「ん〜〜〜!!美味しいっ!アタシこんな美味しいシチュー初めて食べたよ!」
「ふふふ、サマヨールのおにびは一流ですからね。こと煮込み料理においてサマヨールの手腕にかなうポケモンはいませんよ。」
『マヨッ!』
大鍋をかき混ぜるサマヨールが誇らしげに胸を張る。
日が沈み、ストレンジャーハウスの入り口前で大鍋を囲みシチューを食べる。
これまで他の人間とこうして食事を共にするということは無かったし、かなり新鮮だ。
「いやー、にしてもこの隠し味?の酸味がいい感じに甘味を引き立ててくれるよね〜」
「それ、スターのみですね。実はこの近くに自生してるんですよ、なぜか。」
「へぇ、凄いんだね。あ、サマヨールちゃんおかわり!」
『マヨヨッ!』
自身の料理が喜んでもらえてサマヨールも嬉しいようだ。
お代わりをよそうと同時にヨマワル達を呼んでなにか飲み物を持ってこさせてる。
「ありがと!で、このジュースは?」
『サマヨヨッ』
「え!?ゴスのみのジュース?ありがとう、甘くて美味しいよ!」
『サマヨヨォ〜』
サマヨールがあのジュースを出すなんてろよっぽど師匠の事を気に入ったようだ。
やっぱり師匠もゴーストポケモンに好かれやすいんだろうか。
そうこうしているうちに、鍋も空になり。俺たちは明日に備えて眠りにつく。
微睡みの中、優しい炎を見た気がした。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
翌朝、起きると妙に全身に倦怠感が残る。昨日頭でも考えまくったし無茶し過ぎたのかなぁ……
脇を見るとヒトモシがまだ寝ているのでつついておこす。
『モシュ……モシュ………トモシッ!?』
あ、起きた。
「おはよう、ヒトモシ。今日も頑張ろうな。」
『モッシュ!!』
そうして表に出ると、フヨウさんが既に準備をしていた。
「お、はやかったねー。それじゃ今日の訓練を始めようか。」
「お願いします、師匠!」
「アハハハ……だから、その師匠ってのアタシ恥ずかしいんたけど。」
師匠はそう頭を掻きかながら苦笑すると、表情を引き締め今日の内容について告げる。
「よし、それじゃあいこうか!出てきて、ジュペッタ!」
『ジュジュジュぺぺぺ!』
ボールからジュペッタが出てくる。昨日サマヨールやゲンガー達を倒したジュペッタだ。こうして目の当たりにすると向かい合うだけでその
このジュペッタ、強い。
「そんなに深刻そうな顔しなくても大丈夫だよ。このジュペッタに今のヒトモシちゃんで勝てってのは無茶だって流石に私も分かってるから。だから、ね!」
そう言うと師匠はもう1つボールを投げる。俺の手前で開き、中から現れたのは昨日のカゲボウズだった。
『ケケケケッ!!』
「カゲボウズ、今日はアタシじゃなくてテンガくんと一緒に戦うの。」
「え、どういうことですか!?」
「だから、今日の訓練……ううん。早いけどこれが最後の訓練。カゲボウズとヒトモシを同時に使いこなして、アタシのジュペッタに1度でも攻撃をしっかり入れること。掠らせたり変化技じゃなくて、きっちりキメないとダメだからね!あ、ジュペッタから攻撃はしないけど、反撃はするからね。それじゃあ、はじめ!」
「ッ!ヒトモシ、ひのこの連射で逃げ道を塞いで!カゲボウズはそこにかげうち!」
『トォ、モシシシシシュッ!!』
『ケケケケカゲェッ!』
昨日のカゲボウズに対する攻撃の同じようなパターンでまずは手口を見る!
ーーしかし。
「ジュペッタ!全てにシャドークロー!」
『ジュジュジュベッ!!』
「おいおい……嘘だろ。」
なんと、ジュペッタは。ひのこの火球が地面に産んだ薄い影から大量の影の爪を延ばしすべてのひのこを。そして、自身から延びる影の爪で正面から襲い来るカゲボウズの放った影を幾重にも裁ち切り断絶する。
たった、1つの技で。全て同時に捌いた! !
「やっぱ、師匠はすげぇな……よし!」
今のを封じるには、恐らく影を周囲に作らないのが肝要。ならば……!
「ヒトモシ、隙間を少なくしてほのおのうず!!カゲボウズはあやしいひかりで周りを照らしてとにかく影を作らせないように!!」
『ヒーッ、トモォォォーーー!!』
『カゲゲケッ!!』
これで、いけるか……!?
そう不安に思うが、ジュペッタはそのまま炎の檻に包まれる。そして僅かなスキマすら周りを照らして回るカゲボウズによって潰されることで、内部に影は一切出来ない!
これぞ、シャドークロー封じ!!
しかし。その目論見はまたも容易く破られる。
「アハハハハ!その発想力、実行力、凄くいいけど。観察力が足りなかったね。」
え……フヨウさんは余裕の笑みを浮かべている。まさか、影があるというのか……?
そう考えたその時。ほのおのうず、それによって出来た炎の檻の下に浮かび上がる影が急に、濃度を増し。
そこから延びる腕がカゲボウズとヒトモシを強襲するーーー!!
「ヒトモシ、カゲボウズ!!避けろーー!」
しかし、その叫びは既に遅く。
「アハハ!ジュペッタ、ゴーストダイブ!!」
『……ジュジュペッ!』
影に打たれ、地面に倒れ伏す2匹を抱える。
「2人とも、ありがとう。」
「アハハハ、お疲れ。これ、げんきのかけらとオボンのみ。」
そう言って師匠はヒトモシとカゲボウズにそれを与える。
「でも、シャドークロー封じはホントに良かったと思うよ。1戦目であんな発想されるなんて思わなかった!」
「でも、やられちゃいました。」
「何言ってんのよ、まだ始めたばかりでしょ。これからこれから!」
「……はい!」
『トモシッ!』
『カゲゲッ!』
いつの間にか目を覚ましたヒトモシとカゲボウズもやる気満々で声を上げる。
まだ、今日は始まったばかり。必ずジュペッタに一撃を入れてやる!!
少し短め。
それにしても鬼火煮込みって、なんか字面だけだと呪いの料理感ありますよね