小さな二人は共に行く(リメイク)   作:麦わらぼうし

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最初の方は日記みたいに日付がよく飛びます。それとキャラ崩壊するかもしれません。


求めたものと望んでいたもの

「ん~、今日もいい天気」

 

 オーフィスが次元の狭間に帰った翌日の朝。私は久しぶりにベッドの上で身体を伸ばす。今までベッドの方はオーフィスが使っていたから、こっちで起きるのは随分と久しぶりだ。

 

「と、朝ごはんの支度をしなくちゃ」

 

 私は、いつものように顔を洗って歯を磨くと、朝食を作り出す。そして、次々と料理を完成させて、テーブルの上に並べていく。

 

「よし、今日もいい出来。あとはオーフィスを起こして――」

 

 と、そこまで言ったところで気付いた。

 そうだった。オーフィスは次元の狭間に帰ったんだった。こんなに、大量に作る必要なかった。

 

「どうしよう。私ひとりじゃ食べきれないよ……」

 

 仕方ないので近所の人にお裾分けした。なんか「偉いね~」って子ども扱いされて頭をなでられた。納得いかない!

 

 

 

 

 

 オーフィスが次元の狭間に帰ってから二日経った。部屋の掃除をしていると、庭のドラゴンアップルの木が目に入る。

 

「木の実、減ってないなぁ。当たり前だけど」

 

 いつもオーフィスが大量に採るから、その度に私の能力で補充していたな~。そういえば、一度オーフィスが木の実を取ろうとして幹に激突して木が折れたことがあったっけ?

 

 それからだったな~、力をセーブすることを覚えさせるようになったのは。

 

「ドラゴンアップルをお茶請けに、お茶でもしようかな?」

 

 

 

 

 

 暇だ、やることがない。

 いや、修行はちゃんと続けているんだけど。休憩時間がなんか物足りないんだよね。なんでなんだろう?

 

「そういえば八坂さん、暇があれば遊びに来てくれって言ってたよね?」

 

 私は、以前に八坂さんからもらったお札を見ながら呟く。

 京都か。観光も兼ねて行ってもいいかもしれない。

 

「なら、いくつか準備しないとね。まずは買い物」

 

 そういって私は近くのスーパーに出かける。すると、道に途中で路上販売している商品が目に入った。

 

「あっ、これ結構いい」

 

 それはブレスレットだ。あまり派手ではなく、五芒星の飾りが付いた感じのいいデザインだ。オーフィスが居なくなって食費が浮いたし、少し無駄遣いしてもいいかな。

 

「すみません。これ、ください」

「ん? 悪いねぇ、そのブレスレットはセット商品なんだ」

「あっ、そうなの? だったら、セットでいいからください」

「そうかい、毎度あり」

 

 そういって私はブレスレットを受け取った。さらに、もう一つブレスレットが取り出されて、私はそれを受け取る。

 そのブレスレットには、五芒星の代わりに二つの小さな丸が横に並んでついていた。私にはそれが、無限を表す『∞』の記号に見えた。

 

「オーフィス……」

 

 

 

 

 

 京都にやって来た。事前に連絡をして迎えにきた妖怪に付いていくと、八坂さんに会った。娘の九重を見せてもらった、とても可愛い赤ちゃん狐だった。

 そのあと京都を観光した。

 京都と言えば木刀! だけど、なんだか手に馴染まない。その近くにあった小太刀が目に入り、二つほど購入した。

 夜には歓迎のためにと宴が開かれた。大量の食事が用意されたけど。あの程度、オーフィスが居たらすぐに食べきってしまうだろう。

 

 

 

 

 

 京都に来て二日目。八坂さんに呼ばれた。

 どうにも私には、仙術とかいうものの資質があるらしく。やってみないかと言われた。新しい技術を学べるのは願ったり叶ったりだ。当然お願いして、修行を始めた。

 だがどうも、私には仙術の才能はないらしい。しかし、才能はなくても一年も修行すればできるようになるらしい。グレートレッドも強くなっているんだ、私も強くならないといけない。手札を増やすために、仙術を覚えよう。

 

 

 

 

 

 京都に来てから三日目。二泊三日の予定なので、今日で家に帰る。八坂さんに、一緒に暮らさないかと呼び止められたけど、あの家にも愛着があるからと断った。

 仙術は、一年間の修行メニューを渡された。本来なら一人で修行するのは危険らしいんだけど、どうも私の制御する力と仙術は相性が良いらしく。暴走しても自力で止められるらしい。

 それで家に帰ったんだけど、家の中がいつもより広くて、寂しく感じた。

 

 

 

 

 

 オーフィスが次元の狭間に帰ってから一週間。朝起きた私は、妙な気配を感じ取った。悪魔の気配だ。八坂さんに札で連絡すると、その様な者の侵入を許可した覚えはないと言っていた。

 何でも以前から、悪魔が日本に侵入して勝手に領土主張をしているらしい。おまけに、自分たちが領主だから保護してやると、妖怪の乱獲まで行っているようだ。ひどい……。

 私の所も結界を張っていると、目を付けられるから気を付けろと言われた。生憎、オーフィスが次元の狭間に帰ったから、結界はもう無いんだよね。

 それに私自身は能力を持っているだけで、普通の人間と気配は変わらないし。目を付けられるなんてことはないと思うけど。

 そんなことを思っているときだった。

 

