コミュ障ヘタレと9人のアイドル   作: まきパリ

36 / 40
結局クリスマスの話を書くことにしました。作者が三日程度で考えたのでクオリティは察してください。あと例に漏れず長文です。


コミュ障ヘタレはクリスマスに本気を出す

クリスマス・・・その日はイエス・キリストの誕生を祝う日とされている。でも日本ではどちらかと言うとパーティーをしたり、各々で楽しむ日という感じであろう。もちろん内浦もそんなクリスマスムードに染まっている。

 

それはクリスマスが近づいてきたある日のことだった。

 

「ねぇねぇ瑠惟君、早くクリスマスにならないかな!」

 

「千歌、さっきからそれしか言ってないじゃないか。」

 

「だって、今年はAqoursのみんなと過ごす初めてのクリスマスだよ!」

 

「それもそうだな。」

 

今年のクリスマスは鞠莉さんの提案でみんなでクリスマスパーティーをやろうということになったのだ。鞠莉さん曰く普通のパーティーじゃつまらないので船上でパーティーをやるそうだ。

 

「明日、プレゼント交換用のプレゼントを買いに行こうよ!」

 

千歌の言った通り、パーティーではAqoursのみんなでプレゼント交換会をやることになっている。しかもただのプレゼント交換ではない。それは誰にプレゼントを渡すか事前にクジで決めたのだ。つまり誰にプレゼントをあげるかは分かっているが、誰から貰うかは当日のお楽しみというわけだ。ちなみに自分があげるのは・・・ここで言うのは止めておくよ。

 

「分かった。明日、沼津の方に行こうか。」

 

「やったぁ!明日はデートだ!」

 

「おいおい、あくまで目的は買い物だからな。」

 

「分かってるよ〜。」

 

ホントに分かってるんだか・・・。

 

「ところで千歌。」

 

「ん?何?」

 

「プレゼントを買いに行くのはいいんだが、小遣いは残ってるのか?」

 

「あ・・・」

 

ビンゴだ。どうやら千歌には貯金という習慣は無いらしい。

 

「私お小遣い前借りしてくる〜!」

 

そう言って千歌は部屋を出ていった。

 

その直後電話が掛かってきた。

 

相手は・・・梨子?

 

「どうしたんだ梨子?」

 

「えっと突然ごめんね。あの・・・明日って何か予定とかあるかな?」

 

「すまない。明日は先約があって・・・。」

 

「・・・そうなんだ。うん、分かった。じゃあまたパーティーで会いましょ。」

 

「あぁ、こっちもごめんな。」

 

「気にしないで。突然誘ったのは私だし。じゃあね。」

 

なんか梨子には悪いことしたな。

 

プレゼントか・・・。一人だけに渡すのもいいが日頃の感謝もあるしな・・・。何かサプライズできれば・・・。あっ!いいこと思いついたぞ。

 

そしてある人物に電話を掛ける。

 

「もしもし、・・・さん。こんな時間にすいません。ちょっと頼み事があるんですけど。・・・・・・ありがとうございます。ではお願いします。」

 

電話を終えると千歌が戻ってきた。

 

「前借りできたか?」

 

「できたけど・・・。」

 

「どうしたんだ?」

 

「志満ねぇに今日中に冬休みの宿題できたらあげるって言われて・・・。」

 

「そうか。じゃあ頑張れよ。」

 

「えぇ〜!?そこは『手伝ってやるよ。キリッ』って言うところだよ!」

 

「何で千歌の宿題を手伝わなきゃならないんだ。こっちはとっくに宿題終わらせたし早く寝たいんだよ。」

 

「お願い〜。瑠惟君が手伝ってくれないと終わらないから助けて〜。手伝ってくれたらなんでもするから。」

 

そんな手に乗るかよ・・・ん?

