遊戯王5D's 〜彷徨う『デュエル屋』〜   作:GARUS

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『デュエル屋』と元プロ 前編

「はぁっ! はぁっ! はぁっ!」

 

 浅く、短く、荒い呼吸。

 心臓の鼓動が激しく胸を打ちつけ痛みが絶えない。地面を蹴って足を一歩一歩踏み出す度に風を切る体に冷たい空気が、降り注ぐ雹のような雨が、容赦なく突き刺さる。黒と白の絵の具を混ぜたような濁った空の下、傘をさしている余裕なんて無い。

 初めてきた場所。シティの外れにある廃れた建物群の間を、俺はひたすら駆けていた。

 

————————俺は……なんで走っているんだ?

 

「いたぞぉぉ!!」

 

「っ!」

 

 右の曲がり角に入ろうと走りながら僅かに首を捻り、背後で声のした方向に目をやる。視界に映ったのは黒いスーツに黒のサングラスの男。サングラスのせいで視線がどこを向いているか確認する事は出来ないが、俺を追ってきていると言う事は空気で伝わってくる。

 明らかに堅気の人間ではない。両手でしっかりと握りしめられた黒光りする重金属がそれを決定づけた。

 

「っ!?」

 

 撃たれる!

 そんな言葉が頭を通り過ぎようとした。曲がり角に入って、サングラスの男が視界から途切れようとした時だった。

 そして。

 その引き金が引き絞られた。

 

『マスター!!』

 

 上から叫びのような声が聞こえるのと乾いた音が建物の間に響くのは同時だった。

 

「うっ、く……ぁ……はぁっ! はぁっ!」

 

 直後に壁に突き刺さる小さな鉄の塊。

 それを尻目に走り続ける。致命傷は免れた。足はさっきまでと変わらぬペースで水溜りを蹴散らしながら体を突き動かす。

 だが、外れた訳でもない。あの時、ちょうど戻ってきたサイレント・マジシャンの咄嗟に出した障壁は、確かに致命傷に繋がるルートは完全に塞いでいたようだ。しかし、あの銃弾はその軌道からわずかに逸れていた。結果、障壁の端を擦り軌道がさらに逸れて、左の脇腹の肉を数ミリ程持っていかれる事になった。それでも体に風穴が空かなかっただけ僥倖と言えよう。

 

————————何故忘れていたのだろう? 追われていた事なんて

 

 ひたすら細い壁面のコンクリートがボロボロになった建物の間の道を走る。

 次の曲がり角は確か右が行き止まりだったはず。左に行けばまだ道は続く。

 

『マスター!! 次の曲がり角を左に! その次を右です!』

 

「…………」

 

 建物の上を飛びながらサイレント・マジシャンがナビゲートをする。逃げる算段としてはサイレント・マジシャンが転移術式を人気の無いところで組み上げ、俺はそこに逃げ込むことになっている。つまり、サイレント・マジシャンがナビゲートできる状態と言う事は、その手筈は整ったと言う事になる。

 

————————何かが頭の中で引っかかっている。だが、考える余裕は無い

 

 背後で地面の水を蹴る足音はしない。追っ手との距離はまだあるようだ。時折、遠くの方で怒声や銃声が鳴り響く。まったく、組織同士の抗争に巻き込まれるとは、我ながらツイて無い。いや、そもそもの事の発端が俺にある以上は他人事では無いか。

 先の方に3本の分かれ道が見える。その3つに分かれた道の左に行けば転移地点の……

 

『この先を左に進めば転移地点です!』

 

「っ!?」

 

————————待て。おかしい。今のは明らかにおかしい。

 

————————サイレント・マジシャンの指示の前に、なぜ転移地点がわかった?

 

————————初めて来るはずの場所の道をどうして知っている?

 

『マスター! あそこです!』

 

「っ!」

 

 左の道を進むと、杖を象った魔術印が施された光り輝く魔方陣が見える。走る体は羽毛のように軽く、雨風の肌に突き刺さるような冷たさも脇腹に出来た傷の痛みも気が付けば感じなかった。一歩一歩踏み出すごとに周りを囲んでいた寂れた建物の壁面、舗装された罅割れだらけの道路、空を覆う灰色に染まった雨雲の色彩はぼやけていき、白い光に変わっていく。まるで白い光のトンネルを走っているように感じた。変わっていく周りの景色の中、目指す魔方陣だけはその形を変質させる事は無い。そして、俺の足が魔方陣の中に入った瞬間、視界は白で埋め尽くされた。

