小さな二人は共に行く(リメイク)   作:麦わらぼうし

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前作を読んだ人は『秘密の打ち明けと異世界への招待』までは同じなので、飛ばして大丈夫です。


序章
神様転生によるプロローグ


『目覚めよ。今こそ目覚めの時だ、選ばれし者よ』

「……ん~、あと5分だけ寝かせて~」

 

 寝ていた私は誰かに声を掛けられたが、あまりの眠気に私は寝ぼけた状態のそう答えた。

 

『…………いや、あの。とっても大事な話があるんです、お願いですから起きてくれませんか?』

 

 ……? なんか声が突然、女性の声になった。最初は男性で老人のような声だったのに……声変わりの時期? ……まあいいや。大事な話があるみたいだし、起きよう。

 

「おはよう~」

『はい、おはようございます(随分とマイペースな方ですね……)』

「? ………???」

 

 目を覚まして辺りを見渡すと、そこは地平線すらない真っ白な空間がどこまでも広がっていた。そして、私の前には頭の上に円型の電球のような光の輪が浮いている優しそうな女性がいた。

 

「誰?」

『私ですか? 私は、神様見習いをやらせていただいている者です。見習いなので、まだ名はありません』

 

 私の呟きに女性は答えてくれた。神様……見習い?

 

「神様も、研修って必要なんだね」

『そうなんですよ……と、こんな話をしている場合ではありません。あなたにお伝えしたいことがあるんです』

「なに~?」

『……………』

 

 私が聞こうとして声を掛けると、神様(見習い)は何故か固まってしまった。

 

「?」

『あの……私が言うのもなんですけど、もっと他に気になることとかないんですか? そもそも、神様っていきなり名乗ってきた相手に何の反応もなしですか?』

「………そういえばそうだね」

 

 私の言葉に、神様はズコッとこけそうになる。

 

『本当に変わった方ですね』

「いや~、まだ起きたばっかりで頭働いてないんだよ~」

 

 声が少し間延びしているのもその所為である。まだ眠いよ~、寝たりないよ~。

 

『そうですか、もうそれでいいです……』

 

 神様は、諦めたように項垂れる。だが、すぐに顔を上げて話しかけてきた。

 

『それで、先程の伝えたい内容ですが――』

 

 神様は、少し間をおいて。

 

『あなた、死んでしまいました』

「なんで?」

『……………』

 

 私が理由を聞くと、またもや神様は固まってしまった、だが今度は、溜め息を吐いてから呆れ気味に言ってくる。あっ、今気づいたけど私身体が無いや。人魂みたいな光る球体になっている。

 

『普通、突然自身の死を告げられたら狼狽えたり、怪しんだりするものじゃないんですか? 何の動揺もなく理由を聞いてくるなんて、もしかして信じてないだけですか?』

「………さぁ?」

『なんで、あなたが疑問形なんですか……もういいです』

 

 神様は、何かを割り切ったかのように顔を上げてこちらを見てくる。

 

『先程の質問ですが、あなたの死亡理由は単純に寿命です』

「寿命? あれ、私って何歳だったっけ?」

 

 神様の言葉に自分の年齢が何歳だったのかを思い出そうとしたが、思い出せない。それどころか、自分がどういう姿だったのか、どんな風に生活していたのか生前の記憶が全然ない。

 

『その様子だと気付いたみたいですが、一応説明しておきます。あなたの生前の記憶は一般常識的なこと以外消しました』

「なんでそんなことしたの?」

『その説明も後でします。ですので、先にあなたがここに居る理由を説明します』

 

 今聞きたい気もするけど説明してくれるなら別に良いや、神様にも事情があるんだね。

 

『それで、あなたがここに居る理由ですが。私が死亡したあなたの魂をここに呼びました』

「そうなんだ。でも神様が呼ぶなんて、生前の私は何か特別な子だったの?」

『ある意味そうですね。それで、あなたをここに呼んだ理由は転生をしてみないか聞くためです』

 

 転生?