 

「千歌・・・今なんでもするって言ったよな?」

 

「え?そうだけど・・・。まさか私にあんな事やこんな事を・・・。」

 

「バカか。誰が従姉妹に欲情するんだよ。とにかくその条件で契約成立だ。」

 

「じゃあ手伝ってくれるの?」

 

「もちろんだ。そうと決まれば今からやるぞ。覚悟するんだな。」

 

「イエッサー!」

 

そこから千歌が溜め込んだ宿題をやり続けた。

 

数時間後・・・

 

「終わったー!」

 

「疲れた・・・。どれだけやってなかったんだよ。」

 

千歌はそこまで勉強が得意ではないが、要領が良く、根性もあるのでやり方を教えるとスラスラと問題を解いていった。

 

「とにかくありがとう!よーし、志満ねぇに見せてくるよ!」

 

「じゃあこっちはもう寝るわ。おやすみ。」

 

朦朧とする意識のままベッドに向かいそのまま眠りに落ちた。

 

翌日・・・

 

「着いたー!」

 

千歌と二人で沼津に来た。休日ということもあり通行量は少し多い。

 

「じゃああそこに行くよ!」

 

千歌に連れて来られたのは沼津にあるショッピングモール。この辺りじゃかなり規模があり、ここに来れば大抵の物は揃う。

 

「ところで何を買うか決めたのか?」

 

「それを言ったら面白くないでしょ。当日のお楽しみだよ。」

 

「そうか。じゃあ一時間後にここに集合でいいか?」

 

「うーん・・・折角二人で来たけど・・・何を買ってるか見られるのも嫌だし・・・分かった。じゃあ一時間後にここに集合ね。」

 

「分かった。絶対に時間を守れよ。あと何かあったらすぐに連絡をしろよ。」

 

「ハイハイ、瑠惟君は心配しすぎだよ。大丈夫だから。」

 

こんな事を言っているが千歌は出掛ける度に迷子になっている。

 

「じゃあまた後で。」

 

こうして別れてプレゼントを探すことになった。

 

さて・・・何にしようかな。

 

しばらくモール内を歩いていると見慣れた人物が目に入る。

 

あれは・・・果南さん、鞠莉さん、ダイヤさん?

 

三人でプレゼントを買いに来たんだろうか?

 

すると果南さんがこちらに気付いた。

 

「あっ、瑠惟じゃん。やっほー。」

 

「どうもです。」

 

続いてあとの二人もこちらに気付く。

 

「瑠惟さん?あなたも来ていらしたですのね。」

 

「Hello 瑠惟。」

 

「もしかして一人で来たの?」

 

果南さんが哀れなものを見る目でこちらを見る。

 

「いやいや、こんな所に一人で来たら虚しくてすぐに帰りますよ。千歌と来たんですけど、プレゼントを買うところを見られたくないということで別々で行動しているんです。」

 

「ふーん、そうなんだ。ねぇ瑠惟は誰にあげるの?」

 

「言うわけないじゃないですか。当日のお楽しみですよ。」

 

「そうだね。」

 

「そちらもプレゼントを買いに来たんですか?」

 

「うん、最初は一人で来ようと思ったんだけど・・・。」

 

「ダイヤがね、一緒に来てほしいってCryしてきたの。」

 

「嘘をおっしゃい!私は決して・・・さ、寂しかったわけではありませんことよ!」

 

ホントに分かりやすい人だ。

 

「そういう事にしておきますよ。ところで鞠莉さん、今日買う予定のプレゼントを鞠莉さんのところで置いて貰っても構いませんか?」

 

「Of course もちろん良いわよ。そんなに沢山買う予定なの?」

 

「まぁちょっと色々ありましてね。それでみなさんはどんなプレゼントだったら嬉しいですか?」

 

三人は悩む素振りも見せずに答える。

 

「「「その人の心がこもっているのならどんなプレゼントでも叶わないよ(ですわ)。」」」

 

「そうなんですか。でも強いて言うなら?」

 

「私はイルカのぬいぐるみとかがいいな。」

 

果南さんが答える。

 

「私はね・・・何か形に残る思い出が欲しいかな。」

 

鞠莉さんが答える。

 

「私は・・・μ'sのグッズが欲しいですわ。」

 

「果南さんと鞠莉さんは意外ですね。ダイヤさんは予想通りですけど。」

 