 

————————なんだ……そういうことか

 

 

 

————————

——————

————

 

「はぁ……はぁ……はぁ……」

 

 意識がある事を自覚してから現実の感覚を取り戻すのにしばらく時間がかかった。ぼんやりとした視覚は僅かばかりに差し込む陽の光を吸い込んだ天井と、プラスチックカバーで覆われたまだぐっすりと眠ったままの丸い蛍光灯の識別を時間をかけて行う。同時進行で聴覚は周りの音を正確に聞き分けていった。一秒ごとに針を進める目覚まし時計の音、窓に吹き付ける風の声、いつもより早く打ちつける心臓の鼓動……そして、乱れた呼吸の音。気が付けば体中から吹き出た汗がパジャマだけでなくベッド、掛け布団までグショグショに濡らしていた。

 

『大丈夫ですか、マスター? 随分うなされていたみたいですが』

 

 心配そうに顔を覗き込むサイレント・マジシャン。嫌な夢を見た。彼女の言う通り、どうやらかなりうなされていたようだ。12月半ばの朝方だと言うのに、掛け布団はお聞くめくれ上がり、足は布団からはみ出ていた。

 

「……大丈夫だ」

 

『そうですか……』

 

 枕元の目覚まし時計が示す時刻は5時57分。普段の起床時刻よりも1時間以上も早い。このままもう一寝入りぐらいは出来そうな時間だ。

 だがこのびしょびしょに濡れたパジャマとベッドでは、気持ちよく寝る事は叶わないだろう。諦めて起床する事にした。

 

『もう起きるんですか?』

 

「あぁ」

 

 ベッドから降りると床は霜を敷き詰めたかのように冷たかった。その感覚が寝ぼけていた意識を完全に覚醒させる。

 我ながら何も無い部屋だと思う。流行しているアイドルのポスターも無ければ、タレントの雑誌も無い。お気に入りのアーティストもいないのだから、CDが置いてあるなんて事もある訳が無いし、世界中で無数に刷られている小説やマンガに心魅かれる事も無かった以上、小説やマンガが本棚に収まる事も無い。あるのは、スカスカの本棚の端に小ぢんまりと置いてあるデュエルアカデミアの教材と、広々としたデスクの中央に置かれたノート型のPC、そしてここにある物で一番長い付き合いとなる机の下のジュラルミンケースに収められたカード。クローゼットを開ければハンガーにかけられた制服と3着ある柄違いのネルシャツ、1着のダウンジャケットが顔を覗かせる。当然クローゼットのハンガー掛けはスカスカだ。足下には肌着が入ったカゴと夏服や使わないものが入った透明のプラスチック衣装ケースが並んでいて、ケースの上にはカーディガンとセーターが1着ずつ畳んである。

 

「………………?」

 

 漠然と自分に割り当てられた部屋の様子を眺めていたとき、ふとその衣装ケースに目が止まった。

 

『……マスター?』

 

「……なんでもない」

 

 いや……気のせいだろう。

 思い込みを現実にある物だと知覚が認識し、視覚に影響を及ぼすなんて言う話はよくある話だ。

 ハンガー掛けにかかっている制服を取り出すと肌着を漁る。ヒートテック素材の白の肌着を見繕うと、ブラインドにかけられたハンガーに吊るさったバスタオルを取り部屋を出る。廊下の空気は人の寝るときに発せられる熱ですら温められておらず、寝ていて火照った体も濡れたパジャマを通して触れる空気に熱を奪われていく。

 廊下を包むのは静寂。この時間は同居人の狭霧すら目を覚ましていない。

 

『シャワーですか?』

 

「そうだ」

 

 思えばここに来て初めて浴びる朝のシャワーだった。

 

 

 

————————

——————

————

 

 肌を伝う人肌に温められた水滴。すっかり冷えてしまった体を表面から芯にかけて徐々に温めていく。髪を伝い流れ落ちる温水は床にぶつかり、風呂場に水が砕ける音を絶え間なく響かせる。

 

「……………………」

 

 随分昔の夢を見た。いや、随分と昔のように感じるだけで、実際はまだ1年も経ってないのか。あれは依頼すれば必ず勝利を持ち帰るデュエル屋、“死神の魔導師”と言う異名が裏側の世界で知れ渡った頃だと思う。狙われた理由というのも結局のところそれだった。“依頼すれば必ず勝利を持ち帰る”、言い換えれば“相手に必ず敗北をもたらす”と言う事になる。依頼できれば勝利をもたらすが、敵に回ったら必ず敗北が訪れる。この諸刃の剣のような不確実な存在を抹消しようと言う動きが働いたのだ。