――ピンポーン

 

 インターホンが鳴った。しかし、家の前に誰かがいるような気配が感じられない。人間でないのは確かだ。私はまさかと思い、玄関の扉を開けた。

 

 

 

 

 

 

Sideオーフィス

 故郷を取り戻した。久しぶりにドラゴンの姿に戻る。静寂な世界。さっそく眠りにつく。ここは良い。何もない。静かで、我の眠りを妨げるものはない。永遠にここで眠り続けよう。

 

 

 

 

 

 我は目を覚ました。夢を見ていた。絆と一緒に海で修行していた時の夢だ。続きが見たい。我は再び眠りについた。

 

 

 

 

 

 また目を覚ました。今度は、絆と一緒にドラゴンとは違う大きめの生き物を狩って食べた夢。確か、恐竜という名前の生き物だ。あれは美味しかった。特に庭のドラゴンアップルで和えた物は最高だった。また、食べたい。

 

 

 

 

 

 今日も目が覚めた。おかしい、どうにも一日置きで目が覚めてしまう。おそらく、絆の家で、そういう生活を続けていたせいだろう。

 眠くない。起きているこの空間は、なんだか退屈だ。どうしようと考えて、絆との修行を思い出し眠くなるまで修行した。結局この日は、一日中修行をした。

 

 

 

 

 

 目を覚ました。しかし、今日はいつもと違い。ここに近づく者の気配を感じて目を覚ました。最初はグレートレッドかと思ったが、近づいてきたのは悪魔の気配だった。

 少しすると、大して強くもない魔王と名乗る悪魔が三人来た。偽物の魔王を倒して、自分たちが魔王である本来の世界を取り戻したいらしい。その世界の神にしてやるから力を貸してくれ、と言ってきた。

 

 興味ない。

 

 以前の我なら、グレートレッドを倒すことを条件に彼らに手を貸したかもしれない。でも、我の求めたものは手に入った。我は申し出を断り、再び眠ろうとする。

 しかし、しつこく言い寄ってくる。うるさくて眠れない。我はブレスを放って悪魔を追い払った。

 我が望むものは、この次元の狭間のみ。ここが我の居場所。ここだけが、我の存在を認めてくれる唯一の居場所。ここ以外の場所なんて……場所なんて……。

 

 

 ……………。

 

 

 眠ろう……。

 

 

 

 

 

 今日はなんだか調子が悪い。起きてからずっとモヤモヤする。絆が言っていた、病気の時は安静にして、ゆっくり眠るのがいいと。眠れば、このモヤモヤは消える? 

 今日は修行をしないで、一日中眠った。

 

 

 

 

 

 目を覚ました。モヤモヤは消えていない。どうすれば、このモヤモヤは消える? 絆が教えてくれたことを思い出そうとする。すると、モヤモヤが少し弱くなった。

 絆のことを考えれば、このモヤモヤは消える? なぜ? 

 今日は一日中、絆のことを考えていた。

 

 

 

 

 

 モヤモヤが消えない。昨日は絆のことを考えれば弱くなったのに。今日は考えるほどモヤモヤが強くなる。

 

 絆の顔を思い出すとモヤモヤする。

 

 絆の声を思い出すとモヤモヤする。

 

 絆と一緒に過ごしていたことを思い出すとモヤモヤする。

 

 でも、絆のことを考えるのが止められない。寝ていても、起きていても、絆のことが頭から離れない。

 

 絆……きずな…。

 

 

 

 

 

 

Side絆

 

――ガチャッ

 

 私は玄関の扉を開けた。悪魔だった時のために、いつでも能力が使えるように警戒して。

 

「絆!」

 

――バッ

 

「えっ?」

 

 だが、扉を開けた途端、聞き覚えのある声が私の名前を呼んで飛びついてきた。私は受け止めると、その人物が居ることに驚きの声が漏れる。

 

「オーフィス?」

「絆、助けて……」

 

 その人物は、オーフィスだった。私に抱き着いたまま、震えて離れようとしない。

 

「ど、どうしたの?」

「我、変、絆のこと考えると、モヤモヤして、何が何だか、分からない」

 

 相変わらずの無表情、しかし声が震えている。最強の存在が、何かに怯えて私に縋るように、強く抱きついてくる。

 

「ちょっ!? オーフィス、力緩めて! 私死んじゃう、死んじゃうから!」

 

 しかし、オーフィスは力を緩めてくれない。それどころか強くなっている気がする。

 

「(くっ、こうなったら能力を使って!)」

 

 私はオーフィスから掛かる圧力の大部分を外に逃がして、子供が抱き着いているぐらいの力にする。

 

「とりあえず、家に上がろう?」

「ん」

 

 私はオーフィスを抱きかかえて、家の中に戻った。

 

 

 

「ゆっくりでいいから、何があったのか教えてくれる?」

 

 未だに抱き着いているオーフィスの背中を軽く叩きながら、私はできるだけ優しい口調で問いかける。するとオーフィスは、ポツリポツリと小さな声で話し出した。

 

「我、故郷取り戻した、そこで眠っていた」

「うん」

「そしたら、少し前、起きたら変なモヤモヤを感じた」

「モヤモヤ?」

 

 煙っぽかった、ってことじゃないよね?

