小さな二人は共に行く(リメイク)   作:麦わらぼうし

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本章の位置を間違えていました、この話から本章です。


本章
学園生活と人外の関係


 私とオーフィスが駒王学園に入学してから少し。私にとっては転生して(おそらく前世も含めて)初めての学園生活であるが、私とオーフィスはいつものように二人一組だった。現在は昼休み。窓から外を見ていると、入学してから見慣れた光景が視界に映る。

 

「「「「「待てぇえええええええええええええええええ!!!」」」」」

「「「うわあああああああああああああああああああ!!!!!」」」

 

 この駒王学園は女子高から共学に変わったからか、生徒の大多数が女子であり、パッと見で視界に入るのも大体が女子だ。

 

 次の授業の為かランニングをしている体操着姿の女子。

 声を上げながらランニングをしている3人の男子。

 その3人のあとを追うようにランニングする竹刀を持った女子。

 

「まただね」

「ん。いつも通り」

 

 私の言葉にオーフィスが賛同する、慣れとは怖いものである。

 今、外を走っていった3人の男子は、変態3人組としてこの学園では有名らしい。この世界の元になった物語に、彼らが最初から居たのかは知らないけど、ああいう『モテたい』と公言するのは主人公の親友のギャグ要員か何かだろうか?

 

 この世界の主人公、私の予想では金髪の悪魔の男子ではないかと思っている。勉強も成績も性格も良いという、まさに主人公みたいな存在だ。そしてヒロインは、この学園にいる他の有名人達だろう。まるで示し合わせたように彼女らも悪魔なんだ、無関係ということはないだろう。

 

 まぁ、彼らがどんなことをするかは、あまり気にしていない。彼らを拒絶するつもりは無いけど、自分から何かをするつもりも私にはないからね。

 

「やはり、その姿の絆は違和感がする」

「仕方ないよ。男子の長髪は校則違反なんだから」

 

 私は自分の前髪をいじりながらオーフィスの言葉にそう返した。現在、私は短髪である。生物学上は男なので、男子生徒の長髪は校則で禁止されているから仕方がない。

 

 まぁ、能力を使えば、いつでも元の長さに戻せるから、あまり気にしては居ない。ただ、この世界に転生してから髪を切ったことはなかったので、私自身も鏡に映った自分が一瞬誰だか分らなかった。

 

「そう言えば美遊は、どこかの部活に入るの?」

 

 そう聞くと、オーフィスは一度首を傾げると『あっ』と気がついたように口を開ける。どうやら、まだ美遊という呼び名に慣れていないらしく。こうして時々、反応に遅れるようだ。

 オーフィスは首を横に振る。

 

「興味ない。でも絆が入るなら、我も入る」

 

 わぁお、決定権は私持ちですか……でも、知り合いが居ないよりは、居た方が嬉しいから気は楽だけど。でも、どこに入ろうかな……。

 神様から学校に通わせてもらっているけど、原作に関わらなくてもいいと言われている以上、学生だからこそできることを私は探している。

 勉強は家でも出来るので除外、委員会は規則とかが堅苦しそうだからパス、生徒会は悪魔しか入れないようなので不可、友人とのバカ騒ぎは―――

 

「和むな~。あの二人が一緒にいるだけで、空気がほんわかする」

「分かる分かる。駒王のマスコットの名に偽りなしって感じだよな」

 

 クラスメイトの何人かから、そんな声が聞こえる。このように見た目の関係からか、私とオーフィスは学園のマスコットという少し特殊な視線を生徒から向けられている所為で、一緒にバカをやれるほどの友人がまだ居ない。入学早々2人ぼっちである。

 

「このクラスになれたのは、今年一番の幸運かもな。あそこに小猫ちゃんも入れれば完璧なのに」

「ついでに俺も混ざりたい!」

「バッカ。お前みたいな奴が入ったら、絵図らが汚くなるだろ」

「んだとテメェ!」

「アァ、やるか?」

 

 なんか突然、胸倉をつかみ合って火花を散らせている生徒がいるけど、無視。あと彼らが、私たちの中に入れたいと言っていたのは、私たちと同じくマスコット扱いされている同学年の女子。名前は確か、塔城 小猫だったかな? ちなみに、この子も悪魔である。体格が近いので、オーフィスとは体育の時によくペアを組むらしい。

