コミュ障ヘタレと9人のアイドル   作: まきパリ

23 / 40
あけましておめでとうございます!(2月) 言いたいことはたくさんありますが今年もコミュ障ヘタレをよろしくお願いします!


Go to 北海道!

前回のコミュ障ヘタレ。学校存続のために最後まで努力したAqoursだったが、惜しくも入学希望者が目標の100人に集まることはなく、これからの道を悩んだ。しかしラブライブを諦めかけていた時に浦の星の生徒達からの言葉を聞いて、新たな目標を持つことができた。

 

 

 

瑠惟「提案しておいてなんだが・・・やっぱり帰っていい?」

 

千歌「ダメだよ!瑠惟君が行こうって言ったからみんな来たんだよ!」

 

瑠惟「しかしな・・・やっぱりここの寒さは尋常じゃないわ。」

 

梨子「何言ってるの?そんなの当たり前じゃない。だってここは・・・」

 

 

 

ー北海道だよ。

 

 

 

その通り。梨子の言った通り俺達は今北海道の函館にいるのだ。

 

俺もここに来るとは思ってなかったよ。

 

あのメールが来るまでは。

 

ーーーーーー

 

予備予選が終わり俺達が急いで学校に向かっている時に俺のスマホにあるメールが来た。

 

差出人は・・・ラブライブ運営委員会!?

 

どれどれ・・・

 

『浦の星女学院スクールアイドルAqoursの皆様、地区予選突破及びラブライブ決勝進出おめでとうございます。本日は皆様のご活躍を讃え、ラブライブ北海道予選にゲストとしてご招待するために本メールを送らせていただきました。もし行かれるのでしたら〜〜。』

 

へぇ〜北海道か・・・あっちはまだ予選が終わってなかったのか。

 

ていうか北海道ってSaint Snowがいるとこじゃん。

 

あの二人なら予選突破は間違いない。つまり決勝で争うことになるな。

 

う〜ん・・・

 

まぁ・・・今回はみんなもがんばったし、偵察と観光を兼ねた旅行ってことで行ってもいいかな。

 

後日みんなと相談して全員行けるとのことで俺は運営委員会に行きますと返信した。

 

ーーーーーー

 

瑠惟「・・・えっとこの後の予定だけどとりあえず今からラブライブの予選がある会場に行くぞ。ホテルにはそれが終わった後に行く。」

 

九人「はぁ~い。」

 

てなわけで会場について俺達はまず出演者の控室に向かった。

 

コンコン

 

千歌「失礼します。」

 

中に入ると出番を控えてるグループが何組がいて、ここにいるはずのないAqoursが入ってきたことに驚いていた。

 

聖良「あら?Aqoursのみなさん、どうしてここに?」

 

千歌「おはようございます。聖良さんに理亞ちゃん。今日来たのは予選に招待されて・・・」

 

聖良「そうだったんですか。静岡からわざわざありがとうございます。・・・それとラブライブ決勝進出おめでとうございます。」

 

理亞「・・・」

 

千歌「ありがとうございます。聖良さん達も予選がんばってください。」

 

聖良「えぇ私達もあなた達に負けないくらいのステージで決勝進出を勝ち取ります。」

 

やっぱり本番前だからか二人とも緊張しているのが何となく伝わる。

 

特に理亞ちゃんは・・・

 

千歌「じゃあ私達は観客席に行きます。」

 

そう言って千歌達は控室を出ていった。

 

俺もそろそろ・・・

 

聖良「せっかく会いに来てくれたのにあなたは何も言ってくれないのですか?」

 

瑠惟「・・・」

 

多分俺の事だろうな。無視するのも良くないし・・・はぁ・・・仕方ない。

 

瑠惟「いや、二人ともいい感じで話してましたし、本番前だから・・・」

 

聖良「それだとしても無視されるのはちょっと傷つきますね。」

 

瑠惟「あ~なんかすいません。・・・まぁがんばってくださいってさっき聞きましたよね。じゃあ・・・聖良さん、理亞ちゃん、一足先に待ってますからラブライブの決勝で。」

 

聖良「・・・大丈夫ですよ。私達もすぐにそっちに行きますから。・・・ほら、理亞もあいさつしなさい。」

 

理亞「・・・」

 

聖良「理亞!」

 

瑠惟「まぁまぁ俺は大丈夫ですから。今は集中させてあげてください。」

 

ここで喧嘩なんてやめてください。周りの俺への視線がきついから!