「そんなこと聞いてどうするの?まさか私たちにくれるの?」

 

「気になったので聞いただけですよ。・・・じゃあそろそろ行きますね。」

 

「じゃあまたね。」

 

三人と別れまたモール内を歩く。目当ての物が中々見つからないので少し焦っている。

 

するとまたしても見覚えのある姿が見えた。

 

Aqoursの一年生組の三人である。

 

「先輩?こんなところで何してるずら?」

 

「え?花丸ちゃん、瑠惟先輩がいるの?・・・あっ本当だ。こんにちは先輩。」

 

「よくぞ私の元に来てくれたわね。我がリトルデーモン。」

 

「三人ともこんにちは。やっぱりプレゼントを買いに来たの?」

 

「そうずら。先輩もずらか?」

 

「そうだよ。」

 

「ルビィたちは善子ちゃんに誘われて来たんです。」

 

「我が眷属たちの力を利用させてもらうわ。」

 

「善子ちゃん、プレゼント選ぶのが不安だからマルたちに手伝ってほしかったずらね。」

 

「そ、そんなわけないでしょ!」

 

まぁ善子が一人で選んだらそっち系統の物になるからな。

 

「三人はどんな物が欲しいの?」

 

「マルは・・・とにかく本があればいいずらね。」

 

「ルビィは・・・μ's・・・小泉花陽ちゃんのグッズが欲しいです。」

 

「私は・・・邪気を放つ闇の衣ね。」

 

「ハイハイ、新しいコートだろ。」

 

三人とも予想通りだな。

 

「貰えたらいいな三人とも。」

 

「先輩は何が欲しいずら?」

 

確かにそんな事考えたことなかったな・・・

 

欲しいものか・・・

 

「自分は・・・・・・が欲しいな。」

 

「先輩らしいずらね。」

 

「そうか?まぁ他に欲しい物が無いんだよな。」

 

「先輩も貰えるといいずらね。」

 

もうこんな時間か・・・

 

「じゃあそろそろ行くわ。約束があるからな。」

 

そうして三人と別れた。

 

時刻は集合時間の十分前、未だに見つかっていない。

 

後で一人で探すか・・・。

 

とりあえず今は千歌と合流しよう。

 

集合場所に着いたが案の定、千歌はまだ来ていない。

 

何やってるんだあいつは。

 

しばらく待っていると

 

「瑠惟君!ごめんねー!」

 

千歌がようやく来た。

 

「おい、何遅れてるんだよ・・・って梨子?そして曜?」

 

そこには何故か千歌と一緒に梨子と曜がいた。

 

「え?瑠惟君・・・。昨日言ってた先約って千歌ちゃんの事だったんだね。」

 

「・・・・・・」

 

何か雰囲気ヤバくない?

 

「ワタシ オナカヘッタナー。ミンナ、ナニカタベニイコーヨー。」

 

すごくわざとらしいが曜がフォローを入れてくれた。

 

「・・・そうね。ちょうどお昼だし二人も一緒にどう?」

 

「ごめんな梨子、今日は千歌と二人で出掛けるって約束したんだ。」

 

「そう・・・。あなた本当に千歌ちゃんが大切なのね。」

 

「当たり前じゃないか。」

 

「じゃあ私たちは行くね。ほら行くよ梨子ちゃん。」

 

「ごめんね邪魔をしちゃって。」

 

「ちょっと待ってくれ二人とも。」

 

「「どうしたの?」」

 

「二人はクリスマスプレゼントに何を貰ったら嬉しい?」

 

「私は・・・新しい裁縫道具かな。最近忙しくて新調できてないしね。」

 

曜が答える。

 

「私は・・・可愛い小物とかが欲しいかな。」

 

「どうしてそんな事聞くの?」

 

「いや・・・女子の好みがイマイチよく分からなくて、色んな人に聞いて参考にしてるんだ。」

 

「でも・・・あなたが心を込めて贈れば、それ自体がどんな物でも、貰った人には最高のプレゼントになると思うわ。」

 

「そうだよな・・・。二人ともありがとう。」

 

「いいのよ。それより・・・今度は私とデートしてよね。」

 

