佐々木琲世の声優はカネキと同じ、花江夏樹さん。
ウリエ、シラズ、六月、才子の声優は誰になるのでしょう、とても楽しみ。
本来はル島から帰還するなり、“裏切り者”の討伐作戦を行うはずだった。
今までCCGを支配してきた和修家が、政を残し、何者かにより。皆殺しにされた。
総議長、和修常吉(わしゅう つねよし)の遺言状が見つかり、分家の旧多宗太(ふるた そうた)を次期局長に推薦すると書いてあった。旧多宗太とは旧多二福の本名で分家の血を引いていた。
このようなことが重なり、政が放心状態になってしまったのである。
ライは暁と一緒に、局に来た。
ハイセの指導者であったため、CCGでの風当たりはきつい、それでも暁は来た、やることがあったから。
やることをやる暁と別れたライは、暇を持て余してソファに座り、今朝買ってきたリンゴをカバンから出して齧る。
『ル島上陸作戦』終了後、喰種による捕食事件が激減、下位捜査官のライには、あまり大した仕事は回って来ない。
『アオギリの樹』が壊滅した影響も大きく、喰種たちは鳴りを秘めていいる様子。
リンゴを食べ終えたころ、特等会議を終えた宇井と黒磐と法寺が出て来た。
煙草を吸おうとした宇井。未成年のライがいたので、取り出した煙草をしまう。
このところ、ハイルはCCGを休んでいる。今日も自宅で引きこもり中。
宇井は有馬を失ったことが原因だと考えている。特等でなければ宇井自身もショックで寝込みたい気分。
特等の立場は、それを許してはくれない。
「黒磐特等」
黒磐の姿を確認した二等捜査官の五里美郷(ごり みさと)が呼び止める。傍には伊東と武臣。
「伊東、武臣、美郷、我々は我々なりにできることを」
との言葉を贈る。黒磐の言葉にはどこかしら熱さを感じられる。
「宇井さん」
「伊東くんくん、何?」
伊東が駆け寄る。
「タケさんから、何か聞いてなかったんスか」
「いや」
「そうスか」
CCGを裏切ったのはハイセだけではない、平子と0番隊も裏切り、【隻眼の王】ハイセと行動を共にしている。
「確かにタケさんは、いつも何を考えているのか解んなかったけど、それでも俺はあの人に信頼されていると思っていました」
元々伊東は平子の部下、とても信頼していた。
「タケさんが特別指名手配犯なんて、納得いかない!」
感情が込み上がる。
「宇井さんにも言わず、あんなこと」
壁に凭れて宇井は話を聞いている。
「それに琲世も、あんな恩を仇で返すような」
黙って話を聞いていたライは、
「ちょっと、いいかな」
手を挙げて話に入る。
「ハイセさんは私利私欲で裏切るような人じゃないと思う、現に彼の戦いは、いつもそうだったでしょう」
言われてみればその通り、【オロチ】の時も【オウル】の時は危険な相手と分かっていて、あえて1人で残った。教え子を守るために。
「しかし佐々木琲世が、有馬貴将を殺害したのは事実では」
法寺が言ったのように、ハイセが裏切った事実は揺るぎようがないこと。
「何か理由があった、それもCCGを裏切るだけの理由。それは決して私利私欲のためじゃないと思う」
みんな押し黙る。最近のハイセの様子はおかしかった。それでもこれまでの彼の人となりを考えれば納得できる部分はある。
「じゃなんで、琲世はあんなことをやったんだ……」
伊東の疑問はハイセに対してだけではない、平子に対してでもある。
「それは僕にも解らない、有馬特等とは、あんまり親しくなかったからね。親しい人なら、何か解るかも知れないけど」
親しいと言えば、ハイセとともにCCGを出て行った平子と0番隊。平子は有馬の相棒である。
「!」
この時、宇井の頭にはある人物の顔が思い浮かぶ。
クインクスにもハイセの探索の任が下る。特に晋三平は息巻いていた。『コクリア』で清子が重傷を負わされ、今も入院中なので。
晋三平に付き合う髯丸。
これも任務だと自分に割り切らせようとするウリエ、才子と六月は、それでも指導者だったハイセを信じている。
