では、どうぞ。
ある日の夕方。
俺は雪乃に頼まれて都会のコンビニまで行き、アイスを買いに行った帰りの事だ。
まぁちょうど暗くなって街灯が目立つ時間、帰宅を急いでいた俺は近道をして路地裏を通っていた。
路地裏を抜けた俺はそのまま帰ろうとした、が。
ふと振り返ってしまった。
人の気配を感じたから。
振り返った視線の先には、街灯に照らされた女性が一人、立っていた。
怪しすぎる。
だが一時の好奇心というのは恐ろしいもので、つい近寄ってしまった。
だいぶ近づいた所で、その女性と目が合ってしまった。
‥‥‥いや、合わせてしまった、が正しいか。
その女性は口元にマスクをしているからよく分からないが、綺麗な女性だと感じた。
ふと目が合ったまま硬直した数秒後、女性が話しかけてきた。
というか最近女性とのエンカウント率高くないか俺?
「‥‥‥ねぇ」
「な、なんだ?」
「私‥‥‥」
そう言って女性は口元のマスクを外し‥‥‥。
「私、キレイ?」
「‥‥‥ッ!!」
異常に裂けた口でにこりと笑い、そう聞いてきた。
これが普通の人ならビビって逃げ出すだろう。
しかし、俺は‥‥‥。
「‥‥‥」
「ねぇ、どうなの?」
「‥‥‥いや、口が大きすぎて逆に不便しないか?」
「‥‥‥え?」
「え?」
「え?」
「え?」
そんなやり取りを経て、とりあえず近くの公園のベンチに座り、女性と会話する。
どうやら迷ってしまったらしい。
あれ、なんかデジャヴ。
ちなみに彼女は『口裂け女』というヤツらしい。
‥‥‥というか口裂けと言ってもそこそこ大きいようにしか見えないんだが?
まぁいい。
で、彼女にも名前があるらしく‥‥‥確か、『霧子』と言ったか?
「‥‥‥で、色々さ迷っているうちにここまで来たと」
「そうなのよ~‥‥‥最近の人間はあんまり驚いてくれないし‥‥‥」
「何か驚かさなければならない理由があるのか?」
「そうね‥‥‥貴方はわからないかもしれないけど‥‥‥」
「話してくれないか?」
「‥‥‥わかった。まぁ‥‥‥まずは私たち妖怪の定義からね」
そう言って彼女は懐から煙草を取り出してくわえ、火をつけた。
あぁ、後から聞いた話なんだが彼女は口が裂けているが限界まで口を開く事はあまり無いそう。
せいぜい驚かすぐらいに開くらしい。
普段は人と変わりないぐらいに開く程度。
パッと見口元に傷があるように見える。
「まぁ簡単に言ってしまえば私たちは人間に認識されていないと生きていけないの。ここ、貴方の人間世界ではね」
「ほぉ‥‥‥つまりあれか、認識されていないとこちらでは消えて無くなってしまうって事か」
「そう。まぁ誰か一人でも認識してくれていればいいんだけど‥‥‥」
「‥‥‥仕方ねぇなぁ‥‥‥じゃあ、家来るか?」
「へっ?」
「いや、認識されていないと消えちまうんだろ?」
「いや、そうだけど‥‥‥いいの?」
「あぁ、まだ余裕はある。良かったら来いよ」
「‥‥‥わかったわ。行きましょ」
どうやら、まだまだ住人は増えそうだ。
うーむ‥‥‥これ大丈夫か‥‥‥?
次回をお楽しみに。
では次回の更新で。
感想等お待ちしてます。
ではでは(´・ω・`)ノシ