まないように気をつけなくては)

 

『すまなかった…そうだな、マスターを忘れるはずがないな』

 

「当たり前でしょ?まぁ、今回は許してあげる…ふふふ、楽しみだなぁ…早く学校が始まらないかな…そうすれば毎日、侑哉のことを見ていられるのに…」

 

『マスター、お前は何故、あの少年に執着するんだ?言っておくが、あの少年を悪く言っているわけではない…むしろ、好感が持てる少年だと思っている…ただ、少し気になった』

 

「…侑哉が大好きだから…世界で1番大好き…侑哉さえ居てくれればそれ以外は何もいらない!世界が滅びたって良いし、他の人間がどうなろうと知ったことじゃない!侑哉は私の全てで、生きる意味…だから、侑哉を手に入れるためなら、手段を選ばない…世界を敵に回したって良い…侑哉の為なら私は魔王にだってなってみせる」

 

『わ、わかった…マスターが神薙侑哉に抱いている想いの大きさはよくわかった』

 

「そ、そう?私からしたらまだまだ語り足りないぐらいなんだけど…まぁ、準備もあるし、これぐらいにしておこうかな」

 

『あ、あぁ…』

 

(あれで語り足りないのか…)

 

そんな事を思いながら、ロンギルスは自らのマスターの本当の想いは何なのかと思考する。

 

もちろん、さっきの言葉にも嘘はないのだろう…だが、彼女の根底にあるのはまた別のものである気がしてならない。

 

思うに、彼女は神薙侑哉に助けてほしいのではないだろうか?

 

ただ、純粋に自分のことを助けてほしい、それだけが彼女の願いなのだ…彼を自分のものにすることで彼に愛してもらい、自分を救ってほしい…そう思っているのかもしれない。

 

(…何にせよ、俺はマスターの手助けをするしかない…例え、それが間違っているとわかっていても)

 

そんな風に思いながら、ロンギルスは自らのマスターに視線を移す。

 

彼女のことを守る、そう誓うように。

 




といった感じの第54話後編でした!

そういえば、アニメの方でついにサイバース・クアンタム・ドラゴンが登場しましたね!

ボーマン…次に戦う時にはどれほど強くなってるんでしょうかね…次回は水のイグニスも登場するみたいですし、これからの展開が楽しみです!

それでは、今回はここまで!ここまでの拝読ありがとうございます!

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