追記 ミスがあったので修正しました。
「おい、天龍。お前、剣術を学んだことが
あるらしいな」
演習が未遂に終わった翌日。
その日の朝は小雨が降っていた。
天龍は鎮守府の一角にある資料室で本を
読み漁っていたが、そこに木曾が訪ねてきた。
「ああ。神道無念流を少しばかり」
神道無念流は剛か柔かで言えば剛に属する。
兜や鎧ごと断ち切るような力強い剣風だ。
「神道無念流か……俺は天然理心流を嗜んでる」
同じく天然理心流も剛の剣に属する。
しかし神道無念流とは違い、相手の剣を
無理矢理どかし、その隙間に打ち込む剣風が
特徴だ。
「お互い、剣術を学ぶ身として他流派の動きを
知るべきだと俺は思うんだ」
「なるほどな。俺相手に腕試ししたいって
ことだな?」
「そうなるな」
木曾はニヤリと笑うと、背後の扉を指差した。
「丁度良いことに、ここの鎮守府には
小さいが弓道場と道場を兼ねた所が
あってな。そこでやらないか?」
天龍は本を閉じて本棚の一角に仕舞うと、
立ち上がった。
「いいぜ。たまには剣術を嗜んでる奴と
やらないと腕がなまっちまうしな」
弓道場兼道場。
そこで天龍対木曾の稽古試合が始まろうと
していた。
「木曾ー、頑張るクマー」
「負けたら尻を揉m「黙っとれ」マバッ⁉︎」
セクハラ発言をしかけた糸井川が龍驤に
みぞおちを肘打ちされる。
「天龍さーん、頑張ってー‼︎」
「なんでみんないるんだよ……」
「多摩はいないクマ。いつも通り
どっかで寝てるクマ」
道場には多摩以外みんな来ていた。
天龍と木曾の試合を見るためだ。
「天龍、ほらよ」
木曾が木刀を投げ渡す。受け取った途端、
ずっしりとした重みが天龍の腕に伝わった。
「へへ、持ち手の部分に鉄の棒仕込んでんだ。
普段持ってる刀と変わらない重みにしないと
実戦で使えねぇしな」
「なるほどな。……それじゃ、やるか」
天龍が構えを取る。
「お手並み拝見といくか」
木曾もそれに倣う。
肘打ちの一撃から復活した糸井川が審判を
勤める。真剣な面持ちで、
「……始め‼︎」
試合の開始を告げた。
最初に仕掛けたのは木曾だった。
すっ……と体を低くしたかと思うと、
次の瞬間大きく踏み込んで、天龍に
鋭い突きを繰り出した。
「シッ‼︎」
短く息を吐き出しながら繰り出された
木曾の突きは、一片の迷いなく、
常人には捉えることはほぼ不可能な速さだった。
だが、天龍は常人の範疇ではない。
しっかりとその突きを見据えながら、
最小限の動きで回避。
そして隙だらけとなった木曾の頭目掛け
木刀を振り落とし。
ーーーーーーその直前で木刀を止めた。
「まずは俺が一本取ったな」
天龍が木刀を肩にかけて木曾から離れる。
「かなりの玄人だな……俺の突きを初見で
避ける奴なんて初めてだ」
木曾はそう言って、片目を眼帯を外した。
その目の色は片目が青系統の色に対して
金色に輝いていた。
「手加減してたのか?」
「いや、こっちの目はあんまり見えてねぇ。
でも、眼帯でやるよかはかなりマシだ。
そっちも眼帯外したらどうだ?」
「いや、俺の片目は完全に失明してるから
外しても意味ねーよ」
木曾は再び構え、天龍にも構えるよう施した。
「今度は本気でいくぜ」
今回も木曾が先に仕掛けた。
天龍の急所を的確に狙いすまし木刀を振るう。
天龍はその鋭い一撃一撃を苦もなく捌く。
両者共に一歩も引かない激戦。
周りにいた皐月や球磨は身を乗り出し、
龍田や龍驤は真剣にその様子を見ていた。
木曾と天龍の剣戟は周りの人を呑み込む程に
凄まじいものであることがありありとわかる。
だが、その剣戟に集中出来ない者がこの場に
たった一人残っていた。
(なんだ……この感じ)
レンゲは、先程から体が感じる嫌な感覚に
疑問符が浮かんでいた。
例えるならば、毛虫を意図せず
発見してしまった時。
もしくは高い所から下を見下ろした時に
感じるような感覚ーーーーーー
いわば、「身の毛がよだつ」感覚。
しかも、その感覚は先程から段々と強くなって、
体中を掻き毟りたくなる位の強さになっていた。
(早く何処か遠くに行きたい。なんだ……
この感覚は……⁉︎)
じわり、と背中から冷や汗が滲み出した。
つっ、と額を一筋の汗が伝ってゆく。
「……レンゲさん?どうかしましたか?