 

 とまぁ、こんな風に周りの生徒は、私たちとは一線を引いて別枠みたいに接してくるので私を除いてオーフィスと一番会話をするのは彼女だったりする。

 話がだいぶ逸れた。そんな訳で、他に学生だからできることが、部活ぐらいしか思い浮かばないのだ。さて、どこに入ろうか……。

 

 身体能力で差が出ちゃう運動部はあまりやりたくない、手加減するのも失礼だし、全力でやると学校が消し飛ぶ。オーフィスがやったら、世界そのものが危険だ。

 

 なので、入るとしたら文化系だけど、何がいいかな? 私は部活動紹介の冊子を開いて、文化系の部活一覧に目を通す。軽音楽部、吹奏楽部、演劇部、囲碁部、美術部、新聞部、生物部……他にも色々あるけど、どれも面白そうだから迷う……う~ん。

 

「うん?」

「絆、どうかした?」

「これ、部活動紹介やってたっけ?」

 

 私が指差す、部活動紹介の冊子の中にある一つの部活名をオーフィスが覗き見る。それを見たオーフィスは首を横に振った、やはり紹介は無かったみたいだ。う~ん、派手さは無いけど折角、目に留まったのだから放課後行ってみるのもいいかもしれない。

 いざ行かん、文芸部へ!

 

 

 

「廃部、ですか?」

 

 時刻は放課後、さっそく文芸部の部室を訪れた私とオーフィスは、無人の部室に唖然としてしまった。冊子を取り出して、活動日を確認してみるが、今日が活動日であることがしっかりと記されている。

 これはどういうことなのかと、顧問の教師を訪ねてみると、その返答に私は先程の言葉をこぼした。

 私の言葉を聞いて、教師は口を開く。

 

「正確には『部員数は足りているけど、全員が幽霊部員(・・・・)となっていて、部としての活動は何もしていない』ですね」

「良くそれで、部としての許可が取れますね」

「ですから、殆ど廃部同然なんです。部費も無し、参加者無し、部活動内容も殆どありません」

 

 本当によくまだ部室が残っているね……例え幽霊部員でも人数さえ足りていれば、部として成り立つとは、学校のシステムはよく分からない。

 

「呼びかけはしているんですけど、部室には全く来ないんですよね。もし入部するのでしたら、貴女たちを部長と副部長にしてあげてもいいくらいに……」

「1年の私たちに、そんな役割を与えていいなんて、どんだけ来ないんですか……」

「そうですね。私が掃除をしに行かなければ、去年の1年間は誰も立ち寄らないぐらいには人が来ませんよ」

 

 そう言って教師は溜め息を吐いた。

 話を聞く限り、本当に何も活動してないようだ。確かにそれなら部費も0になるだろう、部として活動してないんだから。

 

「入部してくれるのなら本当に部長と副部長にしていいですよ。部屋の掃除をして貰えれば、部室の本は読み放題です。本来は読んだ本の感想を書いたり、文化祭での文集を作成したりするんですが、今は部費0なので何もしていませんし」

「もはや自虐ですね……」

「それでどうしますか? 入部しますか? 1年間の掃除番をしますか? ははは……」

「ツラかったのは理解できましたから落ち着いてください」

 

 僅かに微笑みながら自虐する教師を見ていると、なんだか悲しくなってきた。

 しかし話を聞いてみると、学校に自由に居ていい空間を持てるのは結構、好条件じゃないだろうか? 部長なら、ある程度融通も利くだろうし、入部するのもいいかもしれない。

 

「他に部長、副部長としてやらないといけない事はありますか?」

「……え? 本当に入部する気ですか? もう一度言いますけど、本当に何もやりませんよ?」

 

 私の言葉が信じられないのか、目を見開いて私に聞き返してくる教師。

 

「構いません。その代り、部室の内装を変えたり、友人を呼んだりしてもいいですか?」

 

 まだ入学したばかりなのだから、友人もこれから作れる。家にあるゲームを持って来れば、遊び場として利用できるだろう。校則違反? そんなのは知らない。頭髪は守っているのに? それはそれ、これはこれ。

 

「一応文芸部ですから、あまり騒がしくしなければ目を瞑りますよ。できればその友人も、入部してくれるとありがたいんですが……」

 

 騒がしくしないゲーム、修行の休憩中にオーフィスと遊んだレトロゲームが色々あったから、それなら大丈夫かな?