 

「ふぅ…………」

 

 首筋に当たるシャワーがじんわりと体を温めていくのを感じる。床に落ちた水滴が弾け、弾けた水滴が大きな水滴と合流し、やがてそれが流れて排水溝に消えていく。ぼんやりとそれを眺めていると腰掛けた風呂場の椅子と体が一体になってしまったような気がした。

 あの顛末はと言っても組織等のいざこざはなんて事の無い日常へと収束しただけだ。俺を消す側に回った組織と守る側に回った組織は俺が離脱した後、いくらかの衝突を経て和解に持ち込まれたらしい。すんなりこの結末に持ち込まれたのは偏に俺を消す側に回ったのがマイノリティだった事からだろう。それはバックに大きな組織がついていたとも言える。おかげで今では組織絡みであれほどの規模で命を狙われる事は無くなった。だがその後、俺の日常が大きく変化させる出会いがあったのは別の話だ。

 

 キュッ

 

 金属同士が蛇口を捻るとシャワーから絶え間なく流れ出ていた温水が止まった。

 いったいどれぐらいシャワーを浴びていたのだろうか。少なくとも体は十分過ぎる程に温まった。体から立ち上る湯気がはっきりと見える。このまま立ち上がったら立ちくらみがしそうだ。すこし体を冷ました方が良いかも知れない。

 

「はぁ…………」

 

 サイレント・マジシャンが側にいる生活の中、本当の意味で一人になる空間は風呂場とトイレぐらいなものだ。そして、そんなときに一人物思いに耽っているといつも頭に浮かぶ事がある。

 

“いったいこの生活はいつまで続くのか”

 

 その事を考える度に灰色に濁った深い霧に閉じ込められたような感覚に陥る。いくら手で掻き分けようとも、纏わり付いたそれは一向に晴れる事は無く先が見える事は無い。一歩先に足を出そうにもそこに道があるのかさえ分からない。もしかしたら一歩先には道がなく断崖絶壁が待ち受けているのかも知れない。けれど俺はその一歩を踏み出し続けている。たとえその先に道がなくても、どこに通じているか分からなくてもそうし続けなければならない。

 

「………………」

 

 火照り過ぎていた体も程よく冷めた。そろそろ上がろう。

 風呂場から上がると洗面所の鏡が白く曇り始める。外の冷えきった空気が今では心地よく感じられた。タオル掛けにかかっている紺色のバスタオルを手に取って、髪から適当に拭く。

 今日は時間をかけたレポートを提出して、放課後は依頼だったか。立て続けに依頼をこなしてからはレポートに専念していたおかげで久々の依頼でのデュエルだ。もちろんだからと言ってデッキの調整は怠っていない。新しいカード達が一体どんな動きをするのかが気になるところだ。

 体を余すところなく拭き曇っていた鏡で体に拭き残しが無いかの確認を終えると、バスタオルをタオル掛けに戻す。少し体を冷ましていたおかげで後から汗が滲み出るような事もなく心地の良い朝のシャワーだったと思う。

 

『マスター!』

 

 焦りを含んだサイレント・マジシャンの声が扉越しに聞こえる。声の具合からしてかなり緊急を要することが伝わってくる。だが家の中で焦るような事など特に思いつかなかった。まして自分は今シャワーを浴びたばかりなのだ。その事情を知っているはずのサイレント・マジシャンがそれでも扉越しで声をかけてくると言うのは余程の事態なのだろう。

 “どうした?”と口を開きかけた時、そのときにはもう遅く一気に事は動き出す。

 

『大変です! 狭霧さんが……』

 

 ガチャ

 

『待っ………………』

 

「………………えっ?」

 

「………………?」

 

 そのときサイレント・マジシャンは狭霧を止めようと手を伸ばして、固まった。

 そのとき狭霧は眠たそうに目を擦りながら扉を開けて、固まった。

 そしてそのとき俺はパンツを取る途中で手を虚空に伸ばし、固まっていた。

 

「「『…………………』」」

 

 それぞれが言葉を発する事を忘れていた。

 分かったのはそのとき三者三様に時が止まっていたと言う事だけだ。それから止まっていた時間は固まった時間の分だけ後の時の間隔を縮めるかのように動き出す。

 

 バタンッ!

