2088年 都内某所 秘匿研究所Dα地区
《・・・です、初期からの生・・・%です。》
《適性者・・・人、内3人・・・・。
全員のバイ・・・注意域です。》
「・・・・・・・・・・」
・・・声が聞こえる。
俺たちにとって聞き慣れた、毎日聞く冷たい声。
その声で俺は再び意識を取り戻し起き上がる。
《・・・そうか、ん?んんん!?
おぉぉぉぉぉ!!
よくぞ目を覚ましてくれたよ被験体No.6!
今日の実験はさぞハードなものだから目を覚まさないんじゃないかと心配したんだよ!!!!》
俺の姿を見たあいつが耳障りな大きな声で俺に話しかけた。
そして俺もそいつに視線を向けて顔を見る。
・・・忘れることもできなくなった、俺たちを連れてきてこんなことに巻き込んでいる張本人。
人の命を・・・俺らをそもそも人と扱わない下衆の象徴、諸悪の根源。
「・・・」
《フホォォォォホホホホホ!
君のその反抗的な目!たまらないねぇ!
そしてそれに見合わぬデータの数値!!!
私をここまでコーフンさせるのは実験を行ってる君達の中でも最高の逸材だ!!!
さぁ!他の個体も目を覚ました事だし実験を再開しよう!!
次の実験は膨大なサイオンの合着実験を》
《やめてください筿原博士!
彼らはもう危篤寸前のバイタルです!
これ以上の実験は彼らの崩壊・・・失敗を意味します。》
《私も軽部に賛成です。
我等の悲願をそんな事で水泡にしてしまうのは些か不毛かと。》
・・・俺の周りで起き上がった同じ奴らの事など気にもせず。
ガラス越しの奴らは話を続ける。
・・・見回して見たが、たしかに他の奴らはボロボロだ。
次に実験を行おうものなら確実に壊れる。
・・・あいつにはそれがわからないようだ。
《ふぅぅむ、まだいけると思うのだがねぇ・・・・まぁ確かに。
私の研究がその程度のことでおじゃんになるのも不愉快だ。
引き際を心得てこそ真のサイエンティストと言うもの。
さすがに実戦式魔術展開実験と新型魔法製造テストはさすがに連続ではダメか。
・・・本日の実験は終了とする。
研究者諸君は今日手に入れたデータを全てフィードバックし、新たな魔法の開発へと勤しんでくれたまえ。
防衛兵諸君、それを休息部屋に。》
あいつが指示を出したすぐ後、俺たちのあるエリアに銃を持った男達が入ってきた。
男達は起き上がった俺たちを乱暴に掴み上げて手枷をつけエリアから運ぶ。
《クククク、明日から楽しみだ!!!
彼には特に面白い実験を用意しなきゃ!
うぇははははははは!!!!!!!》
聞きすぎて吐き気を催しそうなその声を聞きながら。
俺は男に運ばれていった。
ドサッ!
「かはっ!?」
俺を運んだ男が俺を放り投げ、
手枷のせいで受け身も取れなかった俺は背中から部屋の床に叩きつけられ、肺の中の空気を吐き出した。
「ったく、いつまで続くのかねぇお前らの運搬係。」
「しょうがねぇっすよ。
あのイカレ博士が気がすむまでやらせろって上からのお達しじゃないっすか。」
「こちとらいつ爆発するかわからん爆弾抱えてるもんなんだから。
こっちの身にもなれってんだ。」
「そんな爆弾、投げたりしないじゃないっすか。」
「そういえばそうか、ガハハハハ!