 

「輪廻転生のこと?」

『いえ、それとは少し違います。私の言っている転生は、神様転生と呼ばれるもので前世が不幸過ぎて死んだ者、あの世の定員が満杯で逝くことができない者、天文学的な確率で選ばれた者など、様々な理由で特別と判断された者が前世の記憶を引き継いで生き返らせるというものです』

「そうなんだ~」

『ちなみに神様転生する理由で一番多いのは、神々が遊びやミスで殺しまった場合の罪滅ぼしですね』

「じゃあ、私も?」

 

 そう聞くと神様はフルフルと首を横に振った。

 

『先程も言いましたが、あなたの死因は単なる寿命です。それも、ミスなどで寿命が減ってしまったとかではなく。定められた寿命による死亡です』

「それだと、ますます私が呼ばれた理由が分からないんだけど? まさか、天文学的な確率で選ばれたなんて言わないよね?」

『ええ、違いますよ。私があなたを呼んだのは、その寿命に少し思ったことがありまして…』

 

 神様は、少し顔を顰めながら言った。

 

「何か問題があったの?」

『問題はありません。元々定められた寿命通りでしたから……でも!』

 

 神様が急に大きな声を出したせいで、耳が少し痛い。

 

『あなたの寿命は、たった……たった10歳だったんです! 生まれつき身体が弱くて、生まれてから死ぬまで入院生活でした! 一生のほぼ全てをベッドの上で過ごして息を引き取ったんです!』

「そうだったんだ……」

 

 前世の自分の状態を説明されて、少し落ち込む。だとすると、私が呼ばれたのは前世が不幸だったからなのかな?

 

『でも、そのぐらいだったら別に無視していました。10歳どころか、もっと少ない。それこそ生まれることもできず流産で死んでしまう子だっているんですから。しかし、死んで送られてきたあなたの資料は、全く予想していないモノだったんです』

 

 神様は静かな口調で言うが、まるで怒りを抑えているかのように右手に握り拳を作っていた。

 

『あなたは、その環境で満足していたんです! 身体の自由も効かず、家族と担当医以外は知り合いもなく、人生のほぼ全てを一人で過ごしていてなお! あなたはそれを幸せと感じていました! そんなの…………そんなの悲し過ぎるじゃありませんか!』

「か、神様? ちょっと落ち着いて?」

『「お父さんたちが居たから私は幸せだったよ」死の直前に呟いた、あなたの言葉です。大して生きてもいないくせに、そんな短い人生で満足するんじゃありませんよ!』

「えっと……はい、すみませんでした……」

『というか、子が親より先に死ぬんじゃありません! 分かりますか!? 愛する我が子に殆ど会えず、我儘も言ってもらいない親の気持ちが! 頼って貰えない不甲斐なさが!』

「ごめんなさい……」

『っと、すみません。つい感情的になってしまいました。それに今のあなたにはその時に記憶は無いんでしたね』

 

 そう言って、神様は私に頭を下げる。

 

『申し訳ありませんでした。覚えないことで怒られるなんて不快な思いをさせてしまいましたね』

「いや、分かってくれたならいいよ。確かに、子が親より先に死ぬなんて親不孝だし」

『……あなた、本当に10歳だったんですか?』

 

 その記憶は私には無いから分からないんだけど、たぶんそういう意味で言ったんじゃないよね……。

 

『こほんっ。それで話を続けますが、私があなたに転生を勧めるは世界をもっと知ってほしいからです』

「世界を……知る?」

 

 私のオウム返しに、神様は頷いた。

 

『あなたは知らないだけです。世界には、沢山のモノがある。美しいものがある、強いものがある、恐ろしいものがある、何だか分からないものがある。世界は広くて、あなたの目で見渡せる病室のようなものではありません。だから、転生して見ませんか?』

「……………」

『世界をもっと知ってみたくはありませんか? 変化のある日々を送ってみたくはありませんか? 誰かと恋をしてみたくはありませんか?』

「なんか、詐欺師みたいな言い方だね。でも、分かった」

 

 私は神様に向かって頭を下げようとする。が、身体が無いので下げられなかった。

 

「私を転生してください。新しい人生を、私に下さい」

『承りました。では転生の準備をするので、少し手続きをお願いします』

「転生するのに、手続きとかいるの?」

 

 私、手が無いから文字とか書けないよ?

 

『手続きと言っても難しいものではありません。転生する世界と特典を決めてもらうだけです』

「特典?」

 

 何か貰えるのかな?