「あぁ、もちろんだ。」

 

そういえば最近、梨子に構ってやれなかったな。

 

「千歌ちゃん、瑠惟君、また明日ね!」

 

「梨子ちゃん、曜ちゃん、バイバイ!」

 

二人と別れ、千歌と二人になった。

 

「それで・・・瑠惟君は目的の物は買えたの?見たところ何も買ってないみたいだけど。」

 

「実は・・・まだ買えてないんだ。」

 

「えぇ〜!?瑠惟君何してたの!?」

 

「色々あったんだよ。だから後で買いに行こうと思う。どの店に行くかは決めてあるから。」

 

「うん。瑠惟君の事だから何か考えてるんだよね。じゃあ私は帰・・・」

 

「もう帰るのか?まだ昼だぞ。」

 

「え?だって瑠惟君一人で買い物に行くんでしょ?」

 

「確かにそうだが、せっかく千歌と二人で来たからもう少し遊んで行こうかと・・・」

 

「うん!私ももう少し一緒にいたい!」

 

誘ってくれた子を放り出すのはさすがのコミュ障ヘタレでもやらないよ。

 

それから二人でたくさん遊んだ。かつてお互いがまだ小さかった頃のようにはしゃいだ。あの時は千歌は怖がりで自分がいつも手を引っ張っていたな。今となっては逆転したけど。千歌がみんなを引っ張ってる。

 

気づけば夕方になっていた。

 

「もうこんな時間だ。じゃあ私は先に帰るね。美渡ねぇたちには私が言っておくから瑠惟君はゆっくり選んできていいよ。」

 

「悪いな千歌。一人で帰らせてしまって。あっそうだ、千歌はクリスマスプレゼントに何を貰ったら嬉しい?」

 

「私はもういいの。だって少し早めのクリスマスプレゼントを瑠惟君から貰ったから。」

 

「え?何か千歌にあげたか?」

 

「コミュ障でヘタレさんには分からないよ。気が向いたら答えを言ってあげるね。」

 

「そうか。じゃあ楽しみにしておくよ。」

 

「じゃあね。あんまり遅くなりすぎないようにね。」

 

「分かってるよ。」

 

こうしてとうとう一人になった。

 

さてさて、目的の店に行きますか。

 

あまり時間が残ってないので全速力で店を回った。

 

目的の品を買い、鞠莉さんの家にそれらを送ってもらう手続きを済ませたので家に帰ろうとすると電話が掛かってきた。

 

「はい。用意できたんですね。ありがとうございます。じゃあ今から言う住所にそれを送ってください。住所は・・・・・・です。お願いします。ではまた。」

 

用事は全て済んだし帰ろうか。

 

いよいよ明日か・・・みんな喜んでくれるといいな。

 

 

 

パーティー当日(12月25日)

 

「おい、千歌起きろ。いつまで寝てるんだ。」

 

「むにゃむにゃ、え〜もう朝〜?寒いからもう少し寝させて。」

 

どれだけだらしない格好で寝てるんだよ。パジャマも半分脱げてるし、そりゃ寒いのは当然だろ。仕方ない・・・

 

「そういえば下の階に志満さん達からのプレゼントがあったような・・・。しかも早い者勝ちだったような・・・。」

 

そう言うと千歌が飛び起きた。起きたのはいいんだが・・・

 

「なんで千歌は下がパンツだけなんだ?」

 

「え?」

 

千歌は慌てて確認する。そして自身のあられもない姿に気付く。

 

次の瞬間、旅館中に少女の悲鳴と人が倒れる音が響き渡った。

 

ラブコメの神様はクリスマスでも仕事してるんですね(怒)

 

 

 

「もぉ〜ごめんってば。だから機嫌直してよ。」

 

「無抵抗の人間に暴力なんて・・・。それにしても殴ること無かっただろ。」

 

「ごめん、ごめん。ところで瑠惟君プレゼントは?持ってきてないみたいだけど。」

 

「鞠莉さんのところに置いてもらってるんだ。」

 

「そんなに大きいプレゼントなの?」

 

