前回のコミュ障ヘタレ。学校存続の最後の希望が見えたAqoursはラブライブ予備予選と学校説明会に向けて分かれて2曲作ることになった。そしてなんとか完成させることができたので本番に向けて練習を始めるのであった。
浦の星に来てから半年近く経った。
まさかこの学校が廃校の危機が迫っているとも知らなかったのでここに転入できた具体的な理由も未だによくわかっていない。
名目上は共学化の試運転だと聞いているがきっと理由は別にあるだろう。
説明会中止が発表された次の日、鞠莉さんのお父さんから電話がかかってきた。
珍しいな。向こうからかけてくることなんてあまりないのに。
瑠惟「お久しぶりです、小原さん。どうされたんですか?」
鞠莉パパ「久しぶりだね。いや、こんなことになってしまい申し訳ない。」
やはり浦の星の廃校のことか。ちょうどいい機会だから聞いてみよう。
瑠惟「確かに廃校になるのは残念ですけど、どうして自分の転入を許可してくれたのですか?多分廃校になるのはだいぶ前から決まっていたことだったんじゃないですか?」
少しの沈黙の後、ゆっくりと小原さんは答えた。
しかし帰ってきたのは思いもよらない答えだった。
鞠莉パパ「・・・やはり君はわかっていたか。確かに廃校の件はかなり前から決まっていたことでね、具体的には今の2年生が入学したあたりから話が出ていたんだよ。君を入れたのは・・・・君のお母さんと鞠莉からの頼みだったんだ。」
瑠惟「母さんと鞠莉さんが!?なんで・・・」
確かに鞠莉さんが理事長になったからここに転入できたのは分かってる。
でも最終な決定権は鞠莉さんではなく小原さんにあるはずだ。
いや、そもそも自分がここに来たのは千歌の家が近かったからで・・・
鞠莉パパ「君のお母さんの転勤が決まった時に頼まれてね。あの子を変えてあげてほしいと。あの子が幸せになれる環境に置いてあげてほしいと。最初私は断ろうとした。さすがにそれは難しいと。でも話を聞いていた鞠莉が私を必死に説得してくれて、私も最終的に折れたんだ。・・・君の過去に何があったかは知っている。だから君の力になりたかったのさ。わずかな時間でもいいから君に素敵な時間を過ごしてほしい。・・・これが私が君をこの学校に入れた理由だ。」
瑠惟「そうだったんですか。まさか自分のためだったなんて・・・」
やっぱり母さんは気にしていたんだな。何度も大丈夫って言ってたんだけどな。
知らないうちに母さんを苦しませてたのかもな。
それでも母さんと鞠莉さんには感謝しないとな。
こんな楽しい時間をくれたこと、Aqoursのみんなと一緒にいられること、浦の星のみんなといられることを。
だから絶対にこの学校を何とかする。廃校にはさせない。もっとみんなと一緒にいたい。
瑠惟「まだ・・・この学校を救うことはできますか?」
鞠莉パパ「無理・・・というわけではないが、ハッキリ言って可能性はほとんどないだろう。それでもやるのか君達は?」
瑠惟「0じゃないならやらない理由はないですね。決めたんですよみんなで『最後まで足掻く』って。」
鞠莉パパ「君は・・・変わったね。前よりも活き活きしてるのが電話越しでも伝わってくるよ。」
瑠惟「Aqoursのみんなが、ここにいるみんなが変えてくれたんですよ。」
鞠莉パパ「そうかもしれないな。私も鞠莉の大切な場所がなくなるのは嫌なんでね。できるだけ上の方を説得してみる。だから君達も頑張ってくれ。ではまた。」
瑠惟「ちょっと待ってください。」
鞠莉パパ「ん?どうしたんだい?」
瑠惟「もし・・・万が一この学校が廃校になったら・・・・・・・・・・・・させてください。」
自分の頼みを聞いた小原さんは少し驚いたようだったが、自分の意思を感じてくれたように答えた。
鞠莉パパ「私は構わないが君はそれでいいのかね?」
瑠惟「はい。これが自分なりの覚悟でありケジメです。」
鞠莉パパ「分かった・・・。その時はそうしておこう。」
瑠惟「ありがとうございます。では失礼します。」
鞠莉パパ「あぁ。娘を・・・Aqoursをよろしく頼む。君なら音ノ木坂学院のような奇跡を起こせると信じてる。」
瑠惟「・・・はい。」
浦の星の生徒の中には諦めた子がいるかもしれない。事実、自分も何度も諦めかけた。
でもその度にあの人達の言葉を思い出す。
『諦めちゃダメなんだ。その日が絶対来る。』
だから最後まで付き合うよ。
あと小原さんに頼んだことは多分Aqoursのみんなが聞いたら絶対に怒られるだろうな。
でもこれが浦の星への敬意であり感謝でもある。
もっとも、廃校にならないのが一番なのだが。
2曲が完成した後、鞠莉さんが父親から何か連絡を受けたそうでAqoursのみんなは昼休み理事長室に呼び出された。
鞠莉「急に呼び出してしまってごめんなさい。でもこれはみんなに先に伝えておかないといけないと思ったの。」
ダイヤ「それで何か問題が起きたんですの?」
鞠莉「実は・・・説明会の開催が一週間後になったの。」
一週間後ってことは・・・
瑠惟「それってまずくないですか?」
果南「どうして!?なんでこんな・・・」
鞠莉「学校側の都合でどうしてもその日じゃないと説明会をすることができなくなったの。」
鞠莉さんの言葉にみんな衝撃を隠せなかった。・・・ただ1人を除いて。
千歌「なんでそんなに慌てるの?一週間伸びたってことはもっといいパフォーマンスを見せられるんだよ。」
こいつ状況を分かってないのか?
