感想及びリクエストありがとうございます!
そうですね。決勝編が終わればリクエストに応えた話を書くかもです。
全国5000以上もいるスクールアイドル。
その内のひと握りの実力を持ったスクールアイドルによる頂点を決める大会。
ラブライブ
スクールアイドルの甲子園と言うべきそれに結成1年にも満たない小さな田舎のスクールアイドル・・・Aqoursが決勝へと駒を進めたのだ。
瑠惟「ここが・・・」
千歌「アキバドーム!」
明日ラブライブ決勝が行われる東京に前日入りした俺達は決戦の舞台の下見にアキバドームへと足を運んだ。
梨子「本当にここで歌えるの・・・」
曜「なんだか夢みたい!」
会場の大きさは言わずもがな、予選の会場の何倍もある。
そして明日この会場は満員になるだろう。
Aqoursのみんなはというと会場の規模に驚いているが、気負いしている様子はどこにもなかった。
いや・・・むしろ・・・
ルビィ「すごいね!ルビィ達ここで歌えるんだよ!」
花丸「おらワクワクしてきたずら!」
善子「クックック・・・この会場の全員リトルデーモンに・・・」
瑠惟「楽しみか?」
千歌「うん!だってアキバドームだよ!私達の歌をたくさんの人に届けられるんだよ!」
良かった。これなら明日いい形でステージに臨めそうだな。
瑠惟「じゃあ今日は明日に向けてゆっくり休んでくれ。それで」
ここで千歌が割って入ってきた。
千歌「明日のことなんだけど・・・本当は朝にミーティングだったけど、昼前に集合して朝はみんな自由行動にしない?」
瑠惟「その心は?」
千歌「うん。みんな決勝ってことで色々思うことがあるとおもうんだ。だから各自気持ちの整理をするために自由行動にしたいなって。」
瑠惟「・・・なるほど。その予定でも特に差支えがないなら。俺は構わない。みんなはどうだ?」
全員頷いたのでこれはOKだろう。
瑠惟「分かった。じゃあ明日は11時まで自由行動。そこからアキバドームに直接集合で。遅れないように。」
Aqoursのみんなはホテルへと帰った。俺はもちろん実家へと向かった。
ーーーーーーーー
Side 千歌
瑠惟君と別れた後、私達は予約していたホテルに向かった。
私達は9人と多いので大広間をひとつ貸し切っている。
部屋につくなりみんな荷物を置いて、予め敷いてあった布団にダイブした。
千歌「やっぱり内浦から東京に来るのは疲れるね。」
曜「あ〜とりあえずお風呂に入りたいなぁ。」
梨子「そうね。晩御飯の時間まで少しあるし大丈夫ね。」
曜「じゃあお風呂に向かって全速前進ヨーソロー!」
結局9人全員でホテルの大浴場に行った。
幸運なことにこの時間帯のお客さんは少ないようで私達の貸切状態だった。
果南「いよいよ明日か・・・」
果南ちゃんは家の旅館よりも大きな湯船に浸かると上を見上げてそう言った。
ダイヤ「ここまで・・・本当に長かったですね。本当に。」
鞠莉「明日が私達3年生のラストステージ!楽しみたいね!」
ラストステージ・・・その言葉が重く私にのしかかる。
明日は瑠惟君のラストステージでもあるんだよね。
梨子「どうしたの?千歌ちゃん。」
千歌「私ね思うんだ。もしあの時瑠惟君がマネージャーを引き受けてくれなかったらここまで来れなかったかもって。それだけ支えてもらってたんだなって。」
梨子「そうね・・・。私もたくさん救われた。また楽しくピアノを弾いたりできるのも彼や千歌ちゃん達のおかげだし。」
そうだ・・・いつだって瑠惟君に助けてもらって、辛いことも嬉しいことも一緒に感じて共有してくれた。私達のためになることだったら何でもやってくれた。それがどれだけしんどいことでも。
じゃあ私達にできることって何だろう?瑠惟君は恩返しだなんて思うなって言ってたけど、それじゃあ私達の気が収まらない。ラブライブで優勝する・・・確かにこれも大事なことだ。約束したことでもあるし。でも・・・本当に彼が喜ぶことって何だろう?
果南「何か考え事?」
私の様子を気にして果南ちゃんが声を掛けてくれた。
千歌「私達が瑠惟君に何ができるのかなって。」
果南「う〜ん・・・それって考えるものなのかな?」
千歌「え?」
果南「前に言ってたじゃん。『みんなの全てをステージで出してほしい』ってそれって全力でスクールアイドルを楽しむ私達の姿が見たいってことなんじゃない?