「大きいというか・・・多いというか・・・。見てからのお楽しみだ。」

 

集合場所の港に近づいてくると大きな客船が見えた。

 

「こんな所にもあんな客船が来るんだな。」

 

「私、こんなに大きいの初めて見たよ。」

 

集合場所に着いたが二人以外は誰もいない。

 

おかしいな。集合時間ぴったりなんだが。

 

すると先程の客船から誰かが降りてきた。

 

「メリークリスマス!千歌っち、瑠惟。」

 

「「鞠莉さん(ちゃん)!?」」

 

「あともう少しで遅刻だよ。さぁ中に入って。」

 

「もしかして、今日のパーティーって・・・。」

 

「YES!この小原家自慢の船が会場よ!」

 

マジですか・・・。ていうかデカすぎる。小原家のちからってすげー!

 

鞠莉さんに続いて船の中に入っていく。

 

中に入るとそこにはAqoursのみんなが既に来ていた。

 

「これで全員揃ったわね。じゃあ今日のパーティーについて説明するね。今日はこの船がこの辺りの海を航海しながらパーティーをするわ。会場はこの先にあるメインホールね。それに伴いみんなにはドレスアップしてもらうわ。」

 

「でも私たち替えの服なんて持ってないよ。」

 

「No problem. みんなが着る服はこちらで用意させてもらってるから好きなのを選んでね。」

 

本格的すぎるだろ。クリスマスパーティーだぞ。

 

「じゃあガールズは私についてきてね。瑠惟はパパが案内してくれるわ。」

 

「分かりまし・・・『パパ』?」

 

鞠莉パパ来てるの?ホントなの?

 

「久しぶりだね瑠惟君。」

 

マジで来てたー。

 

「お久しぶりです。本日は・・・」

 

「そんなに畏まらなくていい。いつも通りでいてくれ。」

 

「デフォルトでこんな感じですけどね。」

 

この人は鞠莉さんのお父さん。超多忙なこの人は家族にさえも滅多に姿を見せない。見た目はちょっとそっち系の人と勘違いしそうなぐらい怖いが話してみると気さくで、とても社交性のある人だ。

 

「珍しいですね。内浦に来るなんて。」

 

「クリスマスぐらいは休んでもバチは当たらないだろう?それに可愛い娘の頼みだ。できるだけ尽力するのが親の務めだ。」

 

「違いないですね。」

 

「私の知らない間に娘にこんなにもたくさんの友人ができていたとは・・・。鞠莉も変わったな。それに君が高校を卒業さえしてくれればいつでも鞠莉と結婚してもらってもいいんだがね。」

 

「自分より素敵な男性は山ほどいますよ。」

 

「私は鞠莉が認めた男しか小原家として迎え入れるつもりは無いな。」

 

こんな風に会えば必ず結婚話を持ち込んでくる。この人なりのジョークだろう。

 

話してる間に更衣室に着いた。

 

「ここで着替えてくれたまえ。衣装は中にある。メイド達が着替えを手伝ってくれるから心配しなくていい。じゃあ私は先にメインホールに向かうよ。」

 

用意されていたのは黒を基調としたタキシードだった。メイドさん達のおかげで難なく着ることができた。

 

「では瑠惟様こちらへ。」

 

案内されメインホールに入ってまず目に入ったのは高い天井から吊られた見たことないくらい大きなシャンデリア、そしてクリスマスツリーだった。周りにはたくさんの料理が並べられていて使用人さんがたくさんいた。

 

「すげぇ・・・」

 

「もうすぐAqoursの皆様がお見えになります。」

 

メイドさんがそう言うと自分が入ってきた方とは反対側の扉が開いてAqoursのみんなが入って来た。

 

「綺麗だ・・・」

 

自然と言葉が漏れた。Aqoursのみんなはそれぞれのイメージカラーに合わせたドレスを着ている。まるで全員が一国の王女のようだった。

 

Aqoursはこちらを『どうだ』と言わんばかりのドヤ顔で見てきた。

 

これは何か言わないといけないのか?

