なんて現金な奴…。
こんな父の昔話を4分の1混ぜたカンタ君のお話。
勉強逃走術後編スタート!
中学時代
この頃、カンタ君は戸惑いを隠せなくなってきていた。その件について、本人は頭に霞がかかったと主張。例えば、テストの答案用紙を手に持ち、汗を滝のように流していると思うと、そこには四点の文字。
「不吉だ…。四点だなんて。死…」
気にすべきところはそこではないが、とにかく毎回満点しか持ち帰れないカンタ君が酷い点数を取るようになったのだ。かつてI.Q診断で神奈川県一位をとったカンタ君。その自慢の息子が四点をとるなんて…。これを親が見逃すはずはない。緊急事態だと大騒ぎし、帰ると玄関で待ち伏せしているのだ。そのまま母に部屋へ連行され、机の前に座るカンタ君。
「明日、塾の申し込みしてくるからね。安心して。」
カンタ君は思った。安心出来るわけない!!塾に行くくらいなら、恐怖の大王が降ってくる方が全然マシだ。
「勉強しないとごはんはないから気をつけてね。」
なんだって!?断食しろというのか!?目を眼球が飛び出るほど見開き、今にも飛びかかりそうになるカンタ君。別に勉強をすればいいだけだが彼にそんな発想は一ミリもなかった。なぜなら、カンタ君は稀に見る大の勉強嫌いだからだ。身勝手な言葉を残して部屋を出て行く母をカンタ君は睨みつけたまま見送る。ため息をつき、はや一時間。ちなみに勉強していたわけではない。勉強から逃げる方法を考えていたのだ。明日、学校からそのまま家に帰ると地獄の塾が待っている。なんとしてでも逃れなくては…。しかし、今回はなかなか思いつかない。
「これが世で言うスランプか…。」
そういいながらも元神童カンタ君は決して諦めてはいなかった。よしっあの作戦でいこう!!!
〈昔のアイデア使い回し作戦!!〉
⒈まずは、〈めっちゃ簡単な脱獄作戦〉を思い出す
カンタ君が小学校高学年の頃、部屋に缶詰め状態でいたその時に思いついた脱獄方法。これを応用して、気付かれずに部屋へ侵入しようというのだ。
※〈めっちゃ簡単な脱獄作戦〉が気になった人はお手数ですが、カンタ君の勉強逃走術 前編 小学校高学年のあたりを読んでください。
⒉次に裏庭で靴をカバンの中に詰め込む。
カンタ君の時代では、スクールバックを平べったくすればするほどかっこいいという流行があった。だからカンタ君は勉強道具をカバンに入れず、お尻のポケットに入れている。(勉強道具といっても歯型のついた鉛筆一本だけであったが…。)そんな中身を空にしたカバンに靴を入れるのは容易であった。
⒊最後にマイルームへと続く雨どいを伝って登る
※くれぐれも静かに登ること。高さに恐れをなして声を上げようものならたちまち玄関に待機している鬼婆に連行される。良い子は絶対に真似しないように。
この作戦は一度経験したようなものなので順調に進むはずだった…。だがこれはカンタ君のお話。そんなに上手くいっては小説にしようと思わないだろう。案の定、カンタ君は地獄をみることになる。
最終段階、雨どいを伝って登る。まずカンタ君は慎重に雨どいを掴む。次に、足をかけて体重を乗せる。ミシッ…。
雨どいは嫌な音を立てたがカンタ君は早く遊びに行きたい一心で気づかない。実は今日も友達と釣りに行く約束をしているのだ。そのため、意地でも道具を取りに行かなくてはならない。手のひらに力を集中させる。
「あと少しだ。」
高所恐怖症のせいでいささか時間がかかっているが、ようやく後半辺りまでくることができた。しかし次の瞬間、カンタ君は視界が斜めになっていることに気がつく。メキメキメキ。
「!」
なんと雨どいはカンタ君の体重を支えることができず、折れそうになっているのだ。かなり曲ってしまった雨どいに汗びっしょりになりながらも必死にしがみつくカンタ君。もうそれしかすることができないのだ。壁や木には距離があって届かず。助けを呼ぼうにも家には鬼婆しかいないし、それにまず、首を絞められた鶏のような声しか出ないのだ。ミシッ…メキメキメキメキ。
「ヒヒぃいぃぃ。」
さらに傾く。声にならない叫びはまさにこのことだろう。バキッ。ひときわ大きな音が聞こえたと思うとカンタ君の体は宙に浮いていた。…というより真っ逆さまに落ちたのだ。
「ギーヤーアアアアアアアア!」
ついに出してしまった大きな悲鳴。バキバキ。グシャ。
「キャンキャンッ!!バウウゥ」
そして次に聞こえたのは犬小屋の潰れる音と家がなくなった犬の悲鳴であった。その騒ぎを聞きつけた鬼婆は青い顔で走ってきた。…というところまでは覚えているらしいがその後がどうも思いだせないカンタ君。よほど強く頭を打ったようだ。ただ、この失敗はカンタ君に幸運をもたらした。なんと塾に入るのはやめることになったのだ。成績よりも子供の命が大切。苦渋の決断であった。そしてカンタ君はほくそ笑む。
「またもや俺の勝ちだな。いえーーーーい。」
感想
カンタ君に親の気持ちを察してほしい
自分の体が小学生と同じ重さなわけ無いだろ
雨どいと、雨どいに潰された犬小屋の修理費は現在の価格に直すと約70万(4分の3犬小屋)
教訓
作戦は使い回すと普通、ろくな目に合わない
以後、犬小屋は雨どいの近くに作らない
高校時代