おいガキ!今のことあのいかれ野郎に話したら真っ先にぶち殺してやるからな!」
男達は下品な声で笑いながら部屋を出て行き、次第に声が遠ざかっていった。
「・・・・ふぅ。」
俺を痛めつける大人達が立ち去り、俺は寝床に腰掛ける。
実験が終わった後にわずかに与えられるこの休息の時が俺にとって・・・いや、
他の奴らにとっても唯一自分を保つための時間だった。
「・・・痛く、なくなってる。」
自分の腕を見て、先ほどもう治っていることに気づく。
奴らの研究の成果か・・・それともすでに俺がおかしいのか。
非現実的な位置にいるはずの俺は恐ろしく冷静でいることができた。
俺がここにいる理由は詳しくはわからない。
けれど俺たちの両親がテロに遭い、両親をころされて軍隊の格好をした男たちに保護されたことが要因だということはなんとなくわかった。
奴らは身寄りの亡くなった俺たちを実験の材料にしてる。
始めに行われた魔法師適正改造実験では遺伝子操作が行われ、連れてこられた数十人のうち半数が精神を壊され廃人となった。
適応した半数の奴らもその次に行われた調整体改造実験によりさらに半分に減り、
そしてそのさらに半数が実践式強化実験、つまり互いの殺し合いで死亡した。
今ここに生きてる俺達の数は、もう両手を使って数えれるほどにしかいなかった。
今日行った二つの実験だって本来ならばすでに全滅しててもおかしくなかった。
ただみんなが強かっただけ。
「・・・いつまで続くのかなぁ、これ。」
誰もいない部屋で1人ボソリと呟いた。
もう俺達の数は残り少ない、新たな実験体を追加でもしない限り続かなくなるはずだ。
そうなるとあいつらはどうするのかな?
また新たな
ガシャン
「・・・・ご飯の時間よ。」
色々考えてた時、俺達に食事を与える係らしき大人が現れた。
女の人でこの人だけは他の奴らと違い俺達に乱暴をしない。
それどころか傷がないかなどをチェックしてくれる、ここでの唯一の『いい人』だ。
俺はわずかによそわれたご飯と何かの肉を手錠をつけたまま食べる。
・・・美味しくもないし不味くもない。
味覚に異常があるのだろうか、それともこれがそういうものなのか。
「・・・あなた達に辛い実験をさせてしまってるのは分かってる。
・・・ごめんなさい、けど大丈夫。
もう直ぐ実験は終わるわ。
苦しむ事はもうない、この実験を終えたらあなた達のことを・・・」
女性はそこまでいうと言い澱み、俺の部屋を出た。
『もう直ぐ実験が終わる』、
その言葉に確証はなかったが・・・今までで一番聞きたかった言葉だった。
その後俺は食事を終えて皿を所定の位置に置くと、
布団もない無機質なベットに横たわり眠りについた。
・・・直ぐにくるであろう、実験の終わりを夢見ながら。
翌日
《フォォォォォッホホホホホ!
やぁやぁ実験体の諸君!君達にいい知らせだ。
今まで行ってきた実験だが、今日でおしまいにしてやる。》
それは突然だった。
あれほど実験をしたがっていたあいつが、俺達を集めてこう喚いたのである。
突然のことに対応しきれない俺達に、あいつは顔をにやけさせながら切り出した。
《君達が最後に行う実験はそう!
対多数戦闘実験、および集団戦闘実験だ。
つまる話、実験体No.6をターゲットとしてここにいる6名のうちNo.6を除く5人で!
No.6を殺すのだ!
No.6はその5人を全員殺すのみ、簡単だろ?
5人全員を抹殺できたらNo.6を、No.6を殺せたらその時生き残っていた5人のうちのメンバーをここから出してやる。
フォォォォォ!盛り上がってくる内容じゃあないかぁ!
フォォォォォッホホホホホ!》
「・・・・・・な・・・なにをいって・・・」
あまりにも無茶苦茶だ!
ここにいる俺以外を一人で・・・ましてや俺が同じ立場の奴を殺す?
「そんなの・・・出来るわけ」
《出来ないのかなぁ?No.6!
そんなわけあるか!お前はこのメンバーの中で最も性能が優れているんだぞ!
それに殺したくないなどと甘い考えがあるなら棒立ちで殺されるがいい!
まだ死にたくないだろう?私はお前を死なせたくはない。
なぜならお前はこの実験の最高傑作だからなぁ!》
い、イかれてる・・・あいつはマジでイかれてる!
本能的に察知した俺は状況を見ずにあいつに叫ぶ。
「そんな事、・・・そんな事こいつらはやるはずが!」
刹那、
ドン!
「うぐっ!?」
横から押し出されたような強い感覚、その直ぐ後に来た昨日味わった叩きつけられる感覚。
床に崩れ落ちた後俺は衝撃が片方を見た・・・見なかった方が良かったのかもしれない。
そこにいたのはあいつの狂気に飲まれたかのように殺意ある目を俺に向ける他の奴ら、
皆一応に腕につけたブレスレット型CADに手を当てている。
「な、なんで!?」
《フォォォォォッホホホホホ!
やはり生存欲は同種でも殺すんだなぁ!
これはいいデータが取れそうだ!
それじゃ、このまま始めちゃおうか!
