東京喰種:re 皇と王   作:マチカネ

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 ル島決戦の後編。
 今回は滝澤がメインなので、ライくんの出番は少ないです。


第14章 ル島戦決着

 法寺班が去り、連絡を受けた回収班がタタラの遺体の回収も終わる。

 残されたのは戦闘の跡、焼け焦げた柱と床、ポツンと落ちている赤いマスク。

「……タタラ様」

 クインケを奪っていくことから【墓盗り(はかとり)】と呼ばれる、タタラ直属の女性喰種、巴ユミツ(ともえ ゆみつ)が打ち拉がれる。

 グシャ、法寺の“やり残した仕事”が赤いマスクを踏み潰す。

「畜生、タタラをぶっ殺す計画が台無しじゃねぇか」

 背後の【オウル】を【墓盗り】は睨む。

 ずっと、【オウル】はタタラの近くにいたのに助けずに見殺しにした。あまつさえ、チャンスがあればタタラを殺すつもりでいた。

 悲しみに怒りが勝つ。

「この裏切り者がッ!」

 向かってきた【墓盗り】の腹を殴りつける。

「俺が裏切り者なら、お前は役立たずだな」

 気を失った【墓盗り】は反応なし。

 上司だった法寺特等のピンチに助けに入り、手に入れた“力”でタタラを殺し、CCGを救い、英雄になり、果っての仲間の元に戻る。そのチャンスは訪れなかった……。

 あの水を使った策、あんな奇策を法寺特等は考えつかないのは部下だったからよく解る。アカデミーで学んだものも思いつくようなものではない。

 なら答えは、おのずと出る。

「あのお嬢ちゃんか……」

 オークション会場で戦った“あいつ“の仕業。

 かと言って、あの時、殺しとけば良かったとか、俺の獲物を奪いやがったとかの感情は沸いては来ない。それどころか、見事と正直に思っていた。

「あんな作戦を思いつくとは……」

 本人は気がついてはいないが、上司も同じようなことを言っていた。

「ああ、人の世界に戻りたかったな……」

 近づいて来る足音。

 CCGか『アオギリの樹』? 【オウル】が顔を向けた先には、予想していなかった相手、よく知っている人物が立っていた。

「あんたも来ていたのか、亜門さん」

 『20区の梟討伐戦』で滝澤政道とともに重傷を負い、『アオギリの樹』に拉致され、喰種化施術を受けさせられた亜門鋼太郎(あもん こうたろう)がそこにいた。

 