カンタ君は付属高校に入学した。受験のために使った時間は1日。それで第一希望に受かったのだから凄い。しかし、実はIQ神奈川県1位の元神童のくせに勉強嫌いなカンタ君は一番家に近いというだけで高校を選んだのだ。偏差値的にはもっと上位の高校に行けたはずなのだが嫌だと断ったらしい。さすがにこの時は父と喧嘩になり、人生最初で最後のゲンコツをくらったそう。プロ野球選手なだけあって力も強く、軽く2メートルは吹っ飛んだとカンタ君は語った。
「イッテ〜。クソッ、こうなったら徹底的に勉強なんかしねぇかんな!!」
有言実行の男、カンタ。本当に最小限の勉強で受かった。
そんなカンタ君は受かってからというもの、全然勉強をしない。前からそうだったが、男子校というのもあり、もっとハイテンションな勉強嫌いになっていた。そして、定期テスト一週間前。さすがに退学は困るのでテストは受けなくては…。周りのおぼっちゃん達も騒ぎ出す。そこで、カンタ君はある作戦を思いついた。
〈勉強しなくても赤点取らねーぞ作戦!!〉
⒈家に帰る
※自分の部屋に入る前に「勉強してくる。」とひと言言うのがポイント。勉強している振りをして、お小遣いをもらうチャンス!!見逃すべからず。
⒉ボロ雑巾のような教科書達を机に置く
入学後初めてのテストにもかかわらず、教科書がボロボロなのは犬のハナにやられたせいもあるだろう。それらを手に取り、ゴミ箱へシュートしたくなる気持ちをなんとか抑え次の段階へ進む。
⒊テストに出るところを予想する
合格点ギリギリの点が取れるよう計算しながら予測していく。そこには後で戻ってこれるように印をつけておくこと。
⒋手のひらに隠れるサイズの紙と、学校に履いていく靴下 を用意する
ここら辺で気づいてきた人もいると思うが、そう、カンタ君がやろうとしているのはカンニングだ。
「ルールは破る為にあるもの」
と心得ているカンタ君はカンニングのプロである。しかもそれに加え、この時代は現在に比べて少しカンニングがしやすかった。
⒌カンニングペーパーの作成
小さい紙には予想し、印をつけたものを書き、靴下にはそこまで重要ではないものを書く。
※靴下は裏返してから書くこと。普通に履いて文字が見えていたら没収確実だからだ。
⒍秘密兵器の開発
使わなくなった短い鉛筆を用意し、上の部分を削る。そして、削った部分に数字を書いていく。これで完成。テスト中どうしても答えがわからない時はこの秘密兵器を転がし、出た数字を書いていくだけで良い。なんて楽なんだ。優越感に浸ったカンタ君は消しゴムのカバーの裏にも教科書の言葉を書き始めていた。
よし、これで準備完了。前日、周りのお坊ちゃん達が徹夜で勉強している中、カンタ君は悠々と眠りについていた。
当日の朝は家を出るギリギリに起き、カレーパンをくわえて登校する。食パンではなくカレーパンなところがカンタ君らしい。そして、しわくちゃな制服を気にするでもなく、堂々と教室に入った。(制服がしわくちゃなのは制服を着る時間がもったいないと着たまま寝るからだ。1分でも長く寝ていたい。これが、カンタ君の考えである。)キーンコーンカーンコーン。椅子に座るのと同時に予鈴が鳴る。
「よし、いつも通り。これぞ無駄のないチャイム着席だ。」
テストが始まり、早速カンニングペーパーを取り出すカンタ君。先生の動きに注意しながらも答えを書き込んでいく。これは難しい作業であった。素人ならすぐバレてしまうだろう。しかし、カンタ君は玄人。そこらへんは上手くやる。また、数学の時はテストの答えを予想し、あらかじめ数字を覚えるという荒技にもでていた。コロコロ…。秘密兵器を転がして数字を書き入れる。
キーンコーンカーンコーン。
テストが終わる。よーし遊ぶか…と思ったのもつかの間。校内放送でカンタ君は呼び出しを受けてしまったのだ。
「先生、なんですか?俺も暇じゃないんですよ。」
「いや、ちょっとカンタ君に言いたいことがあってね。」
ゴクリ。汗は背中を這うようにして流れる。まさか不正行為がバレたのか…。
「君、素晴らしいじゃないか。」
んん?不正行為が素晴らしい?カンタ君は首を傾げる。
「いつも授業中に尾崎の歌を熱唱している奴とは思えない点数だったよ。影で努力するタイプなのだな。」
「あのー何点だったのですか?」
カンタ君は恐る恐る聞いてみる。すると先生は満面の笑みを浮かべ、こう言った。
「100点満点。」
「えっ!!」
「まぁ全部丸つけ終わった訳ではないのだけど、今のところ数学、国語、物理、家庭科、社会は満点だったよ。」
カンニングは発覚していない。カンタ君はそう分かると全身から力を抜いた。そして思う。先生が馬鹿で良かった。
〈感想〉
100点ばかり取っていれば気づくはずなのにどうして気づかないの?先生。
カンタ君は100点を取ると次回も取らないといけなくなるからもう100点を取る気はないらしい。
カンニングペーパーを作る間にいつの間にか全部覚えたカンタ君、普通に勉強した方が早いよ。
勉強してしまってるから、もはや勉強逃走術ではない。
教訓
次回は職員室に犬を放してテスト自体を無くそう
次回はカンタ君の妹について書こうと思います。
天才的才能を持つ少女、ユメコちゃん。そんなユメコちゃんの奇妙な数々の事件。こちらも事実を少し混ぜた物語。また見てくれると嬉しいです。
(不定期更新です。)