 

「え〜と・・・みんな似合ってるよ。」

 

「もうちょっと言葉が欲しいけどおまけで及第点ね。」

 

許された!

 

「じゃあみんな今日はたくさん楽しんでいってね。デリシャスな料理もあるしね!じゃあ行くわよ!せーのっ!」

 

『メリークリスマス!』

 

パーティーは料理を食べたり、みんなでゲームをしたり、おしゃべりしたりして順調に進んでいった。

 

すると鞠莉さんが

 

「みんな〜!Let's Dance!」

 

ダンス?

 

「あの・・・鞠莉さん、ダンスって?」

 

「あら?私言ってなかったかしら?・・・まぁいいわ。今からワルツを踊るよ〜!」

 

「ねぇ瑠惟君、『ワルツ』って何?」

 

「説明しよう!『ワルツ』とは19世紀にヨーロッパで流行った舞踊で、ドイツ語で『回転する』という意味を持つように、カップルが手を取り合って抱擁し旋回しながら一方向に円を描くように踊るんだ。有名なものとしては『白鳥の湖』や『くるみ割り人形』とかがあるな。」

 

「へぇ〜、すごいね。よく知ってるね。」

 

「いや、今調べたんだ。」

 

「私の感心を返してよ!」

 

すると果南さんが

 

「みんなワルツって踊れるの?」

 

「もちろん!一般常識ってやつでしょ!」

 

まぁ鞠莉さんは育ちも良いし踊れるだろう。

 

「本でなら見たことありますけど・・・実践には至っていませんわ。」

 

確かにダイヤさんの家風ではワルツは踊らないだろうな。

 

しかし意外なことに他のみんなは学校の授業や修学旅行でやったことがあるから踊れると言っている。

 

「私はできないよ。」

 

「千歌ちゃん授業があった日、学校休んでたからね・・・。仕方ないね。」

 

「瑠惟君はできるの?」

 

「まぁ一応・・・。」

 

親にみっちり叩き込まれたなんて言えないよな。

 

「じゃあマリーと瑠惟で見本を見せるから、踊れない人は踊れる人とペアになってね。」

 

「みんな準備OKね?じゃあ始めるわ。いくよ瑠惟。」

 

「はい。」

 

おぉ・・・久しぶりにやったが案外踊れるもんだな。ていうか鞠莉さん上手いな。

 

「ざっとこんな感じね。みんなはどう?できそう?」

 

「なんとか形にはなりそうですわ。」

 

「私もできるかも。」

 

「OK。じゃあ本番といきましょうか。時間は長くとるから色んな人と踊ってね。」

 

まずは誰と組もうかな・・・あ!

 

「Shall we dance?ダイヤさん。」

 

「わ、私でよろしいのですか?あまり上手くは・・・。」

 

「大丈夫ですよ。自分がリードしますから。」

 

「ではよろしくお願いしますわ。」

 

ダンスの体制に入ろうとダイヤさんの腰に手を回す。ダイヤさんて結構華奢なんだな。

 

「破廉恥ですわ。こんなの/////」

 

曲が始まるとダイヤさんを優しくリードした。

 

「あの・・・ダイヤさん。」

 

「何ですの?」

 

「顔を上げてもらわないと危ないですよ。」

 

「わ、分かりましたわ/////」

 

ダイヤさんの顔は紅く染まっていた。

 

「あまり見つめないでくださいませ。ドキドキしてしまいますわ/////」

 

何この可愛い生き物。

 

曲が一段落したのでダイヤさんと別れようとすると

 

「私、上手く出来ていましたか?」

 

「はい、上手に踊れていましたよ。」

 

「ありがとうございますわ。よろしければまた別の機会にでも。」

 

「もちろんですよ。」

 

それからAqoursのみんなと踊って・・・

 

「Shall we dance?千歌。」

 

「うん!一緒に踊ろう!」

 

ダンスの体制に入ると、なぜか千歌がこちらの体をぺたぺたと触ってくる。

 

「何してるんだ?」

 

「瑠惟君て意外とガッチリしてるね。」

 

「当たり前だろ。いつも目の前のおてんばなお姫様の無理難題をこなしてきたからな。」

 

