遊戯王VRAINS 幻影の咆哮~青き天使との日常~ 作:kajoker
ただ、私としてもこの小説を書くのは久しぶりなので、どこかおかしいところもあるかもしれませんが、楽しんで頂ければ幸いです。
それでは、本編をどうぞ!
「侑哉、遅いな…」
侑哉がダークナイトプリンセスを追ってデュエルを始めて、かなりの時間が経った。
デュエルの流れは映像を見て知っている。
まさか、一度のデュエルで伝説のレアカード、三幻神のカードを全て見ることができるとは思ってもいなかった。
今でこそ三幻神のカードはそれなりの枚数生産されているけど、全ての三幻神を一度のデュエルで見られることはほとんどない。
そして、何よりすごいのは侑哉はその三幻神を全て打ち倒し、デュエルに勝利したことだ。
あの手この手を使って三幻神を打ち倒していく侑哉の姿を見て、惚れ直したのは言うまでもない。
「…デュエルはもう終わってるのに、侑哉は一体どこに…」
そういえば、侑哉はダークナイトプリンセスに聞きたいことがあるって言ってた…もしかしたら、今はそれを聞き出しているのかもしれない。
「今は待つしかないわね…」
そうだ、待っている間にサプライズプレゼントを用意しよう。
たまには、私が侑哉を驚かせてみたいし。
私はそんなふうに考えながら、サプライズプレゼントの準備を始めた。
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「まさか、本当に裕香ちゃんなのか?」
「だから、そうだって言ってるでしょ♪」
そう言って、ダークナイトプリンセスこと響音裕香は屈託のない笑みを浮かべる。
その笑顔は確かに、小学生の頃の彼女と変わらない気がした。
ただ、葵にあそこまでの殺気を放っていた姿があまりにも俺の知っている裕香ちゃんとかけ離れていたせいで、いまいち人物像が重ならない。
「その顔はいまいち信じられないって顔だね」
「そりゃあな、だって俺の知ってる裕香ちゃんと全然違うし」
「まぁ、色々とあったからね…」
「…話してくれないか、お前に何があったのか」
俺は、彼女がなぜ葵にあそこまで殺意を向きだしにしていたのかずっと気になっていた。
もし、彼女が葵に殺意を持つようになった決定的な出来事があるなら…それを知れば、何か力になれるかもしれない。
「そうだね…どこから話そうかな…」
「じゃあ、まずはどうやってこの世界に来たのか、それについて聞かせてくれるか?」
「私がこの世界に来たのは所謂転生ってやつだね。侑哉に会いたくて、毎日歩きまわってたら車に轢かれて死んじゃった」
「そんな軽い感じで言うことじゃないだろ…」
まるで、自分が死んだことなんてどうでも良いかのように話す裕香ちゃんに思わずそんな声を漏らす。
「だって、侑哉のいない世界に居たってしょうがないし…それに、転生したおかげでこうして再会できたんだもん♪むしろ、死んで良かったよ」
「…やっぱり、俺の知ってる裕香ちゃんと全然違う…何があったらこんなに歪むんだ?」
「…ねぇ、侑哉はさ、まったく知らない他人の記憶が流れ込んできたことはある?」
俺の呟きに答えるように裕香ちゃんはそう口にする。
他人の記憶が流れ込む?そんなことがあるわけ……いや、待てよ…まさか!
俺はその現象について知っている…というより、実際に目の当たりにした。
「まさか、葵の記憶が流れ込んで来たのか?」
「何で知ってるの?このことは初めて話すのに…もしかして、私の心は侑哉に見透かされちゃってるのかな♪」
「違う…ただ、似たような現象を見たことがあるってだけだよ」
だけど、あの時はこっちの葵の記憶に流れ込んできたから特に問題はないが、まったくの別の人間に他の人間の記憶が流れ込むというのは異常だ。
そもそも、そうなったら流れ込んだ記憶に本人が支配されるんじゃないか?
「…ちょっと待てよ?なら、今、裕香ちゃんに起きていることは…」
そこまで理解して、言葉に詰まる。
他人の記憶が流れ込んでいて、果たして自分を保てていられるものだろうか?いや、多分普通なら自分を保つことはできないだろう。
「その顔…侑哉には私が何でこんなことになったのかもうわかってるんだね…」
「あぁ…なんとなくだけどね…裕香ちゃん、君は葵への憎しみと俺との記憶だけを支えに自分を保っているんじゃないか?」
「…そうだよ。だって、そうしないと私がどんどん消えていっちゃうもん…!!」
しばらく間が空き、裕香ちゃんはその場に蹲り、嗚咽を零す。
そんな裕香ちゃんを見ていられなくて、俺は思わず駆け寄った。
「裕香ちゃん!ごめん!君がそんな状態だなんて気づかなくて…」
「侑哉……うぐっ!!あぁぁぁ!!」
「裕香ちゃん!?」
突然、裕香ちゃんが苦しみ出し、悲鳴が響き渡る。
「ゆぅ…やぁ…助けて…私、怖いよ…その内、私が私でなくなっちゃう…!」
「わかってる!必ず助ける!」
考えろ…!考えろ!あまり時間は掛けていられない…今まで、裕香ちゃんが裕香ちゃんでいられたのは奇跡に等しい…これ以上時間を掛けたら彼女が消えてしまう。
なにか…なにかないか…そうだ!リンクアクセスの力なら!