 

 扉を閉めた勢いで掛けてあったバスタオルが風で揺れた。

 

「ご、ごめんなさいっ!」

 

 扉越しでそれだけ言うとドタバタしながら狭霧の気配が消える。どうやら自室に戻ったようだ。男の裸に対してこの反応と言うだけで、彼女の男性との今までの関わりについての真実が伺えると言う事については何も言わないでおこう。

 

『…………な、なにも見てませんから!』

 

 扉越しでテンパったことを言うのはサイレント・マジシャン。声の様子から察するに両手で顔を覆いながら耳まで真っ赤にしているのだろう。扉が開いて目をしっかり見開いていたヤツが“何も見てない”とは、ここまで分かりやすい嘘も珍しい。

 

「はぁ……」

 

 パンツを穿きながら思った。

 普段しない事をするのは控えよう。

 

 

 

————————

——————

————

 

 どうしようもない雨が降っている。ただでさえ冬の寒さで指先が冷えきっていると言うのに、それに追い討ちをかけるような雨。傘を持つ手の感覚が無くなりそうだ。本当にどうしようもない。

ビニール傘をさした髑髏仮面の全身ローブで見に包んだ人間と言うのは我ながらシュールな姿になっていると思うが、どうやら自分の感性は正常なようだ。裏通りの住人ですら1度は奇妙なものを見るような目でこの姿に目を留める。

 今日の依頼の場所は何時ぞやの地下デュエル場。人通りの少ないビルの間の細道を進むと地下への入り口にあの時と同じように黒いスーツの男が立っていた。パスの確認を済ませ地下へ降りていくと扉の開けてすぐのところに依頼主である恰幅の良いおっさんが立っていた。

 

「よう、来たか」

 

 だが以前あった時よりも覇気は無くどこかやつれているような雰囲気を感じる。そもそも俺を迎えるためにわざわざここで待っていたと言うのはおかしい。

 

「……それが依頼ですから」

 

「……くくっ、そうだな。それはそうだ」

 

 俺の返答に少し満足したような表情を浮かべ、おもむろに懐に手を入れる。襟元に小さく刺繍のされた皺一つない黒の背広の内ポケットから出てきたのは一本の葉巻とマッチ箱。慣れた動作でマッチを擦ると葉巻に火をつける。その煙は嗅いだ事の無いフルーツのような匂いがした。

 

「報酬は全額前払いとは随分と信用を頂けてなによりです。ご期待には必ず応えます」

 

「……あぁ、別にそう言うつもりで全額前払いで報酬を出した訳じゃねぇんだ」

 

「…………それはどういう意味です?」

 

「今回の依頼はお前さんが参加してくれるだけで良かったんだ。今回はここのデュエルでの客引きの目玉の対戦カードとして呼ばしてもらっただけ。元プロのデュエリストと“死神の魔導師”、表と裏の世界の実力者の対戦となれば客の注目は十分集まる」

 

 プロと言う言葉を聞いて真っ先に頭に浮かんだのはキングであるジャック・アトラスだった。引き分けに持ち込まれた苦々しい記憶が蘇る。元プロと言う事はアイツが戦っていた舞台に立っていたと言う事になる。どうやら負けられない理由がまた増えたようだ。

 一旦、葉巻を吹かした後、“まぁ”とその言葉は続く。

 

「お前さんだったら乗り越えるんだろうよ」

 

「……それは信用と受け取っても?」

 

「直感だ」

 

「……………………」

 

 ニヤリと笑う、ただそれだけ。後退を始めている前髪や額に刻まれた深い皺、服越しからでも分かるくらいに飛び出た腹などはおっさんでしかないはずなのに、その表情からはその凄みを感じさせる。

 

「ふっ、まぁ無事今日を乗り越えることだ(・・・・・・・・・・・・・)

 

 それだけ言うとおっさんは扉を潜り地下から出て行った。外の空気でも吸いに行ったのだろう。そう適当に当たりを付けて用意された控え室に足を運ぶ事にした。

 控え室は前に入ったおっさんの部屋と比べれば豪勢さは劣るものの、テーブルやソファーなど寛ぐには事足りる家具が取り揃えられていた。おそらく依頼関係の荷物を置いてある自分の隠れ家のマンションの一室よりも快適な空間だろう。と、ここで自分の隠れ家の散らかりようを思い出して少し嫌気がさした。今は雜賀に依頼した資料で部屋の中が荒れているのだ。

 手提げの鞄をテーブルの上に置くとソファーの上に腰を下ろす。ソファーは表面の皮が所々剥げかかっていたが、座り心地はそこそこ良かった。

 