「ひどーい!瑠惟君だって私に自分で宿題やれって言うじゃん!」

 

それは普通だろ・・・

 

「ハイハイ。悪うございました。」

 

そんなやりとりをしてる内に曲が始まった。

 

「いくぞ千歌。」

 

「うん!」

 

千歌はさっきまで初心者だったのが嘘用に上達していた。

 

しかし無理をして体勢が崩れてしまった。とっさに千歌を抱き抱える。

 

「大丈夫か?あんまり無理すんなよ。」

 

「うん、ありがとう/////」

 

千歌を抱き抱えた状態のまま曲が完全に終了した。

 

会場中の視線がこちらに集まる。

 

ダイターン!ハレンチですわ!すごいずら・・・。といった声が聞こえる。

 

とりあえず千歌を離す。

 

う〜ん気まずい。

 

「そういえばプレゼント交換はまだずら?」

 

ナイスだ花丸ちゃん!

 

「そろそろ時間だし、始めましょうか。」

 

こっちはコスチュームチェンジの時間だ。

 

「鞠莉さん、アレはどこに置いてありますか?」

 

「更衣室にプレゼントと一緒に置いてあるけど・・・本当にアレを着るの?」

 

「もちろんですよ。こういう時ぐらいカッコつけさせてくださいよ。」

 

「そう・・・。なら頑張ってね!」

 

足早に更衣室に向かった。

 

別の衣装に着替えて会場に戻ると既にプレゼント交換が始まっていた。

 

「あっ!瑠惟君が来たって・・・なんでサンタの格好してるの?」

 

「ほーほっほ、メリークリスマス!私はサンタさんだよ!」

 

この瞬間Aqoursは思った『こいつは何をしてるんだ』と。

 

ただ二人を除いて。

 

「お姉ちゃん!サンタさんが来てくれたよ!」

 

「すごいですわ!本当に来て下さるなんて!」

 

黒澤家には純粋な子がいるんだな・・・。

 

「この一年間、良い子だった君たちにはプレゼントをあげよう!」

 

「まずは果南ちゃん、君にはこの大きなイルカのぬいぐるみをあげよう。」

 

「これって・・・私が欲しいって言ってたやつだ。・・・ありがとうサ・ン・タさん♪」

 

「次に鞠莉ちゃん、君にはこれを。」

 

鞠莉さんに渡したのは・・・

 

「これは・・・アルバム?」

 

「中を見てごらん。」

 

鞠莉さんがページをめくるとそこには今まで撮ってきたAqoursの写真がたくさん入ってた。

 

「Wonderful!Thanks! サンタさん!」

 

「次に花丸ちゃん、君にはこれを。」

 

「瑠惟先輩、何してるずら?」

 

「瑠惟とは誰のことかな?私は正真正銘のサンタクロースさ!」

 

花丸ちゃんに渡したのは

 

「すごいずら!マルが読みたかったシリーズの全巻セットずら!」

 

「嬉しいかね?」

 

「ありがとうございますずら!サンタさん!」

 

「次は善子ちゃん。」

 

「ヨハネ!」

 

「君にはこれを。」

 

善子ちゃんに渡したのは

 

「こ、これって闇の衣・・・」

 

いやただのコートだよ。

 

「ふっ、感謝しておくわ。あなたもリトルデーモンにしてあげるわ。」

 

「次は曜ちゃん、君にはこれを」

 

「これって新しい裁縫道具だ。サンタさんありがとう!大切にするね!・・・後でその衣装私にも着させてね!」

 

「次にダイヤちゃんにルビィちゃん、君たちにはこれを・・・」

 

二人に渡したのは・・・

 

「み、μ'sのさ、サインですわ!!」

 

「すごい!すごい!これ本物なの!?」

 

「あぁもちろんさ。」

 

先日、電話をかけた相手はμ'sの穂乃果さんだったのだ。彼女に頼んでμ's全員のサインを書いてもらったのだ。しかもそこには『ダイヤちゃん、ルビィちゃんへ』というメッセージのおまけつき。

