小さな二人は共に行く(リメイク)   作:麦わらぼうし

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神の名を持つ龍と次元の狭間

「えっと……なんかごめんね? こんなものしか出せなくて……」

 

 あの後、オーフィスを家に連れ帰った私は、さっそく金庫の食材で料理をしようと思ったんだけど。

 

 よく考えたら私、料理なんてしたことなかった。

 

 ということに気づいた。おまけに、金庫の中の食材は、その時代に応じた物が出てくるらしく。あったのは肉と深海魚?みたいな巨大な魚、あとは色とりどりの果物だった。果物は皮を剥いて見た目を良くしたけど、魚や肉の調理方法なんて私、焼く以外知らないよ~。

 そんな訳で、私の目の前には巨大な魚の丸焼きと切った果物、そしてマンガ肉を頬張っているオーフィスが居た。あっ、もちろん塩で味付けはしたよ? コショウは無かったけど。

 

「我、食事というもの、初めてした、悪くない」

「そ、そう……」

 

 あっさりとマンガ肉を食べ終えたオーフィスは魚の方に手を伸ばす。随分沢山食べる子だなぁ、って思ったけど。元々はあの巨大なドラゴンなのだからある意味納得だ。

 

――バリバリバリ

 

「ちょっ!? オーフィス!? 骨まで食べなくていいんだよ!」

 

 魚に頭から噛みついて、そのままバリバリと食べ進めるオーフィスにストップをかける。流石ドラゴン、食べ方が豪快だね。

 

「? 分かった」

 

 そう言うとオーフィスは、中の骨に噛みつくと器用にそのまま骨を引きずり出す。

 

「あ、あはは……」

「(もぐもぐもぐ)」

 

 私はオーフィスの予想外の行動に、渇いた笑いを上げることしかできない。なんか滅茶苦茶だね、ドラゴンって……。

 

「ん? これ、ドラゴンアップル?」

 

 いつの間にか魚を食べ終えたオーフィスは、果物の方を向くと何やら呟いた。

 

「あっ、それドラゴンアップルっていうの? 初めて見る果物だったから、どんなものか分からなかったんだけど」

 

 金庫の中にあったから食べられるものだと思っていたんだけど、見たことのない果物だったから味とか不安だったんだよね。

 

「これ、ドラゴンの好物、でも、あまり数が無い」

「そうなんだ。じゃあ、種を取って庭で育てようよ。そうすれば、沢山食べられるから」

 

 私の制御する力を使えば成長の促進ぐらいできると思うし、無くなっても採取する前の状態に戻せば何度でも取れるようになるかもしれない。

 

「ん、分かった」

 

 その時、一瞬だけ。本当に一瞬だけ、オーフィスが嬉しそうな顔をした。そんなにコレ好きなんだ。

 そしてドラゴンアップルの種を一つだけ取り出すと、次々と食べ進めていく。

 

「はい、ご馳走様でした」

「?」

 

 オーフィスが食べ終わると同時に言ったけど、当の本人はなんだか理解してないみたい。

 

「食事が終わったら、こう言うんだよ。美味しく食べさせてくれてありがとうって」

「ん、ご馳走様でした?」

 

 よく分からないけど、とりあえずやってみた、みたいにオーフィスは私の言葉を真似する。そう言えば私、結局何も食べてないや、後で何か適当に食べよう。それと、料理をもっと練習しなくちゃ、今度はオーフィスにもっと美味しい物を食べさせてあげたい。

 

「絆、ドラゴンアップル、育てる」

「うん、分かっているよ。庭に埋めてこよう」

 

 その後、庭に埋めて実が生るくらいにまで成長するように念じると、一気に種が巨木に成長した。あっちこっちにドラゴンアップルが生り、それを見たオーフィスが生っているドラゴンアップルに向かって飛び上った。

 すごい勢いで実が食べられていく、どうやらあれだけの食事では足りなかったらしい。私は木の幹に手を付けて、食べ終わったドラゴンアップルの場所に再び実が生るように念じてみる。すると、先程食べられた場所に再びドラゴンアップルが生まれて、またオーフィスがそこに飛び付いた。