 

「モヤモヤ消すため、絆に教えられたこと、思い出そうとした」

「うん」

「それで絆のこと思い出したら、少しモヤモヤ消えた」

「えっ? 私を思い出したら?」

 

 オーフィスは、私に顔を埋めてくる。私を思い出したら消えた? なんで?

 

「でも、今日、絆のことを思い出すと、逆にモヤモヤ、強くなった」

 

 また、オーフィスの掴む力が強くなる。

 

「我、どうしていいか、分からない……」

 

 ……………。

 えっと、これはどういうことなんだろう? なんか病気みたいだけど、私はそんな病気知らない。ドラゴン特有の病気?

 

「オーフィス。今もまだ、モヤモヤする?」

「しない、でも、絆から離れそうになると、またモヤモヤしそうになる」

 

 私に抱き着いたまま震えるオーフィス。知らないもの、未知に対する恐怖。今の彼女は、その恐怖に押し潰されそうになっている。だから、一番付き合いの長い私の所に助けを求めて来たんだろう。

 

「……………」

 

 私は、優しくオーフィスを抱き包んであげる。彼女を守るように、彼女を傷つけないように。

 

「きず……な…?」

 

 するとオーフィスの震えが止まった。

 

「オーフィスが何に怖がっているのかは分からないけど、そんなに怖いなら私の傍に居て。私が守ってあげるから」

「あっ」

 

 私は抱きかかえながら、オーフィスの頭を撫でた。

 

「それにホントいうとね。私、オーフィスが帰ってから、ちょっと寂しかったんだ」

「寂しい? 絆が、なぜ?」

「だって、ずっと一緒に暮らしていた家族が突然いなくなったんだよ。寂しいに決まってるよ」

「家族が居なくなると、寂しい? 我、絆の家族?」

「えっ……もしかして家族って思ってたの、私だけ?」

 

 だとしたら悲しい、そして恥ずかしい! 自分だけ家族が居なくなって寂しいと思っていたなんて……。

 

「……そんなこと、ない」

 

 オーフィスは少し離れて、首を横に振る。

 

「絆、我の家族」

 

 その時のオーフィスの顔は、私が知っている、いつものオーフィスだった。

 

「うん。あと、私がお兄ちゃんね?」

「我の方が、年上、絆は、妹」

「ちょっと!? 妹って何!? 私、男だからね!?」

「知ってる、でも、妹の方が、合ってる」

「うわーん!」

 

 調子もどうやら元に戻ったみたい。でも、また病気が悪化するかもしれないから、今日一日は大人しくさせておこう。

 

「あっ。そういえば、渡したい物があったんだ」

「なに?」

「えっと――」

 

 私は、引き出しを探して目的の物を取り出す。

 

「あったよ。はい、これ」

「?」

 

 私はオーフィスに、ある物を渡す。それは、この前衝動買いした『∞』の飾りが付いているブレスレットだ。

 私は、自分の五芒星の飾りが付いたブレスレットを右腕につけてオーフィスに見せる。

 

「お揃いだね」

「?」

 

 オーフィスは、よく分からないといった風に首を傾げて、受け取ったブレスレットを私の見よう見まねで自身の右腕に巻きつけた。

 

「どう?」

「ん、気に入った」

「そっか、良かった」

 

 オーフィスは腕を動かして、様々な方向からブレスレットを眺める。気に入ってもらえたようで良かったよ。

 

「あっ。そういえば朝ごはん、まだだよね? 今から作るから、一緒に食べよう?」

「ん、食べる、――あっ、忘れてた」

 

 キッチンに向かおうとすると、オーフィスが立ち止まってそんなことを言う。

 忘れてた? 次元の狭間に、何か忘れ物でもしたのかな?

 

 

「ただいま、絆」

 

 

 オーフィスが言ったとき、私は目を見開いた。あの無表情なオーフィスが、少しだけ、微笑んだのだ。だから私は、それに対して――

 

 

「おかえり、オーフィス」

 

 

 最高の笑顔で返事した。

 

 

 

 

 ちなみにこの後、オーフィスは一日中、私から離れようとしなかった。お風呂や寝るときまで、一緒だった。トイレにまでついて来そうになった時は、少し焦ったよ……。

 

 




 はい、ここまで読んでくれた方でhappy endが好みの方は、ここで読むことを止めることを推奨します。この作品のピークは、間違いなくここです。
 決してbad endにするつもりはありませんが、ここから先の原作編ではあまり彼らは活躍しません。彼らが居たことで、原作にどのような影響が起きたのかを書くつもりです(数名、関係なく変化しているキャラもいますが)。
 もちろん基本的に彼らの視点で進めますが、めでたしめでたしで終わりたい方は、ここで読むのを止めましょう。
 ちなみに原作編は、もう数話挟んでから始まります。
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