萌えっ娘もんすたぁ ~遙か高き頂きを目指す者~ 作:阿佐木 れい
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冒険の始まり
prologue
――お前には無理だ。
告げられた無常な言葉は、俺の心を打ち砕くには充分なものだった。
ずっと、ずっと夢の中にいた背中に追いつくために踏み出せる一歩のはずだった。
耳を破壊されるのかと思わんばかりの歓声に包まれながら、誇らしく胸を張るあの人が好きだった。
だけどあの人は、自分に向けられる声援よりも、まず真っ先に俺へと顔を向け子供のように笑みを浮かべるんだ。
どうだ、凄いだろう?
そんな笑みに、俺も笑顔で頷き返すのがたまらなく嬉しかった。
そう、あの人は――
あいつは――
俺の憧れであり、目標だった。
俺の誇りであり、いつか倒したい人だった。
だから、近づけると思った。
そのために選んだ。
だが、その初め。一歩を踏み出す前に、博士によって打ち砕かれた。
どうして?
何故?
どれほど投げかけても答えはなく、背を向けられた俺は伸ばした腕を下ろす他無かった。
そうして、ずっと夢見てきたものは幻となり、ただ遠くに亡羊と現れる蜃気楼と成り果てた。
叶わないのだと思い込み、遠くから眺めるだけの景色へと変わっていったのだ。
歓声が轟音となって耳へと届く。
その先に、歓声の向こう側に目指した場所がある。
――うん。
必要なのは、それだけでいい。
頷きあって、歩を進める。
これが俺達の……夢の到達点なのだから。