 いくつ食べる気さ……。

 その後、食べられても再生するように念じ続けて、更に私の真上にある実が一つ落ちるように念じる。そして落ちてきた実を私はキャッチして食べてみた、甘くておいしい。

 その後、二人でしばらくドラゴンアップルを食べ続けた。

 

「ん、ご馳走様でした」

「はい、ご馳走様でした」

 

 満足そうにお腹をポンポンと叩くオーフィス。でも……。

 

「オーフィス、顔が汁でベトベトだよ」

「ん」

 

 私はハンカチを取り出してオーフィスの顔を拭いた。こらっ、動くな!

 

「はい、取れたよ」

「おぉ~」

 

 うーん。なんというか……何にも知らない無知な子供みたいだ。別に私だって子供だし、博識って訳じゃないけど……でも、なんていうか。こう……感性がズレてる?

 

「さてと、鍛えるのは明日からにして、今日はもう休もうか」

「分かった」

 

 何気に、もう日が落ちていて辺りは真っ暗だ。ドラゴンには分からないけど、人間には辛い時間である。

 

「あっ、でもグレートレッドについていろいろ教えてよ?」

「分かった、グレートレッドのこと、教える」

 

 そうして私たちは家に戻った。そして二人で温泉に入りました。それというのも、オーフィスに入ってくるように言ったら、しばらくして裸のオーフィスがやってきて、どうすればいいのか分からないと言ってきたので一緒に入ることになった。一通り入り方を教えると、オーフィスがお湯の中に潜ったり、泳ぎ出したりしたせいで全然ゆっくりできなかった。疲れたよ……。

 そうしてお風呂から上がったオーフィスは、またあの黒い服を着そうになったので、余分に置いてあったパジャマ(ネグリジェ?)を着させた。あれは普段着であって寝巻きじゃない。

 そして私たちは今、寝室のベッドの上で二人向かい合って座っている。

 

「それじゃあ、グレートレッドのことを教えて?」

 

 そう、オーフィスにグレートレッドのことを説明してもらう為である。おそらく、私の制御する力は知識が多い程、大きな効力を発揮する。まさしく、情報が武器になるのだ。

 

「分かった、真なる赤龍神帝(アポカリュプス・ドラゴン)グレートレッド、次元の狭間を飛び続けるドラゴン、真龍、D×D(ドラゴン・オブ・ドラゴン)、夢幻の体現者などと呼ばれている」

「け、結構いろいろな名称があるんだね……」

 

 しかも全部、大層な名前だ。大きなオーフィスが負けるぐらいだし、グレートレッドも相当大きいのかな?

 

「あと、世界最強」

「はい?」

「グレートレッド、世界最強のドラゴン、神より強い」

「そんなに!?」

 

 ドラゴンというからには、強いであろうことは予想していた。でも、自身に強力な特典(ちから)を与えて転生してくれた神よりも強いという事実に私は、思わず声を上げてしまう。

 

「……ちなみにだけど、オーフィスはどれくらい強いの?」

 

 質問に深い意味はない。しいて言えば気になったから聞いた。そんな何気ない質問だったのに、またもやオーフィスの回答に私は驚愕することになる。

 

「我、グレートレッド除けば、最強」

「………えっと、つまりオーフィスは世界で二番目に強いってこと?」

「ん」

 

 私の言葉に頷くオーフィス、どうやら本当らしい。それにしても神より強いなんて、もしかしてこの世界には『神<ドラゴン』のような方程式が存在するのだろうか?

 

「じゃあ、オーフィスも何か他の名称があったりするの?」

「我、無限の体現者と呼ばれている」

「無限?」

「我の力、無限」

「……………」

 

 オーフィスの言葉に私は絶句した。力が無限って、チートじゃん! しかも、そのオーフィスを倒すようなグレートレッドはなんなのさ、そんなのもはやバグだよ!

