転生レ級の鎮守府生活   作:ストスト

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「嵐の前触れ(中編)」

「シャアアアアアッ‼︎」

 

「はっ‼︎ッふッ‼︎らあああッ‼︎」

 

サンズが球磨達を始末する数分前。

2人は幾度となく、昨夜の焼き直しのように

剣戟を繰り広げていた。

 

ただ一つ、昨夜と違う点があるとすれば、

 

「ぬ、ううッ‼︎」

 

「うらぁッ‼︎どうしたどうしたァッ‼︎」

 

最初から天龍が霧秀を圧倒していた。

昨夜は霧秀の斬撃をいなすのに精一杯だった

はずなのに。なぜか。

その理由は至極単純であった。

 

「いきがってられるのは地上だけか?

そんだけ遠距離戦が苦手なら……

俺達の邪魔するんじゃねぇよ、雑魚がッ‼︎」

 

そう、霧秀は砲撃戦といった類に対して

非常に脆かった。

一応左腕の内部に小型の単装砲は仕込まれては

いるものの、それは放つ度に熱され、

霧秀の腕を焼くために無用の長物と化していた。

刀の才はあるものの、それはあくまでも

近接戦で真価を発揮できるもの。

砲弾を斬り裂けても何発も撃たれれば

対応も出来なくなるだろう。

 

故に、霧秀は天龍に押されていた。

地上では装備出来なかった艤装によって、

天龍に対しての優勢が覆った。

 

「どうしたどうした⁉︎びびって声も

出せねえのか、アアッ⁉︎」

 

霧秀は持ち前の剣の才と身体能力を

活かし柔軟に対応していたが、

やがてそれにも限界が訪れ始める。

 

砲弾が霧秀の右足へと命中、

爆炎と共に肉を抉り取る。

 

「ギィッ‼︎」

 

「もらったぁっ‼︎」

 

そこを天龍が刀の切っ尖を向けて

突進してきた。

霧秀は天龍の刀が届く一寸手前で

態勢を立て直し、その一撃を刀で受ける。

 

だが、

「……はっ、そうすると思ったぜ、テメェは」

 

その言葉と同時に天龍の単装砲が

霧秀の方へと向いた。

 

「この距離なら、外れねぇな‼︎」

 

刹那、霧秀の身体が爆風によって吹き飛び、

その衝撃をもろに受けた霧秀の左腕が

千切れて四散した。

霧秀は5〜6m程宙を舞い、バウンドしながら

海面へと激しく叩きつけられる。

 

だがそれでも天龍の一撃は霧秀の命まで

奪う事は出来ず、よろよろと立ち上がった。

 

「く、……やりおるな小童。

確かに敵の弱点を突くのは戦の常道、

卑怯でもなんでもない効率的な戦術だ。

だが……たった()()()()で、この

某の首取れると思うなよ」

 

「その体たらくで、か?

ハッ、馬鹿言うな。テメェにそんだけの

力残ってる訳ねぇだろうが‼︎」

 

「……それは、否である」

 

言うなり、霧秀に異変が訪れた。

欠損した左腕が根本から吹き出すように

再生するやいなや、どんどんと肥大化、

その形を変えてゆく。

 

「某は幾千もの生を斬ってきた。

故に、と言うべきかいつのまにか()()()()()

異形を得ておった」

 

善も悪も、何も関係ない。

霧秀は己の前に立ち塞がるもの全てを

斬ってきた。

それ即ち、≪一切両斬≫の業。

彼によって斬り捨てられた幾多の命は

怨みとなり、怒りとなり、彼の身体に

異形となって()()()()()

 

「以前、サンズがこれを見て言いおった。

“お前の左腕は百鬼夜行みたいだ”とな。

まさしくその通りよ。某の左腕に

住むのは幾千もの(怨み)だ」

 