幸いにも、ここはLINKVRAINSの中だ…リンクアクセスの力で流れ込んだ葵の記憶を取り出せればなんとかなるかもしれない。
だが、取り出すまでに裕香ちゃんが持つか…?せめて、記憶を取り出すまで、裕香ちゃんの自我を保つことができないと…なにか、裕香ちゃんが裕香ちゃんであるということを認識させる方法……ある!あるぞ!
でも、この方法は…いや悩んでる暇はないか……ごめん、葵…今だけは許してくれ!
「裕香ちゃん…いや、裕香…今から、キスするけど許してくれ」
「ふぇっ!?…んっ!…んむっ!…んっ…」
そうして、裕香ちゃんとキスをする。深く、彼女という存在を確かめるように。
もちろん、何の狙いもなくこんなことをしているわけじゃない。
裕香ちゃん…もとい、裕香の自我を保つためには、裕香自身に自分の存在を認識させなくてはならない。
その為には、響音裕香としての強烈な記憶を彼女に植えつける必要がある…だから、こういう手段に出たんだけど…正直、罪悪感が半端ない…だが、裕香を助けるためだ、手段は選んでいられない。
「はぁ…はぁ…俺が今、こうしてキスしてるのは葵じゃない…裕香、お前だ。安心してくれ…俺が必ず君を助けるよ」
俺は1度そう告げて、再び裕香を救う為に行動を開始した。
―――――――
―――――
―――
「花恋さん、侑哉は戻ってきてますか?」
「葵ちゃん、いらっしゃい。侑哉はまだログインしたままよ」
LINK VRAINSからログアウトした私は侑哉の家にやってきた。
侑哉はログインしたままなのね…なら、ちょうど良いかも。
「花恋さん、侑哉が戻ってくるまでにちょっとしたサプライズを仕掛けたいんですけど」
「サプライズ…?良いじゃない!さっそく準備しましょう!」
そう言って、花恋さんは笑みを浮かべる。
「良いんですか?侑哉に頼まれたことがあるんじゃ…」
私が家に入った時に花恋さんは何か作業をしていたみたいだし、もしかしたらタイミングが悪かったかなって思ったんだけど…大丈夫かな?
「あぁ…それに関してはもう終わってるから大丈夫よ。だから、葵ちゃんは心配しなくても良いわ」
「そ、そうですか…」
なんてことのないようにそう口にする花恋さんに、思わずそんな風に返事してしまう。
相変わらず、花恋さんはすごい人ね…侑哉もそんな花恋さんだから、色々と頼ることができるかもしれないけど。
「…でも、どういうサプライズにするべきでしょうか…?」
「実は、レイちゃんにも協力してもらって、侑哉の新しいカードを作っている途中なのよ。葵ちゃんもカードの作成協力してくれればありがたいんだけど」
「確かに…それなら侑哉にも喜んでもらえるかも…でも、上手くできるか不安ね…」
「大丈夫よ!後少しで完成だからそんなややこしい作業も必要ないし、私もサポートするから」
「…わかりました!やってみます!」
「よし!それじゃあさっそく始めましょう!ちなみに、こういうカードなんだけど…どう?葵ちゃんの意見を聞かせてくれない?」
そう言って、花恋さんはカードの画像を見せる。
「PT《ファントム・シーフ》…?」
「そ、《ファントム・シーフ》。怪盗って意味のカードよ…イメージとしては侑哉の使う《EM》達の裏の姿ってところね。普段は人々を楽しませるエンターテイメント集団、だけど裏では弱きを助け、強きを挫く正義の怪盗達!王道だけど、だからこそカッコいい!こういうカード達を侑哉が使ったらすごく似合うと思うの!」
「そ、そうですね…わ、私も侑哉に合うと思います…」
花恋さんのテンションの高さに圧倒されつつ、私も同意する。
実際、私も侑哉にこのカード達は合うと思うし。
「そうよね!はぁ〜…早く侑哉がこのカード達を鮮やかに使いこなすところを見てみたいわ!さぁ早く終わらせちゃいましょう!」
「は、はい!」
そう返事をして、私は花恋さんと共にカード制作を始めた。
…侑哉、喜んでくれると良いなぁ。
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「ふぅ…疲れたな…まさか、裕香がダークナイトプリンセスだったなんてね…しかも、別の世界の葵の記憶が流れこんでいて、それが原因であんな風に…ただ、もう裕香が苦しむことはなくなっただろうから、ひとまず安心だ」
