くんくん、匂いを嗅ぎながらオッガイたちは友達と雑談するする様に、コンテナ置き場を散策。
オッガイ、クインクスと同じように赫包を移植し、さらに上のステップへ引き上げた部隊。
「はじめ」
「急かすな、待て」
鼻がお目立ての匂いを補足。
「8番目だ」
隊長のはじめを先頭に、匂いの元のコンテナの前へ走っていく。
コンテナにたどり着き、はじめは戸を蹴破った。
中には喰種の親子が隠れていた、娘は震えている。
「ビンゴォ、さっすが」
「軽口不要即刻駆逐」
娘を守るため、母親は赫子を出した。
「あっ」
「赫子を出した」
「やべーやべー」
「あはは」
あははははははは、ははははははははははははは。
ははははははははははははははははははははははは。
歯歯歯歯歯歯歯歯歯歯歯歯歯歯歯歯歯歯歯歯歯歯歯。
笑いながらオッガイたちは赫子を使い、母と娘共に抹殺。
六月たちに喫茶店『:re』が見つかってしまったため、月山の用意した隠れ家へ移ったカネキとトーカ。
第二の『あんていく』として育ちつつあった『:re』を失うのは辛いこと、失いながら、それでも喰種は生きていく。
『:re』から持ってきた道具でトーカがコーヒーを淹れ、カネキに渡す。
「ありかどとう、トーカちゃん」
飲む、相変わらず美味しい。
2人きり、2人の世界、男と女、自然と高まってくるムード。どちらかともなく見つめ合う。
カネキとトーカの心臓の鼓動が高まっていく……。
「カネキくん」
息を荒げながら、月山と松前が飛び込んできた。
「とても大変だよ」
「緊急事態なので失礼いたします」
テレビに映し出される喰種の屍の山、山、山、男、女、老人、大人、子供も無差別に。
「お山分、世界は平和になりました」
“山”の上に旧多は立つ、まるでお立ち台の上に立つごとく。
「これまで人間は喰種に狩られ喰われるだけであった」
“山”の周囲に、無言で立ち並ぶオッガイ。
「我々、オッガイの目的は“東京完塞”全職種の殲滅である!」
ピッと人差し指を立てる。
「反撃だ」
呆然と見ているトーカ。カネキはリモコンを手に取り、テレビを消す。
アヤト、ミザ、ヨモを呼んで緊急会議。
「やられたのは【黒山羊】の第3メンバー。潜伏中というのに襲撃を受けた」
月山は仕入れた情報を話し、
「他にも隠れ住んでいた喰種もやられました。おとなしくしていたのにも関わらず」
松前は補足。
オッガイの動きは予測できなかった。その日のうちに捜索し、その日のうちにアジトが見つかる。ひっそり潜んでいた喰種まで。
「赫子を使う、数は十、100はいるかもしれない」
ヨモの言った赫子を使う捜査官。大いに心当たりのあるカネキ。
「……クインクスか」
指導者だったからこそ、その強さは解る。
「しかし、CCGとオッガイは敵対しているだろう」
ミザもテレビで旧多がCCGに宣戦布告をしているのを見ている。
「CCGとは別組織でしょう」
CCG以外でクインクス施術できるのは1人しか思い当たらない。ならば、オッガイはかなり厄介な存在だろう。
「各アジトを解散しましょう」
決断は早い。
「これからは常に移動する、動き続ける必要がある」
移動し続ければアジトを襲撃されて全滅という事態は避けれるし、攪乱もできる。
その反面、組織の連携が取らない。そこで各班に分け、班長同士で時間と場所を決めて落ち合う。
そしていずれ、行きつく着く場所は……。
都内某所にある定食屋、ちょうど今日で開店10年。
「早いな、月日が経つのは、常連さんも久々に顔出してくれてさ」
しみじみと店長は、これまでのことを思い出す。
「憧れるよな、そういうの。僕もいつか自分の店が持ちたいスッよ」
コップを磨く店員。
「冷やかしに行ってやるよ、ははははは」
楽しそうに雑談を交わす店員と店長。
りんりんとドアベルが鳴る。
「根暗班長がいねーで気楽だな」
「だね」
「索敵の制度は下がるけど」
がやがやと少年の一団が店に入ってくる。
「トルチョックしようぜ」
「トルチョック」
客にしては様子がおかしかったが、
「いらっしゃいませ……?」
とりあえず店員は挨拶。
店長が振り向こうとした瞬間、少年から伸びた赫子が頭を割る。
「ぎゃあああああああああああああ」
あまりのことに悲鳴を上げる店員の口を掴んで黙らせる。
「喰種対策局、オッガイの黛(まゆずみ)でーす、捜査活動のご協力、ご理解に感謝いたします」
