えっ?俺が十番隊隊長ですか?   作:櫻井小豆

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十番隊②

『おっ……終わった……』

 

 よく分からないまま、隊長に就任して今日で1週間が経った。隊長に就任させられた日になんか、書類を沢山積み上げられて、

 

『これに、判子を押していって下さい』

 

 と、まだ名前を覚えられていない副隊長の子に言われた。なんか、溜まってた奴が沢山あるらしくて、初日と二日目はとにかく大変だった。

 

 一体、隊長とはなんなのだろうか。俺は、ただ溜まってしまった書類を片付ける為だけに隊長に就任させられたのだろうか。

 

 ただ、流石に1週間同じことをしてきたから……まぁ、そろそろ慣れた いや、慣れたかった訳ではないのだが。今は、お昼を少し過ぎたくらいだ。さて、何をして過ごそうか……。

 

『お~……もう仕事が片付いたのか』

 

『ええ。こんにちは、夜一さん』

 

 この人は夜一さんだ。二番隊隊長で、なんか滅茶苦茶絡んでくる女の人だ。俺に、一番最初に話しかけてくれた人達の一人で、よく会いに来る。

 

『儂は、これから出かけるのだが、どうじゃ?暇なら、少し付いてこないか?』

 

『どこにですか?』

 

『まぁ、付いてくれば分かるじゃろう』

 

 そう言って、歩き始める夜一さん。どうやら、俺の意見は聞いてくれないらしい。

 

 

 

『付いたぞ』

 

『えっ……?』

 

 なぜか、塀の上で到着宣言された。ここは……誰の家だろうか。一言で表すならば、豪邸だ。

 

『お~い。白坊~!!』

 

『なっ……貴様っ!!夜一!!!』

 

 誰だろう。黒髪の少年。なんだか、とても育ちの良さそうな少年だ。

 

『はっはっはっ。少しは上達したようじゃな』

 

『そうだ。既に、私の技量は貴様のそれを超えている!!』

 

『ほう……ならば、見せてみろっ!!』

 

 そう言って、瞬歩で逃げる夜一さん。

 

『待てっ!!』

 

 少年も行ってしまった。……俺は、放置か。

 

『すみませぬな。見苦しい所をお見せしてしまいましたな』

 

『あっ……』

 

 庭園らしき場所を歩いてきたのは、六番隊隊長さんだ。たしか、

 

『朽木隊長。こちらこそすみません』

 

 まさか、この豪邸は朽木隊長の家だったのか。

 

『いやはや。もう少し落ち着きがあれば、既に一人前なのですがな』

 

『そうですね。でも、あれはあれで良い気がします』

 

 そうか。あれは、朽木隊長の御子息さまか。夜一さんさえいなければ、きっと落ち着きがある良い少年なんだろうな。夜一さんさえいなければ、だけれど。

 

『それでは、私も少し休んでくるとします。草野隊長はいかがなされるおつもりで?』

 

 そうだなぁ。夜一さんいなくなったしな。

 

『俺も帰ります』

 

『そうですか。では、お気をつけ下さい』

 

 そう言って、朽木隊長は屋敷に戻って行った。朽木隊長は、礼儀がいいなぁ。きっと、育ちが良いんだろうな。俺なんて、まともな礼法もまだ覚えられてないのにな。

 

 

 それから、帰り道で五番隊の平子隊長に絡まれ、その後、京楽さんのお酒に付き合わされた。結局、俺が帰ったのは夜だった。

 

 

 

 そんな毎日が続いて、もう数カ月が経った。今日は、全隊長が一番隊舎に集められている。理由は、俺の友人がどうやら隊長に就任するらしい。

 

『それでは、新隊長は中へ!!』

 

 ドアが開いた……が、いない。いや、走ってるのか。なんか、音がする。

 

『ありゃりゃっ?もしかして、ボクが一番最後っスか?』

 

 ありゃ。俺よりもひどい。

 

『では、十二番隊隊長。浦原喜助!!』

 

 この頃、仲良くしてもらっている友人。喜助だ。

 

 

 

『いやぁ~……あの時は本当に焦ったっスよ』

 

『だろうな』

 

 ここは、十番隊隊舎である。縁側に腰掛けているのは……先刻、失敗を犯したばかりの喜助だ。

 

『もう少し、早めに行動しなきゃな』

 

『それが難しいんスよね~………』

 

 流魂街出身で、礼法なんぞ一切学んでこなかった俺よりも駄目駄目だとは一体どうしたものか。

 

『でもまぁ、隊長昇格おめでとう』

 

 まぁ、俺もなったばかりだから人の事は言えんのだけれど。

 

『いや~。ボクなんかが隊長でいいんスかね』

 

『いやいや、鬼道は上手い。技術もある。充分資格はあるよ』

 

 事実、喜助は強い。何度か、手合わせをしたことがあるが……強かった。ちなみに、喜助の卍解も見せて貰ったけど……相当な物だった。

 

