小さな二人は共に行く(リメイク)   作:麦わらぼうし

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少しオリジナルが入ります。あと、人によっては読むのに注意が必要かもしれません。


妖怪の訪問と最強への挑戦

 人間たちの戦争が終わってから十数年、日本が高度経済成長期に入ったようで、ようやく家に設置してあるテレビが映るようになった。今まで、ただの置物だったからね。

 それはそうと、家の中で修行をしていると突然インターホンが鳴った。新聞の勧誘かと思って出てみると。

 

「お主が、この土地に勝手に住み着いているという不届き者か?」

「は?」

 

 フッサフサの九尾が付いた女性の狐の妖怪と、一つ目の男性の妖怪がそこに居た。

 

 

 

「粗茶です」

「うむ、いただこう」

「かたじけない」

 

 とりあえず、家に上がってもらった。ちなみにオーフィスは二階でお昼寝中だ。私は二人にお茶を出す。先に男性の方がお茶を飲むと、女性の方を向いて一度頷く。

 おそらく、毒は入っていない。みたいな意味の頷きだろうけど、なんでこんなに警戒されているんだろう? 

 男性が頷くのを見ると、女性の方もお茶を口に運ぶ。そして口を付けた途端、女性は驚いたように目を見開いた。

 

「お主、これはどのような茶葉を使っている?」

「普通に、近くのスーパーで売っている茶葉だけど?」

 

 私がそういうと、女性は男性の方に視線を移し、それに気づいた男性は再び頷く。

 

「市販の茶葉で、これほどの茶を入れられるのは称賛に値する。どうだ? わらわの元にお茶汲みとして来るつもりはないかえ?」

「あなた……何しに来たの?」

 

 私はジト目で女性を見ていると思う。それに対して女性は、男性に咳払いをされて何かを思い出したようにハッとした顔をする。

 

「う、うむ。では、本題に入ろう」

 

 そういって女性は姿勢を正して、私を真っ直ぐに見てくる。

 

「わらわは京都を取り仕切る妖怪たちの統領、名を八坂と申す」

「拙者はトツ。八坂様の従者でござる」

「人間の真代 絆です。それで京都の妖怪、それも統領なんて多忙そうな人がなんでこの町に?」

 

 あっ、ちなみに私たちが暮らしているこの場所は『駒王町』ってところにあるらしいよ。でも、前世でそんな名前の土地は覚えがないんだけど、私が知らないだけなのかなぁ?

 

「その前に、先程の言葉を謝罪させてもらう。要件を早く伝えようとするあまり口走ってしまった、不快な思いをさせてしまい申し訳ない」

 

 そういって女性……八坂さんは頭を下げる。

 礼儀正しい、のかな? 自分で言ったことに、自分で謝罪。目的を忘れて、お茶汲みの人に勧誘。よく分からない。

 

「それで、わらわがここに来た理由じゃが。おぬしが家に結界を張っておるからじゃ」

「えっ。確かに家には結界が張ってあるけど、それがどうかしたの?」

「最初は使いの者を送ろうとしたのじゃが、結界が強すぎて、わらわ以外に入ることができなかったのじゃ。だから、わらわが直接来ることになった」

「あ~」

 

 なるほど、結界を張っているのはオーフィスだ。片手間とはいえ、世界最強の存在が張った結界。そう易々と対処するのは無理だろう。

 

「わらわですら、通るのがやっとで結界を解除できなかった。おまけに認識阻害の機能もあったから、京から離れたこの場所を見つけたのもつい最近のことじゃ」

「なるほどね。それで、わざわざ統領を動かしてまで、私に接触したのはどうして?」

 

 統領でなくてはならない理由は分かった。でも、統領を動かしてまで私と接触したのは、何か理由がある筈。

 

「それは、お主の真意を聞き出すためじゃ」

「……要は、私のことを聞きたいんだね? いいよ、答えられる範囲でなら答える」

 

 別に、やましいことなんてないしね。それに向こうは話をしに来ているんだし、無碍に扱うのも失礼だろう。

 

「ご理解いただき感謝する。それでは質問じゃが、お主は何が目的でこの土地に住んでいる?」

「目的もなにも、ここで生まれたからここに住んでいるだけだよ」

 

 私が答えると、八坂さんがトツさんの方を向き、トツさんは小さく頷く。

 

