コミュ障ヘタレと9人のアイドル   作: まきパリ

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お待たせしました。久しぶりの番外編です。ちょっと季節外れの内容ですが許してください。あと例に漏れず長いので前編と後編二つに分けております。


コミュ障ヘタレと体育祭 前半の部

季節は秋、紅葉も色づいて美味しい食べ物をたくさん食べてしまう頃ですが、この時期浦の星ではある行事が開かれようとしていた。

 

瑠惟「体育祭?」

 

千歌「うん。浦の星では毎年この時期に体育祭をやってるんだよ。」

 

花丸「た、体育祭・・・マルはあんまりいい思い出がないずら。」

 

まぁ体育祭ってのは基本的に運動が得意だろうと苦手だろうと関係なく競技に出なくちゃいけないからな。花丸ちゃんみたいに運動が苦手な子は少し可哀想だよ。

 

瑠惟「でも、人数が少ないからクラス対抗ってわけじゃないよな?」

 

曜「うん、去年は赤組・白組に分かれてやったんだよ。」

 

じゃあ今年もそうなりそうだな。

 

梨子「それで、どんな競技があるの?」

 

果南「確か・・・徒競走、騎馬戦、パン食い競走、借り人レース、紅白対抗リレーにあと部活動対抗リレーだね。」

 

へぇー結構本格的にやるんだな。女子校で騎馬戦は意外だな。というか男の俺は出場できるのか?いや、まぁ一応ここの生徒なんだから一つぐらいは出れると思いたい。

 

ダイヤ「果南さん、アレを忘れてますわよ。」

 

果南「アレって?」

 

ダイヤ「体育祭の目玉、フォークダンスですわ!」

 

果南「あぁそれね、ていうか目玉種目だったの?」

 

ダイヤ「いいえ、今回から目玉種目になるのですわ。だって・・・」

 

そう言ってダイヤさんがチラチラこちらを見てくる。

 

みんなもそれを見て何かを理解したかのように『あぁ〜』と声が出る。

 

何を理解したかは分からないがまぁいい。

 

瑠惟「まだ組が分からないから何に出るとかは決められないけど、部活動対抗リレーは出場するのか?」

 

千歌「えっ?私に聞いてるの?」

 

瑠惟「いや、リーダーに聞かないで誰に聞くんだよ。」

 

千歌「えへへ、そうだよね。うーん・・・」

 

果南「せっかくだし出てもいいんじゃない?」

 

3年生はこれが最後の体育祭だからな、少しでも多く思い出を作りたいんだろう。

 

千歌「分かった。出よう!」

 

そうなると今度は誰が走るかだが・・・

 

瑠惟「ダイヤさん、部活動対抗リレーって何人で走るんですか?」

 

ダイヤ「確か1つの部活から5人まで出場できて、1人グランド半周、つまり100m。5人で500m走ることになってますわ。」

 

瑠惟「それって勝ったら何か貰えるんですか?」

 

ダイヤ「・・・特にはありませんわ。」

 

少し間があったのが気になるが、それほど勝ちにこだわる必要は無いな。

 

千歌「5人か〜。うーん・・・出たい人いる?」

 

千歌がそう聞くと4人の手が挙がった。

 

手を挙げたのは曜、鞠莉さん、果南さん、そして意外だったのがルビィちゃんだった。

 

3人が出たいというのは分かる。運動神経の良さはAqoursの中でもかなり高い方だから。

 

だが、ルビィちゃんはどうしてかよく分からなかった。運動ができるかと言われれば、できないこともないが運動部に入っている子と比べるとそうでもないからだ。

 

魔が差した俺はついルビィちゃんに理由を聞いてしまった。

 

ルビィ「ルビィは今までやったことがないことに挑戦したいと思いました。・・・だから今回、リレーに出てルビィ自身の成長に繋げたいと思ったからです。・・・これじゃあダメですか?」

 

可愛すぎでしょ。

 

瑠惟「ルビィちゃん、俺の妹になってください。」

 

ルビィ「えっ?」

 

バシッ!