ウリエがシャオに車を出すように言おうとした時、
「ちょっといいか?」
話し掛けてきた暁。
「何でしょうか」
班長が代表して応対。
「ル島でお前たちがあった“男”について聞きたい」
喰種や【フロッピー】とは言わなかった。
「解りました―」
ウリエはル島での一件を詳しく話す。
「連れて行った奴のことはどう思う?」
話を聞き終えた暁。
「金色マスクとキリンマスクは喰種の可能性は低いでしょう。あの2人はRc細胞抑制ガスの中で平気で動いていた」
自分たちクインクスも影響があったのに、金色マスクとキリンマスクには影響が出ているようには見えなかった。
ウリエはキリンマスクの声に聞き覚えがあるかもとは言わない、不確かなことは口にしない方がいい。
教え子が裏切った暁、指導者が裏切ったウリエ、才子、六月、それも同一人物なので想いは似ている。
あっていなくても暁はル島に現れたのが、誰なのかは解る。
(亜門、今、お前はどこにいるんだ……)
集まるカネキ、トーカ、ニシキ、ヨモ、習、アヤト、ナキ、白スーツ、ミザ、クロ、平子、0番隊。
新しい組織の名前は【黒山羊(ゴート)】。
「ご迷惑をかけました習さま」
恭しくお辞儀をする松前。
『コクリア』に収監されていた松前、他の喰種たちと一緒に解放されていた。
「お前が無事で良かった、本当に良かった。カレンは僕を庇って……」
松前を習は抱きしめる。
「お気づきなられたのですね」
カナエという男性として習に仕えていた執事。実はカレンという名の女性で習に想いを寄せていた。松前は早くにそのことに気が付いていた。
「カネキくん、松前を助け出してくれて感謝する。この恩は必ず返す」
カネキの前に行き、深く深く頭を下げる。紳士的な態度と口調で、何度もカネキを騙したことはある習も、今回ばかりは本心中の本心。
「恩を返さなければならない人物は、もう1人います」
カネキに断りを入れてから、
「詳しく」
再度、習は松前の前へ。
「『ルナ・エクリプス』にて万事休すに陥った私を殺さずに、気絶させるだけにしてくれました《白鳩》がいます。私を殺せば手柄になったというのに……。気を失っていなかったら、他の捜査官に殺されていたでしょう」
駆けつけてきた捜査官はかなりの腕前、疲労していた松前では確実に駆逐されていた。
「その捜査官の特徴は?」
使用人が恩を返さなければならない人物なら、主人である習も同じ。「プラチナブロンドにブルーアイ、とても綺麗な顔立ち、《白鳩》では見たこともない子供なのに、相当の手練れ」
松前の攻撃の全てを凌いで見せたほどの実力。松前も武に秀でているからこそ解る。
「カネキくん、知っている《白鳩》かな?」
知っているも何も、そんな特徴に一致する捜査官は1人しかいない。
突如、16区、19区、22区の支部のCCGビルがピエロの襲撃に合う。
それそれ、クインクス、ジューゾー、黒磐率いる班の活躍で殲滅率を1割を越えたところでピエロは撤退した。
武臣は特等会議後の法寺を誘いお昼を食べに行く。ライ、才子も付き合う。
ウリエに聞いたと言って武臣は次は本局を守るのかと質問、法寺はそうだと返答。
道すがら法寺は、今回のピエロの襲撃のパターン、過去の攻撃パターンを分析した旧多は次に狙われるのは本局と判断、かと言って本局に守りを集中させれば各支部が襲撃されてしまう。
以前、ピエロ相手に同じ状況に陥った時、吉時は各局の守りはそのままにして、有馬に本局を守らせた。
今回は亡き有馬に代わり、ジューゾーが本局を守ることを提案し、本人も了承、特等会議にて、正式に受け入れられた。
「法寺特等、会議の内容をベラベラ話していいのですか?」
武臣の言う通り、特等会議の内容を簡単に下位捜査官に話していいものではない、普段の法寺もベラベラしゃべるような人物でもなし。
「ライくんの意見を聞きたいと思いましてね。これも見てください」