『聞いても良いですか?』

 

「ん? あぁ」

 

『どうして配布された資料を返さなかったのですか?』

 

「あぁ……そのことか」

 

 アカデミアでの事を少し思い出す。と言ってもほとんどの授業を寝て過ごしていたら、いつものように放課後がやってきたわけで、記憶に残っている事と言えば本当にそのレポートを無事提出できたことぐらいだ。丸々3日も割いたおかげで20枚を超える量となったレポートを見て担任も満足そうだったのが印象的だった。

 サイレント・マジシャンが聞いているのはその時の事だ。担任からその資料として借りていたジャック・アトラスの防衛戦が記録されているDVDディスクを返却しなかったのだ。そのとき“忘れてしてしまった”と嘘までついて。

 

「ちょっと気になる事があってな」

 

『気になる事……?』

 

「可能性としてはどっこいどっこいってところだが、もしかしたらこっちの切り札になるかもしれない。だから手札として取っておいてるんだ。コストが担任の軽いお小言なら安いもんだ」

 

『…………?』

 

 小首をかしげるサイレント・マジシャン。そして俺の言葉の意味を考えるようにしばらく左手を顎に当てて俯いていた。その真剣そうに考えているところ少し申し訳ない気もしたが、思考を遮るように声をかける。

 

「あぁ、あと頼みたい事がある」

 

『何でしょうか?』

 

「これからのことだが……」

 

 そうしてサイレント・マジシャンに伝えるべき事を伝えきると、ちょうどいいタイミングで控え室にノックの音が鳴り響く。どうやら出番が回ってきたようだ。

 

 

 

————————

——————

————

 

 罪を犯したわけでもないのに牢獄に入るとは妙な気分だとか、前にここに入った時も思った気がする。おっさんの目論見通り牢の周りを囲む客席は満員で、中には立ち見をする人までいた。時折聞こえる下品な笑い声や野次が飛び交うあたり客層はこの前よりも粗暴な人間が多いようだ。人の熱気と酒の匂いが籠った地下のデュエル場の居心地は最悪で、一刻も早くこの場から出て行きたいと言う衝動に駆られる。

 

「…………」

 

 牢の扉が開き新たに人が入ってきた。どうやら今日の対戦相手の話に聞いた元プロのデュエリストのようだ。薄汚れた青髪を頭頂部やもみあげ、背面のみ短めに整え、頭頂部を囲む伸ばした髪は棘の鋭く固められている。その様子はまるで王冠を被っているようにも見える。身長は高く、ガタイも良く、顔もゴツいため見て呉れはものすごく厳つい。厳つさで言ったらセキュリティのあのおっさんと良い勝負だ。

 

「お前が無敗の伝説を持つ“死神の魔導師”か」

 

「……世間ではそう呼ばれている」

 

「そうか……ならお前を倒せば或は昔の名声が取り戻せるかもしれねぇ。くくく、そうしたらいつものマズい酒も少しは美味く感じれそうだ」

 

「………………」

 

 元プロと言っても落ちればとことんまで落ちるようだ。こんな違法デュエル場でのデュエルで過去の名声にしがみ付き、酒に溺れてしまっている姿はどうしようもなく惨めに映った。

 

【それでは本日の最後にしてメインデュエル、元プロデュエリスト“氷室仁”と絶対勝利のデュエル屋“死神の魔導師”のデュエルを執り行ないます! ……なーんて堅苦しい前口上を言っちまったがテメェら!! 今日最後の祭りだ! ド派手に盛り上がっていけやゴォラァァァ!!!】

 

 スピーカーで地下全体に響くマイクの声。

 どうやら今日は司会まで用意されているようだが、客層に合わせた荒々しい進行だ。観客もそれに応え、まるで有名アーティストのライブ会場のような盛り上がりをみせる。野太い雄叫びに囲まれ、サイレント・マジシャンは顔を少ししかめ耳を塞いでいた。

 その雄叫びを皮切りに互いにデュエルディスクを起動させる。オートシャッフルによって切られたデッキからいつものように5枚の手札を抜き取る。

 

「デュエル!」

 

「デュエル」

 

 使うのは初めての新型のデッキのお披露目だ。果たしてどんな動きを見せてくれるのか……

 

「……っ!?」

 

『…………マスター? どうかなさい……っ!?』

 

 なんだ……これは……?