 

しかし俺が理亞ちゃんの方を見ると、彼女は震える手をぎゅっと握ってまるでプレッシャーから耐えるように固まっていた。

 

この時、何故かは分からないが俺の頭の中に嫌な予感がよぎった。

 

瑠惟「聖良さん、ちょっと理亞ちゃんと二人で話してもいいですか?」

 

・・・俺が敵に塩を送ろうとするなんて珍しいが、今はどうしてもやらないといけない気がした。

 

聖良さんに了解を得て、彼女に少し席を外してもらった。

 

瑠惟「理亞ちゃん。」

 

理亞「・・・」

 

優しく声を掛けるが返事がない。

 

瑠惟「お姉ちゃんと何かあったのか?」

 

彼女は何も言わずただ頷いた。

 

やはり聖良さんと何かしたんだな。

 

瑠惟「何があったかは聞かないでおくよ。でも何か言いたいことがあるなら聞くぞ。」

 

理亞「・・・姉様はこれが最後のラブライブなの。それなのに私、姉様と喧嘩しちゃって・・・。まだ仲直りできてない。」

 

瑠惟「今すぐに仲直りは・・・できないな。もう本番が始まるし。それに理亞ちゃんも今は言いにくいだろ?」

 

理亞「・・・うん。」

 

瑠惟「それは仕方ない。でも今は切り替えてほしい。多分今の理亞ちゃんの状態のままじゃステージで失敗すると思う。」

 

理亞「・・・分かってる。」

 

瑠惟「とにかくリラックスしていつもどおり踊ればいいよ。・・・もしステージで何かあっても慌てないで落ち着くこと。それでステージが終わったらきちんと仲直りすること。分かった?」

 

理亞「うん。」

 

瑠惟「よし、なら大丈夫だ。応援してるぞ。」

 

そう言って前みたいに彼女の頭を撫でてあげる。

 

理亞「兄様・・・ありがとう////」

 

本人も満更でもなさそうだ。

 

俺は控え室を出て、聖良さんに礼を伝えた。

 

瑠惟「それと・・・・・・やっぱりなんでもないです。」

 

聖良「?」

 

これ以上とやかく言うのは逆効果な気がした。彼女達も何だかんだで決勝を経験してるから特に心配はないと思った。

 

その後は千歌達と合流して予選を眺めながら決勝のことを考えていた。

 

曲を作りたいとは言ったけど・・・どんなテーマにしようか?

 

やっぱりAqoursがテーマの方がいいのか。

 

それとも決勝の舞台に相応しいような曲か・・・

 

・・・まぁそのうち思いつくだろ。

 

それに決勝で勝たなきゃ話にならない。

 

今は他のグループのを見て研究しよう。

 

俺は再びステージに意識を向ける。

 

瑠惟「次は・・・Saint Snowか。」

 

果南「あの二人なら特に問題なく決勝に行きそうだね。」

 

彼女達は前回大会で入賞しているし、今大会でも優勝候補の一つとして注目されている。

 

観客の期待が高まっていくのが伝わってくる。

 

「さて次は今大会の優勝候補!函館聖泉女子高等学院スクールアイドル・・・Saint Snow!」

 

キャー!

 

そしてそんなたくさんの期待と共に曲が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・しかしそれらはいとも簡単に消えてしまった。

 

理亞ちゃんが曲の途中で転倒してしまったのだ。

 

その後二人はは何とか持ち直したものの、決勝進出は絶望的になった。

 

彼女が転倒した瞬間会場の空気が凍ったように静かになったあの光景はずっと頭に残っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結果から言うとSaint Snowは第3位で決勝進出を決めた。

 

しかしSaint Snow自身はどうしても納得がいっていない様子だった。

 

特に理亞ちゃんは・・・

 

少し厳しいことを言うとSaint Snowが決勝進出できたのは他にそれほど秀でたグループがいなかっただけだ。

 

それは彼女達がよく分かっていたことなので尚更公開が残ったステージだっただろう。

 

俺達は予選終了後に楽屋に行ったがそこにSaint Snowの姿は無かった。

 

楽屋にいた子から聞いたが二人はこの後の決勝進出者の壮行会には行かないとだけ伝えて帰ってしまったらしい。

 

その時の二人はお互いに口をきいていなかったそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺達は今日の所はホテルに帰って休むことにした。

 

ホテルでの部屋は運営側の計らいで千歌・梨子・曜の三人部屋、一年生組の三人部屋、三年生組の三人部屋と俺の一人部屋となった。

 