瑠惟「千歌よく考えてみろ。」
千歌「え?」
曜「学校説明会はいつやる予定だった?」
千歌「えーと、ラブライブ予備予選のちょうど一週間前でしょ?」
梨子「ではその説明会が一週間延期になりました。予備予選と説明会はいつあるでしょうか?」
千歌「・・・・・あ~!」
ようやく気付いたみたいだな。
瑠惟「そう。予備予選と同じ日に説明会があるんだよ。」
千歌「え~~~~!?それってどうすればいいの!?」
瑠惟「何か手は無いのか・・・。」
ダイヤ「鞠莉さん、説明会の日程はどうにかならないのですか?」
鞠莉「無理よ。私もそれだけはやめてほしいと頼んだけど、どうしても無理だって。」
果南「これは何か方法がないか考えないといけないね。」
ダイヤ「もう昼休みも終わりそうですし、放課後にみんなで考えましょうか。」
瑠惟「そうですね。じゃあここは一回解散ということで。」
鞠莉「ごめんなさい。私の力がないばかりに・・・」
ダイヤ「鞠莉さんのせいではありませんわ。」
果南「だからそんなこと言わないで。」
なんで鞠莉さんが謝るんだ。
鞠莉さんだってみんなのために必死で動いてくれてるのに。
千歌「瑠惟君、教室に戻ろ。」
瑠惟「あぁ・・・。」
午後からの授業の内容は全く頭に入ってこなかった。
梨子「大丈夫?」
気が付くと目の前に梨子が立っていた。
瑠惟「えっ?みんなはどこ行ったんだ?」
教室を見ると自分と梨子の2人しか残っていなかった。
梨子「何言ってるの。もうホームルームも終わったからみんな帰ったよ。さぁ、部室に行こ。千歌ちゃんと曜ちゃん先に行ったよ。」
瑠惟「悪いな。」
どうやら終業のチャイムが鳴ったことにさえ気づかなかったようだ。
瑠惟「ずっと待っててくれたのか?」
梨子「うん。だって授業中ずっと様子が変だったもん。それに・・・なんだかあなたが離れて行きそうな気がしたの。」
瑠惟「まだみんなをトップに立たせる仕事が残ってるんだ。どこにも行かないさ。」多分・・・
梨子「前に言ったよね。『この学校がなくなったら東京に帰るかもしれない』って。」
瑠惟「確かに言ったな。」
梨子「本当に帰るの気なの?」
もう自分の中ではどうするか決まっている。でも・・・
瑠惟「今は言えない。」
すると梨子は半分あきらめたように、でもどこか笑って言った。
梨子「・・・分かった。あなたがそう言うなら何か考えてるってことよね。」
瑠惟「分かったこと言うようになったな。」
梨子「これでもあなたのこと見てるもん。」
瑠惟「もしかして好きなのか?」
梨子「好きだよ。」
瑠惟「!?」
梨子ルート来ました。自分幸せになります。
梨子「千歌ちゃんが瑠惟君のことを好きなのと同じくらい私も好きだよ。」
えーっと、なるほどね。
瑠惟「つまり脈なしかよ。喜んで損した。」
彼女いない歴=年齢の自分に春が来たと思ったのに・・・
梨子「どう?元気出た?」
瑠惟「もうバッチリだ!ありがとな。」
梨子「いえいえ。」
瑠惟「そろそろ部室に行かないと千歌に怒られるから行くか。」
梨子「うん!」
一緒に部室に向かってる時、梨子の顔が少し紅く染まっていたのは夕日のせいだと思った。
部室に行くと、みんなが集まって何かを見ていた。
瑠惟「遅れてごめん。今何してるんだ?」
千歌「もぉ~遅い!」
やっぱり怒られた。
瑠惟「悪い悪い。」
曜「今ねこの辺りの地図を見てたの。」
地図?どうして地図を見てるんだ?