「何しにここへ?」

 対峙しあう亜門と滝澤。

「果っての仲間を救いに来た……。滝澤、お前を」

 大きく目を見開く。

「救うだと、亜門さん?」

 有無を言わせずに滝澤は亜門を殴り飛ばす。

「1人で逃げたくせに」

 何本もの赫子を亜門に打ち込む。

「コソコソ逃げ回っていたアンタが」

 亜門は攻撃を受けるだけで、反撃をしようとしない。

「救えるものなら、救ってみろよ!」

 赫子の腕で殴る。

「この喰種(バケモノ)を!」

 背後から羽交い絞めにして、赫子で腹部を貫く。

「弱すぎ、失敗作ってオッサンが言ってた通りスね」

 亜門だけではない、『20区の梟討伐戦』で拉致された捜査官63人の中で喰種化施術に成功したのは滝澤、ただ1人。

「喰種(バケモノ)か、そうやって、自分をごまかし続けるか」

 人間なら即死のダメージ。でも亜門も失敗作とはいえ半喰種、死なず。

「お前は罪を犯した。殺した捜査官、喰らった一般市民、許されることではない」

 ふらふらと起き上がる。

「だが、俺は知っている、お前の弱さも強さも。お前は喰種じゃない」

 滝澤を真正面から見据える。

「喰種捜査官だろう!」

「うるええええええええええええええええええええええっ!」

 お互い赫子を出し合い、打ち合う。

「罪を犯したのなら、償うんだ、お前の力で」

「死ねってか」

「違う! “死”以外の方法でだ! 俺と」

「わかんねぇよ、そんなのッッ!」

 亜門の熱い言葉は、最も滝澤が言ってもらいたかった言葉。そして最も自ら最も拒絶していた言葉。

 成功作と失敗作、力の差は歴然、力負けした亜門が吹っ飛ばされる。「生きて償えだとよ、この俺に……」

 意識せずに涙が出そうになっていた。そんな滝澤の左目にナイフが突き刺さる。

「ぐうう、くそがぁぁぁぁ」

 左目を抑えて呻く。

 入って来たのは六月。失ったはずの手足も再生していた。

「SSレート【オウル】……、それと」

 蹲っている亜門を見下ろす。

「【フロッピー】」

 【フロッピー】は出来損ないという意味。

 肩で息をしている【フロッピー】亜門は敵ですらないと判断。自身の尾赫を出し、笑みを浮かべ、滝澤に襲い掛かる。すでに左目は再生。

 凄まじい勢いで向かって来る尾赫を躱そうとしたが、躱しきれずに一本が腹に刺さる。

 それをものともせず滝澤は刺さった尾赫を引っ掴み、

「来いよ、ボッチャン」

 引き寄せ、抱擁。どうやら六月を男性と勘違いしている様子、未だライのことは女の子と勘違いしているし。

 お返しとばかり、六月の腹を赫子で貫く。

 ぷく~っと膨らむ六月の頬。

「笑える顔だな」

 余裕を見せた途端、毒霧ごとく口内に溜まった血を吐きかけて目潰し、反則技のコンボで金的蹴り。

 いくらSSレートでも滝澤も男の子、これはたまったものではない、もんぞり打って倒れる。

 ぽきゅん、さらにもう一撃、金的を踏む潰す。

 泡を吹いて、白目状態。

「イケるかもしれない」

 歓喜の顔を浮かべ、

(これで先生に褒めてもらえる)

 止めを刺そうと尾赫を出す。

 突然、亜門が指を加え、指笛吹く。

 指笛が鳴り響いた。訝しげな顔を六月は亜門に向ける。

「何のつもり? もしかして、先に殺してほしい―」

 巨大な銀色の尾赫が六月を殴り飛ばす。

 三回転がって起き上がった六月は、怪鳥のマスクを被った小柄な喰種の姿を確認。

「SSSレート【JAIL】……」

 

 【JAIL】は亜門の方を見る。

「俺は大丈夫だ。滝澤を守ってくれ」

 それを聞いた【JAIL】は六月の前へ。

 じっーと六月は【JAIL】を見つめて観察。

「……倒せたら、もっと先生が褒めてくれる」

 ぺろりと舌なめずりして笑う。

 【JAIL】リオも六月を見つめていた。六月は喫茶店『:re』の客、よく知っている相手。

(なんか雰囲気が変わちゃってる)

 いきなり金的を狙ってくる。

 六月の足を両手で乗せ、跳び箱の要領でジャンプ。頭を飛び越え背後に回る。

 六月は尾赫で攻撃すると同時に、振り返った。

 銀色の尾赫で尾赫を受け止め、反動を利用して距離を取る。

 何度か客として喫茶店『:re』に来ているハイセのことカネキの部下の六月。

 カネキの部下を殺したくはない、それがリオの本心。

 そんなリオに対して、六月は殺しに来ている。

 防戦一方とはいえ、リオのパワーはかなりのもの。何の苦も無く、六月の攻撃をしのげていた。

(このまま防いで、六月さんの体力切れを狙えば……)

 そんなことを思っていたら、

「避けろ!」

 亜門の叫びに、体が自然に反応。飛びのいた場所の床が抉られる。

「仕損じたか」

(すばしっこい奴め)