 思わず自分の目を疑う。だが、何度瞬きをしようとも、その手札カードが変わる事は無かった。婉曲な表現を使わずにこの手札を表現するなら、“凄惨な事故”。この言葉程、今の状況に適した言葉は無い。

 

「俺のターン! ドロー!」

 

 先攻は向こう。こちらの状況などお構いなしにターンを進行される。正直今すぐ手札をデッキに戻してカードを引き直したい。それが無理なら後は相手の手札も盛大に事故っている事を祈るしか無い。

 

「『トリオンの蟲惑魔』を召喚!」

 

 フィールドに現れたのは煤けた白髪の少女。頭に茶色の角を生やしている事を除けば、どこにでも居そうな可愛らしい女の子のように見える。だがよく見れば背中から伸びたツタのようなものが地面に突き刺さっている。まだその姿は現れてないが、そこから先に何が潜んでいるのか俺は知っている。

 巨大なアリジゴクだ。

 可愛い容姿の少女を疑似餌に獲物をおびき寄せ、頭上に近づいた獲物を地面に引きずり込む捕食者。それが『トリオンの蟲惑魔』の正体だ。

 

 

トリオンの蟲惑魔

ATK1600  DEF1200

 

 

 このカードだけでは何デッキなのかまだよくわからないが状況としては良くない。このカードには召喚の成功時に発動する効果、こいつが厄介だ。

 

【氷室が最初に出したのは何やら可愛らしい女の子だぁぁ! その姿はまさにむさ苦しいこの豚箱に咲く一輪の花! おい野郎共ッ! 一応御夫人方も見ていらっしゃるんだ! 欲情して脱ぎだすのは良いが、全裸は自重しやがれぇ!!】

 

『見てません! 何も……何も私は見て無いですから!』

 

 興奮した男共の下品な野次と熱気が非常に煩わしい。サイレント・マジシャンは服を脱ぎだす観客の男共を見まいと手で顔を隠し耳まで真っ赤にしている。その様子は今朝の俺の想像と寸分違わぬものだったということは言うまでもない。

 

「へへっ、可愛らしい姿だからって見くびるなよ。こいつは召喚成功時、デッキから“ホール”または“落とし穴”と名のついた通常罠カード1枚を手札に加える事ができる。俺がデッキから手札に加えるのは『奈落の落とし穴』だ!」

 

 落とし穴シリーズの中でも召喚、反転召喚、特殊召喚にも対応し、モンスターを除外する効果を持つため、最も汎用性の高い『奈落の落とし穴』。たとえそれがある事を分かっていても厄介である事には変わりない。

 

「カードを3枚セットしてターンエンドだ」

 

【どうやら氷室はこのターン守りを堅くしてお嬢ちゃんを守りきる算段のようだ! だがその厳つい顔じゃ騎士様ってのは無理があり過ぎる! 百歩通り越して一万光年程先を譲ってようやく美少女と野獣ってとこだ!! はぁ? 譲らなかったらどうなるって? そんなもん美少女とロリコンHENTAI魔人に決まっ……ひっ!】

 

 無礼極まりない実況を一睨みで黙らせる氷室。

 実況は汚いが司会の言う通り3枚のセットカードは防御札の可能性が高い。3枚と言う枚数から見て、さっき手札に加えていた『奈落の落とし穴』はセットされていると考えた方が良いだろう。そうなるとどのモンスターに『奈落の落とし穴』を踏ませるかが勝負の流れを左右する。

 ……などと思考しながらいつもはデュエルの一手を決めていた。だが、この手札はそれ以前の問題だ。防御札はおろかモンスターも無い。とにかくこのドローでモンスターか防御札を確保しないと、下手をしたら次のターンにゲームエンドなんて言う可能性すらある。嫌な汗が仮面の内を伝う。心拍数が上昇しているが、これはジャック・アトラスとのデュエルの時のような高揚感をもたらすものではない。

 

「……俺のターン、ドロー」

 

 良かった……モンスターだ……

 情けないと思うがこれほどまでに手札にモンスターが来る事を望んだ事は無い。新たなカードを手札に加える。ここまで何をするかを考える必要も無い手札も珍しい。出来る手が1つしかないのだから。

 

「『召喚僧サモンプリースト』を召喚」

 

 『奈落の落とし穴』はもちろん『落とし穴』にすら落ちる事の無い低ステータスモンスター。ここで召喚無効をするカードが来たらもう匙を投げるしか無くなってくる。

 

 

召喚僧サモンプリースト

ATK800  DEF1600

 

 