最後の実験!
よーーーーーーーい、スターーーーーーートォォォォ!》
その声の後に奴らが一斉に俺を殺しにくる
襲い来る殺意、狂気を見上げる顔。
その時初めて・・・俺は恐怖した。
「や、やめろぉぉぉぉぉぉぉ!」
数時間後、
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ。」
血まみれになった俺のいる場所、
頭が飛び体だけになった奴らだった死体、
そして血に濡れた俺。
まさに地獄だった。
妙な力が発生し、俺が手を払うと奴らの首や腕が飛び。
手を突き出すと周りのものが飛び出して奴らを突き飛ばし押しつぶす。
頭がおかしくなりそうだった・・・いや、もうおかしいのかもしれない。
《ふぉ、フォォォォォォォォォォォ!
フォォォォォォォォ!
素晴らしい!素晴らしいよNo.6!
まさか本当に生き残る上に新型魔法を完成させるとは!!
正に最高傑作ダァ!
フォォォォォッホホホホホ!》
そしてスピーカーから響くあいつの声。
おれは反射的に顔をあげた。
《はぁ・・・はぁ・・・わ、笑い疲れてしまった。
ともかくおめでとうNo.6、君は合格だ。
ここから出してやろう・・・》
あいつがそう言うが今の俺には何も響かない。
あれだけ待ち望んだここを出ると言う話なのに今の俺にはそれを喜ぶ頭を持っていない。
人を殺した俺に、外を出ることができるか?それを考えて俺は頭から
《・・・嬉しくないように見える、か。
まぁならば冥土の土産・・・ではないが君に秘密を教えよう!
君達が実験体となった原因のあのテロ、あれは何故起きたと思う?》
しかしあいつのその言葉に俺はハッと再び顔をあげた、
それを待ってたかのようにあいつは笑い、言った。
《あれね?
私が指示して起こしたんだよ。》
「!?」
《そりゃ驚くよなぁNo.6!
だが、我々にはあぁやって実験体を手に入れる他ないのさ!
安い外国産の子供は脆くて実験体になりゃしないし国際問題は面倒だ!
だから!だからこそ!国内でテロを指示して孤児を生み出し、
それを実験体にする。
これで我が研究は保たれているんだよ!》
「じ、じゃあ俺の・・・父さんと母さんも!?
まさかお前が!」
《責任的にはそうなるかなぁ?
まぁ、私の栄誉ある開発と研究のための人柱になれたのだから光栄だろう!
フォォォォォッホホホホホ!》
愉悦しながら、嘲笑いながら、あいつは語る、そもそもの事の発端を。
楽しんでるんだろう、悪意ある言葉で俺を弄んで。
だが・・・今の俺は・・・
「・・・うぅっ・・・・ぅぅあ、
うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
こいつへの殺意しかなかった。
俺はさっきの力(新型魔法・・・と言ってた)を使って周りにある死体を持ち上げ・・・
いや、浮遊させる。
そして腕を動かすことでそれをあいつのいる窓のとこへと投げつける。
子供とはいえ死体か勢いよく投げつけられたことによりガラスは割れ、
中にいる大人がパニックになる。
《・・・素晴らしい、
もはや新型魔法を使いこなしているとでも言うのか?
・・・これだから研究は面白い!》
《博士!
早く逃げましょう!》
「・・・逃すわけないだろ。」
次に俺は障害物としておいてあったと思われるキューブ型のモノを浮かせ、投げつける。
入り口に殺到していた研究者を押しつぶしながら、轟音とともに入り口を塞ぐ。
そして俺はそのままそれより一回り大きいキューブを浮かせる。
《いいね、君のその表情。
君のそれが見たかった。
新型魔法、殺意、そして調整体、
全てがある君はこれから『怪物』になるかもしれないなぁ。》
「・・・・・・・」
ボソリと、いや独り言を言ったあいつはその後俺にニヤリと笑い、
《さようなら、No.6。
地獄で先に待ってるよ。》
その言葉を聞いてすぐ、おれはキューブをそいつに投げつけた。
轟音とともにあいつのいた場所が潰れた。
「・・・・・っ・・・・・くぅっ・・・・・・
う、うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
最後に悲しさと無力さと怒りと殺意と、様々な感情が入り混じりおれは雄叫びをあげた。
と同時に、おれは身体から力が抜けて倒れ込み、
そのまま意識を手放した。
少年に、救いはあるのか?