 

瑠惟「痛っ!」

 

千歌「何、意味わかんないこと言ってるの!」

 

瑠惟「いや、ルビィちゃんが可愛くてつい。」

 

ごめんよルビィちゃん。さっき出来心で理由を聞いた俺を許してほしい。

 

ダイヤ「ルビィ!あなたは・・・こんなにもたくましく成長して・・・私はとても嬉しく思います!」

 

ルビィ「お姉ちゃん・・・。」

 

てことでリレーメンバーが4人決まった。

 

あとはもう1人をどうするかだが・・・。

 

何かみんなの視線がこっちに集まってる気がするんだけど。

 

瑠惟「言っとくが俺は出ないぞ。」

 

千歌「え〜なんで?出たら絶対に勝てるじゃん。」

 

瑠惟「いや、それだからだよ。こう言っちゃなんだが俺が出たらぶっちぎりで勝ってしまうぞ。そもそもここは女子校。俺というイレギュラーが体育祭に参加してるだけでもアレなのに、リレーなんかに出てみろ。空気が大変なことになるぞ。」

 

果南「私達は別になんとも思わないけどね。」

 

それはいつも一緒にいるからでしょうが。

 

みんなが良くても他の人はダメなんだよ。

 

瑠惟「とにかく俺は出ませんからね。」

 

周りから落胆の声が上がるがそんなことは関係ない。

 

曜「そうは言ってもあと1人出ないとね。」

 

梨子「わ、私は走るの得意じゃないし・・・」

 

いつも練習で走り込みしてませんでしたっけ?

 

花丸「マルも同じずら・・・」

 

まぁ花丸ちゃんは仕方ないか。

 

善子「だ、堕天使の力は人間には強すぎるから勘弁してあげるわ。」

 

あんたが1番走り回ってるイメージがあるんだが。

 

ダイヤ「私は生徒会長ですから走るわけには・・・」

 

もうちょっとマシな言い訳はなかったんですか?

 

瑠惟「となると残りは・・・」

 

千歌「え?私?」

 

瑠惟「はい、じゃあ頑張って。」

 

千歌「待って待って待って。本当に私が出るの?」

 

瑠惟「まぁリーダーだし、アンカーって意味では一番適任なんじゃないか?」

 

千歌「うーーー、分かった。私も走る。」

 

ということで無事リレーメンバーが決まった。順番は5人が話し合った結果

 

ルビィ→曜→鞠莉さん→果南さん→千歌 という感じになった。

 

ていうか俺って今回出番あるのかな?

 

別に欲しいってわけじゃないけど一応主人公だし・・・ちょっとだけ期待しておくか。

 

 

 

それから日が経って体育祭当日となった。

 

千歌「赤組のみんな~!今日は白組に勝てるよう頑張ろう!」

 

曜「いつもは仲間だけど・・・今日は負けないからね千歌ちゃん!」

 

瑠惟「なんかいい感じに分かれたな。」

 

結局組み分けは

 

赤組に千歌、ルビィちゃん、ダイヤさん、鞠莉さん、果南さん。

 

白組に俺、曜、梨子、善子、花丸ちゃん。というふうになった。

 

ちなみに俺はハンデ付きで参加させてもらえることになった。

 

瑠惟「今日は千歌のお母さんも来てくれてるんだよな?」

 

千歌「うん!お母さんに体育祭の話したら見に行きたいって言ってたから、今日だけ東京から戻ってきてくれたの。」

 

瑠惟「おぉ。それは良かったな。」

 

俺も両親に今日のことを伝えたんだが生憎仕事が忙しく、どちらも日本には帰ってこれないらしい。

 

でも両親が言うには代わりに見に来てくれた人がいるらしいのだが・・・。

 

「生徒の皆さん、まもなく開会式が始まります。グラウンドに集まってください。」

 

おっともうそんな時間か。早く行かなきゃ。

 

 

 

ダイヤ「宣誓。私達浦の星女学院の生徒一同は正々堂々とスポーツマンシップにのっとり、全力で・・・今日を楽しむことを誓います!生徒代表黒澤ダイヤ。」

 

パチパチパチパチ。

 

ダイヤさんからのテンプレに近い宣誓が終わったところで鞠莉さんが出てくる。

 