 

『特典とは、神様転生をするときに基本的に転生者に与えられる特別な力のことです。与えない場合もありますが、あなたには4つの特典を与えます。ですが、特典は先に転生する世界を決めてからの方がいいでしょう。場合によっては、平然と人が死ぬ世界に転生するかもしれませんので』

「け、結構物騒なんだね……」

 

 できれば、そんな世界には行きたくないな~。

 

『では転生する世界を決めますので、0から9までの数字を選んでください。その数字に応じた私に管理を任されている世界に送ります』

「0から9? ん~。じゃあ、6で」

『6ですね? 分かりました。え~と、6の世界は――えっ!?』

 

 ん? 何かあったのかな? 神様が目を見開いて驚いているけど。

 

「どうかしたの?」

『いえっ、あなたの転生する世界なんですが。【ハイスクールD×D】と呼ばれる世界なんです。と、言っても記憶ないあなたには分かりませんね』

「うん、分かんない。その世界は何かあるの?」

 

 私の疑問に、神様は少し引き攣った笑みを浮かべる。

 

『私が管理しているのは人間が考えた創作物の世界なのですが、その中でもこの世界は非常にパワーインフレの激しい世界でして。人間の他にも神や天使、堕天使、悪魔、妖怪、ドラゴンなどが存在し、それを主軸とした世界なので、人間では死亡する可能性が非常に高いんです』

「わーお」

 

 どうやら、次の人生は波乱万丈なものになりそうだ。

 

「変更は?」

『できません。転生情報は一度決まった以上、変更はできないんです。ですから、特典を選ぶのも注意してください。それでは、そういう世界に転生するということを考慮したうえで特典をお考えください』

「その前に質問。その特典って言うのは、どのくらいまでの力が貰えるの?」

『あなたが望むものなら、基本的に与えます。ただし、その世界以外の創作物の力を与えると大きなバグが発生します。具体的に言えば複数の世界が混ざり合ったり、本来その世界に存在しない人物が異なる設定で現れたりと世界の形を歪めてしまいかねません。なので、あなたをここに呼んだとき一般知識以外は消させてもらったのです』

「えっと……つまりオリジナルな力じゃないとダメってこと?」

 

 私の問いに神様は頷いた。なるほどね、だから私から記憶を消したんだ。確かに記憶が無いなら、真似のしようがないしね。

 

「でも、偶然一致したらどうするの?」

『その場合は、こちらで修正を加えます。ただ、既存の力を特典として選ぶと、物によっては修正ができないようなのもあるので、その為にも記憶は消させてもらいました』

 

 とにかく、自分で考えたモノなら何でもいいんだね。

 

『それでは、特典をお考えください。もう一度言いますが、一度決まったら変更は不可能ですので、慎重に考えてください』

 

 そう言われて、私は特典を考え出した。何でも望むものが手に入る……か。

 

「それじゃあ、まず一つ目。身体能力を高くしてくれない? 転生して、また病院生活とか嫌だから」

『了解しました』

 

 あとは……。

 

「二つ目は、頭を良くしてほしいかな。思考力とか、理解力とか、記憶力とか、判断力とか、発想力とか、とにかく出来のいい頭脳が欲しい」

『分かりました。頭を良く、ですね?』

「うん。それで三つ目は……資金援助をしてくれない?」

『資金援助ですか? では転生時にそちらへ金庫を送って、毎月その時代換算で300万ほど現金を振り込んでおきます』

 

 ……ん? 今、なんか妙な前置詞がなかった?

 

「あの、その時代換算というのはどういう意味? そして何故現金?」

『ああ、そういえば言っていませんでしたね。転生する時期はランダムなんです、原作の途中や何千年も前だったり、場合によっては原作が終了していることもあるんです』

「そ、そうなんだ……」

 

 まあ、無理に原作介入しようとは思ってないし、そもそも原作知らないから別にいいんだけど。

 

『とは言っても終了してからの転生は殆どないので、その可能性は排除してもらって構いません。ただ、何千年も前の時代となると銀行どころか貨幣すらない場合もあるので、その時代換算で現金を直接お渡しするんです。ご理解いただけましたか?』

「なんとか……」

 

 理解はできたけど、たぶん今の私に身体があったら絶対に頭から煙が出ていたと思う。私、頭悪かったのかな? 頭を良くする特典を頼んでおいてよかったかも……。

 

『それでは、最後の特典を決めてください』

 

 そう言われて、私は再び考える。最後の特典。パワーインフレの世界なんだし、自衛できるぐらいの力を貰える特典が欲しいな。でも、その世界でどれくらい力があれば通用するのか分からないし………………………あっ、そうだ!