 SSレートの喰種、ノロの赫包で作られたクインケ、《銀喰》を持ったウリエが駆けつけ来た。

 才子、シャオ、髯丸、晋三平のクインクスが揃う。

 一気にリオが不利な状況に。

 

「六月……ッ」

(無事か、生きている、無事か、六月、無事か無事か無事か)

「瓜江くん」

 六月が駆け寄ってくる。

 生きていた無事だった。喜び勇みたいが、ウリエには班長としてやらなくてはならないことがあった。

「何があった、報告を」

 ウリエの受けた政からの指示は、タタラと戦っている法寺班のサポート。にもかかわらず、肝心のタタラの姿も法寺班の姿も見えない。

「援護に来たのですが、私が到着した時には、すでに法寺班もタタラの姿もなく、代わりに【オウル】と【フロッピー】がいました。一時的に【オウル】を戦闘不能に追い込み、止めを刺そうとしたところ、【JAIL】が現れ、邪魔されました」

 まだ法寺班がタタラの駆逐に成功した知らせは、全部隊に行き届いてはいない。総指揮をとっている政が落ち込んでいるから。

 六月の報告を受け、現場の状況を確認。

 【オウル】と、そして『アオギリの樹』の【墓盗り】が倒れている。

 健在なのは【JAIL】と【フロッピー】。

(よりにもよって【JAIL】だと……)

 キジマ式準特等を殺害、嘉納ラボでは篠原特等、亜門上等、当時、二等捜査官だったとはいえ、あのジューゾーと暁を退け、オークション戦ではSSレート【黒兎】を撃退した。持っている赫子も一種類ではない。

 法寺班のサポートでタタラと戦うつもりで来たのに、待っていたのは【JAIL】。それもクインクス班だけで戦わなくてはならない。

(チッ、やっかいだな)

「クインクス班、戦闘準備」

 指示に従い、クインクスたちは、各自戦闘配置につく。

 