鞠莉「これより第~回浦の星女学院体育祭を開催します!みんな、ダイヤの言った通り今日は楽しんでいきましょ~!シャイニー!」

 

ここから俺たちの熾烈な?戦いが始まろうとしていた。

 

 

 

開会式が終わり最初の競技は100m徒競走。

 

Aqoursからは善子とダイヤさんが出場するようだ。

 

花丸「善子ちゃん頑張るずら。」

 

善子「私にかかれば人間程度のスピードを超えることなど容易いこと。だから堕天使ヨハネが少し遊んであげるわ。」

 

瑠惟「1位じゃなかったら罰ゲームな。」

 

善子「な、なんでよ!」

 

瑠惟「ヨハネ様なら1位になるくらい簡単だと思ったんだけどなー。どうやら俺の思い違いだったみたいだわ。」

 

善子「・・・いいでしょう!リトルデーモンがそこまで言うのなら人間共を蹴散らしてあげるわ!」

 

瑠惟「あと・・・勝ったら好きな物買ってやる。チョコでも苺でもなんでもいいぞ。」

 

善子「ん?今なんでもするって言ったわね。」

 

瑠惟「おい、『する』とは言って・・・」

 

その時ちょうど招集がかかったみたいで彼女はルンルン気分で走って行った。

 

少し想定外だがやる気を引き出せたので良しとしよう。

 

悪いな千歌、白組は全力で勝ちに行かせてもらうからな。

 

ーダイヤside inー

 

私、走るのはあまり得意じゃありませんが、種目決めのじゃんけんに負けてしまった以上、全力で走るしかありませんわ。

 

しかしそれ以上に問題なのは同じレースに善子さんがいることですわ。

 

ただ善子さんと一緒に走るのには何も問題はありませんが、問題なのは同じ白組に瑠惟さんがいること。

 

彼はきっと姑息な手を使って善子さんをパワーアップさせてきますわ。

 

Aqoursの中でもそれなりの運動神経を持つ善子さんを強くさせられたら、私に勝ち目はありませんわ。

 

瑠惟(今なんか誰かに悪口を言われた気が・・・)

 

それでも生徒会長として、黒澤家長女としてそう簡単に勝ちを譲る気はありませんわ!

 

私にも作戦がありますから・・・

 

ー瑠惟side inー

 

もうすぐ善子とダイヤさんのレースが始まるが・・・

 

ダイヤさん絶対に何か企んでるだろうな。

 

さっきから顔がニヤニヤしているのが遠目でも分かる。

 

一体何をしようとしているんだ?

 

そんなことを考えてると彼女達の出番が来た。

 

善子とダイヤさんの他に2人が、合計4人が横一列に並ぶ。

 

「位置について、よーい・・・」

 

その時だった。ダイヤさんが善子に何かを言ったように見えた。

 

「ドン!」

 

一斉に走り始めるが、善子は周りより明らかに遅れている。

 

どうやらスタートダッシュに失敗したみたいだ。

 

そんな善子をよそにダイヤさんは他の2人を追い抜き50mを超えた。

 

このままダイヤさんの一人勝ちになるとみんなが思っていた時、あいつが迫っていた。

 

善子「堕天使ヨハネを怒らせたこと後悔させてあげる!」

 

物凄い速さで追い上げた善子がダイヤさんを抜かそうとしていた。

 

ダイヤ「私だって負けませんわ!いつもいつも周りからポンコツ扱いされ挙句の果てには『生徒会長(笑)』と言われて・・・」

 

ダイヤさん・・・ごめんなさい。それ広めたの俺なんです。

 

ダイヤ「だから今回だけは負けませんわ!」

 

二人は横に並んでゴールに近づき、そのまま同時にゴールテープを切った。

 

 

かに思われたが・・・

 

「1着は赤組、黒澤ダイヤ!」

 

赤組から歓声があがる。

 

どうやら少しの差で負けてしまったようだ。

 

ダイヤ「私が1位・・・?」

 

善子「今回はあなたに勝ちを譲ってあげるわ。流石ね生徒会長。」

 

ダイヤ「善子さん・・・」

 

ルビィ「お姉ちゃん!おめでとう!」

 

ダイヤ「私が勝てたのは私一人の力じゃありませんわ。みなさんがいてくれたからですわ。」

 

俺からも祝福の声をかける。

 

瑠惟「おめでとうございます。ダイヤさん。」

 

ダイヤ「あなたに一泡吹かせようと私なりに頑張りましたの。」

 

瑠惟「いやーまさかダイヤさんがあそこまで速いとは思ってませんでした。」

 

確かにダイヤさんが速かったのは紛れもない事実だ。でも善子がスタートをミスったあの瞬間ダイヤさんは確実に何か仕掛けた。いったい何が起こったんだ?