 なるほどね、神様がパワーインフレの世界っていった意味がよくわかったよ……。

 

「弱点とかはないの?」

龍殺し(ドラゴンスレイヤー)、弱点」

 

 名前からしてドラゴンに効きそうだね。でも、私そんな力持ってないから意味ないな~。

 

「そっか、いろいろありがとうね。それじゃあ、今日はもう休もう」

「分かった」

 

 そうして私は、オーフィスをベッドに寝かせると寝室を後にした。確か和室のほうに布団があったからね。そっちで寝ました。

 

 

 そして次の日の朝。オーフィスを起こすと、昨日より手を加えた朝食をとって私たちは次元の狭間に向かいました。今の私で、どこまで世界最強に通用するか確かめるためである。それで来たのはいいんだけど……。

 

「な、なにこれ!?」

 

 次元の狭間に入った途端、身体が消えだした。

 

「お、オーフィス! いったん戻って!」

「ん? 分かった」

 

 そうして、十分もしない間に私たちは家に戻ってきました。私はすぐに、制御する能力を使って自身の時間を巻き戻して、身体を元に戻す。

 

「も、戻った。咄嗟にやったけど、時間操作もできるんだね。この能力」

 

 なんて、軽く現実と逃避をする私。そうでもしないと、恐怖で頭がおかしくなりそうだった。

 だって、目の前で音も痛みもなく身体が消えるんだよ? 感覚が残ったまま、身体が消えていくんだよ? 恐怖以外の何物でもないよ。

 

「さてと、オーフィス。さっきのあれは何?」

 

 いつまでも現実から目を逸らしても仕方ないので、私は理由を知っていそうなオーフィスに聞いた。

 

「次元の狭間、何もない無の空間、中に入ると無にあてられて、存在が消えていく」

「なにそれ……でも、オーフィスは何ともなかったよね?」

「我、無限、無限は消えない」

 

 い、意味がよくわからない……。

 特典の力で理解力はよくなっているはずなんだけどなぁ。でも、グレートレッドもそこにいるわけだから、次元の狭間に耐えられるようにならないと、どうにもならない。

 制御の力で消えるたびに身体が再生するように念じれば、なんとかなるかな?

 

―――結果。

 

 何とかなりました。現在、私の身体は消滅と再生を繰り返している。

 

「人間、不思議な生き物」

「いやオーフィス? これは私が能力を持っているからであって、普通の人間だったらそのまま消えるからね?」

 

 人間は、とても脆い生き物なんだよ。子供なんて特にね。

 それにしても、不思議といえば、この空間も不思議な場所だ。万華鏡みたいに色が移り変わって目が痛くなりそう。

 

「グレートレッドは、どこら辺にいるの?」

「分からない、でも、力を放出すれば、敵を排除しようと出てくるはず」

「なら、やってみて?」

 

 何気ないその一言で。

 

「分かった」

 

――ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!

 

「うわっ!? ちょっ、ちょっと!」

 

 私は吹き飛ばされそうになった。制御の力でその場にとどまるものの、能力が間に合わなければ数十メートルは吹き飛びそうなエネルギーの放出だった。

 これだけの力を持っているのに勝てないなんて、私がどうにかできる相手なのかな?

 

「来た時のために、力を温存している、来るまで少し、時間がかかる」

 

 しかも、これで全力ではないらしい。でも、力が無限のはずなのに、力を温存する必要なんてあるのかな? あれか……全力を出すと体に負担がかかるとか?

 そして待つこと数分。

 

「来た」

 

 不意にオーフィスが言った。その視線のほうに目を向けると100メートルはありそうな巨大な赤いドラゴンがこちらに向かって飛んできていた。

 

「ゴガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」

 

 威嚇のためか。はたまたドラゴンの言葉なのか。とっさに耳を塞がなければ、鼓膜が破れるほどの咆哮を放つ赤い龍……グレートレッド。

 

「な、なんて威圧感……」

 

 巨大な体躯はもちろんのこと、放たれる強大なプレッシャーは、全身に怖気を走らせる。逃げろ、不可能だ、格が違う。あれは正真正銘、バケモノだ。

 奴の姿を見た途端。頭が、いや全身が逃げろと警告を放つ。何度も何度も、自分が死ぬような感覚が全身を襲う。

 

「話し合いで何とかしたかったけど、これは……」

 