 俺の前に展開された魔方陣から現れた銀髪の仙人が出現しても氷室がカードを発動する様子は無い。コストでライフを2000ポイント支払う『神の警告』、コストでモンスターを1体リリースする『昇天の角笛』など、召喚を無効にするカードの類いはその分リスクも重い。『召喚僧サモンプリースト』程度の下級モンスターには使ってこない可能性もあるため、あのセットカードが召喚無効の類いのものではないと断じるのは早計だ。

 

「このカードは召喚成功時、守備表示になる。そして手札から魔法カード『テラ・フォーミング』をコストにして『召喚僧サモンプリースト』の効果を発動」

 

 『神の警告』の効果はモンスターを特殊召喚する効果を含むモンスター効果、魔法、トラップも無効にする事が出来る。『神の警告』を発動するなら手札をコストで捨てたこのタイミングの可能性が高い。

 

「………………」

 

「……デッキからレベル4のモンスター1体を特殊召喚する。『終末の騎士』を守備表示で特殊召喚」

 

 コストの魔法カードから魔力を得た『召喚僧サモンプリースト』によって展開された魔方陣から1人の騎士が現れる。ボロボロになった紅のマント、黒く煤けた甲冑は、数多の戦を超え世界の終末まで辿り着いた証。その騎士は片膝を立ててしゃがみ守りの姿勢をとった。

 

 

終末の騎士

ATK1400  DEF1200

 

 

 フィールド魔法を使う事を前提のデッキでは、そのフィールド魔法をデッキに当然複数枚入れる。ジャック・アトラスとのデュエルの際も同じフィールド魔法をデッキに3枚入れていた。そしてさらにはそのフィールド魔法を手札に呼び込むためのサーチカード、『テラ・フォーミング』を入れる事が多い。その『テラ・フォーミング』でフィールド魔法をサーチする事無く、コストとして捨ててしまう状況。それは言外に手札にフィールド魔法が存在している事を伝える事になる。そして絶望的な事に、今俺の手札にはそのフィールド魔法が3枚揃っている。

 

「『終末の騎士』の特殊召喚成功時に効果を発動。デッキから闇属性モンスター1体を墓地に送る。この効果で俺は『シンクロ・フュージョニスト』を墓地に送る」

 

 『終末の騎士』も『奈落の落とし穴』に落ちる事の無いステータスのモンスター。とりあえずはこのデッキの中核を成すカードを墓地に落とす事に成功し、壁モンスターも並べられた。とは言えこの状況は褒められたものではない。『トリオンの蟲惑魔』を処理する事も出来ず、自分を守るためのカードも無い状況だ。『召喚僧サモンプリースト』の守備力が『トリオンの蟲惑魔』の攻撃力と並んでいるからと言って、この壁が突破されないなどと考えるのは楽観的過ぎる。まずは相手のターンをこれで凌げるか、そして凌げたらその次のドローに勝負がかかってくる。

 

「カードを1枚セットしてターンエンドだ」

 

【これはなんだぁぁぁ?! 悪名高い“死神の魔導師”ともあろうお方が、この序盤で守備固めに入ったぜぇ! あの固そうな3枚のセットカードの守りにぶるっちまったのかぁ?! ひょっとして不気味な仮面の下は、いざって時にビビって何も出来ないヘタレチェリーボーイなん……ひっ!】

 

 司会の方に顔を向けると怯えた悲鳴を上げ黙った。…………悪かったな、大正解だよ。

 

「俺のターン、ドロー!」

 

 意識を相手に戻す。『トリオンの蟲惑魔』だけでは、まだ相手がどんなデッキであるかの判別がつかない。恐らくこのターン相手は仕掛けてくるはず。そこで相手を見極める。

 

「まずは『トリオンの蟲惑魔』をリリースして、俺は『牛鬼』をアドバンス召喚」

 

 『トリオンの蟲惑魔』の姿が光となり消えていき、両腕抱えられる程のサイズの黄金の壺が出現する。そしてその壺から吹き出すように現れたのは筋骨隆々の人の上半身。体の色は青で統一されているが、その顔は黄土色の毛の牛そのもの。歯茎をむき出しにしてこちらを睨みつける表情は、まさに鬼の形相だ。

 

 

牛鬼

ATK2150  DEF1950

 

 

 『牛鬼』とは……また随分と懐かしい上級モンスターだ。上級の通常モンスターの中でも決してステータスは高くないどころか、むしろ低いと言っても良い程だ。それをあえて採用している理由が理解できなかった。

 