部屋に入るなりベッドに寝転がって天井を見ながらさっきのことを振り返った。

 

Saint Snowがあんな初歩的なミスをしたのか・・・

 

優勝候補といえどやっぱり根は普通の女の子なんだよな。

 

それにさっき聞いた二人の様子から仲直りは・・・できてないよなもちろん。

 

俺も二人には世話になったしどうにかしてやりたいけど・・・いかんせん連絡が取れない。

 

・・・少し歩くか。

 

コートを羽織りマフラーを首に巻いた俺はどこに行くわけでもなく一人夜の函館に出た。

 

瑠惟「寒っ。」

 

やっぱり夜は昼よりも冷えるな。

 

さて・・・外に出たはいいがどこに行こうか。

 

ここで俺は今日見た光景を思い出す。

 

・・・確か聖良さん達の学校って函館聖泉女子高等学院だったよな。

 

場所を調べるとここからそんなに離れてないことが分かった。

 

ということで丘を登ってやって来ました函館聖泉女子高等学院。

 

ほぉ~ここか~ええやん。

 

校舎も大きくて綺麗で見るからにお嬢様学校って感じだな。

 

周りを見渡すがさすがに時間も遅いので誰もいない。

 

ん?

 

誰か下の方から走ってきてる?

 

暗くてよく分からない。

 

その人影が街灯の下に来るとようやくはっきりと見えた。

 

あれは・・・

 

瑠惟「よぉ理亞ちゃん。」

 

理亞「えっ!?兄様がなんでここに・・・」

 

彼女の格好を見るとどうやらランニングの途中みたいだった。

 

瑠惟「ちょっと聖地巡礼しようと思ってな。」

 

理亞「聖地巡礼って・・・。あの子達はどうしたの?」

 

あの子達?Aqoursのことかな?

 

瑠惟「あいつらならホテルで休んでるよ。長旅で疲れたみたいだし。」

 

理亞「そう・・・。ねぇ今日あった予選なんだけど・・・」

 

瑠惟「言いたいことは分かるがここじゃ寒いしちょっと場所を変えないか?奢るからさ。」

 

理亞「・・・」

 

俺は理亞ちゃんと近くのカフェに入った。

 

瑠惟「はい。お待たせ。コーヒーで良かったかな?」

 

理亞「・・・ありがとう。」

 

瑠惟「とりあえず決勝進出おめでとう・・・って言っても素直に喜べないみたいだな。」

 

理亞「私達はトップで予選を突破するつもりだった。・・・でも私のせいで決勝にすら行けなくなるかもしれなかった。」

 

瑠惟「それでも決勝には行けるんだし・・・」

 

理亞「予選を突破できたのはあの時兄様の言葉を思い出してすぐに切り替えることができたから。」

 

瑠惟「確かにあのままだったら間違いなく予選敗退してただろうな。」

 

理亞「それに本当は予選が終わった後に姉様と話し合って仲直りしようと思ってたんだけど・・・」

 

瑠惟「まぁそれは仕方ない。・・・でもそれをそのままにして決勝に臨んだら絶対に勝てない。それこそ取り返しのつかないことになる。」

 

理亞「分かってる。分かってるけど・・・」

 

瑠惟「まぁそんなに焦らなくてもいいんじゃないか?決勝まで時間はあるし。」

 

理亞「うん。」

 

瑠惟「じゃあこの話は終わり。で、俺から理亞ちゃんに聞きたいことがあるんだけど・・・」

 

理亞「兄様が私に?」

 

瑠惟「実は・・・」

 

 

 

理亞「へぇ・・・曲を作ろうとしてるけどいまいちイメージが湧かないのね。というか仮にも相手に優勝したことを前提の話をするなんていい度胸ね兄様。」

 

瑠惟「ま、まぁ・・・それは置いておて。理亞ちゃんから見てAqoursはどう見える?」

 

理亞「どう見えるか・・・そうね・・・何だか『青』って感じがするわね。名前が水に由来してるからかもしれないけど。」

 

言われてみれば確かにAqoursに「青」はしっくりくる。

 

瑠惟「なるほど・・・。」

 

理亞「・・・なるほどじゃないわよ。Aqoursのことなんて兄様が一番分かってるはずよ。他人に聞くものじゃないわ。」

 

瑠惟「へぇ〜」ニヤニヤ

 