 ウリエと同じようなことをリオも考えていた。

 普通の捜査官なら、骨の一本や二本を折ってやれば戦闘不能に追い込める。

 クインクスは再生力があり、多少の傷なら治してしまう。それこそ手足の一本や二本を取っても治す。

 そんな相手が6人もいる。

 殺したくはないし、殺されたくもない。

 攻撃の隙を伺うクインクス、未だ術を見いだせないリオ。

 突如、クインケ《ドウジマ》を持った亜門がクインクスに攻撃。

 予想もしていなかった襲撃に、一旦、混乱を引き起こすものの、

「有馬72番《銀喰》発動のタイミングを1.5秒ずつずらせ」

 状況に最も適した戦型をは選択し、真正面からウリエが攻撃。その一撃一撃を強力に弾き返す。

 発動させた《銀喰》が伸び、四方八方から亜門に向かってくる。

 これを赫子を飛ばし捌く。

 そこを左側からシャオが蹴りを打ち込み、防御した際に生まれた隙を晋三平、髯丸の赫子連携を食らわせる。

「っし」

「ヒゲ丸、避けろ!」

 ドヤ顔の髯丸に警告するも間に合わず、顔面を殴り飛ばされる。

 続けて晋三平の赫子を握り砕き、殴り倒した後、《ドウジマ》で足の骨をへし折る。

「【JAIL】、滝澤を“待ち合わせ場所”に連れて行ってくれ」

 亜門はクインケ《ドウジマ》を使い、ウリエと交戦中。

「お前と安久を迎えに来るつもりだったが、予定は変更だ。【JAIL】と一緒に行け!」

 いつの間にか、吐きながらも起き上がっていた滝澤は亜門を見る。

「弱いクセに俺よりも……」

 首に掛けていたロザリオを外し、滝澤に投げ渡す。

 このロザリオは亜門にとっての大事な品。孤児院で過ごした日々を忘れないため、自身の無知の罪の象徴。

「俺は馬鹿だ。お前の言うように弱い、それでも戦う」

 たとえ弱くても、その思いと意識は誰よりも強い。

「今度こそ、ちゃんと逃げてくれ、政道」

 ぎゅうとロザリオを握りしめ、ポケットに入れる。

「起きろ盗人女」

 【墓盗り】の髪を掴み、

「死にたくなけりゃ、着いてこい」

 強引に起こす。

「残るのなら、僕―」

 自分が残ると言いかけたリオの肩を掴み、

「“待ち合わせ場所”に連れて行ってくれよ、俺はその場所を知らないんだぜ、俺は死にたくない」

 と言った後、耳元で、

「亜門さんの気持ちを無駄にするつもりか?」

 と囁く。

「くっ」

 そう言われてしまったら、リオも逃げざるを得ない、走り出す。滝澤と【墓盗り】も逃げる。

「みすみす、逃がすかッ」

(馬鹿がベラベラと)

 リオたちの後を追おうとしたウリエの前に、亜門が立ちふさがる。

「通さん」

 

 

 宇井特等とハイルペア対【三枚刃】ミザと『アオギリの樹』ナキペアと白スーツのグループの戦闘。

 人数的にナキたちが勝っていたが、戦いは宇井とハイルのコンビが有利に進めていた。2人の能力の高さだけではなく、愛称もいい、まさしくベストカップル。

 そこへ、いきなり月山習が乱入。

 嘉納ラボで習とナキは顔を合わしているけど、ナキは、全く習のことを覚えてはおらず。

「僕はムッシュと違い、記憶力には自信がある、君には貸しがあるね」

 甲赫をハイルに振り下ろす。そこには怒りの感情が含まれていた。習の使用人、マイロを殺したのは彼女。

「あら、私にはありませんわよ」

 《アウズ》で受け止める。こっちはナキとは違い、惚けているだけ。

 すぐにハイルのサポートに回ろうとした宇井は、いきなり向きを変えた。

「……次から次へと」

 ぎゅ~強く《タルヒ》を握りしめる。宇井の向いた先には黒い犬のマスクを被った女性の喰種が立っていた。

「20区の亡霊が」

 『ブラックドーベル』のリーダーにして『あんていく』のメンバー【黒狗】、『20区の梟討伐戦』で死んだと判断されていたのに。

「亡霊はしつこいものよ」

 腰を低くして飛び掛かってくる【黒狗】を《タルヒ》で払う。

 払われながらも体制を立て直し、さらなる突撃。

 流石の宇井とハイルのペアでも、この人数差とこの顔ぶれでは不利。

「援軍が欲しいしょ」

 習と戦いながら、つい本音を漏らす。

 ハイルの本音は宇井も同感、このままではジリ貧。

「援軍ならいますよ」

 やってきたのは『アオギリの樹』の残存勢力駆逐に回っていた法寺。ライと暁、法寺班も健在。

「私たちは宇井特等と伊丙上等の援護します」

 法寺の号令とともに、法寺班は参戦。

「感謝します、法寺特等」

 何故、ここにとは宇井は聞かなかった。タタラと戦っているはずの法寺班が、ここにいる理由は一つしかない。自然と士気が高まる。

 一方、喰種サイドは気が付いていないので士気は下がらない。とはいえ、それを伝えるような隙を与えてくれるほど、敵さんも甘くなし。

 

「こんにちは」

 《夜桜》を広げたライの対峙しているのはフード姿の相手。得体が知れない。

 その得体の知れない相手も、同様にライに得体の知れなさを感じ取っていた。

 

 

 クインクスと亜門の戦い。シャオの四肢に装着されたブレード型のクインケ《クアイ》の攻撃、才子の赫子攻撃。

 この攻撃に耐えた亜門に、止めだとばかり、ウリエは《銀喰》を投げ付け、遠隔起動させた。

(俺はもう、誰1人、失いたくないんだ)

