「主人公に感情移入が出来ない」……。
本当に申し訳ありませんでした。
主人公にもっと感情移入が出来るように精進します。
昨日の夜とはうって変わって、眩いばかりに
窓から差し込む太陽の光。
外では鳥は歌い、花は咲き誇る。
……だと言うのに。
(なんで俺の心はこんなにも沈んでいるんだろう)
部屋のベットの中にうずくまっている
レンゲの心は舞い上がるどころかその逆。
そして、レンゲ自身その理由は分かっていた。
(分かり切ってるよ。今この瞬間、何も
出来ない俺自身の無力さが腹立たしいんだ)
深海棲艦という身であるが故に艦娘のように
出撃する事が出来ない。
その事がレンゲにとって苛立たしく、
己の無力を思い知らされていた。
「せめて艦娘になれたらなあ……」
こんな無力感も味わわなくて済んだのに、
そうレンゲは唇を噛んだ。
「そうであったなら、天龍さんの事も、
木曾さんのこともなんとかできたはずなのに」
思えば、ここ沖縄での一連の事件は
敵に先手を取られてばかりいた。
米軍基地、沖縄鎮守府の爆撃。
その機に乗じた深海棲艦の襲撃。
木曾の誘拐、そして霧秀による提督暗殺未遂。
何もかもが、敵の思惑にはまってしまった。
その事がレンゲにもっと何か出来たのではないか。
そう思わせてしまっている。
(それに海軍の事もそうだ。
あれのおかげで俺は出撃出来ないでいる)
レンゲの暴走を防ぐためのものだったのだろうが
それが今や逆にレンゲをがんじがらめに
してしまっている。
(ああ、クソ)
レンゲは心の中で毒づく。
(こんな規則、なかったらどんなに良かったか……)
だったら、壊しちゃえば良いじゃない
まるでレンゲの耳朶を舐めるように、
声が聞こえた。
「ッ‼︎」
その声がかけられた方をレンゲは向く。
……だがしかし、そこには誰もいない。
そもそも部屋の中にはレンゲ以外誰もいない。
レンゲの額を一筋の汗が伝った。
「……なんだ?」
とうとう幻聴が聞こえてくるまでに
なってしまったか。
思わずそうレンゲは思った。
ここ数日、ずっと自分を責めていたから、
気づかぬうちに
ねえ、聞いてる?
再び、先程と同じように声が耳朶を打つ。
「……誰だ?」
レンゲの問いに声はクスクスと軽く嗤うだけで
答えは返さなかった。
あなたは自分の力をどんなものか分かってない
それは自分の欲望のためだけに振るうべきもの
あなたが望むままに、「私」が願うままに
その力を使った方がいいの
「望むままに……願うままに?」
そう。この世界は「私達」には狭すぎる。
己が我を通すのにさえ自由に出来ない。
だから。その力を使ってあなたが望むような
世界に変えるのよ
「お前は俺に何をさせるというんだ。
……いや、何をさせたいんだ?」
だがやはりというか、声は相も変わらず
愉しげに嗤うだけ。
その態度に、レンゲは思わず声を荒げる。
「自分の言いたいことだけ言って、後は
だんまりか……。俺の心が生み出したものとは
いえ、いい加減にしろ。俺から出て行け‼︎」
……あなたの心が生み出した?
アハ アハハハハハハハハハハハハハッ‼︎
アハハハハハハハハハハハハハッ‼︎
声は再び笑い声を上げる。
ただそれは先程のものとはニュアンスが違った。
今回のものは、「嘲笑」というべきものであった。
何も分かってないのね、知らないのね
あなたは私よりも上だと思ってるけど、
それは違う
あなたが考えてるよりずっと、私は
その力の「使い方」を知ってる
「使い道」もある
あなたにはそれがあるというの?
「黙れッ‼︎」
破砕音。
レンゲが投げた近くにあった花瓶が壁に当たって
砕ける音だった。
それと共に声が急速に掠れるように小さくなっていく。
……ああ、私は悲しい
まだ「その時」ではなかったのね
もっとあなたと話したかったのに、
でも、そんなに悲しむことはないわ
その時は……またお話しましょう
それを最後に声はぷつりと止んだ。
二度とレンゲに届くことはなかった。
「なんなんだ……一体、今の声は」
……彼女の心にべっとりとした
コールタールのような不快感を残したまま。
ーーーーーー幸いというべきか、レンゲに
起きた出来事は誰にも知られずに済んだ。
皆、目の前のことで忙しかったのも
あるかもしれない。
そして、昼過ぎに沖縄から
木曾を助ける為の艦隊が出撃した。
天龍、球磨、多摩、北上、大井、龍驤。
現鎮守府が出せる最大火力での構成であった。
『もし俺らが失敗した時は、奴らは間違いなく
沖縄目指して一直線に向かってくるだろう。
そん時は、全力でここを守ってくれ。頼んだぞ』
そう沖縄に残った艦娘達に告げて、
天龍達は出撃した。
「あーあ、ボク達も付いて行きたかったなあ」
皐月が仮設鎮守府へ戻り際、そう呟いた。
「仕方ないだろう。我々駆逐艦は雷撃は
強いが雷巡がいる以上意味のないこと、
付いて行っても足手まといになるのが関の山だ」
「うん、そうだね。ボク達は天龍さん達に
沖縄を任されたんだ、そこの防衛を一番に
考えよう」
その言葉を長月と時雨が諌める。
「……あれ、レンゲは?さっきまでいたのに」
「彼女なら先にもう戻ったぞ」
「え、速っ⁉︎もう⁉︎」
そこで時雨が怪訝そうな表情を浮かべている事に
長月は気付いて、問うた。
「……何かあったのか?」
「いや、そんな何かあったって程じゃないけど。
……レンゲちゃん、凄く張り詰めてた。
なんと言えばいいかな、ぴんと張った糸みたいな
何か衝撃があれば“切れて”しまいそうな感じ」
そうか、と長月は呟いて、
「大丈夫だろうか、彼女は……」と
レンゲの身を案じていた。
しかし彼女達は……レンゲ自身ですらも、
まだ知る由はなかった。
レンゲに語りかけた謎の声が、のちに
災厄をもたらすことを……。
アドバイスください。
どんな辛辣なものでも真摯に受け止めます。