理亞「な、なに笑ってんのよ!」

 

瑠惟「ごめんごめん。でも、なんだかんだいって理亞ちゃんもAqoursのこと見てくれてたんだなって。」

 

理亞「べ、別に私は・・・あくまで敵を知るために調べてただけなんだからね!」

 

瑠惟「そういうことにしておきますよ。・・・ってもうこんな時間か。」

 

時計を見るともうすぐ22時になりかけていた。

 

瑠惟「そろそろ帰ろうか。送ってくよ。」

 

ここから理亞ちゃんの家まではそれほど遠くなく、5分もしない内に着いた。

 

暗くてハッキリとは見えないが『くじら汁』と書かれた旗がうっすら見える。

 

瑠惟「理亞ちゃんの家は何かの料理店なのか?」

 

理亞「そうよ。この店は将来私と姉様で継いで一緒に暮らしていくの。それより、わざわざ送ってくれなくてもよかったのに・・・。」

 

瑠惟「誘ったのは俺の方だし。これぐらいさせてくれ。」

 

理亞「コーヒー・・・」

 

瑠惟「ん?」

 

理亞「コーヒーありがと。あと送ってくれたのも・・・。」

 

瑠惟「!」

 

瑠惟「・・・理亞ちゃんも俺なんかの話に付き合ってくれてありがとう。」

 

理亞「私も楽しかったから・・・じゃあね兄様!」

 

彼女が玄関に急いで入ったのを見届けてから俺はゆっくりホテルへと戻った。

 

心なしか顔が紅くなってた気がする。

 

「暖かいな・・・。」

 

 

 

 

次の日はみんなで函館観光なのでこのクソ寒い中外に連れ出されていた。

 

しかも・・・

 

瑠惟「重い・・・。」

 

みんなの買ったお土産を持たされている。いわゆる荷物係というやつだ。

 

千歌「瑠惟君、男の子でしょ!そんなんじゃ甘いよ。」

 

梨子「千歌ちゃん、さすがに全部ってのは可哀想というか・・・。」

 

千歌「大丈夫大丈夫。平気だから。」

 

あのさぁ・・・

 

と、こんな感じで振り回されること数時間、みんなが温かいものを食べたいということで途中で見つけた店で休憩することになった。

 

見たところ甘味処のようだ。

 

千歌「瑠惟君も早く〜!」

 

そんなこと言われてもお前らのお土産どもが文字通りお荷物なんだよ。

 

店の扉の前まで来たところであることに気づく。

 

くじら汁・・・。

 

あれ?なんかこれに見覚えがあるようなないような・・・。

 

まぁそんなことよりも寒くて凍えそうなので早く入ろう。

 

扉を開けて出迎えてくれた人を見て俺は思い出した。

 

聖良「いらっしゃいませ。まさかあなたからこんな所にまで会いに来てくれるなんて嬉しいですね。」

 

瑠惟「ハハッ。もしかしたら俺たち運命の赤い糸なんかで繋がってるのかもしれませんね。」

 

あぁ・・・ここ昨日来た理亞ちゃんの家だ。

 

聖良「あら・・・その荷物は・・・。」

 

瑠惟「あいつらはどうやらマネージャーのことを荷物持ちか何かと勘違いしてるみたいでして。」

 

聖良「ふふっ。そう言いながらもちゃんと持ってあげてるのですね。さぁ中へどうぞ。他のみなさんも待ってますよ。」

 

彼女に案内されて中に入ってちょうど空いていたルビィちゃんの隣の席に腰を下ろした。

 

もう無理。疲れた。

 

ルビィ「先輩、大丈夫ですか?」

 

そんな俺の様子を見てルビィちゃんが心配してくれた。

 

瑠惟「ホテルの温泉に入りたい〜。」

 

ルビィ「ルビィ達の荷物も持ってもらってすいません。」

 

瑠惟「そんなこと気にしなくていいよ。ここに来たのはみんなに楽しんでもらうためだし、そのためならこれくらいやるよ。」

 

ルビィ「ありがとうございます!」

 

聖良さんが作ってくれたお汁粉やくじら汁は本当に美味しかった。

 

全員が食べ終わり出る準備をしていた時

 

聖良「理亞、悪いけど器運ぶの手伝ってちょうだい。」

 

そう言うと店の裏から理亞ちゃんが出てきた。

 

理亞「だからさっきも言ったけど今日はしんどいから店は手伝わないって・・・え?な、なんで兄様とAqoursがここにいるの?まさか・・・」

 