 ウリエの想いも強い。

 《銀喰》は亜門を貫き発動、喰らう。

 クインクスの誰もが、これで決まったと思った。

「班長、【JAIL】と【オウル】を追いましょう」

 シャオに同意を示そうとした時、異変に気が付く。

 亜門を赫子が覆い、体が奇妙な変形を始める。

 “半赫者”。

「く、来るな」

 必死に亜門は声を絞り出す。

 発射された赫子がウリエとシャオに突き刺さる。

(赫子の異常増大……、共喰い野郎が)

 倒れて、ウリエは血を吐く。

「シャオ」

 倒れたシャオに駆け寄る髯丸。

 半赫者の力が解放されてしまった亜門、自分自身で自分をコントロール出来ない。

 折れた晋三平の足の治癒の時間を稼ごうとした髯丸を壁にめり込ませ、バックアップしていた六月を捕食しようとする。

 起き上がり、刺さった赫子を引き抜いたウリエはフレームを解放。

 フレームを解放すればパワーや回復力は増大する半面、喰種化危険性あり。

(六月、一緒に帰ろう。俺はお前を……)

 右手に赫子を巻き付け、大剣のようにする。

「げりゃあああああああああああああああああッッ!」

 特攻を仕掛ける。

 ペッと六月を吐き出し、《ドウジマ》で迎え撃つ。

 その時、背後から投げ付けられた筒からガスが噴き出す。

 ガスを吸った途端、体が痺れ、ウリエは蹲って動けなくなる。意識も朦朧。

 ウリエだけではない、近くにいた才子、六月も同じ症状になる。

 Rc細胞抑制ガス、喰種の動きを鈍らせる、喰種にとっては毒ガス。赫包を移植したものにも影響が出てしまう。

 ガスの効果は亜門にも及ぶ、しかしウリエたちのように行動不能までには至らず。

 ダメージでシャオ、晋三平、髯丸は真面には動けない。

「この程度のガスでは、やはり動き封じるまでには至りませんでしたか」

 緑色の髪に金色のマスク、白い軍服を着た男が入ってきた。

「誰?」

 クインクスの中で、今、一番元気な晋三平が聞く。

 答えず金色のマスクは晋三平にも、Rc細胞抑制ガスを投げ付けた。

 ガスが噴き出し、晋三平も体が痺れる。

 金色のマスクは亜門を見つめ、

「亜門鋼太郎殿、あなたを一流の騎士と認め、私が相手をしよう」

 腰の剣を抜こうと、柄に手を掛けた。

「待て、そいつの相手は私がやろう」

 そこへキリンをヒーローにしたようなマスクを被った大柄な男が入ってきた。

「病み上がりの肩慣らしには、ちょうど良い」

 ぐるぐると、肩を回す。

 剣の柄から手を放し、素直にキリンマスクに譲る。

「じ、自我がと、飛ぶ、人殺しには、させないで……。殺してくれ、しの……じゅ―――ッッッ」

 抑えようにも抑えきれない。発射される赫子の槍、大きさは小さいが形は【隻眼の梟】と酷似。

 小さいと言っても、危険性はウリエたちで証明済み。

 キリンマスクの周りに、緑色のガラスのようなものが張り巡らされ、飛来した赫子の槍の軌道が捻じ曲がり、周囲に散らばって落ちる。

「全く、いつまで経っても世話の焼ける坊やだ」

 振り下ろされた《ドウジマ》を掴み、背負い投げで床に叩きつけ、起き上がってた来たところを右足で蹴っ飛ばす。

 信じられないほどの威力の蹴り、亜門でなければ粉砕されていたかも。

 倒れた亜門に馬乗りになり、金色のマスクの投げ渡した無針ジェット式注射器を受け取り、口腔粘膜からRc細胞抑制剤を注入。

 Rc細胞抑制ガスとRc細胞抑制剤の相乗効果で亜門は元の姿に戻る。

「どっこいしょと」

 意識を失った亜門を担ぎ上げる。

「お見事です」

 金色のマスクはお辞儀。

「私は自分のやれることをやったまでだよ」

 亜門を担いだキリンマスクと金色マスクは去っていく。

 ウリエたちは後を追おうにも、体が動かない、Rc細胞抑制ガスの効果が切れるまでは、まだ少しかかる。

 朦朧とする意識の中、ウリエはキリンマスクの声をどこかで聞いたような気がした。

 