やがて変化を止めた霧秀の左腕は

まさしく異形と言うにふさわしい形を

していた。

まず霧秀の身長の2倍近い体積になった

腕の至る所に生えている。

目が、口が、腕が、鼻が、足が。

彼に斬り殺された者達の権化が。

深海棲艦も斬ったのであろう、

それらに特有の色合いをした装甲が

腕のあちこちに現れていた。

 

「さて、天龍よ。貴様にこの業が斬れるか?」

 

言うなり、彼は左腕を上空へと掲げた。

すると、腕から異音を立てて様々な所から

連装砲や単装砲が形作られーーーーーー。

 

「消し飛べ」

 

次の瞬間、その全ての砲口から

砲弾が放たれた。

全方位の焦土攻撃。

真っ向から、斜めから、真上から。

雨霰の如く砲弾が降り落ちてくる。

 

天龍は流石と言うべきか、己の航行技術を

以ってその弾雨を避け切っていた。

 

「ほう。この状態であれば早々に片付くと

思っておったがやはり「何考えてんだこの

落ち武者がアアアアッ‼︎」

 

と、そこにサンズが怒りの叫びを上げて

霧秀の頭をズパァンッ‼︎という

小気味好い音と共にひっぱたいた。

 

「全方位に撃つなよ⁉︎弾薬が無駄だし、

何より周りに被害が及ぶだろうが‼︎

俺まで殺す気かテメェはよぉ‼︎」

 

「いや、そんな事はないが、いかんせん

力加減が難しいのだ。許せ」

 

「ッ……サンズ、テメェ……球磨と多摩は

……まさか⁉︎」

 

サンズは天龍に気付くと、やれやれとばかりに

肩を竦めて軽快に言い放った。

 

「そりゃまあ、俺がここにいるって事は

お察しだよねえ?ハハハ、ご愁傷様」

 

刹那、ぶつん、と。

何かが決定的に切れる音がした。

天龍の中で、理性を司る何かが。

 

「テメェら……このゲロ以下のカスがっ‼︎」

 

言うなり、天龍は刀を構えてサンズ達へと

目にも止まらぬ速度で吶喊した。

 

「……如何にする、サンズ?」

 

「簡単なこった」とサンズはショットガンの

艤装を持ち上げて言った。

 

「殺すしかねぇだろうよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーその頃、撤退した龍驤達は

未だ航行を続けていた。

 

「あいつら本当に大丈夫かいな?

心配で心配でしょうがないわ」

 

「大丈夫、……多分」

 

と、その時であった。

 

「……⁉︎皆、止まって‼︎」

 

大井の言葉に全員が時間を止められたかの

ように動きを止めた。

大井の視線の先には、夜でも分かる程の

黒い影がこちらへと向かって潜行してくる

様子があった。

 

「ッ‼︎」

 

北上と大井は弾かれたように雷撃の準備を

するが、影はそれを気にしないかのように、

彼女達の足元を高速で通り過ぎていった。

 

「……なんや、今のは?」

 

「さぁ……でも襲われなかっただけ

ラッキーじゃないかな」

 

と、今度は龍驤の持っていた通信機器から

受信が入った。

 

「はい、こちら龍驤……ん、時雨か、

どないしたん?……はぁっ⁉︎」

 

素っ頓狂な声を上げた龍驤に皆の

視線が集中する。

 

「ど、どうしたんだ?何かあったのか?」

 

木曾の問いに、ゆっくりと顔を向けた龍驤は

先程通信で聞いた情報を復唱した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「レ、レンゲが……居なくなったって……」

 

 




深海棲艦の小説もっと増えろ……。
自分の中で面白いのだと「鬼の鎮守府」とか
「戦艦レ級カ・ッ・コ・カ・リ」とか
あと「レ級はモンスター?」とか。

鬼の鎮守府
https://syosetu.org/novel/130981/

戦艦レ級カ・ッ・コ・カ・リ
https://syosetu.org/novel/108210/

レ級はモンスター?
https://syosetu.org/novel/148200/
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