カバンから出した旧多の作った資料を渡した。これも違法に近い行為。
歩きながら受け取った資料に目を通す。
読み終えるのを見計らい、
「どうです」
と問う。
法寺、武臣、才子の注目を受ける中、
「そうだね“旧多一等がそう言うなら”その可能性は高いと思うよ」
こんな風にライは答えた。
聞いた答えを法寺は、よく噛みしめ、
「今度の作戦、鈴屋班には、あなたも加わってくれませんか?」
と頼んできた。
「いいですよ」
あっさりと受け入れた。2人ともあっさりとしているように見えて、しっかりと考えている。
ライと法寺のやり取りを見て、才子と武臣も各々考えを巡らせていた。
そうこうしているうちに、目的のパン屋、依子の働いているパン屋に到着。
パン屋に入って、才子がお冷を飲んでいると、
「小坂」
いきなり武臣が、
「結婚しないか」
プロポーズをかます。思わず才子は水を噴き出し、もろに法寺は被害を被ってしまう。
そして依子の返事は……。
「はい」
再び才子は水を噴き出し、二度目の被害を受ける法寺。
「おめでとう、でもフラグには注意してね」
マイペースで祝福したライは、意図してかしないでかフラグ折りもしてくれた。
すでに両親の許可を受けていた武臣は婚姻届けも持参、ライ、法寺、才子を証人にしてサイン。
その足で依子の両親に挨拶に行く。
特等会議後、すぐに宇井は本局を抜け出していた。
誰にも見つからないよう、向かったのはハイルの自宅。
ピエロの襲撃時にもハイルは来なかった。心配な気持ちは本当、もう一つ、先延ばしにしていたことを聞こうと決めた。
自宅の前まで来た時、出てきたハイルの姿を見かけ、物陰に宇井は身を隠す。
出てきたハイルの両手にはアタッシェケースがある。
後を着けることにした。ストーカーみたいな気はするが、そんなことは言ってはいられない、クインケの入ったアタッシェケースを2つも持て出かけるなんて、ただ事では非ず。
喫茶店『:re』の調理場でカネキは料理をしていた。
「さぁ、出来たよ。温かいうちに食べて」
0番隊の僧頭理界(そうず りかい)リカイ、有馬夕乍(ありま ゆさ)ユサ。伊丙士皇(いへい しお)シオの前に出来立ての料理を並べる。
コーヒーを淹れているトーカの顔は複雑。
以前、トーカが食事を作ったら、ユサとシオにまずいと不評を買い、そこでカネキが作ったらうまいと絶賛された。
今日はリカイを交え、昼飯を作ってあげたカネキ。
カネキの作った料理をリカイ、ユサ、シオが美味しいと喜ぶ姿を平子はカウンターの隅に座り、トーカの入れたコーヒーを飲みながら眺めている。
カウベルが鳴り、来客の知らせ。
「悪い、しばらくは臨時休業なんだ」
トーカがそう告げた後、一同は凍り付く、入り口に立っていたのは上等捜査官のハイル。
「ハイルお姉ちゃん」
ただ1人凍り付いていないシオはハイルの遠縁の親戚にあたる。
「お久しぶりですね、佐々木準特等捜査官、いえ、金木研。有馬さんの敵討ちに来たっしょ」
宇井も特等、ハイルに見つからないように追跡するのは難しいことではない。
ハイルの入った喫茶店『:re』はライやクインクスが美味しいと言っていたのを耳にしたことがあり、一度は行ってみたいなと思っていた。
コーヒーを飲みに来たと思ったのも一瞬のこと、ただ単にコーヒーを飲みたいのなら、クインケの入ったアタッシェケースを、それも2つも持って来るはずがない。
喫茶店からハイルとハイセが出てて、続いて平子に0番隊の3人。最後に出てきたのはトーカ。
重要指名手配犯が揃って出て来た。驚きのあまり、宇井は口を押える。そうでもしなければ声が飛び出していただろう。
再び追跡を開始。特等なら連絡するのが当然の義務、それに大きな手柄にもなる。
しかし宇井の中にある、何かが知らせるなと、告げていた。
「私が“勘”に従うなんて、焼きが回ったのかもしれませんね」
