転生レ級の鎮守府生活   作:ストスト

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注意。
この話は一章の「さらば内房」からの
派生の話となっています。
「なんだったっけ?」と思った人は
「さらば内房」を読むことをお勧めします。


スピンオフ「雷の如き曙の光:その1」

ーーーーーーこれは、レ級となった人間の話とは

別のお話。

とある少女の物語である。

 

 

 

 

 

 

 

その少女を乗せた車は、横須賀の海軍機関学校へ

向かっていた。

 

「……」

 

少女は、車の窓から外を眺めていた。

そこから遠くの街や山が流れてゆく。

頭の中で少女はついこの間まで住んでいた島……

三宅島のことを思い出していた。

 

彼の「丙型生命体」による三宅島への

物的な被害は、深海棲艦の襲撃に比べて拍子抜け

してしまいそうな位に少なかった。

しかし、人的な被害においては深海棲艦と同等、

もしくはそれ以上の被害を出していた。

少女の住んでいた時の三宅島の人口は約1,800人

程度。だが、丙型生命体の襲撃後に艦娘達や

海軍が救助した人数は僅か600〜700人。

半分以上の島民は島から避難しようとして

船ごと海の底に沈められたのである。

 

少女や島民達は知るよしもなかったが、

その虐殺を行ったのは丙型生命体第ニ号だと

いうこと、そしてそれに留めを刺したのが

深海棲艦であることは三宅島の奪還作戦に

関係した者達は知っていた。

 

「……どうしたの?何か考え事でも?」

 

少女の隣に座っていた女性……霧島も

その事を知っている一人であった。

 

「あ、ええ……はい。もう、三宅島には

戻ることはできないだろうなぁ、って」

 

「……そうね」

 

生き残った島民達は本土の仮設住宅や、

親戚の家での生活を強いられている。

三宅島に残る者は誰一人としていなかった。

いつまたあのような襲撃に遭うのか。

そのような不安要素を抱えるよりは、

慣れない暮らしをする方が彼らにとって

良い選択肢であったのだ。

彼らには国から援助金が出されたが

深海棲艦との戦いでの国家予算の圧迫、

戦果に対しての野党の与党への追及や

国民のデモ。そんな事情があっては

元島民達に充分な援助金を出すのは

不可能な話であった。

 

「霧島さんはまた三宅島に島民達が戻ることが

出来ると思ってますか?」

 

霧島は一瞬悩んでから、

「多分だけど……数年の間には戻ることは

可能になると思いますよ」と答えた。

 

(……嘘吐き)

 

そう、少女は心の中で思った。

深海棲艦と人類との趨勢は現状5:5の状態だ。

10年間の間には人類が優勢になったり、

逆に深海棲艦が優勢になっていた時もあった。

しかし、10年という長い時間で見れば、

誤差の範疇であった。

今までもそうであったのだ、この戦いは

果てしなく続くだろう。

恐らく自分が死ぬまでに決着はつかない。

妙な確信を彼女は抱いていた。

 

 

(だけど、死ぬ前にせめて)

あの「悪魔」に会いたい。

少女は自分が覚えている範囲の記憶で、

一切約束を違えた事がなかった。

もし「悪魔」が死ぬことを望んでいるのなら。

殺さなくてはならない。

それこそが悪魔との約束を果たすことになり

彼らに殺された島民達の恨みを晴らすことが

出来ると。少女はそう思っていた。

 

(それまで、絶対に死んでやるもんか)

 

車の窓からは白い洋風の建物が見えた。

霧島はそれを見て、少女の方を向き、

真面目な表情で言った。

 

「もうすぐ海軍学校に着きます。

着く前に留意しておいてほしいことが一つ

あるからしっかりと聞いて下さいね」

 

コクリと少女は首肯し、霧島の話を聞いた。

 

「海軍学校では本来の自分の名前ではなく、

適性判断された艦の名前で呼ばれます。

貴女に適性があった艦の名前は」

 

そこで一区切り置き、霧島は少女に

これからの少女の名前となる艦の名を

告げた。

 

 

 

 

「綾波型駆逐艦 8番艦、曙よ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その何日も後のことである。

遠く離れた小島。

そこに、少女と約束をした「悪魔」はいた。

 

「ウィィ……あぁ、もう。なんでよォ、

俺達が深海棲艦と手を組むんだ?」

 

リヴァイア・サンズである。

背を後ろに反らせて、柔軟運動をしていた。

 

「僕達の目的を果たす為さ。深海棲艦と

手を組むのは人手を多くする為さ」

 

サンズの質問に対してゲンブは答えた。

燃料の入ったドラム缶を海中にいる

フジツボ達に渡して、

「それに、僕達丙型生命体をあっちは

ずいぶんと舐めているようだからね。

ちょっと脅かしに行くだけと思えばいいさ」

と言った。

 

「脅かしに行くのに沖縄まで行くのも

どうかと思うがね‼︎

大体お前、前線に出てこねーつもりだろ」

 

「ばれましたか……」

 

「ばれるに決まってんだろ」

 

サンズはそう言ってゲンブの頭を叩いた。

硬質な音が響く。

 

「あたっ‼︎」

 

「沖縄で前線送りにしてやるから、

覚えておけよ」

 

「待ってくれよサンズ。僕が戦闘苦手なの

知っているだろう⁉︎」

 

「知ったことか。お前に打ち直してもらった

刀も切れ味が微妙に悪いしよー」

 

「そ、それは君の艤装の点検を……」

 

サンズはゲンブの口を遮った。

 

「もしそれが多薬室砲を指して言って

ないとしたなら、お前、聞かれてたら

八つ裂きにされるぞ」

 

サンズは片手でゲンブの口を遮ったまま、

もう片方の手で 自らの首を斬る振りをした。

 

「いいか、これはお前のことを案じて言って

やってんだ。あいつらは艤装じゃねえ。

俺の一部なんだ。それはあいつらを

造ったお前が一番理解しているだろう?」

 

ゲンブはゆっくりと後退すると、先程

サンズに叩かれた頭をさすりながら言った。

 

「ああ。恐ろしいぐらいに理解しているよ。

すまなかったね」

 

「……あいつらを出すのは万が一の事態に

備えてだ。そうなるまでは出さねぇよ」

 

サンズはトマホークを打ち直して造った

一見鉄の棒に見える刀を手に持ち、

ベルトホルダーの中身を確認すると、

ゲンブと数体のフジツボに告げた。

 

「行く前に一つ肝に銘じておけ。

万が一深海棲艦に怪しい動きがあったら

即刻皆に伝えろ。俺達は深海棲艦に

手を貸すが魂までは渡さねえ。いいか‼︎」

 

サンズは彼らにはっきりとそう伝えると、

ニヤリと笑った。

 

「……真剣に伝えると疲れるな。

ま、それまでは南国の雰囲気でも

楽しむことにしよーぜ‼︎」

 

ハッハーッ‼︎と高笑いしながらサンズは

海面に飛び込んだ。ゲンブやフジツボも

その後に続く。

 

そうして丙型生命体達は、沖縄を

目指して航行を開始したのであった。

 

 

 

 




この話を書いた理由ですが、単純に
後々この少女を出すようなことがあった時に
「お前誰だ」と読者の皆さんに突っ込まれる
のを防ぐ為です。あとゲンブとサンズの
やりとり書きたかったから。
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