「では、どうして結界など張っている?」

「最初は家に危険なものが近づかないように張ったもので、今も用心のために張り続けているだけ」

 

 そういうと、また八坂さんがトツさんの方を向き、トツさんは小さく頷いた。

 

「……ねえ、さっきからやっているその頷きは何?」

 

 私は、少し声を低くしていった。なんの意味があるのか知らないけど、なんか向こうが密談しているみたいで大変不快だ。

 

「おっと、気を悪くせんでくれ。なに、こやつに言葉の真偽を確かめさせているだけじゃ」

「言葉の真偽を確かめる? なんで、その人に聞くの?」

「こやつは『さとり』と呼ばれる妖怪じゃ、人の心を読むことができる」

 

 八坂さんの言葉に、私は目を見開く。心を読む妖怪がいるのは知っていたが、実際に見ることになるとは思わなかった。

 

「だったら、最初からその人に私の記憶とか覗いてもらえばいいじゃん。なんで態々、私に質問なんて回りくどいことをするのさ」

「お主は心を勝手に読まれても、何とも思わないのか?」

「……なるほどね」

 

 私は別に気にしないけど、確かに普通の人だったら心を勝手に見られるなんて、いい思いはしないだろう。

 

「ま、それは建て前で。こやつは、さとりの中でも落ちこぼれでな。心を読むことができないのじゃ、できるのは精々相手が嘘を言っているかどうか分かるだけじゃ」

「別に、こっちに配慮したわけじゃなかったのね……」

 

 というかそれ、本当にさとりの能力なの?

 

「もしかして、コールド・リーディングとかって奴?」

「おっ、正解じゃ」

 

 私の予想に、八坂さんが肯定する。

 

 コールド・リーディング。

 

 相手の外観や会話を観察して、考えていることや真偽を読み取る技法である。でも、それは人間にもできる技術であって、とても能力と呼べるようなものじゃない。

 

「そんな人をそばに置いといて、大丈夫なの?」

「何がじゃ? 別に考えていることを読み取られるわけではないし、むしろ普通のさとり妖怪よりも気が楽じゃ」

「あっそ……」

 

 確かに、統領ともなれば重要機密の一つや二つは抱えているだろうし、そういう意味では情報が漏れないのはいい。それに彼がいれば、相手が嘘を吐いているかどうか分かるから便利かもね。

 

「でも、どうして私はそんなに警戒されているのかな? 私は、あなたたちに危害を加えたつもりはないんだけど?」

「お主は、この土地を含めた日本全土が、わらわたち妖怪が属する日本神話勢力の所有地であることを知っておるか?」

 

 そんなの知らないよ……。

 

「自分たちの所有地に、得体の知れない結界が張ってあったから警戒しているってことか。でも、私は生まれてから随分と長い間住んでいるけど、そんな話は聞いたことないんだけど?」

「まあ、わらわ達は排他的な勢力ではないからの。実害がなければ、基本的に不干渉じゃ」

 

 だとすると、私が無害だと分かってもらえれば警戒も解いてくれるのかな?

 

「それと、先程お主は長い間住んでいると言っておったが、わらわ達の君主である天照様も、いつからこの結界が張られていたのか知らないと仰っていた。この結界は、代々受け継がれて張られているものなのか?」

「違うよ。結界を張り始めたのは、私が生まれてからすぐあと。大体千年ぐらい経ってからかな?」

 

 私がそういうと、八坂さんとトツさんは口を開いたまま固まってしまった。あれ? 私変なこといった?

 

「お、お主。生まれてから千年後に張ったとは、どういう意味じゃ? しかも千年後が『すぐあと』? 人間が、そんなに生きられる訳がなかろう!」

「私は生まれながらにして、特殊な能力を持っていて、身体の老化を止めているの。私が生まれたのは、古生代と中生代の間、もう1億年以上前のことだよ」

 

 私が言い終わると、八坂さんはバッとトツさんの方を見る。トツさんは私の方を凝視しながら、何度も大きく頷く。

 

「……1億年以上生きているとは、本当なのか?」

「そっちのさとり妖怪が頷いているのが何よりの証拠だよ。私はあなたたち妖怪が生まれる遥か前から生き続けている」

 

 そういうと、八坂さんたちは溜め息をすると、何か吹っ切れたかのように身体の力を抜いた。

 