 

気になった俺は善子に直接聞いてみた。

 

瑠惟「善子。」

 

善子「ギクッ!」

 

瑠惟「いや、別に負けたから怒りに来たわけじゃない。単純に気になったんだ。スタート直前に何があったのか。」

 

善子「誰にも言わないって約束して。」

 

瑠惟「言わない言わない(多分)。」

 

善子「実はスタート直前にダイヤさんが話しかけてきたの。」

 

瑠惟「ほうほう。」

 

善子「そこであの人に・・・昨日やった配信で私が言った痛い言葉をそのまま私に言われたの。」

 

なんだそんなことかよ。てっきり脅されたとか、靴にコッペパン突っ込まれたのかと思ったわ。ていうか自分で痛いって言うなよ。なんか悲しくなってくるから。

 

善子「あぁ~!なんだそんなことかよって顔したわね!」

 

瑠惟「いや、だってみんなの前でも同じようなこと自分から言ってるじゃん。今更何を・・・」

 

善子「そ、そうかもしれないけど私はびっくりしたの!それで遅れちゃって・・・。」

 

瑠惟「まぁ気にすんな。点差はそこまで開いてないし、何より次のパン食い競争、こちらには秘密兵器がいるから。」

 

それにしてもダイヤさんも善子の配信見てるんだな。そこが負けたことよりも意外だわ。

 

徒競走の結果は善子が惜しくもダイヤさんに敗れたが他の白組の奮闘もあり、

 

赤組100点・白組90点

 

とそこまで点差は開かなかった。

 

 

 

次の種目はパン食い競争。

 

Aqoursからは鞠莉さんと花丸ちゃんが出場する。

 

ここで少し時は遡る。

 

ーーーーーーーー

 

体育祭の数日前

 

瑠惟「花丸ちゃんは何の種目に出るんだ?」

 

花丸「マルはパン食い競争に出るずら!パンが食べられるなんて楽しみずら~!」

 

瑠惟「じゃあ結構自信があったりする?」

 

花丸「自身はあるずら。でもどんなパンが食べられるか聞いたら普通のパンでのっぽパンじゃなかったずら。そこだけが残念ずら。」

 

瑠惟「その言い方だとのっぽパンなら絶対に勝てるってことだよな?」

 

花丸「そうずら!」

 

ここで俺はあることを思いついた。

 

花丸「先輩、悪い顔してるずら。この顔をする時は大体何か企んでるずら。」

 

瑠惟「花丸ちゃん体育祭当日楽しみにしておけ。びっくりさせてやるから」

 

そして俺はある場所へ向かった。

 

ーーーーーーーー

 

瑠惟「花丸ちゃん、このレース絶対勝てるから。」

 

花丸「先輩あの後何かしたずら?」

 

瑠惟「まぁちょっと実行委員会の方にお邪魔させてもらっただけだから。」

 

花丸「・・・怪しいずら。」

 

瑠惟「そんなことより勝ったら善子みたいに好きな物買ってやるから頑張れ!」

 

花丸「ほんとずら!?なんでもいいずら?」

 

瑠惟「俺の財布が許す限りだがな。」

 

花丸「やったずら!」

 

花丸ちゃんは食べたいものをいくつも言いながら招集場所に向かった。

 

赤組よそちらはうちの秘密兵器ずらまるの強さを思い知るだろう。

 

ー鞠莉side inー

 

今回のレース相手が相手だけに油断は絶対にできないわ。

 

私の相手は花丸。

 

Aqoursの中では運動はできる方じゃないけど、今回はそれは関係ない。

 