 

 

 

『ル島上陸6日目、12月20日、0521。殲滅率が98%を突破した。ただいまをもってル島上陸作戦を終了する』

 船内から政が捜査官たちに宣言。

 長い長い『アオギリの樹』との戦いの終わりを告げられても、捜査官の誰もが喜んではいない。

 

『有馬貴将が死に、コクリアが突破された。有馬を殺したのは佐々木琲世だ。奴は喰種を率い、コリアの喰種たちを解放したのだ。そして愚かにも【隻眼の王】を名乗っているとも』

 

「何が最強の捜査官だよ、馬鹿が……」

 学生のころからの知り合いの上等捜査官、富良太志(ふら たいし)。煙草を吹かしながら愚痴をこぼす。

 背後では有馬を慕っていた宇井、ハイルの落ち込みが激しい。憧れを抱いていたハイルは特に。

 

 捜査官たちにとって『アオギリの樹』を壊滅同然に追いやった喜びより、有馬貴将を失った衝撃の方が大きい。

 

 ハイセの指導者を任されていた暁は何も言わず、座り込んでいた。

 一緒にタタラと戦った法寺は掛ける声が思い当たらない、有馬を失ったショックは彼も少なくない。

 さらに回復したクインクス班からの“やり残した仕事”の報告。

 宿敵タタラを倒したことに気を取られていたとはいえ、あの場所に滝澤がいたことに気が付かなかった。

(私もまだまだですね)

 自己反省。

 

「暁さん、どうぞ、ミルクを多く入れておきましたよ」

 暖かいコーヒーをライが差し出す。

「すまない」

 力ない笑みで紙コップに入ったコーヒーを受け取る。

 

『そしてもう一つ、今作戦で我々は、非常に大きな存在を失った。和修吉時局長が殺害された。作戦中、船上にて喰種の襲撃があった。対処が遅れ、私が到着した時、すでに局長は……」

 これが政が落ち込み、タタラ討伐の知らせが行き届かなかった原因。

『乱心したのか、丸手特等は海に投身し、自害した』

 

 

 放送を終えた政。

「丸手を探す、遺体を見るまでは安心はできない。“和修の秘密”を知ったからには生かしてはおけない」

 実際は丸手は海に飛び込んで逃げた。投身には違いないかもしれないが。

「和修の血を守ることが我々の使命、『和修』と『V』の……」

 そこへ部下が飛び込んで来て、和修家が皆殺しになったことを告げた。

 

 

「西野くん、実験資料は持ってきたかね」

 フレームを応用した喰種化施術を施された半喰種たちと、嘉納は撤退を開始。

「はい」

 頷いた助手は、姿を消したニシキの彼女の西野貴未(にしの きみ)。

 

 

 

 

 嘉納たちが去った後の研究施設に、音もなく現れたメイド姿の女性、手にはハンドカメラ。

 ずっと隠れていたのに誰にも喰種にも、その存在、気配すら気が付かせなかった。

「この記録、ルルーシュ様に届けなくてはなりません」

 凄惨な記録を収めたのに、あまり表情に変化なし。

 

 

 




 ジェレミアと咲世子が登場しました、そしてキリンマスク。
 本編で登場した宇井のクインケを受け止めたフード姿の喰種、その正体は本編でも明かされてはいません。
 一体、誰なんでしょうね。ネットではミルモ説とリゼ説が有力。以外にヒデかも。
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