「そうか、わらわ達よりも昔から住んでいるのなら。こちらに、勝手に住んでいるなどという言い分はないの」

「たぶん、神様よりは後に生まれたけど。ずっと接触がなかったから、てっきり黙認されているのかと思っていたよ」

「なるほど。だが、日本を任されているものとして、お主が害悪であるかは確かめなくてはならん。お主は、我々日本神話勢力の敵か? 味方か?」

「生憎、私はどこかの組織に属するつもりはないよ。貴方たちが友好的に接して来るのなら、こちらも友好的に対応するし。敵意を持って接して来るのなら、敵対するだけ」

「そうか……ならば、友好的な関係を築きたいものじゃ」

「私もできれば、そうしたいよ。貴方は悪い人には見えないからね」

 

 私そういうと八坂さんは立ち上がり、それに続いてトツさんも立ち上がる。

 

「今日は突然の訪問にも関わらず、丁重にもてなしてくれたことを感謝する。お主が悪人でないということが分かれば、こちらにとっては十分じゃ。暇があれば、わらわ達の本拠地である京に遊びに来てくれ、今日の礼として丁重にもてなそう」

 

 そういうと八坂さんは、一枚の札を差し出してくる。

 

「この札には、わらわへ連絡ができる術式が施されておる。何かあれば、遠慮なく連絡するがよい」

 

 札を私に渡すと、八坂さんたちは黒い霧のようなものに包まれる。その霧が晴れる頃には、すでに二人の姿は消えていた。

 

「友好的に接したいという、意思表示のつもりかな?」

 

 私は手に持った札を見ながら、そんなことを呟いた。

 

――トテトテトテ

 

「絆、妖怪、何しに来た?」

 

 八坂さんたちが居なくなると、入れ替わるように二階からオーフィスが下りてきた。姿を見なくても妖怪だと分かるのは流石だ。私も分かるけどね。

 

「住民票を渡されただけだよ」

「そう」

 

 私が答えると、それ以上は興味ないと言わんばかりに話を終えた。

 

「それより、もう準備は万全?」

「力、充盈している、いつでも、問題ない」

「そっか、なら昼食をとったら行こう」

「分かった」

 

 私は、予め作っておいた昼食をテーブルに並べていく。

 今日は、年に一度のグレートレッドに挑む日なのだ。なんか年間行事みたいな言い方だけど、ずっと続けてきたことなので、あながち間違ってはいないと思う。

 

「それはそうと、ずっと気配を隠していたね?」

「我の存在、知られるの、危険」

「そっか……」

 

 グレートレッドの言う通り、オーフィスは少しずつ変わってきていると思う。良いことと悪いことの区別を、少しずつ自分で判断できるようになっているみたいだ。

 

「ねえ、オーフィス?」

「何?」

「今日の勝負のことなんだけどさ……」

 

 

 

 

Sideグレートレッド

「来たか……」

 

 いつものように次元の狭間を飛び続けていると、儂の前に見覚えのある二人組が現れた。

 

「来たかって、まるで待っていたみたいな言い方だね?」

 

 相変わらず、儂の言葉に揚げ足を取る人間、絆。

 

「グレートレッド、勝負」

 

 そして、儂と同じくムゲンの体現者であるドラゴン、オーフィス。

 

「先程の『来たか……』は、諦めもせずにまたやって来たのかという、呆れの意味の『来たか……』だ」

「あっそ。なら、そのセリフを言うのは今日で最後だね」

「何?」

 

 今日で、最後だと? 

 

「それはどういう意味だ? ついに諦めたということか?」

「まさか、私たちの戦いはあなたを倒すまで終わらない。諦めるなんてことだけは絶対に無いよ」

「ならどういう意味だ? まさか、儂を倒すからなどという夢物語をほざくつもりではなかろうな?」

「そのまさかだよ」

 

 何の躊躇いもなく、絆は儂を前に宣言する。

 ハッタリを言っているようには見えない。おそらく、それを言わしめるだけの策を講じてきたのだろう。

 身体が疼く。それは戦いの本能を持つドラゴンとしての特性。儂の意思の有無に関わらず感じる、戦いへの衝動。

 