今までマネージャーをやってきた彼にとって嬉しいことって私達がステージで輝く姿を見るってことだよ。
ダンスも歌も全然できなかった頃から一緒に頑張ってきた私達の・・・過ごしてきた時間の全てを見てきた彼にとってそれが1番なんだよ。
何も特別なことは要らない。違う?」
はっとさせられた。私は何か形あるもので瑠惟君を喜ばせることを考えていた。でも果南ちゃんの言葉を聞いて気付いた。そうじゃないんだって。瑠惟君にとって一番の贈り物は私達自身なんだって。
千歌「ありがとう果南ちゃん!」
果南「どういたしまして。」
そして私はみんなに言った。
千歌「みんな!聞いてほしいの!・・・・・・明日のステージ私達はもちろん優勝を目指す。でもそれ以上にあの大舞台でパフォーマンスできること。ステージでの一分一秒を全力で楽しみたい!そして瑠惟君に見てもらうの。私達はこんなに成長したぞって!これが私達Aqoursなんだって!」
私の言葉をみんな最後まで黙って聞いてくれた。
善子「なーに言ってるのよ。」
善子「そんなこと当たり前でしょ。もとより私も同じ気持ちよ。」
花丸「そうずら!先輩をびっくりさせるくらい頑張るずら!」
ルビィ「ルビィもがんばルビィするもん!」
鞠莉「もちろん!私もそうさせてもらいマース!」
ダイヤ「黒澤家には手を抜くという言葉はありませんので。」
果南「ね?言ったでしょ。考えなくてもいいって。みんな千歌と同じ気持ちなんだよ。」
そうだね・・・本当に考えなくても良かったんだね。みんな何が大切なのかちゃんと分かってたんだ。
千歌「じゃあみんな明日に備えてちょっとだけ復習しよっか!」
「「「おぉー!!」」」
瑠惟君・・・あなたの最後のステージ絶対最高のものにしてみせるから!
ーーーーーーー
Side in 瑠惟
Aqoursと別れた俺は実家に戻って夕食をとっていた。
偶然にも母さんと父さんが日本に戻ってきていて、明日の決勝も見に来てくれるらしい。
さらに今日は家に客人が来ていると母さんに言われたのだが・・・
瑠惟「今度はあなたですか・・・」
「あらあら。いいじゃない。あなたのお母さんあなたが帰ってくるって聞いたんだから。」
母「まぁ瑠惟、せっかく来てくれたんだからね。」
瑠惟「そうだね・・・。
お久しぶりです。ことりさんのお母さん。
いや・・・音ノ木坂学院理事長兼校長ですか。」
ことりママ「もぉ、そんな堅苦しい呼び方はやめてちょうだい。あなたもママって読んでいのよ♪」
母「ちょっと、この子は私の息子よ。」
ことりママ「冗談よ冗談。全く昔からジョークが通じないんだから。」
母「はぁ・・・。ことりちゃんがあなたの娘っていうのが信じられないくらいだわ。」
とまぁ二人は大学時代からの旧友らしく、こうやって家に来ることが多い。
俺がμ'sと交友関係があるのもこの人がきっかけでもあるのだ。
久しぶりの家族団欒を楽しみつつ話題は学校の話となった。
ことりママ「浦の星の事は残念だったわね。私も小原さんと協力してできるだけ動いたんだけど・・・力及ばずっていう感じだったわ。ごめんなさい。」
いつも明るい彼女しては珍しく本当に悲しんでいる様子が伝わってきて、何だかこちらも申し訳なく思ってしまう。
瑠惟「謝らないでください。むしろお二人には感謝してます。Aqoursが学校存続のために活動できたのもお二人の尽力のおかげですし、何よりあいつらと出会えたことが一番嬉しいんです。」
そして俺は立ち上がり彼女に感謝の意味で頭を下げた。
瑠惟「ここまで学校を支えてくださりありがとうございました。」
彼女もここまでされるとは思っていなかったのかどこか驚いた様子である。
ことりママ「やっぱりあなた達の息子って感じがするわね。本当に誰に似たのかしらね。・・・瑠惟君、よく頑張ったわね。」
そう言って彼女は自分の子供をあやすように頭を撫でてくれた。
最近よく誰かに頭を撫でられているが・・・まぁ悪い気持ちはしないな。
ことりママ「これくらいはいいわよね?」
母「優しい私は寛大ですからね。息子が褒められるのは私としても嬉しいので。」
どこか母さんは嬉しそうだった。
ことりママ「それで次の学校はどうするの?やっぱりみんなと同じところに行くの?」
瑠惟「いや、俺は東京の学校に通います。それがあいつらのためだから。それに・・・俺も前に進もうと思いました。」
瑠惟「もう一回やってみようと思います。・・・バスケ。」
それを聞いたことりママは目を見開いた。
彼女も俺の過去を知る数少ない人物の一人だ。だからこそまた始めると言ったことに驚いたのだろう。
ことりママ「そう・・・良かったわね。あなたをここまで変えたAqoursの皆さんに一度会ってみたくなっちゃった。」
瑠惟「だったら明日のラブライブ見に来てくださいよ。ことりさんも来ますし。」
ことりママ「そうね・・・明日は仕事だけど、ひと段落ついたら見に行ってみようかしら。」
瑠惟「俺達の出番は最後なんでゆっくり来てもらっても大丈夫ですよ。」
ことりママ「分かったわ。」
瑠惟「じゃあ俺は明日に備えて風呂に入って休みます。今日は来てくれてありがとうございました。」
ことりママ「あら?もう行っちゃうの?もっとお話したーい。」
この人が言うとことりさんに言われてるみたいでソワソワするのでやめてほしい。本当に大学生の子持ちかよ。
母「お話なら私と旦那がしてあげるわよ。」
ことりママ「えー瑠惟君がいいのにー。・・・あっそうだわ。瑠惟君、一緒にお風呂に入りましょ。昔よくやってたし。」
あんた何言ってんだよ。この発言バレたら娘と旦那に殺されますよ!