『まだ、副隊長サンとも馴染めてないんスよね』

 

『……同じく』

 

 まぁ、副隊長に。いや、隊士に馴染めないのはお互い様だ。俺なんて、未だに名前すら覚えられていないし。

 

『まぁ、いつかは馴染めるさ。それよりも、また鬼道を教えてくれ』

 

 そう、俺はこの頃喜助に鬼道を教えて貰っている。どうやら、俺には才能があったらしく八十番台までは使えるようになった。今は、八十番台の詠唱破棄と九十番台の特訓をしている。

 

『あ~いいっスよ!』

 

 

 この後、めっちゃ練習した。ちなみに、今日は九十番の黒棺?とやらを使えるようになった。

 

 黒棺、とても有能だ。これは、使える。詠唱破棄はまだ出来ないのだが。

 

 

 

 

 

 

 

 あれから、何事もなく9年の月日が流れた。この日、俺は一番隊舎に呼ばれていた。

 

 

『調査?』

 

『はい。草野隊長には、流魂街での調査に行っていただきたいのです』

 

 笑顔で俺に言う卯の花隊長。この笑顔を見せられれば断る訳にはいかない。

 

 

『……ここか』

 

 面倒くさいので、言われた日の夜に問題の場所へ来てみた。無論、一人でだ。

 

『特に異常は無い』

 

 無いのだが、問題が一つある。

 

『………』

 

 やはり、先程から二つの殺気を感じる。霊圧は感じないが、勘違いということはないだろう。

 

『よし、帰ろう』

 

 あえて、隙を作る。そうすればーーー……

 

 ヒュンと風切り音が聞こえた。だが、遅い。

 

『っ!?』

 

『殺気がバレバレだ』

 

 己の斬魂刀で受け止める。俺は、ずっと戦場に身を置いていた。それ故に、殺気には人一倍敏感だ。

 

『お前のその刀、斬魂刀だな?お前は何者だ?』

 

『……』

 

 返事はない。だが、おそらく死神であろう。

 

 全身をマントで覆っていて、顔は見えない。また、不自然なことに霊圧を感じない。いや、これは……

 

『鳴け、鈴虫』

 

 いきなりの始解。これは、どうやら本気で暗殺しに来ているようだ。

 

 ヒュンッと円状のなにかが飛んでくる。だが、慌てることはない。

 

『暗闇に沈め、朧霞(おぼろがすみ)

 

 相手の始解は円状の刀のようだ。ならば、朧霞で止めることが出来る。

 

『チッ……』

 

 敵はまだ卍解は使っていない。いや、使えないのだろう。しかも、かなり手荒い。暗殺にも慣れていない素人なのだろうか。

 

『おい、もう一人も出て来い』

 

 近くの雑木林の中にもう一人気配を感じる。

 

『……あちゃ~。バレとんのかいな』

 

 もう一人も、おそらく前に喜助が言っていた霊圧を遮断することの出来るマントを身につけていた。先程よりも小柄だ。まだ、幼い男の子か?

 

『お前らの目的は、俺の暗殺か?』

 

『お前に言う義理は無い』

 

 俺には余裕があり相手は焦りを持っている。ここまでの実力差を見せられていながらも、相手は再び刀を構える。どうやら、余程俺の事を嫌っている。あるいは強い忠誠心を持っているようだ。

 

 仕方が無いので、こちらからも仕掛けてみよう。そう思い、朧霞(おぼろがすみ)を構え直した直後、声が聞こえた。

 

『もう、時間稼ぎは充分だ』

 

『砕けろ、鏡花水月(きょうかすいげつ)

 

 瞬間、何者かに()()()()

 

『な…に……!?』

 

 地面に倒れ込む。どうやら、気配を消していた3人目が居たようだ。

 

 傷口を手で押さえてはいるがまずい、思ったよりも傷が深い。

 

『これで、彼の始末は済んだ』

 

 そう言って、俺に背を向け歩き出す3人。

 

『…卍解』

 

 俺の手に握られていた朧霞(おぼろがすみ)が霧状となって闇に溶け込んでいく。

 

『……ほう?』

 

 これは、敵にとっても予想外だったのであろう。確かに、これが普通の死神だったならばすぐに死ぬであろう。それほどの傷を負わされた。だが、それも()()()()()()()()の話だ。

 

 今宵は、月明かりのみだ。さらに、雑木林が闇をさらに深くしている。これほどに俺の卍解の真価を発揮出来る日はない。 

 

『卍解、黒月朧霞(こくげつのおぼろがすみ)

 

 俺の手元には、右手には刀身が闇へ溶け去り柄だけとなった朧霞。そして、左手には新たに白銀の刀身を持つもう一振りの刀が握られていた。

 

『行くぞ?』

 

 俺の基本的な行動原理は、攻撃されたならば何倍にもして返す、だ。

 

 ーーさて、反撃を始めようか。

 

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