黛の顔は笑っている。
「大方、一見客に目エつけて喰い漁っていたんだろうw」
「立ち読みはご遠慮は、ください」
立ち読みをしていた女性は、慌てて読んでいた本を元の位置に戻そうとした。首が赫子で跳ね飛ばされ、店内を転がっていく。
あちらこちらで店員、客たちの悲鳴が上がる。
「喰種処分終わりました」
「みなさん、大変失礼いたしました」
と口で言いながら、へらへらしているオッガイたち。
商店街の隅っこに追い詰められた男を、意気揚々とオッガイたちは取り囲む。
辺りに集まる野次馬。
「お、俺は喰種じゃない」
震えながら命乞い。
「残念、おれたちの嗅覚は騙せませーん」
「嘘吐きは泥棒の始まり」
「喰種は一巻の終わり」
振り下ろされた赫子で、から竹割り。
動かなくなった喰種を確認。
「安心してくださーい、悪い喰種は退治されました」
「もうすぐ、喰種のいない世界がやってきますよ」
「皆さんの平和は、我々オッガイが約束いたします」
連日、メディアを使った旧多のCCGへの非難。この工作により、世間からの風当たりが強くなっていくばかり。
旧多の暗躍の背景には和修家の血が作用しているのは明白。政財界に及ぼす和修の力は少なくない。
今までCCGの力になっていたものが、敵になってしまった形。
まさに事態は旧多の思い通りに進んでいる。
「武臣」
廊下で姿を見かけた伊東は声をかけた。今は武臣は依子とハネムーンの真っ最中はず。
「旅行先でテレビを見た」
それで急いで帰ってきた。
「しかし、お前……」
折角のハネムーンなのに。
「みんなが大変な時に、俺だけが楽しむわけにはいかない。ハネムーンは後日にすればいい」
これは依子も納得してくれたこと、彼女も喰種捜査官の妻なのだ。
本日も特等会議にライは呼ばれた。
「今まで私たちは命がけで、喰種と戦ってきたのに……」
宇井の言ったことは彼1人だけのものではない、CCGの捜査官共通の思い。
これまでの命がけで喰種と戦い、殉職した捜査官も数知れず、それを旧多のデマ1つで踏み躙られてしまった。
最悪、これからは助けようとした相手に攻撃される可能性もある。肉体と意味ではなく、精神的に。
手を挙げるライ。否が応でも旧多の計略を破った彼に期待が高まる。
「政財界というところは面白い所でね、活躍する連中がいれば、それを快く思わない連中もいる。敵対関係が鍔迫り合いしながら成り立っている世界なんだ」
ハーイハーイとお菓子を食べていたジューゾーが大きく手を振る。
「じゃ旧多の力になっている奴らを、気に食わないと思っている奴らもいるってことですか~」
そうとライは頷く。
旧多のバックに着いているのは和修家の息のかかった派閥。今までも対抗する派閥はあり、お互いが駆け引きをしながら、今日まで行動してきた。
「なるほど、その連中を動かすとしても、どうやるのでしょうか?」
どうやるのかと宇井は問う。あの狡猾な旧多のこと、そう簡単には、この状況はひっくり返せない。
「目には目をデマにはデマを」
にっこりとライは笑う、悪い笑顔でも綺麗な顔。
黒いニット帽を被った少年が追われている、追跡者はオッガイでない旧多配下の捜査官たち。
1人の捜査官が発砲、弾は溶かした赫子を練り込んだQバレット。これなら、喰種の皮膚も傷つけることができる。
足を撃たれ、倒れた黒いニット帽の少年は赫眼を発現させた。落ちるニット帽。
「確保」
捕獲しようとした捜査官たちは、突然現れた【黒山羊】のナギに一掃された。
「おわっ、早ェ」
「兄貴1人で」
承正やホオグロの部下がやってきた時には片付いていた。
「大丈夫かガキんちょ」
ナキは落ちたニット帽をかぶせてやる。
「ありがとう」
「“情けは人の為ならず者”ってな」
微妙に間違っている。
「“黒いの”がくるまえに、早く地下に潜るぞ」
「お前も来るか?」
ナギたちに誘われ、ニット帽の位置を直しながら、
「地下?」
と尋ねた。
「【黒山羊】のアジトだよ、どうせ、行く当てはねーんだろ」
子供には優しいナギ。
「お前、何て名前なんだ?」
「甲(こう)です」
名前を聞いても、ナキは忘れたり間違って覚える可能性が高い。
次の章と一つにしようと思いましたが、長くなりそうなので分けました。
原作通り、甲くんは地下の24区へ行きまとた。