「ならば見せてみろ。儂が、その夢物語を打ち砕いてくれる」

「夢幻の体現者のくせに夢を壊すなんて、なんか矛盾しているよ!」

 

 絆は儂に向かってくる。

 

 遅い。精々、音速程度の速さ。儂には止まって見える。

 

「その程度か!」

 

 儂は、奴を切り裂くように腕を振り下ろす。人間の目では捉えることのできない光速を超えた速さ。

 奴の力は厄介だ。儂のブレスだけではなく、衝撃、風圧、幻惑、あらゆるモノを無効化されてしまう。だが、弱点がないわけではない。

 それは人間であるが故の認識限界。例えどれほど強力な力を持っていようと、発動する前に攻撃されては意味がない。そしてドラゴンと人間では、圧倒的に地力が違う。

 

――ドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!!!

 

「なにっ!?」

 

 振り下ろす腕に衝撃を与えられ、狙いが逸れる。衝撃が来た方を向くと、そこにはオーフィスがいた。

 

「絆の邪魔、させない」

「くっ――」

 

 儂は翼を羽ばたかせて後退する。その直後、絆が儂のいたところに到着して儂の残像に腕を突き立てた。

 残像と分かると、すぐさま絆も後退する。ここで儂は、あることに気づいた。

 

 いつもと、役目が違う。

 

 いつもはオーフィスが攻撃を担当し、それを絆がサポートする形で戦ってきた。だが、今回はいつもと真逆。絆が攻撃を行い、オーフィスがサポートしている。

 

「これが策か?」

 

 だとしたら、随分と幼稚で滑稽な策だ。

 

「この程度の策で、儂を倒せると本気で思っているのか?」

「そうだよ」

「無駄なことを……」

 

 たかが対処する相手が変わっただけ、むしろ攻撃力の少ない人間が相手なら、いつもより楽だ。

 儂はブレスを放つ。どうせまた、絆が無効化するだろうが、これは牽制のためだ。ブレスを放った直後に、儂は接近する。無効化した直後、一撃を叩き込む。

 

「蛇、行く」

 

 だが、儂の予想とは異なり。ブレスを対処したのはオーフィスだった。大量の蛇を儂のブレスに放つ、蛇は的確にブレスの重心を狙って飛んでくる。

 

――ドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!!!!

 

 巨大な爆炎が生まれ、視界が塞がる。儂は風圧で爆炎を吹き飛ばす。

 

「掛かった」

 

 儂の目の前にいたオーフィスが、そう呟いた。それと同時に、身体の動きが動かなくなる。

 

「これは、お前の蛇か……」

 

 両腕、両足、身体の至るところにオーフィスの蛇が巻き付いて、儂を拘束している。

 

「こざかしい、儂にこのようなものは効かん」

「でも、時間稼ぎには、十分」

 

 そうオーフィスが言うと、先程まで見当たらなかった絆が儂のすぐ近くで現れる。どういうことだ? 一体どこから現れた?

 

「チェックメイトだよ!」

 

 そういって絆は儂の身体に触れる。

 

―――ッ!? これはマズッ――。

 

 そう直感した直後。

 

――ズガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!!

 

 儂は今まで感じたことのない大爆発に飲み込まれた。

 

 

 

 

Side絆

「これで、どうだ!」

 

 私は作戦による大爆発の煙の中から外に出て、グレートレッドがいた場所を見ながら、そう叫んだ。

 

 私がやったこと、それは人類最凶の兵器である核爆弾の力。核エネルギーは、原子核が分裂や融合するときに発生するエネルギーのこと。でも、次元の狭間には空気すらまともにない無の空間。そこに存在する物体と言えばただ一つ、

 

―――グレートレッドのみ。

 

 だから私は、オーフィスが蛇で時間稼ぎをしている間に、自分の周囲の光を屈折させて姿を隠し。接触したグレートレッドの身体を制御、奴の細胞の原子核を無理やり分裂、融合を繰り返し、体内に核エネルギーを作り出し、爆発させた。

 

 要するに、体内で核爆弾を使用したのだ。

 

「(いくら身体が頑丈でも、体内から破壊すれば……)」

 

 次第に煙が晴れていく。そこには――。

 

 

「今の攻撃は少し焦ったぞ、絆よ」

 

 

 無傷のグレートレッドがいた。

 