顔色が優れないみたい」
大井がレンゲに声をかけた。
「い……いや、なんでも、ない、です」
「ちょっと外の空気吸ってきた方がいいよー。
顔色、すっごく悪いよ」
北上の言う通り、レンゲの顔色は生気が
全くないように見えた。
「じゃ、あ。お言葉に甘えて」
途切れ途切れに言葉を切らしながら立ち上がる。
「ああ、私が外に連れて行きます」
大井がレンゲに肩を貸し、一緒に外へと
出て行った。
「……多摩姉もこの試合見た方がいいと
思うなー」
後に残された北上は、木曾と天龍の試合を
見ながらそう独り言を呟くのだった。
「大丈夫?水持って来ましょうか?」
「いや、大丈夫……です」
外の空気を吸って僅かに良くはなったが、
まだ体のあの感覚はまだ残っている。
「……あれ、大井にレンゲ。
みんなどこにいるか知ってるにゃ?」
「多摩姉さん。みんな道場で試合見てますよ」
多摩が小雨の中傘をさし歩いてきた。
「珍しいですね、多摩姉さんが雨の中
外に出るなんて」
「なんとなく、今日は気分的に
出たくなったにゃ」
二人が話をしている間に、急激にレンゲの
身の毛がよだつ感覚が強くなった。
「……ッ‼︎」
歯をくいしばって、目を見開く。
痛みはない。だが、何処か遠くに行きたい
欲望が体中を駆け巡る。
「ッ⁉︎レンゲ、どうしたにゃ⁉︎」
「レンゲさん⁉︎しっかりして下さい‼︎」
二人がレンゲに呼びかける。
「ッ〜……‼︎……ッ‼︎」
声にならない叫びを上げながら、
レンゲはその感覚を引き起こすものの
場所を見た。
上。
上に。
「……レンゲ?上がどうかしたにゃ?」
多摩がレンゲの視線を追って上空を仰いだ刹那。
上空から落ちてきた爆弾が鎮守府に直撃し、
その外観を大きく破壊して。
地を大きく揺らした。
そして、ほぼ同時刻に。
付近にあった米軍基地の戦闘機を収納している
倉庫を中心に、爆撃が行われた。
「……ナイトホークから、米軍機収納庫を
破壊確認。……これで米軍機の爆撃は
なくなった」
はるか何十kmと離れた海上。
ゲンブは視界共有を通しナイトホークが
爆撃を成功させた事を確認した。
周りには、深海棲艦やゲンブの仲間のフジツボが
控えている。
「爆弾を地中貫徹爆弾に
変えて正解だった……収納庫を破壊しても
中が無事だったら意味がないし。
そう思わないかい?ル級君」
「……別ニソンナ事、ドウダッテイイ。
肝心ナノハコノ好機ヲ逃スべキデハナイ、
トイウ事ダ」
ル級、と呼ばれた深海棲艦は、大盾の
艤装を構えながらゲンブにそう言った。
「いや、撤退すべきだね」
「……臆病者メ。ナラバ我々ダケデ
行カセテモラウ‼︎」
ル級は仲間のニ級、ホ級、チ級を伴い
沖縄鎮守府のある方向に向かっていき、
やがて見えなくなった。
「……あー、行っちゃった。
まぁ、サンズがなんとかしてくれるか。
じゃ、拠点に戻るよー。ル級達は
待たなくていからー」
ゲンブは残った深海棲艦達にそう号令すると
速やかに帰投するのであった。
地中貫徹爆弾は別名バンカーバスターと
呼ばれてます。シン・ゴ●ラで
ゴ●ラにダメージ与えてました。