結果的に、俺の作戦は成功した…裕香から、葵の記憶を取り除けたし彼女が葵の記憶に苦しめられることはなくなったはずだ。
ちゃんと記憶の整合性を保つための工夫もしたし大丈夫だろう…それにしても、我ながらとんでもないことをしたもんだ。
リンクアクセスの力…本当に汎用性が高すぎるな。
「それにしても、罪悪感がすごいな…いくら裕香を助ける為とはいえ、葵以外の女の子とあんなことを…」
本当に、葵にどんな顔して会えば良いんだか…とりあえず、いつも通りを心がけよう…それで、ちゃんと葵に謝ろう。
「侑哉!!目が覚めた!?」
「うわぁぁ!!び、びっくりした…葵か。どうしたんだ?そんな大声出して」
俺が葵への罪悪感を感じているところに、ご本人が登場し、思わずそんな言葉を口にする。
「あ、ごめんね…ちょっとテンションが上がっちゃって」
「何か良いことでもあったのか?」
「まぁね…ほら侑哉、下の部屋に行きましょ」
「あ、あぁ…了解」
そう返しながら、葵と一緒に下の部屋に降りる。
階段を下りながら、俺は葵にどのタイミングであの話を切り出すべきか思考する。
そうやって頭を悩ませていると、あっという間に下の部屋に着いてしまい、俺は思考を中断した。
「侑哉さん!お帰りなさい!」
「あぁ、ただいま!レイ。花恋もただいま!」
「お帰りなさい。侑哉に頼まれたことは大丈夫よ、無事に終わったわ」
下の部屋に降りてきた俺の目に入ったのは、ニコニコしているレイと花恋の姿。
葵もなんかテンション高かったし、一体なんなんだ?
「そっか…ありがとう。…にしても、どうしたんだ?皆、なんかニヤニヤしてるけど」
「実は、侑哉にプレゼントがあるの!ほら、葵ちゃん!侑哉に渡してあげて!」
「は、はい!う、受け取って!侑哉!」
顔を赤くしながら、葵が俺にデッキケースを手渡す。
俺はそれを受け取って、葵に了承を得て中身を確認する。
「PT《ファントム・シーフ》!?何だこれ!見たことないカードだ!俺の使ってるEMモンスター達に似てるカードもあるし…どゆこと?」
「それは、私達3人で侑哉の為に作りあげたカード達よ」
「元々、私と花恋さんで作っていたカード達で、葵さんの協力もあって、ようやく完成したんです」
「まぁ、ほとんどレイと花恋さんが作ってくれていたから、私はそこまで協力できていたかは微妙だけど…」
その言葉を聞いて、思わず皆に抱きつく。
「「「侑哉(さん)!?」」」
「花恋、レイ、葵…ありがとう!すごく嬉しいよ!」
「侑哉…」
「侑哉に喜んでもらえたなら、私達も頑張った甲斐があるわね」
「そうですね!頑張って良かったです!侑哉さん、さっそく試してみたらどうですか?」
「そうだな…せっかく用意してくれたんだし、試さなきゃ勿体ないよな!」
「じゃあ、私が相手をするわ。PTのカードについての説明も兼ねてね」
「じゃ、じゃあ私は侑哉さんのサポートに回りますね!私もPTカードには詳しいですから」
そんな花恋とレイの提案に俺は頷く。
実際、俺は初めてこのデッキを使うから説明をしてもらえるのはありがたい。
「わ、私は…!侑哉の応援をするわ!」
「ありがとう…葵。お前の応援があれば負ける気がしないよ!」
「侑哉…うん!頑張ってね!」
「あぁ!…それじゃあ始めよう!花恋!」
「その前に、まずは外に出よっか…さすがに、家の中でデュエルをするわけにもいかないし」
「それもそっか…じゃあ外に出よう」
そう口にして、俺達は外へと歩を進める。
そうして、家の鍵をしっかりと閉めて近くの空き地へと向かう。
到着した空き地に人の姿はなく、居るのは俺達だけだ。
ここなら、確かに周りに気を使わなくても良さそうだ。
「よし、始めよう!」
「えぇ!」
「「デュエル!!」」
そうして、俺と花恋のデュエルが始まった。
といった感じの第59話でした!
次回は、侑哉と花恋のデュエルになります。
PTカードは作者のオリジナルカードということになりますが、なにぶん、多くのオリジナルカードを考えるのは初めてなので上手くできるか不安ではあります。
それでは、今回はここまで!ここまでの拝読ありがとうございます!