「ど、どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう」
私は、目の前の現状に慌てふためいていた。突然空から瀕死のドラゴンが降ってきたのだ。今にも息絶えそうに、弱々しい呼吸を繰り返している。
「助けなきゃ! でも、ドラゴンの治療法なんて分からないし。だからって、このまま
見捨てるなんてできないし……」
必死に考えを巡らす。と、そこである一つの方法を思いついた。
「私の能力を使えば……」
直せるかもしれない。でも、まだちゃんと扱いきれるかどうか分からない力だ。不安定な力を使うのは危ない。
「でも、これしかないし……」
成功するか分からない。でも、失敗は許されない。
「……大丈夫。さっきまで、ちゃんと使えていた。絶対に、成功する」
自分に言い聞かせるように呟いた。やっぱり、見捨てるなんてできない。大丈夫。ただ、自然回復の速度を上げて怪我が治るよう念じるだけでいい。
私は、助けると決めてドラゴンに近寄る。
「大丈夫だよ。今、助けるからね」
私はドラゴンに手を当てて、怪我が治るように念じる。するとドラゴンの怪我の場所が淡い光を放ち始めて、傷が消えていく。そして、全ての怪我が消えた。
「ふぅ……」
私は額の汗を拭う。良かった、上手くいった。誰かに力を使うって、こんなに不安なものなんだね。
そこでドラゴンが目を覚ました。そしてムクリと身体を起こすと、辺りを見渡して私の方を向いて視線が止まる。
「えっと、もう大丈夫だよ。怪我はちゃんと直したから」
「……………」
ドラゴンは何の反応もしない。いや、言葉が伝わってないだけかもしれないけど。
「でもまだ無理はしないでね。直したのは怪我だけで、疲れとかは残っている筈だから」
「……………」
やっぱりドラゴンは反応しない。でも、元気になったのなら別にいいか。
「それじゃあね。何があったかは分からないけど、もう怪我しちゃダメだよ?」
「……………」
私はドラゴンに背を向けた。もう、日が沈み始めているのだ。そろそろ家に帰らないと、明日が迎えられなくなる。
そうして私が、少し歩いたところで――
「お前、待つ」
不意に後ろから、そんな声が聞こえた。
「えっ?」
その声に反応して振り返ると、そこに居たドラゴンがいなくなっていた。代わりに、その場所には、私の黒い色違いのような服装の女の子がいた。
「あなた、誰?」
「我、
「ウロボロス……ドラゴン?」
女の子……オーフィスは、無表情のまま答えた。私は、辺りを見渡してさっきのドラゴンが見当たらないことを確認すると、自身の推測を言う。
「もしかして、さっきの黒いドラゴン?」
「そう」
オーフィスはノータイムで答える。
「そうなんだ。ドラゴンって人の姿になれるんだね」
「ヒト? それはなに? それに、この姿になったのは初めて」
人が分からない? って、そういえば、まだこの時代には人間が居ないんだっけ? なら、人って言葉も存在しない訳か。
「今の貴女がしている姿みたいな形をしているのが、人だよ。人間ともいう」
「これ、ヒト? この姿、お前を参考にした」
そういうとオーフィスは、私の方に指差し。
「なら、お前、ヒト?」
「そうだよ」
私が答えると、オーフィスは「分かった」とやはり無表情のまま言う。なんか、不思議な感じのする子だなぁ。
「それで、私に何か用?」
「お前、我をどうやって治した?」
「私の能力だけど」
「能力?」
「そう、私はあらゆるものを制御する力を持っているんだ。それで怪我を治したんだよ」
「その力があれば、グレートレッド、倒せる?」
「なにそれ?」
グレートレッド? えっと、個体名称……だよね?
「グレートレッド、次元の狭間に居るドラゴン」
「次元の狭間?」
「次元の狭間、我の生まれた場所、でも、グレートレッドに奪われた」
「それで、どうして私に、そのグレートレッド?が倒せるか聞くの?」
「我、故郷を取り戻したい、でも、グレートレッド、我よりも強い、我では、倒せない」
なるほど、要するに元居た場所に帰りたいんだ………オーフィスを治すことができたんだから、同じドラゴンなら私の能力は効くと思うけど、私の能力は近付かないと使えない。ドラゴンに近づける自信は、ちょっとないなぁ。
「私の能力はおそらく効くと思うけど、確実に勝てる保証はないよ」
「そう……」
相変わらず顔は無表情だけど、心なしか少し落ち込んでいるように見える。
「なら、我の蛇使えば、勝てる?」
「蛇?」
なんで突然、爬虫類の話が出て来たんだろう?
「蛇、我の力の一部、それ飲めば、お前強くなる」
んんっ? 蛇って言うのは、爬虫類の蛇のことじゃない……のかな? 説明を聞く限り、ドーピングみたいなものに聞こえるけど。
「その蛇とかいうもので、どれぐらい強くなるのか分からないけど、それでも勝てる保証はできないよ」
「なら、蛇を沢山渡す、そうすれば、もっと強くなる、それなら、グレートレッド、倒せる?」
「いくら強くなっても確実に勝てる保証なんてできないよ、勝負に絶対は存在しない。いくら強くなっても、一瞬の隙に負けることだってある筈だよ」
「そう……」
やはり先程までと変わらない無表情。でも、その姿はとても悲しそうで、消え入りそうな程弱々しく見えた。
………………。
「えっと、オーフィス?」
「なに?」
「私を鍛えてくれない? 私を強くする代わりに、私はあなたに協力するから」
その時、初めてオーフィスは少しだけ表情を変えた。
「協力? 共に、戦う?」
「そうだよ! 一人でできないなら、二人でやろう! 一緒に、強くなろうよ!」
そう言って私は、オーフィスに向かって手を差し出す。
「我、ドラゴン、強いもの、引き寄せる、危ない」
「ちょうどいいじゃん、実戦に勝る経験は無いよ。そいつらを倒しながら、強くなろうよ」
「……本当に、協力してくれる?」
「もちろん!」
「……分かった」
オーフィスは私の手を取った。
「我、ヒトを鍛える、一緒に、強くなる」
「えっと……人って言うのはオーフィスにとってのドラゴンみたいな種族名だから、私の名前じゃないよ?」
「なら、お前、何?」
「あ~、そう言えば自己紹介してなかったね。私の名前は真代 絆。 真代でも、絆でも好きに呼んで」
「ん、我、絆と一緒に、強くなる」
「じゃあ取り敢えず、腹が減っては、戦はできぬって言うし、ご飯食べよ。ご馳走するよ」
私はオーフィスの手を引く、するとオーフィスはその手を握り返してきた。