えっ?俺が十番隊隊長ですか?   作:櫻井小豆

1 / 3
十番隊①

 

 俺には、なにも無かった。

 

 物心ついた時には、親は死んでいた。それから、ずっと1人で生きてきた。  

 

 俺の住む街、西流魂街六十四地区‘錆面’は治安があまりよくなかった。毎日、殺し合いの連続だった。気を抜けば、いつ殺されてもおかしくない。でも、殺しをしなければ生きていけない。ーーー生きる為には、強くなるしかなかった。

 

 そんな中で、俺は100年余りを生きてきた。いつしか、‘錆面’に住む連中から‘鬼神’と恐れられるようになるまで。

 

 こんな生活が、一生続く筈だった。そう、覚悟していたーー……。

 

 

 

 

 ‘錆面’で、1番大きな通りを歩いていた日に、そいつは突然やって来た。俺の歩いていた目の前に仁王立ちになっていた。

 

 白い髭を下まで垂らした、年取った爺さん。手には杖を持つ、この場所ではたまに見るような奴だった。

 

 もちろん、殺しにくる奴なら相手をするが、俺は殺しが好きな狂人じゃない。だから、無視して通り過ぎようとした。

 

『お主、名は‘草野竜玄’に間違いないな?』

 

『そうだが、なにか用があるのか??』

 

 顔が険しい。中々に、怖い。いや、すでに此奴から感じる殺気で汗が額を伝っている。

 

『そうじゃな。儂は、お主を探しておった。あまり時間が無い故に簡潔に話そう。お主は、‘護廷十三隊’に入る気は無いか?』

 

『はぁ……護廷十三隊に、ですか?』

 

 ‘護廷十三隊’。こんな場所に住んでいる俺ですらその名は知っている。

 

 曰く、最強の死神を集めた組織。曰く、最凶の死神の元に集った狂人達。その名に関する噂に、良い物は1つとして無かった。

 

『なんで俺が?』

 

『お主の技量は、流魂街にいて良い領域を遙かに凌駕しておる。先日、十番隊の隊長が殉職なされた。そこで、お主に目をつけた』

 

『……』

 

 どう返せばいいのか。確かに、この頃俺に勝負挑んでくる奴がいないなぁ……とは思っていた。

 

『どうじゃ?その力、殺すためだけではなく、護る為にも役立ててはくれんか?』

 

 どうしたものか。別に、行くのは構わないんだけどな……。ただ、俺よりも弱い奴にはついて行きたくないんだよな。様は、実力を知りたい。

 

『お願いするよりも、もっと簡単な方法がありますよ?』

 

『ほう。それは如何に』

 

『ここでは、敗者に選択の権利はないんですよ』

 

 ここでは、力が全てだ。敗者の命は勝者に預けられる。

 

『それがお主の意思か。よかろう……』

 

 すると、爺さんの杖が刀に変わった。なるほど、あれは刀だったのか。

 

 俺も、腰に下げていた刀に手を添える。

 

『万象一切灰燼為せ 流刃若炎』

 

 鞘から抜くと同時にその刀身から炎が噴き出す。恐ろしい程の熱さだ。

 

『暗闇へ沈め 朧霞(おぼろがすみ)

 

 俺の刀の始解……だっけか?は、刀身から闇のオーラの様な物が溢れ出ている感じだ。

 

『ほう……。では、行くぞ?』

 

 ヒュンッと、爺さんが刀を横に一閃するだけで炎が飛んでくる。

 

 

 咄嗟に、刀を上に振る。すると、闇のオーラが盾の様に広がる。だが、間髪入れずに刀が襲いかかってくる。

 

『うおっ!?』

 

 またもや、咄嗟の動きで朧神で受け止める。恐ろしいほどの力だ。しかも、熱い。

 

『ほう……中々やりよる。さてはお主、卍解も修得しているな?』

 

『はい。そうですね』

 

 自然に、敬語になってしまう。

 

 卍解。結構前に、死神は卍解というものを使えると聞いて、特訓したことがある。

 

 全然使えるようにならなくて、刀持ったまま寝たら、なんか夢の中に変な奴が立ってた。獣人みたいな奴が。

 

 そいつに、幾つか質問されて、答えたら

 

『ふむ。よかろう』

 

 とか言われた所で夢が覚めた。その頃から、卍解的な奴を使えるようになった。

 

『そうか。なら、卍解も使うが良い』

 

『いえ、残念ながら昼間は使えません』

 

 正しくは、昼間では真価を発揮できない。俺の卍解は、夜や光の届かない空間で威力を発揮する。こんな、太陽の下ではどうにもならない。

 

『そうか、なら、もう終わりじゃな』

 

 爺さんが刀を物凄い速さで刀を一閃した所を見た。そこで、記憶が途切れた。

 

 

 

 

 

『んっ……』

 

 目が覚めたら、そこはどこかのベッドの上だった。

 

『目を覚ましましたか』

 

 隣には、女の人が立っていた。髪が、どこか爺さんにの髭に似ているなぁって思った。

 

『ここは、何処ですか?』

 

 なんか、笑ってるけどこの人は怖い気がした。あれだ、今まで戦場にずっと身を置いてきたから感覚で分かる。この人が、滅茶苦茶強いって事を。

 

『ここは、四番隊の隊舎ですよ』

 

 四番隊隊舎?つまり、ここは……

 

『ちなみに、貴女は?』

 

 一応、聞いてみた。

 

『私は、護廷十三隊四番隊隊長の卯の花烈と申します』

 

 ニコッてされた。物凄く怖い。

 

 

『貴方の事は聞いています。これを来て、付いてきてください』

 

『はぁ……』

 

 なんか、羽織を渡された。よくわかんないけど、取りあえず羽織って付いてく。

 

『ここで、少し待っていてください』

 

 そう言って、卯の花さんはドアの中に入っていった。《一》って書いてあるけど、何だろう。

 

 

 少し待ったら、ドアが開いた。なんか、中に人が並んでるんですけど。

 

『新……は中へ!!』

 

 俺かな。俺のことかな?皆、俺のこと見てるから、取りあえず中に入る。

 

『十番隊隊長 草野竜玄!!』

 

『はい……?』

 

 え?俺って、隊長なの?

 

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。