瑠惟「冗談はその若さと美しさだけにしてください。じゃあおやすみです。」
最後に彼女は言った。
ことりママ「瑠惟。悔いのないようにね。」
大丈夫ですよ。・・・後悔は沼津の海に捨ててきましたから。
その夜、布団に入り窓から見える夜空を眺めているとスマホが鳴った。
瑠惟「よぉ・・・どうした輝。」
それは中学時代の後輩、いつか俺のバスケの復帰のきっかけを作ってくれた奴だった。
輝「こんな時間にすいません。明日に大事な大会があるのに。」
瑠惟「あぁ構わない。ちょうど誰かと話したかったんだ。」
輝「明日会えるか分からないので言いますね。俺応援してますから!先輩たちAqoursを!頑張ってください!」
瑠惟「ありがとう。その言葉Aqoursのみんなに伝えておくよ。・・・・・・あぁそうだ。ちょうどいいから言っておくよ。俺なこの春から東京だから。それでまたバスケやるよ。」
輝「えっ!?それって俺の学校に来るってことですか?」
瑠惟「まぁそういうことになるかな。」
輝「やった!先輩とまたプレーできるんですね!俺感激です!」
瑠惟「じゃあそういうことだからよろしくな。」
輝「はい!俺強くなって待ってますから!」
瑠惟「おやすみ。」
そうか・・・あいつも見に来てくれるんだな。
これは優勝しないとカッコが付かないか。
よし!明日は絶対に優勝するぞ!
そして俺はいつの間にか夢の世界へと落ちていったのだった。
翌日、懐かしい母さんの朝食の匂いで目が覚めた。
外を見れば快晴だった。いい天気だ。
ダイニングに行くと既にテーブルには朝食が並べられ父さんは食べ始めていた。
瑠惟「おはよう。」
父「おはようございます。」
母「おはよう。どう?よく眠れた?」
瑠惟「まぁね。あの後ことりさんのお母さんはいつ帰った?」
母「そうそう。あの子日付が変わってもずっと飲んでて娘に彼氏ができないとか、仕事が面倒くさいとか、どれだけ付き合わされたか。」
と言いつつも母さんは楽しかったようだ。俺にはそんなふうに聞こえた。
母「今日はいつ出発するの?」
瑠惟「昼前に集合だけど、ちょっと外を見て回るよ。」
母「そう。私達はいつぐらいに出れば間に合うのかしら?」
瑠惟「うーん・・・まぁ夕方ぐらいかな。出番最後だし。」
母「分かったわ。あなた聞いてた?夕方ぐらいだって。」
父「分かりました。」
朝食を食べ終わり、俺は荷物を持って家を出た。
出発する時に母にこんなことを言われた。
母「いい?あなた達にとって優勝するってことは大切かもしれない。
でもそれ以上に大切なのはあなた達自身よ。
観客とか大会とかそんなことは二の次。
あなたの顔を見れば分かる。
どれだけ努力してきたのか、どれだけみんなとの時間を大切にしてきたか。
だからマネージャーとしてのあなたの最後の仕事はステージに向かうみんなを『いってらっしゃい』と送り出し、ステージのみんなを見守って、帰ってきたみんなを『おかえり』と迎えてあげること。
まぁ、あなたなら分かってることだと思うけど、それを忘れちゃダメよ。
さぁ、いってらっしゃい。気をつけてね。」
全くその通りだな。さすが母さん。
瑠惟「・・・母さん。」
母「何よ?」
瑠惟「『輝き』ってなんだと思う?千歌がずっと探してるんだ。」
母「知らないわよ。」
そりゃそうだ。
しかし母は続けた。
母「私に聞くまでもないんじゃない?
それは千歌ちゃんのそばでずっと一緒だったあなたがよく分かってるはずよ。
千歌ちゃんと一緒に夢を追いかけていたあなたの心が、身体がその答えを知ってる。違う?」
それを聞けてよかった。
瑠惟「ありがとう母さん。じゃあ行ってくる。」