 

「勧誘はしておきますが、まず私たちは友人作りから始めないといけないので、あまり期待しないでくださいね」

「あはは……予想を通り越して『SOS団』でも作ったりしなければ、文句は言いませんよ」

「……なんですか『SOS団』って?」

「………なんというか、時代の壁を感じますね」

「???」

 

 教師の最後の言葉がよく分からなかったけど、こうして私とオーフィスは文芸部に入部することに決まった。入部届は明日持ってくることにして今日はオーフィスと一緒に帰宅する。取り敢えず明日は部室の大掃除(模様替え)だ。

 

 

 

「それにしても……」

 

 帰宅する途中、私は小さく呟くと一瞬だけ、学校の方に目を向ける。

 

「良い先生だったなぁ……」

 

 故に、残念だ。ある意味、救われているのかもしれないけれど。いつ壊れてもおかしくない。いや、壊れているからこそ起きた事態なのかな? 何はともあれ、これが人間と人外の関係だ。意図的なのか、偶然なのかは分からないけど、彼らが存在する時点で『こういうこと』があっても不思議じゃない。

 

「絆、早く帰ろう」

 

 前方でオーフィスが私を呼ぶ声を聞いて、私は歩みを速めた。もう私は、人間だからという理由で、人間を贔屓(ひいき)目で見ることはしない。戦争とかで、ずっと見殺しにしているんだ、今更『人間だから』という理由で助けるなんて虫が良過ぎるよ。

 だというのに、何とかするべきだと考えてしまうなんて。本当に私は、心が弱すぎる。せめて、あの顧問が私にとっての特別になってくれれば、私も躊躇しないんだけど、そういう訳にもいかないし……。

 

「本当、私って酷い奴だ……」

 

 私の呟いた言葉は、誰の耳にも届くことは無かった。

 

 

Side 三人称

 絆とオーフィスが話を聞き、職員室を後にしてから少し。文芸部の顧問は、部活の書類を整理していると1枚の用紙を手に取る。それは文芸部の部員が載っている用紙である。全員が幽霊部員のメンバー表。しかし、そのメンバーは幽霊部員である前に不登校の生徒(・・・・・・)だった。何度か家に電話を掛けているがダメで、顧問も長い間会っていないせいか、頭にモヤが掛かったように顔を思い出すことができないでいた。

 

 なにか悩んでいることでもあるのだろうか? 悩みというのは繊細なものであり、親だと(・・・)言えないこと、教師だと言えないこと、友人だと言えないこと、本当に誰にも言えないこと、それらによるストレスからの自己防衛が不登校という形で現れる。

 

 しかし、この教師はそんな生徒の悩みをぶつけて欲しかった。自分は彼らのクラスを担任している教師ではない、部活の顧問と部員という関係だ。でも、自身の教え子であることには変わらない、自分の可愛い生徒であることは変わらない。でも、話を聞かなければ分からない。話を聞いても分からないかもしれないが、話して貰わなければ把握すらできない。

 だからこそ、この教師は今日も不登校の部員の家に電話を掛けようと受話器を手に取る。

 

 その時――

 

 教師の目から光が無くなり虚ろになった。しばらくの間、教師は動きを止めて、その後ゆっくりと受話器から手を離し、溜め息を吐いた。

 

「今日も、ダメでしたか……」

 

 両肘を机付けて、手を繋ぎ前倒れしそうな頭を支える。

 そして受話器が戻された電話には、どこにも通話履歴は残されていなかった。当然の結果だろう、なにせ電話を受け取る相手は既にこの世に居ない(・・・・・・・)のだから。

 

 

 

 その数日後。問題児3人組の一人が悪魔になり、町から堕天使の気配が4つ消え、学園に通う悪魔が増えたが、駒王学園に通う文芸部の部長は完全に無視していた。

 すでに彼の中では、この土地に住む人外のことなど興味の対象外のようだ。

 




という訳で、絆たちは原作組には基本的に関わろうとはしません。
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