理亞ちゃんがお前が連れてきたのかと言わんばかりに俺を睨む。

 

それを見た俺は「違う違う俺は何も言ってない」と首を横に振った。

 

千歌「いやぁなんか歩いてたら偶然というかなんと言うかここに着いて・・・」

 

理亞「ふぅん。それで何?もしかして3位で決勝進出の私達をバカにしに来たの?1位のAqoursさん。」

 

聖良「理亞!」

 

彼女の煽りともとれる言葉に聖良さんが怒りを見せた。

 

理亞「だってこうなったのは私の・・・私のせいで!」

 

そう言って理亞ちゃんは店の奥に行ってしまった。

 

千歌「じ、じゃあ私達はこれで・・・」

 

千歌達は空気を察したようですぐに出ようとした。

 

聖良「すいません。変なところ見せてしまって。」

 

千歌「いえ・・・」

 

聖良「大丈夫ですよ。私は昨日のことはもう気にしてませんから。」

 

千歌「そうですか・・・」

 

こうして俺達はモヤモヤを抱えたまま店を出た。

 

ルビィ「・・・・・」

 

ん?店を出た時から何か考え込んでいるように見える。

 

気になった俺は声をかけた。

 

瑠惟「どうしたんだルビィちゃん?」

 

ルビィ「・・・・理亞ちゃん。」

 

やっぱり気になるんだな。理亞ちゃんのことが。同じ姉を持つスクールアイドルとして。

 

 

 

 

 

ホテルに戻り自分の部屋に入ると昨日と同じようにベッドに転がった。

 

今日の晩御飯は各自で自由に食べることになっていたのだが、どうにも何かを食べる気にはなれなかった。

 

どうしてあぁなっちゃうのかな・・・。あれじゃあ二人とも仲直りしにくくなるじゃん。

 

・・・わからん。

 

どうすべきか一人で悩んでいると部屋のドアがノックされた。

 

瑠惟「はい?」

 

ドアを開けると梨子がいた。

 

瑠惟「おぉ梨子か。入っていいぞ。」

 

梨子「お邪魔します。」

 

別にそんなに改まらなくてもいいのに。

 

瑠惟「それで・・・どうしたんだ?」

 

梨子「その・・・一つ聞きたいんだけど・・・瑠惟君まだ晩御飯食べてないよね?」

 

瑠惟「お、おぅ・・・食べてないけど。」

 

すると梨子は呆れたように言った

 

梨子「はぁ・・・やっぱりね。ちゃんと食べなきゃダメだよ。」

 

瑠惟「とは言ってもな・・・何か食べる気になれないんだ。」

 

梨子「じゃあ・・・これ食べる?」

 

そう言って梨子が出したのは・・・

 

瑠惟「サンドイッチ?」

 

梨子「さっきここのキッチンを借りて作ったの。これならそんなに重くないし瑠惟君でも食べれるかなって。」

 

その言い方だと俺が食べないのを分かってたみたいなんですけど。

 

瑠惟「そうだな。さすがに何も食べないっていうのも良くないし・・・ありがたく頂くよ。」

 

梨子が作ってくれたサンドイッチは優しい味がして食欲がない俺でも完食することができた。

 

やはりとは思ったけどやっぱりたまごサンドなんだな。

 

瑠惟「ごちそうさま。美味かったよ。ありがとう。」

 

梨子「そんな・・・全然いいよ。」

 

瑠惟「そうか・・・」

 

梨子「うん・・・」

 

「「・・・」」

 

特に話すことも無く二人の間に無言タイムができる。

 

「「あの・・・」」

 

二人同時に声が出る。

 

瑠惟「そっちからどうぞ。」

 

梨子「うん。」

 

梨子「・・・昨日のSaint Snowのライブと店でのことなんだけど・・・私、二人の様子がちょっと変だったかなって思って、瑠惟君はどう?」

 

どうやら梨子も考えることは同じだったようだ。

 

瑠惟「俺もそう思った。やっぱり引きずってるなって。」

 

梨子「引きずってるってどういうこと?」

 

瑠惟「実は・・・」

 

俺は梨子に理亞ちゃんと聖良さんが喧嘩をしていたことを話した。

 

梨子「そうだったんだ・・・。だからそのことを考えたままパフォーマンスをして・・・」

 

瑠惟「そういったことを全部くるめてラブライブなんだ。昔に理亞ちゃんが言った通りラブライブは遊びじゃない。厳しい世界だ。」

 