もしリレーや徒競走みたいに走るだけの種目なら私もこんなに彼女を警戒してないわ。

 

なんせこれはパン食い競争。

 

ルールはいたって簡単。

 

スタートの合図と同時にスタートし、50mほど走った後吊るされているパンを手を使わずに取る。そしてパンを食べてからゴールする。

 

この勝負・・・最初の50mでどれだけ差を空けられるかにかかっているわ。

 

花丸はパンを食べるのは女のことは思えない速さで食べることができるけど、走るのは速くないし、何より身長がそこまで高くないわ。

 

いくらパンを食べるのが速くてもパンが取れなければ意味がないわ。

 

ふふっこの勝負もらったわ。

 

果南「鞠莉、頑張ってね。応援してるから。」

 

千歌「鞠莉ちゃん、気を付けてね。相手は花丸ちゃんだから。それに・・・瑠惟君が絶対に勝つって言ってたから。」

 

鞠莉「NO problem 心配ないわ。相手が誰でも私は勝つから。」

 

たとえ瑠惟に何か考えがあったとしても私は勝つわ。

 

ー瑠惟side inー

 

スタート位置に花丸ちゃん、鞠莉さんを含めて4人が並ぶ。

 

ここで花丸ちゃんはあることに気づく。

 

花丸「の・・・」

 

鞠莉さん「花丸?」

 

花丸「のっぽパンずらー!!」

 

なんと当初普通の市販のパンでパン食い競走をやるはずだったのに吊るされているパンはなんと全てのっぽパンだったのだ。

 

全部俺の作戦なんですけどね。

 

あの時、花丸ちゃんと別れた後に俺は体育祭実行委員会の部屋に向かい、色々脅し・・・ゲフンゲフン・・・助言してパン食い競走用のパンをのっぽパンに変えてもらったのだ。

 

どうだ。これが俺からのサプライズだ。

 

俺の『のっぽパン作戦』によって花丸ちゃんのやる気がぐぐーんと上がった。

 

さぁ鞠莉さん、こうなった彼女に勝つのは少々難儀ですよ。

 

そしてレースが始まる。

 

「位置について、よーい・・・ドン!」

 

4人が一斉にスタートする。

 

鞠莉さんは最初からエンジン全開で走っている。

 

一方花丸ちゃんのいつも練習で走るよりも速く走っている。

 

おそらく鞠莉さんは最初の50mで突き放してそのまま逃げ切る作戦を考えていたんだろうけど、うちの花丸にはそんな作戦通用しませんよ。

 

鞠莉(なんてスピードなの。私が勝っているとはいえ安心できるほど差が開いていない。・・・でも、花丸のあの身長じゃパンには届かない!)

 

スポーツの世界ではこんな言葉をよく聞く。

 

メンタル持ち方次第で人の能力は大きく変わると。

 

俺もバスケをしていたからそれは自分でよく分かっている。

 

だから俺は下手な小細工はせずにただみんなのやる気を上げた。

 

そして今の花丸ちゃんなら・・・

 

二人がほぼ同時にパンが吊るされている所に着くと鞠莉さんはジャンプして口でパンを取ろうとするが中々上手くいかずパンが取れずにいた。

 

鞠莉さんの身長でここまで苦戦しているから花丸ちゃんにはもっと難しいと俺以外の人は思っているが、

 

花丸「いただきま〜す!」

 

ピョン!

 

なんと花丸ちゃんは一発でパンを口で取ることができた。

 

鞠莉「!?」

 

そして花丸ちゃんはムシャムシャとハムスターのようにのっぽパンを食べて圧倒的な差をつけて1位でゴールした。

 

花丸「パンは飲み物ずら。」

 

その異様な光景にみんな驚きを隠せない。

 

30秒ぐらいしてから鞠莉さんがゴールし、それからあとの二人もゴールできた。

 

鞠莉「まさか花丸に負けるとは思わなかったわ。Congratulation!」

 

花丸「のっぽパン美味しかったずら!」

 

ほんとにのっぽパンが好きなんだな。あの大きいのっぽパンを一瞬で食べ尽くすとは恐るべし国木田花丸。

 

瑠惟「お疲れ様。1位おめでとう。」

 

