えっ?俺が十番隊隊長ですか? 作:櫻井小豆
今更ながら、3話です。
卍解--。それは日常では使うことのない、使うことの許されない代物だ。
勿論、死神全員がそうなのかと言われればそうでもないのかもしれない。だが、俺の卍解はそうはいかない。
俺の朧霞の卍解は、相手が人であるならば…そして、夜であるならば最大限の力を引き出すことが出来る。
先程の、この男の攻撃を俺は見切ることが出来なかった。つまり、この男は斬魄刀か何かの能力を使っている、ということだろう。そして、ただ速いだけならば…避けることは出来なくともその剣閃位は見ることが出来る筈だ。
つまり、この男は幻覚あるいはそれに与する能力を使っているのだろう。俺の卍解を見て尚そこにい続ける余裕があるということは、もしかしたら目の前の男すらも幻覚という可能性すら有り得る。
だが、それならばーー……。
『照らせ、明けの朧霞』
『っ!!』
俺の言葉と共に、白い方の朧霞から眩い輝きが放たれる。直ぐに、目も開けられない程の輝きが周囲を染めて……。
『そこか』
この光は、俺にこの光が及ぶ範囲にいる全ての人の位置を教えてくれる。ただ、直接俺の頭の中に膨大な情報が流れ込んでくる為に…慣れるのには長い時間がかかった。
『そこか』
やはり、俺の考えは正しかったようだ。目の前の男は幻覚であり、本当は俺の斜め後ろに居た。
位置が解ったならば、次はもう片方の刀の力を使う。
『縛れ、暮れの朧霞』
言葉と共に、柄だけとなった朧霞を振り上げる。すると、俺の周囲にいた3人の男達に黒い煙が集まりだす。
『な、なんやコレ!?』
『くっ、動けん!』
この煙は、彼らの口から……そして皮膚から体内に侵入し、体の自由を奪う。
『之以てこの戦いの〆としよう』
白き朧霞と、柄だけの朧霞は融合し……一つの柄は月の如く白く、刀身は夜の如き黒い大太刀へと変化する。
『
その言葉と共に、未だ真の姿を見せぬ敵に大太刀を霞むほどの速度で振り切る。また、自分の周囲にある全ての影からも黒き荊棘が伸びる。手応えは……あった。
漸く姿を現したのは、やはり同じマントを着ている男だった。この声、どこかで……。
『ッ……中々の腕前だ、草野隊長』
『俺の名前を知っていたか。まぁ、何よりも顔を拝ませてもらうおうか』
流石に、手負いの俺が卍解状態を維持していられる筈も無く、既に卍解は解けてしまっている。早いところ捕まえて治療を受けねば、俺の命も危ないだろう。
そう思い、男に近付いてフードを払うと……そこにはなにもなかった。ただ、闇が広がっている……。
『なに…?』
背後に気配を感じ、慌てて飛び退く。そこには、手負いのマントを来た男が他の二人の男の間に立っていた。
『流石だ、草野隊長。君が私に勝てる確率はほぼ無いが、私が油断をしていたのも事実だ』
そう言って、俺に背を向ける。
『君の頑張りに免じて、今日は引かせてもらうとしよう』
『っ!待てっ!!』
逃げようとする男に向けて、手に持っていた斬魄刀を投げる。しかし、それはいとも簡単に男の持つ斬魄刀に弾かれてしまう。
『また会おう、草野隊長』
男が手に持っていた玉を地面に投げた途端に、煙が吹き出る。煙が晴れた頃には……三人とも、既にいなくなっていた。
『逃げられたか……』
もしかしたら、運が良かったのかもしれない。最後、俺はやはり幻覚に……いや、幻覚などというモノとはあれは次元が違うだろう。
いったい何時男が移動したのか、全く感知できなかった。おそらく、あのまま戦っていれば俺は殺されていたに違いない。
『傷も深い……。早く帰らねば』
刺された傷も深く、そろそろ限界も近づいていたので俺は急ぎ卯の花さんの元へ向かった。
目を覚ますと、そこはいつの日かと同じベッドの上だった。
『目を覚ましましたか、草野隊長』
そして、やはり隣には卯の花隊長が立っていた。
『俺は……』
そうか、俺はあの後四番隊隊舎の前で倒れたのか。中々、危ないところだったらしい。
『貴方があれほどの傷を負わされるとは……一体誰が?』
『マントを着た男、としか……』
本当に、それしか言えないな。ただ、あの男は一体何者なのだろうか。
『分かりました。この後直ぐに一番隊隊舎へと向かってください』
『……了解です』
少しは、休ませてくれてもいいんじゃないのかね……。
隊長会議にて、事の説明をした後……俺は二日間の休暇を頂いた。
副隊長の子や、夜一&喜助……更に浮竹さんや京楽さんなど色んな人に心配をされた。まぁ、割と危なかったらしいし、しょうがないか。
それよりも、俺が意識を失っていた間の三日間に……三番隊の鳳橋隊長の所の人が何人か行方不明になったらしい。そのせいで、今護廷は少し慌ただしいが……それでも俺は休みらしい。
俺は別に働いても良かったのだが……俺の隊の副隊長を始め複数の隊長から止められてしまった。
さて、この休みを過ごそうか……。