梨子「そうだね。一つのミスで全てが台無しになっちゃう時もあるからね。」

 

一つのミスか・・・その点で言えばSaint Snowはよく立て直すことができたな。

 

梨子「私には兄弟とかいなかったから喧嘩とかは無かったけどやっぱりそういうのって抱えちゃうものなのかな?」

 

瑠惟「まぁ俺も一人っ子だけど、昔は千歌や鞠莉さんと喧嘩するとその時は怒ってるんだけど後になってやらなきゃよかったって後悔した。」

 

梨子「ふふっ。なぜかその光景が簡単に想像できちゃう。」

 

瑠惟「鞠莉さんは謝ればすぐに仲直りできたけど、千歌の場合は中々許してくれなかったな〜。あぁ見えて結構頑固な奴だから。」

 

梨子「いいな〜そういうの。私にも兄弟か兄弟みたいに仲がいい友達が欲しかったな。」

 

瑠惟「そんなこと言うなんて意外だな。ちなみに兄弟だったら上か下かどっちが欲しかった?」

 

梨子「うーん・・・私は弟かお兄ちゃんが欲しかったかな。ほら私ってずっと女子校で男の子と接したことがほとんどなかったから。・・・瑠惟君はどっち?」

 

瑠惟「俺は兄か姉だな。」

 

梨子「意外。てっきり弟か妹って言うと思ってた。」

 

瑠惟「どうしてだ?」

 

梨子「だって瑠惟君って面倒見が良くて世話を焼くのが好きそうだから。」

 

瑠惟「そんなふうに思われてたのか・・・。梨子達にはそう見えるかもだが実は結構面倒くさがりで、どっちかと言うと世話をしてほしい人間だぞ。だから上がいたら色々やってくれそうかなって。」

 

梨子「へぇ〜そうなんだね。じゃあ・・・」

 

今の話で好奇心が湧いたのかさらにこんなことを聞いてきた。

 

梨子「Aqoursのメンバーだったら誰をお姉ちゃんにしたい?」

 

瑠惟「ダイヤさん。」

 

梨子「即答だね・・・。でも確かにダイヤさんって『The お姉ちゃん』って感じがあるよね。」

 

瑠惟「そうそう。それにダイヤさんって普段は厳しくてちょっと近寄りづらいけど、実は優しくて誰よりも家族想いなんだ。だから時々妹のルビィちゃんが羨ましく思う。」

 

梨子「そうだね。そう言われるとお姉ちゃんも悪くないかな。・・・・・・あっ。ルビィちゃんで思い出した。実はさっき瑠惟君の部屋に来る時にねルビィちゃんらしき人が一人でホテルから出ていくのを見たの。もう夜で周りも暗いし、もしあれがルビィちゃんだったら少し心配で・・・。」

 

瑠惟「それは本当か?」

 

こんな時間にルビィちゃんが一人で知らない街をうろつくとは思えないが・・・

 

俺はすぐに1年生が泊まってる部屋に向かい善子と花丸ちゃんに事情を聞いた。

 

瑠惟「行きたいとこがあるだと?」

 

花丸「すぐに戻ってくるって言ってたから大丈夫だと思うずらよ。」

 

善子「そうそう。先輩は心配しすぎよ。」

 

いや、ここが沼津とかならこんなに心配しない。初めて来た北海道だから心配なんだよ。

 

瑠惟「そうは言ってもな・・・」

 

善子「そんなに気になるなら追ったら?まだそんなに遠くには行ってないと思うから。」

 

そうだな・・・二人の言うことを聞く限り大丈夫だと思うが万が一何かあったら洒落にならないから追ったほうがいいな。

 

瑠惟「あぁ。そうするよ。ありがとな二人とも。」

 

ルビィちゃんの行った方向が分からないのでホテルのフロントに聞いてみることにした。

 

瑠惟「すいません。さっきここを赤い髪の女の子が通りませんでしたか?」

 

「はい。その方ならここを真っ直ぐ歩いて行かれましたよ。」

 

瑠惟「そうですか。ありがとうございます。」

 

「あっお客様。」

 

瑠惟「はい?」

 

「今夜はこれからさらに雪が多く降って冷えますのでよろしければ傘をお貸ししましょうか?」

 

瑠惟「ではお言葉に甘えてお借りします。」

 

傘を受け取った俺は急いでルビィちゃんの行った方向に走った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。