 

「家宝にしますわ!」

 

「「サンタさん、ありがとうございます!」」

 

「次は梨子ちゃん、君にはこれを。」

 

梨子に渡したのは・・・

 

「バレッタ?」

 

「君に似合うと思ってな。」

 

「ふふっ、サンタさんもちゃんと見てくれてるんだね。ありがとう瑠惟君。」

 

だから瑠惟じゃないよ。

 

「最後に・・・千歌。」

 

千歌だけにはいつもの姿で渡そう。

 

「自分が引いたくじに書いてあったのは千歌の名前だったんだ。」

 

「うん、知ってたよ。だって瑠惟君隠し事するのが下手くそだからすぐに分かったよ。」

 

バレてたか・・・。できるだけ悟られないようにしていたんだがな。

 

「なぁあの時の約束覚えてるか?忘れたとは言わせんぞ。」

 

「覚えてるよ。『何でもする』でしょ?」

 

「なら話は早いな。千歌、目をつぶってくれ。」

 

「うん。」

 

千歌はゆっくりと目を閉じる。

 

そして自分は千歌の顔に少しずつ近づき・・・

 

 

 

 

 

 

マフラーを首に巻いてあげた。

 

「これって・・・」

 

「千歌は冬になってから寒いってずっと言ってたからな。だからこれを使って少しでも暖かくなってほしくてな。嫌だったか?」

 

「嬉しいよ!こんな素敵なプレゼント、本当に嬉しい!・・・やっぱり私たちは似たもの同士だね。」

 

「どういうことだ?」

 

「実はね私が引いたくじには瑠惟君の名前が書いてあったの。だから私もプレゼントがあるんだ。」

 

そう言って千歌が出したのは・・・

 

「確かに似たもの同士かもな。」

 

マフラーだった。

 

その瞬間何だかおかしくなって二人とも笑い出した。

 

「ありがとう千歌。大切に使うよ。」

 

こうして特別なクリスマスパーティーは幕を閉じた。

 

後日談

 

ある日千歌に聞かれた。

 

「ねぇ瑠惟君、なんでサンタの格好にしたの?」

 

「何だかプレゼントを渡すのが恥ずかしくてな。だからサンタの姿を借りて渡そうと思ったんだ。その方がクリスマスらしいだろ。」

 

「じゃあ何で最後私に渡す時には普通の格好になったの?」

 

「千歌は自分にとって特別な存在なんだ。だから恥ずかしさも無かったし、何となくいつもの姿で渡したくなったんだ。」

 

「やっぱり瑠惟君は変な人だね。」

 

「余計なお世話だ。・・・そういえばさ、千歌が言った『早めのクリスマスプレゼント』ってなんだったんだ?」

 

「覚えてたんだね・・・私がスクールアイドルを始めてから瑠惟君と二人で出掛けたりすることが無くなっちゃったの。瑠惟君はみんなに優しいから何となく寂しくなっちゃって。だからあの時梨子ちゃんと曜ちゃんが来て、少し怖かったんだ。また取られちゃうって。でも瑠惟君は私の為にわざわざ梨子ちゃんの誘いを断ってくれたよね。嬉しかったの。それに私と一緒にいたいって言ってくれたのもとても嬉しかった。だからその時間は私にとってのクリスマスプレゼントだったの。」

 

千歌がそんな事を思ってたなんて気付かなかった。

 

「何言ってるんだよ。バカ千歌。」

 

「何回でも遊びに連れてってやるよ。千歌がもう嫌だって言うぐらいな。こんな可愛いやつを誰が放っておくんだよ。」

 

「言ったね。その言葉よく覚えておいてね!瑠惟君がそう言うなら色んな所に連れてってもらうんだから!」

 

クリスマスの空気にあてられて無理をしすぎたと思ったコミュ障ヘタレなのであった。




番外編続きですいません。書きたいことがありすぎてペースが追いつかないです。最後の方は作者が力尽きかけていたので文がかなりガバガバでした。ところで話は変わりますが、今週でサンシャインが最終回ですね。前にも言いましたが終わってほしくないです!!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。