 見るからに相手にその意思はない。奴の目は、侵入者を排除しようとする縄張りをもった獣のそれだ。

 そして、ついにグレートレッドは私たちを射程範囲にとらえたのか、巨大な炎のブレスを放つ。まだ、数十メートル離れているはずなのに、熱気がこちらに伝わってくる、その温度は計り知れない。

 そしてその数瞬後、私は炎に飲み込まれた。

 

 

 

Sideオーフィス

 我がグレートレッドのブレスを回避したあと見たものは、炎に飲み込まれた絆だった。あれでは助からないだろう、人間という未知の存在なら、もしかしたらグレートレッドを倒せるかもと思った。

 だが、結果は惨敗。おそらくグレートレッドは、絆の存在すら認識していなかったと思う。我に気づいて牽制のために放ったブレスに、たまたま何かが当たっただけ、おそらくその程度。

 

「やはり、協力しても、無駄」

 

 本当は最初から分かっていた。グレートレッドは強い、夢幻の体現者にしてあらゆる者の頂点。我と同じく、完成された存在。その存在に、あんな小さな生き物が勝つことなど不可能。

 

「我、一人でも戦う」

 

 夢幻と戦えるのは無限のみ、同じムゲンの存在だからこそ。対をなす存在だからこそ、戦いになる。

 絆のことはもう諦めるしかない。やはり我と一緒にいるのは危険、今までと同じように、一人で戦うべきだった。

 

「勝手に死んだことにしないでよ……」

「!?」

 

 我は、聞き覚えのある声に振り向いた。そこには、薄い銀髪に紫の服を身に纏った無傷の絆がいた。

 

「?」

 

 グレートレッドは、ようやく絆の存在に気が付いたのか目を向ける。

 

「ちょっと、いきなり攻撃してこないでよ! とっさに能力使わなかったら死ぬところだったんだから!」

「絆、無事?」

「なんとかね! というか、オーフィスも一人で離脱しないでよ……」

 

 文句を言う絆。でも、我もグレートレッドが相手では、他の者を気遣っている余裕はない。そして、そんな話をしていると、再びグレートレッドは口を開いて、先ほどよりも強力なブレスを放つ。

 

「だからいきなり攻撃してこないで、ってば!」

『!?』

 

 今度は我だけではなく、グレートレッドも少し驚いた。

 グレートレッドがブレスを放つと同時に、絆が我の前に出てブレスをかき消したのだ。

 

「もう、空気が熱せられていることに気づかないで呼吸したら、死ぬところだったんだからね」

 

 なんてことをいう、だが我の耳にそんなことは入ってこなかった。さっきのブレスは、我の身体に傷を付けるほどの威力を持っていた。それを無傷で受け止めたのだ。

 これはもしかしたら、本当にグレートレッドを倒せるかもしれない。

 

「ゴガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」

「本当に話し合いは無理そうだね…………オーフィス! おそらく私の攻撃だとグレートレッドにダメージを与えることは無理だ、だから私はサポートにまわるよ。オーフィスは防御なんて考えずにひたすら攻撃して、あなたの背中は私が守る!」

「分かった」

 

 絆の言葉に、我は頷いた。

 

 守る……初めて、言われた。聖書の神ですら、我のことを危険と言ってつまはじきにした。我の味方なんて、どこにも居なかった。

 でも今、我の前には、我を守ろうとグレートレッドに立ち塞がっている者がいる。世界最強の存在、だというのに。我よりもずっと小さい生き物が、我を守るために世界最強の存在と対峙している。

 

「我の背中、預ける」

「了解だよ!」

 

 そして我と絆は、グレートレッドに挑んだ。結果は―――――――負けた。

 

 一撃もグレートレッドに与えることはできなかった。完敗だ。でも、絆は諦めていなかった。これから強くなればいいと、逆にやる気に満ち溢れていた。

 この者となら、我も強くなれる? 完成された存在である我が、もっと強くなれる? 一緒に、強くなれる?

 分からない。でも、一つだけ理解したことがある。

 絆は、信頼できる。我は今日、初めて自分以外の存在を信じてみることにした。

 

 

 

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