喫茶店『:re』に訪れたハイルは、有馬の敵討ちと、カネキに一対一の決闘を申し込む。
いくらハイルでも、いきなり店内では暴れることはしない、場所を変えることに。
カネキも喫茶店『:re』で戦うよりはましと考え、有馬を殺したという建前がある以上は断れない。
決闘の申し出を受け入れ移動。
見届け人としてトーカ、平子、リカイ、ユサ、シオがついてきた。
不測の事態に備え、ヨモ、カヤ、古間は留守番。
シオは内心、ハラハラしていた。ハイルに喫茶店『:re』の場所を教えたのは彼。遠縁の親戚にあたるので昔から仲が良かったこともあり、アカウントを登録していたメールで頼まれ、つい教えてしまったのだ。
やってきたのはコンテナ置き場。辺りにはカネキたち以外の人影はない。物陰で見ている宇井以外は。
「さぁ、始めましょう」
左手のアタッシェケースを置き、右手のアタッシェケースを開き、《アウズ》を展開。
トーカ、平子、0番隊を下がらせ、《アウズ》の一撃をカネキは赫子で受け止める。
完全には防ぎ切らず、《アウズ》は赫子がめり込む。このままでは切り落とされる。
そこで赫子で赫子を叩き、その衝撃でハイルを吹っ飛ばす。
運動能力の優れたハイルは体制を立て直し、《アウズ》で突く。
足で踏んで《アウズ》の突きを止める。
すぐに《アウズ》を手放し、置いてあったアタッシェケースを展開、もう一つのクインケ、大砲型の《T-human》を取り出した。
《T-human》から放たれる電撃。同じように電撃を放つ有馬のクインケ、《ナルカミ》よりは劣るものの、威力は十分。
赫子を重ね掛けにして受け止める。
何度も何度も電撃を打ち込むハイル、何とか防げているが、いずれは赫子の盾は砕けてしまう。
電撃を受け止めながら強引に突進、ハイルに体当たり、すなわちシールドアタックを食らわせる。
これにはたまらず、地べたを転がっていく。
さらなる攻撃を繰り出そうとするカネキの姿を見た宇井、思わず飛び出そうとした。
《T-human》を投げ捨て、両手を挙げたハイル、カネキも攻撃を止める。
「私の負けです、降参」
呆気な過ぎる幕切れ、立ち上がったハイルはコートの土ぼこりを払い、
「有馬さんから言われていました。自分を倒すような相手が現れれば、その者に力を貸すようにと」
言うまでもなく、敵討ちとは口実、本位はカネキの実力を試すため。カネキが弱かったら、殺すつもりだったけど。
「有馬貴将の遺言に従い、伊丙入、これより佐々木、いえ、金木研に力を貸します」
手を差し出す、その手をカネキは握り握手。
「ようこそ、ハイルさん、歓迎します」
隠れて見ていた宇井、パズルの一つ一つが組み見あがる。平子先輩と0番隊が裏切った理由が解った。有馬特等に、そう言われていたから。
同じ理由でハイルもハイセ側に着いた。
何故、ハイセが裏切ったかまでは解らない。ただ、やり取りを見ればライの言った『ハイセさんは私利私欲で裏切るような人じゃないと思う』の言葉は正しいことは間違いない。
有馬特等と行動を共にしていた0番隊、有馬特等を慕っていたハイル、有馬特等の相棒の平子、有馬特等を父親のように思っていた弟子の佐々木準特等。
そして有馬特等自身も、佐々木琲世に執着心を見せていた。
(金木研? 篠原特等が調べていた青年……。佐々木準特等が金木研だというのか?)
あと一つピースが足りない、そのピースがはめたらパズルは完成するだろう。
あと一つピースが知りたい、物陰から飛び出したい気持ちはあったが、何故か踵は返えり、コンテナ置き場から離れて行ってしまう。
話を聞くのが怖かった。もし聞いたら、これまで宇井の積み上げてきたものが崩れそうに思えた。
ラストでは宇井がカネキたちの前に出てきて、事情を聞く案もありましたが、旧多の関係を踏まえて、立ち去る方になりました。
シオの名前に士皇、皇の字が入っていた……、気が付かず、タイトルがややしいことに。
タイトルの皇はシオくんとは違いますからね。