花丸「先輩、先輩聞いてずら!パン食いのパンがのっぽパンに変わってたずら!オラ嬉しいずら!」

 

瑠惟「そ、それは良かったな・・・。」

 

花丸「さっきの約束・・・」

 

瑠惟「おう。何が欲しいんだ?」

 

花丸「・・・のっぽパンずら!」

 

えぇ・・・(困惑)

 

これには流石の俺でも引いた。

 

お前まだ食う気なのか・・・。

 

瑠惟「た、体育祭が終わったら買いに行くか。」

 

もう箱で買ってあげようかな。

 

花丸ちゃんの活躍もあって俺たち白組は逆転することができた。

 

現在の得点

 

赤組200点 白組220点

 

 

 

えーと次は確か借り人競争だったな。

 

名前から察するに多分お題に合ったモノじゃなくて人を連れてくる競技だよな。

 

Aqoursからは梨子と千歌が出るんだっけ。

 

瑠惟「梨子」

 

梨子(私は何て言われるんだろう?)

 

瑠惟「特に言うこと無し。まぁ頑張れ。」

 

梨子「えぇ~~!?それだけ!?」

 

瑠惟「だってこの種目に関しちゃもう運が勝負のカギだし・・・。」

 

梨子「そうじゃなくて、善子ちゃんや花丸ちゃんに言ったアレはないの?」

 

アレ?もしかして・・・

 

瑠惟「梨子も罰ゲームやりたいのか?」

 

梨子「そっちじゃない!ほら・・・もし1位なったらのやつ!」

 

瑠惟「あぁ。好きな物買ってやるってやつね。」

 

梨子「そうそれ!」

 

瑠惟「別に・・・いいけどよ・・・」

 

梨子「露骨に嫌がられると結構傷つくんだけど。」

 

瑠惟「いやぁさっき花丸ちゃんが勝ったじゃん。」

 

梨子「そうね。あれはすごかったわ。」

 

瑠惟「で花丸ちゃんの欲しいものがのっぽパンでさ。」

 

梨子「あの子まだ食べる気なのね・・・。でもそれだけなら安上がりじゃない。」

 

瑠惟「何を勘違いしてるんだ。花丸ちゃんの要求はのっぽパン全種類5本ずつだぞ。」

 

梨子「」

 

瑠惟「これじゃあしばらく学食はお預けだな。」

 

梨子「大丈夫、私はお金のかかるやつじゃないから。」

 

瑠惟「それならいいぞ。」

 

梨子「やった!じゃあ私頑張ってくるからしっかり見ててね。」

 

瑠惟「はいはい。」

 

ー千歌side inー

 

梨子ちゃんと瑠惟君楽しそうだな~。

 

二人が会話している様子を見て思わずそう感じてしまう。

 

果南「なになにもしかして梨子ちゃんに嫉妬してるの~?」

 

果南ちゃんがニヤニヤしながら私に話しかけてくる。

 

鞠莉「嫉妬ファイヤー!!」

 

千歌「もうっ!そんなんじゃないってば!そんなんじゃ・・・」

 

何この変な気持ち?うぅ~モヤモヤする。

 

・・・こうなったら梨子ちゃんに勝って瑠惟君をぎゃふんと言わせてやるんだから!

 

そして招集場所に行こうとしたときにある人に呼び止められた。

 

瑠惟「やぁ。」

 

千歌「瑠惟君?どうしたの?」

 

瑠惟「お前さては俺に嫉妬してたな~。」

 

千歌「は?」

 

瑠惟「話してる時にやけに視線を感じたからな。俺に梨子を取られるんじゃないかって思ってたんだろ?」

 

本当に・・・この人は・・・

 

千歌「バカ瑠惟。」

 

瑠惟「おい!今バカって言ったな。」

 

千歌「言ってません~。」

 

瑠惟「バカ千歌にバカと言われるとは・・・おい梨子!」

 

梨子「えっ?」

 

瑠惟「この勝負絶対に勝てよ!勝ったらなんでもしてやるから!」

 

梨子「う、うん。とにかく頑張るわ。」

 

千歌「もう・・・。私と話してたのに・・・。」

 

本当にバカでニブイ人なんだから・・・。

 

ー梨子side inー

 

直前になって勝てるか不安になってきたわ。

 

勝ったら何でもしてくれるって言ってたけど・・・

 

本当に何でもいいのかな/////

 

・・・壁クイ、壁ドン、顎クイ。

 

私ったらなんてこと考えてるの!