 

「えっと、最後の特典なんだけど」

『はい、何にしますか?』

「……私が言う条件に合う特典を、神様が見繕ってくれない?」

『えっ? 別に構いませんけど、あまり突飛な条件は無理ですよ?』

「うん、それでいいからお願い」

 

 神様は、その世界を知っているんだし。基準の分からない私より、選んでもらった方が確実だよね。

 

「えっとね。その世界で自衛ができるぐらい強くて、応用が利く力が欲しいんだけど」

『分かりました。転生が完了するまでに、こちらで考えておきます。それでは、これで転生の手続きは終了です。お疲れ様でした』

 

 神様がそう言うと、急に視界が暗くなっていき私の意識は闇の中に落ちていった。

 

 

Side神様(見習い)

『行きましたね。っと、こうしてはいる場合ではありません。早くあの子の書類を作成しておきましょう』

 

 そう呟きながら私は光を灯した指先を動かして、光の線で文字を書く。そこに、先程頼まれた特典を書き記して最後の特典で、一度手を止める。

 

『あの世界で自衛となると生半可な力では無理ですね。それに応用が利く力となると……こんなところでしょうか』

 

 私は再び指を動かして最後の特典を付け加える。あとは、転生をさせる際にランダムで情報が決まる。指を止めて転生を決定させると、あの子を構成する書類の空欄部分が埋まっていく。

 

『よし、作成完了です。これで、転生は完……了…………おう……』

 

 私は完成した書類に目を通して、思わず頭に手を付けて天を仰いだ。

 

『これはまあ、なんというか……運の悪い子ですね、まああの子のマイペースさがあれば大丈夫だと思いますが』

 

 ある一つの項目を見ながら、私は呟いた。そして私は、先程までこの子がいた位置に目を落とす。

 

『よい人生を送ってください。決して、私のようにはならないように』

 

 私が神様見習いである二つの理由。一つは、私が元人間の現人神だったことによる力不足。神様になるにはまだまだ力が足りないのだ。そしてもう一つの理由は。

 

『やっぱり私は、まだ人間味が残ってしまっていますね……』

 

 それは、本来神には無いものである筈の人間味。別に、可哀相だからという理由で転生させてはいけないという規則は無いけれど。普通、神は一個人に対してそのようなことはしない。神は、あらゆるモノに対して平等でなければならない。その為に必要な、非情な心も持ち合わせていなければ本物の神にはなれない。

 

『分かっては、いるんですけどね……』

 

 私も、ちゃんとした神様になるために、今までに来た不幸な人間を断腸の思いで心を殺し、処理してきた。でも、あの子を見たとき、どうしても助けてあげたいと思ってしまった。

あまりにも…………あまりにも、人間だった頃の私に似ていたから。

 小さな世界に満足して、親に言われた通りの仕事の毎日を過ごし。好きな人ができて両思いになって、でも神になるために彼と別れた私の子供時代に……。

 

『ほんと、私はまだまだ神様見習いですね』

 

 私が神様見習いになって最初にやったこと、それは別れた彼から私の記憶を消して幸せになる未来を与えた。本人の了承も得ずに……。

 なんて私は、身勝手で卑しい神なのだろうか。記憶を消されるのが、どれだけ辛い物か知っている筈なのに、今度は関係のない人間の記憶を消してしまった。あの子が幸せだと言っていた記憶を、私の勝手な都合で消してしまった。

 

『きっと、こんなことを考えているから私は進歩できないのでしょうね……』

 

 いつまでも、ウジウジと情けない。落ち込んでいる暇があるのなら、次からは後悔のないように自信を持って行動しなければ!

 

『世界を見てください。世界には、素晴らしいものが沢山あります。

 一生懸命、生きてください。変化のない日常を過ごしても生きているとは言えません。それは、ただの経験です。

 恋をしてみてください。誰かを好きになれば世界が色付いて見えますよ。世界の何よりも美しい色が……』

 

 

 

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