えっ?俺が十番隊隊長ですか? 作:櫻井小豆
俺には、なにも無かった。
物心ついた時には、親は死んでいた。それから、ずっと1人で生きてきた。
俺の住む街、西流魂街六十四地区‘錆面’は治安があまりよくなかった。毎日、殺し合いの連続だった。気を抜けば、いつ殺されてもおかしくない。でも、殺しをしなければ生きていけない。ーーー生きる為には、強くなるしかなかった。
そんな中で、俺は100年余りを生きてきた。いつしか、‘錆面’に住む連中から‘鬼神’と恐れられるようになるまで。
こんな生活が、一生続く筈だった。そう、覚悟していたーー……。
‘錆面’で、1番大きな通りを歩いていた日に、そいつは突然やって来た。俺の歩いていた目の前に仁王立ちになっていた。
白い髭を下まで垂らした、年取った爺さん。手には杖を持つ、この場所ではたまに見るような奴だった。
もちろん、殺しにくる奴なら相手をするが、俺は殺しが好きな狂人じゃない。だから、無視して通り過ぎようとした。
『お主、名は‘草野竜玄’に間違いないな?』
『そうだが、なにか用があるのか??』
顔が険しい。中々に、怖い。いや、すでに此奴から感じる殺気で汗が額を伝っている。
『そうじゃな。儂は、お主を探しておった。あまり時間が無い故に簡潔に話そう。お主は、‘護廷十三隊’に入る気は無いか?』
『はぁ……護廷十三隊に、ですか?』
‘護廷十三隊’。こんな場所に住んでいる俺ですらその名は知っている。
曰く、最強の死神を集めた組織。曰く、最凶の死神の元に集った狂人達。その名に関する噂に、良い物は1つとして無かった。
『なんで俺が?』
『お主の技量は、流魂街にいて良い領域を遙かに凌駕しておる。先日、十番隊の隊長が殉職なされた。そこで、お主に目をつけた』
『……』
どう返せばいいのか。確かに、この頃俺に勝負挑んでくる奴がいないなぁ……とは思っていた。
『どうじゃ?その力、殺すためだけではなく、護る為にも役立ててはくれんか?』
どうしたものか。別に、行くのは構わないんだけどな……。ただ、俺よりも弱い奴にはついて行きたくないんだよな。様は、実力を知りたい。
『お願いするよりも、もっと簡単な方法がありますよ?』
『ほう。それは如何に』
『ここでは、敗者に選択の権利はないんですよ』
ここでは、力が全てだ。敗者の命は勝者に預けられる。
『それがお主の意思か。よかろう……』
すると、爺さんの杖が刀に変わった。なるほど、あれは刀だったのか。
俺も、腰に下げていた刀に手を添える。
『万象一切灰燼為せ 流刃若炎』
鞘から抜くと同時にその刀身から炎が噴き出す。恐ろしい程の熱さだ。
『暗闇へ沈め
俺の刀の始解……だっけか?は、刀身から闇のオーラの様な物が溢れ出ている感じだ。
『ほう……。では、行くぞ?』
ヒュンッと、爺さんが刀を横に一閃するだけで炎が飛んでくる。
咄嗟に、刀を上に振る。すると、闇のオーラが盾の様に広がる。だが、間髪入れずに刀が襲いかかってくる。
『うおっ!?』
またもや、咄嗟の動きで朧神で受け止める。恐ろしいほどの力だ。しかも、熱い。
『ほう……中々やりよる。さてはお主、卍解も修得しているな?』
『はい。そうですね』
自然に、敬語になってしまう。
卍解。結構前に、死神は卍解というものを使えると聞いて、特訓したことがある。
全然使えるようにならなくて、刀持ったまま寝たら、なんか夢の中に変な奴が立ってた。獣人みたいな奴が。
そいつに、幾つか質問されて、答えたら
『ふむ。よかろう』
とか言われた所で夢が覚めた。その頃から、卍解的な奴を使えるようになった。
『そうか。なら、卍解も使うが良い』
『いえ、残念ながら昼間は使えません』
正しくは、昼間では真価を発揮できない。俺の卍解は、夜や光の届かない空間で威力を発揮する。こんな、太陽の下ではどうにもならない。
『そうか、なら、もう終わりじゃな』
爺さんが刀を物凄い速さで刀を一閃した所を見た。そこで、記憶が途切れた。
『んっ……』
目が覚めたら、そこはどこかのベッドの上だった。
『目を覚ましましたか』
隣には、女の人が立っていた。髪が、どこか爺さんにの髭に似ているなぁって思った。
『ここは、何処ですか?』
なんか、笑ってるけどこの人は怖い気がした。あれだ、今まで戦場にずっと身を置いてきたから感覚で分かる。この人が、滅茶苦茶強いって事を。
『ここは、四番隊の隊舎ですよ』
四番隊隊舎?つまり、ここは……
『ちなみに、貴女は?』
一応、聞いてみた。
『私は、護廷十三隊四番隊隊長の卯の花烈と申します』
ニコッてされた。物凄く怖い。
『貴方の事は聞いています。これを来て、付いてきてください』
『はぁ……』
なんか、羽織を渡された。よくわかんないけど、取りあえず羽織って付いてく。
『ここで、少し待っていてください』
そう言って、卯の花さんはドアの中に入っていった。《一》って書いてあるけど、何だろう。
少し待ったら、ドアが開いた。なんか、中に人が並んでるんですけど。
『新……は中へ!!』
俺かな。俺のことかな?皆、俺のこと見てるから、取りあえず中に入る。
『十番隊隊長 草野竜玄!!』
『はい……?』
え?俺って、隊長なの?