転生レ級の鎮守府生活   作:ストスト

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「圧倒的な力量」

ガアァン‼︎と鋼がかち合う音が鳴り響く。

 

「はぁ……はあっ……ッ……‼︎」

 

息を切らしながらも天龍は刀で霧秀に向かって

鋭い突きを放つ。

 

天龍のスタミナは限界寸前のところまで来ていた。

だが天龍はそれよりも霧秀に畏怖していた。

 

(なんなんだこいつ……⁉︎ブラフや対処しにくい

足元の斬撃も簡単にいなしてやがる……)

 

おまけに、だ。

霧秀は構えもせずに片手で刀を持った状態だ。

霧秀が持っている日本刀は基本的に両手で

持つものである。

そうしないと日本刀の威力は最大限に発揮

出来ず、人を切ることが難しくなる。

もしも、霧秀がそのことを承知の上で片手で

持っているとするならば。

 

 

 

 

 

 

 

 

……霧秀は天龍と本気で戦う気など毛頭ない

ということになる。

 

(俺程度いつでも首を取れるってか……?

ふざけやがって、この野郎‼︎)

 

霧秀に弾かれながらも、天龍はカウンターで

霧秀の腹目掛け斬り払った。

だが、ギイィィ……ンという音と硬い感触が

伝わる。

 

「惜しいな、あと一息のところだったが」

 

霧秀は弾かれた勢いを加算した剣速での

カウンターすらもいともたやすく止めた。

今までの幾多の斬撃をいなしたように、

構えもとらず、片手で日本刀を持った状態で。

 

天龍は大きく霧秀から距離を置いて、

肩で息をしながら睨みつけた。

 

「ハアッ……てめぇ、未来でも見てんのかよ……

ッ、ハァ……しかも、息一つ乱さねぇし……」

 

そう言われた霧秀はフッ、と息を吐いて

天龍に答えた。

 

「褒め言葉として受け取っておこう。

だが、お主も中々の剣客よの。

久々に良い剣捌きを目にさせてもらった……

そしてだ」

 

霧秀は一旦言葉を切る。

 

「主が某に向けて刀を抜く理由、確か愛した者の

為だったか。その志、誠に素晴らしきものよ……

日本には侍とかいう者達がいたらしいが、

某の体を創っている魂の記憶から見たものと

主のそれはかなり似ている」

 

徐々にその声色に喜色が混じり出す。

ぐっ、と刀を両手で持って、霧秀は

日本刀を構えた。

 

「先程の非礼を詫びよう。これから某は

主を女と思わず、一人の敵として迎え撃とう」

 

刹那、天龍の体をとんでもない気迫が覆った。

それは一歩でも動けば全身を百の肉片に

変えられてしまうのでは、と天龍が錯覚して

しまう程に強かった。

 

(こッ……こいつ……絶対に俺を殺す目をして

嫌がる……“マジ”だ……)

 

霧秀の目は決意に満ちていた。

首を落とされたとしても、心臓を貫かれたとしても

全身全霊を以て目の前のたった一人の“敵”を

殺さんとする決意を、彼は抱いていた。

 

「……ゆくぞ」

 

「ッ‼︎」

 

霧秀が大きく踏み込んで右から袈裟斬りを天龍に

仕掛ける。その速度は先程の一閃に比べて

やや遅めの速度だった。

しかし。

 

天龍がそれを受け止めた瞬間、腕に凄まじい

衝撃が走った。

艤装によって常人の数十倍の強度にまで

引き上げられた艦娘の天龍の肉体でも

刀で巨岩を思い切り打ったように思って

しまう程のものだ。

 

「ぐううううううううッッ⁉︎」

 

更にその衝撃は天龍の体を本人の意思とは

関係なく無理矢理左にスライドさせる。

 

「クアァァッ‼︎」

 

霧秀は袈裟斬りから続いて喉元を斬りあげる。

天龍は大きく後退したが、その切っ先は

僅かに天龍の顎を掠めた。

 

紙のように顎の皮膚が裂かれ、一拍置いて

血が滲み出す。

 

「ちっ……はあっ‼︎」

 

無論天龍も唯斬られるだけではない。

即座に刀の攻撃として最も避けにくい突きを

素早く放つ。

 

「笑止ッ‼︎」

 

だが、寸前でその刃は霧秀の指に挟まれる。

ギシギシと刀が軋む音が天龍の耳へ届く。

 

「……天龍よ……某は今の攻防で理解した。

主はまだ、某には勝てぬ」

 

「なんだと?」

 

「そのままの意味だ。主は死ぬ事に対して

恐怖しておるだろう。故に某に魂を賭けて

向き合えておらぬ……そんな状態であれば

某は勝てぬし、殺すことも不可能だ」

 

残念そうに、霧秀は呟いた。

 

「………ざっけんなよ……舐めるなよ

この野郎ッ‼︎」

 

天龍は霧秀の指から刀を引き抜くと、

ありとあらゆる剣撃を仕掛けた。

斬り払い、上段、中段、下段。

突きに袈裟斬り、斬り上げ。

自身が持ちうる全てを霧秀へとぶつける。

 

(……畜生)

ふと、天龍は心の中でそう吐き捨てた。

 

(ここまで……ここまで奴が強いなんて……)

 

天龍の嵐のような剣撃を霧秀は擦り傷一つ

負うこともなく、捌ききっていた。

自身が今まで磨いてきた技術、全てが

いとも簡単に超えられてゆく。

それはまさに、かつて天龍が味わった感覚。

 

 

 

……絶望であった。

 

「……やはり、主は分かっておらぬようだ」

 

霧秀は辟易とした様子で言うと、天龍の刀を弾き

一瞬で距離を詰めた。

 

「今の主では某には勝てぬ、と」

 

刹那、白刃が天龍の顔に向けて放たれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、米軍基地の一角。

糸井川はある人物と電話をしていた。

 

「……そういう訳だ。“彼女”にそう頼んで

くれないか?」

 

「……全く。軍学校の時から変わってはいない

ようですね。糸井川さんは」

 

「俺はそういう性分だ。そう簡単には変えられる

なんてお前も思っちゃいねぇだろう?神崎」

 

「内房の提督から貴方の噂を聞いた時は、

“あぁ、変わっていないな”と思ってしまったのは

事実ですが。いい加減にそのスケベな性分を

直そうとは思ったらどうですか?」

 

その言葉に糸井川は自嘲気味に笑い、

「こればかりはどうやっても無理だな」と

答えた。

 

はぁ……と糸井川は電話の向こうでため息をつく。

 

「本当にもう……私にばかり嫌な事を押し付けて。

“彼女”に対してもそうですよ」

 

「悪いな。いずれ借りは返すからよ」

 

「……その言葉、覚えておいてくださいよ。

今回は同期のよしみで手を貸します。

そちらの様子もかなりまずい状態ですしね」

 

そう言って電話が切れる。

糸井川は電話を受話器に置くと、真剣な

表情になり、どこかへ歩いて行くのであった。

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