ルビィ「この地図で予備予選の会場と学校の場所を見てたんですけど、幸いにもこの2つは移動できない距離ではないんです。」
瑠惟「そうか。予備予選が終わってから急いでこっちに来れば間に合うってことか。」
ダイヤ「しかしそれ可能にするにはある条件があります。」
瑠惟「ある条件?」
ダイヤ「それは予備予選での発表順が1番目であることですわ。」
梨子「絶対に1番目じゃないとダメなんですか?2番目とか3番目とかでも間に合うんじゃ・・・。」
ダイヤ「1番目でなければ会場近くから出ているバスに間に合いません。そのバスは本数も少なく、それを逃すと次に来るのは3時間後で、学校に着いた時には説明会が終わってしまっています。」
ということは・・・
瑠惟「明日行われる抽選会で1番目を引き当てる。」
ダイヤ「はい。それしかありません。」
予備予選に出場するグループは数十といる。その中で1番を引き当てるのは・・・
千歌「手があるならそれに賭けるしかないよ。とにかく私達は今できることをする。だから練習しよっ!」
さっきまで目に見えて暗かった空気が千歌の一言で変わった。
こういうところは千歌にしかできないあいつの長所だな。
瑠惟「そうだな。日が暮れるまで短いから早くやろうか。」
説明会と予備予選まで時間がない。
みんなの体力と気力を信じて少し厳しくやるしかない。
次の日、今日は放課後に予備予選の抽選会がある。
この抽選会でAqoursの運命が決まると言っても過言ではないので終始緊張していた。
しかも今日の朝に普段は見ることのないテレビの星座占いを見たのだが自分の生まれ月の星座は最下位だった。
他のメンバーに引いてもらおう。
そう思いながら抽選会場に向かった。
会場には予想通り多くの出場グループが来ていた。ざっと数えて20ちょっとあるな。
千歌「うえぇ~こんなに参加してるの~。」
曜「なんだか前回大会よりも多いような気がする。」
ダイヤ「とにかく私達は1番目を引かなければなりませんわ!」
ここで本題。
瑠惟「で、誰が引く?」
全員「・・・・・」
黙るなよ。
梨子「ここはやっぱりリーダーが・・・」
千歌「私!?別にいいけど・・・」
瑠惟「確か千歌も今日の占い最下位だったぞ。」
千歌「そうでした・・・。」
瑠惟「じゃあ善子が引いてみるか?」
もちろん本気で言ったわけではない。善子がどれだけアンラッキーな奴かはみんなよく知っている。この前なんかも新しく買った自転車が買ったその日にパンクしたって言ってたな。
善子「いいでしょう。私の力ここで出さずにいつ出そうか。」
え?
瑠惟「待て待て。今のは冗談で・・・」
ダイヤ「いいでしょう。ただし私にじゃんけんで勝てば引かせてあげましょう。」
ダイヤさんナイスだ。善子はじゃんけんとなるといつもチョキしかださない。これは勝ったも同然だ。
善子・ダイヤ「じゃんけん・・・・ポンッ!」
全員「!?」
今何が起こったんだ?なんで・・・善子が勝ってるんだ!?
ダイヤさんはチョキを読んでグーを出した。みんなも善子がチョキを出すと思った。
だが善子は違った!あいつはパーを出していた!
これにはダイヤさんもびっくり。
なぜか勝った善子本人も驚いている。
神が善子に引かせろと言っているようにしか思えない。
司会「次、Aqoursの代表者はこちらに来てください〜。」
ダイヤ「あなたに託しますわ。」
善子「任せなさい。」
頼むぞ善子。1番目、1番目だ・・・
善子(勝っちゃったけどどうしよう〜!私はチョキを出そうとしたのに誰かに触られてびっくりしてパーになっちゃった!うぅ・・・こういうので当たりとか引いたことないのに〜。)
善子がこちらに振り返る。
どうしたんだ?・・・あぁ緊張してるのか。
善子に向かってグッドサインを送る。
善子(めっちゃ期待されてる〜!・・・ここまで来たら引くしかない。)
善子がくじが入った箱の前に立つ。
自然と会場が静寂に包まれる。
善子「このヨハネに全ての悪魔の力を!今ここに真堕天使ヨハネを!」
会場「・・・・・・」
うちの中二病がすいません!だからそんな目で見ないであげて!
会場全体からの冷たい視線をよそに善子はくじを引いた。
最後まで読んでいただきありがとうございました。