 

何でもか・・・

 

自分でも顔がニヤけてるのが分かる。

 

そんなことを考えてると私達の番が来た。

 

隣には千歌ちゃんがいる。

 

何かすごく気合が入ってるように見えるな。

 

私も負けないようにしなきゃ。

 

「位置について。よーい・・・ドン!」

 

スタートの合図出るとみんなが一斉に走り出す。

 

私は少し遅れてしまい、お題の紙が書いてある所には最後に着いてしまった。

 

最後に来たので私には選択肢がなく仕方なく残った紙を拾いお題を確認する。

 

梨子「なっ・・・」

 

そこに書いてあったのは・・・

 

『あなたの好きな人(恋愛的な意味で)』

 

何よコレ!もう突っ込みどころが多すぎて訳が分からないわ!

 

まず『好きな人』って、ここ女子校よ!何考えてるのよ!

 

それに『恋愛的な意味で』ってコレ、狙ってるとしか思えないわ!

 

もう誰を連れてくるか指定されてるようなものじゃない!

 

まぁ今は怒っても仕方ないわ・・・。

 

急いで彼の所へ行きましょう。

 

えーとどこにいるのかしら?

 

瑠惟「頑張れー梨子。」

 

梨子「!」

 

私はダッシュで彼のいる所に行く。

 

瑠惟「ん?どうしたんだ?早くしないと・・・」

 

梨子「だから来たのよ。瑠惟君行くわよ。」

 

瑠惟「えっ?マジで?」

 

梨子「マジよ。」

 

もぅはやく来てよ!みんなの視線が集まって恥ずかしいから!

 

瑠惟「よし、じゃあ行くか。」

 

そう言うと彼は突然

 

梨子「ちょ、ちょっと何してるの!?」

 

私をお姫様抱っこしたのだ。

 

瑠惟「こうしたら1位でゴールできるから。」

 

梨子「そうかもしれないけど!」

 

私の顔がドンドン熱を帯びて赤くなっていく。

 

瑠惟「顔が赤いけど大丈夫か?」

 

梨子「だ、大丈夫だから早く!」

 

瑠惟「ちゃんとつかまっておけよ。」

 

私は彼の首に腕をまわす。

 

こんな形で私の夢が叶うなんて思いもしなかった。

 

でも・・・やっぱり恥ずかしい。

 

黄色い歓声が周りから聞こえる。

 

彼は私を抱えたまま猛スピードでダッシュし、そのまま1位でゴールテープを切った。

 

私は紙を判定員に見せる。

 

判定員は私と彼を見ると少しニヤッと笑って『OK』と言った。

 

こうして私達は1位になったのだ。

 

瑠惟「梨子、お題は何だったんだ?」

 

「私の好きな人よ。」なんて言えるわけないじゃない!

 

梨子「えっと・・・そう!『男の人』だったのよ。」

 

自分でも苦しい嘘をつく。

 

しかし・・・

 

瑠惟「なるほど。それなら納得だ。男の人なんて生徒の家族の人か先生か俺ぐらいしかいないもんな。」

 

良かった。信じてもらえた。

 

「意気地無し。」とどこからか聞こえた気がした。

 

余計なお世話よ。

 

ー瑠惟side inー

 

梨子が無事に1位でゴールしたが、他のレースで赤組が奮闘したので結果的に赤組に逆転されてしまった。

 

ここで午前の部が終わり、やっと昼休憩に入った。

 

それにしてもどうして梨子はあんなに顔が赤くなってたんだろうな?

 

今日は暑いってわけじゃないし、うーん・・・分かんねぇ。

 

とりあえず飯だ飯。今日って誰が弁当作ってくれたんだろう。

 

そんなことを考えながら俺はAqoursのみんなが待っている所に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




後編もなるべく早く投稿します。お楽しみに。

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