「そんな!?」

「体内に膨大なエネルギーが発生していると感知し、とっさに身体を幻化させなったらやられていただろう」

「幻……化…?」

「そうだ。儂は身体を一時的に幻に変化させ、あらゆるモノから干渉を絶つことができる」

「そんな、デタラメすぎる……」

「もっとも、一日に一回しか使えないのが難点ではあるがな。儂に奥の手を使わせたのは十二分に誇れることだ」

 

 圧倒的な力、捉えることすらできない速度、攻撃した方がダメージを受けるほどの防御力、そして一時的な完全無敵化。

 完成された存在。無敵。最強。グレートレッドは、まさにその言葉通りの存在だった。

 

―――だけど。

 

「オーフィス!」

「準備、万全」

「むっ、まだ何かあるのか?」

 

 私の呼びかけに、オーフィスは先ほどよりも大量の蛇を放出する。その数は、何千、何万。いや、それ以上に居る。

 全ての蛇がグレートレッドに巻きつき、動きを封じ始める。

 

「無駄なことを……」

 

 グレートレッドが腕を振るう、すると腕についた蛇がすべて弾け飛ぶ。しかし。

 

「面倒な……」

 

 弾けた蛇の欠片は空中で集まり、また蛇に戻ってグレートレッドを拘束する。

 

「また同じことをするつもりか? 例えもう幻化は使えなくとも、もう一度貴様が儂に触れることはできん」

「だろうね、一度使った方法が通じる相手だとは思わないよ」

 

 どれだけの間、あなたに挑み続けてきたと思っているんだ。ずっと戦い続けてきた私には、それくらいのことは分かっている。

 

「だから、私も奥の手を使うよ!」

 

――ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!!!!!!!

 

「なっ!? なんだその、膨大なエネルギーは!」

 

 驚愕の表情で、グレートレッドは私に向かって叫んだ。

 私の身体から、膨大とも莫大とも比較にならないほどのエネルギーが発生している。あまりにも強大すぎるエネルギーの本流は、辺りの空間が震えるほどだ。

 

「私はずっと、あなたと戦い続けてきた。あなたは、私が攻撃を消したと思っていたみたいだけど、それは違う」

 

 そう。私のやっていたことは、攻撃の無効化ではない。

 

「私はずっと、あなたからの攻撃によるエネルギーを蓄えてきたんだよ。それを私の能力で、一つのエネルギーにまとめて使っている」

 

 グレートレッドに向かって手を向ける。すると、私の中に蓄えられたエネルギーが集束し始め、膨張していく。

 

「私の力の絶対値は上がらない。だから、あなたの力を利用させてもらった。このエネルギーは、1億年以上かけて蓄えた私たちの歴史のそのモノだ」

 

 不完全が完成された存在に勝てないのなら、完成された存在の力を使う。ただ、それだけのことだ。

 もう少しで、エネルギーの集束が終わる。オーフィス、それまで持ちこたえて――。

 

「ふ、ふははははははははははははははははははははははははははははははは!!!!!」

 

 巨大な声が、あたりに響き渡る。その声の発生源はグレートレッドだ。

 

「面白い! 面白いぞ、人間! ここまで儂を追い詰めたのは、貴様が初めてだ! だから儂も――

 

 ―――全力で貴様の相手をしよう」

 

 そう言うと、グレートレッドから私の蓄えたエネルギーと同じぐらい膨大なエネルギーが吹き出す。それにより発生した衝撃波により、オーフィスの蛇がすべて消し飛んだ。

 

「まさか、今までずっと手を抜いて戦っていたの!?」

「その通りだ。全力を出すと、下手をすれば次元の狭間が崩壊するからな。だが、今回は貴様の策に敬意を表して、最後の奥の手、全力で貴様の力を打ち砕いてくれる!」

 

 そういうと、グレートレッドは巨大な口を開く。そしてそこには、こちらと同じようにエネルギーの塊が生まれる。

 

――ゴガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!

 

 グレートレッドから巨大なエネルギー弾が放たれる。それと同時に、私の方もエネルギーの集束が完了する。

 

「くっ! いっけええええええええええええええええええええええええええ!!!!!」

 

――ズガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!!!

 

 私の放った砲撃と、グレートレッドのエネルギー弾が衝突し、その衝撃は広大な次元の狭間全体を揺らした。

 

 

 

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