【来たぜぇ! 氷室のフェイバリットモンスター! U☆SI☆O☆NI!! 可愛い娘が消えたからってメソメソすんな野郎共! もしかして、もしかしちゃうとこっから氷室のエースモンスターが登場しちゃうかもだぜ! お前ら目ん玉良くほじくって刮目しやがれぇ!!】

 

「…………?」

 

「へへへっ、オーディエンスには応えてやらねぇとなぁ。さらに『牛鬼』リリースして手札から『大牛鬼』を特殊召喚するぜ!」

 

 『牛鬼』の姿が光に変わり、新たに現れたのは先程よりも筋肉が発達した人の上半身を持つ牛だった。変わったのは顔の色までも青になった事と、下半身が巨大な蜘蛛に変わった事だった。下半身は茶色で、八本の足すべての間接からピンク色の毛が生えている。

 

 

大牛鬼

ATK2600  DEF 2100

 

 

【で、で、で、出たぁぁ!! 氷室をプロ時代も支え続けたモンスター、『大牛鬼』! こいつの登場で流れは一気に氷室に傾いたかぁぁ?! 『大牛鬼』の登場で会場の盛り上がりも良い感じに乗ってきたじゃねぇか!】

 

「良いぞぉぉ! 氷室ぉぉ!!」

 

「そいつを待ってたぜぇぇ!!」

 

「死神を殺せぇぇ!!」

 

「『大牛鬼』は場の『牛鬼』をリリースする事で手札から特殊召喚できる効果を持つ最上級モンスター。こいつが俺のデッキのエースだ」

 

 『大牛鬼』の登場によって観客と司会のボルテージは上がってきた。

 なるほど、それで『牛鬼』を採用しているのか。しかし『牛鬼』をリリースして手札から特殊召喚できるモンスターが存在したとは知らなかった。共通している事は最上級モンスターにしては攻撃力が物足りないと言う点だろう。まさか特別な特殊召喚方法があるだけで効果は他にないと言うこともあるまい。果たしてどんな能力を持っているのか。

 

「行くぜ!! 『大牛鬼』で『召喚僧サモンプリースト』を攻撃!」

 

 攻撃宣言を受けると『大牛鬼』は八本の足すべてを駆使して『召喚僧サモンプリースト』目掛けて突撃を開始する。その勢いのままに豪腕から振り下ろされた拳を受け、『召喚僧サモンプリースト』は紙くずのように吹き飛ばされた。

 

「『大牛鬼』の効果発動! 『大牛鬼』が相手モンスターを戦闘で破壊した時、『大牛鬼』はもう一度だけ続けて攻撃できる!」

 

「――――っ!」

 

「『大牛鬼』で『終末の騎士』を攻撃!」

 

 『大牛鬼』は『終末の騎士』の方へ向き直ると口から糸を噴射する。鋭い弓矢の如く吹き出された糸は『終末の騎士』の鎧ごと貫き破壊した。

 

「カードを1枚セットしてターンエンドだ」

【圧倒的制圧力! 守りに入った“死神の魔導師”の布陣を一瞬で粉砕! こいつがプロとアマチュアの差なのか? 予想外に状況は一方的だが、ちっとは反撃しねぇと賭けになんねぇぜ死神さんよぉぉ!!】

 

 こちらの状況も知らずに好き勝手言ってくれる……

 だがそれは事実なのだから仕方の無い事だ。相手の場には『大牛鬼』とセットカードが4枚。対する俺の場には全く機能していないセットカードが1枚。フィールドは圧倒的優位に立たれているのは一目瞭然だ。しかし幸い相手は既に手札は1枚のみ。ここの場さえひっくり返せればどうにかなるのは間違いない。こちらの手札3枚はすべて腐りきっているフィールド魔法だが、墓地にキーカードを落とせた今、残りのキーカードさえ引ければ一気に動き出せる。ここのドローが正念場だ。

 

『………………』

 

 心配そうな表情で俺の様子を伺うサイレント・マジシャン。まぁあの手札を見られれば心配になられて当然だろう。さっきは次のターンに繋げるためのドローだった。そしてこれはこのデュエルの流れを変えるためのドロー。ここがこのデュエルの行方を左右する一番のドローと考えると、少し高揚感が湧き立つ。

 

 ドクンッ

 

「俺のターン、ドロー…………っ!」

 

 来たか!

 ここで引くべき最高のカードが手札に収まる。もっともデッキに3枚入れているカードなので引ける可能性は十分あったと思うが。兎に角こちらもこれで動ける。セットされている『奈落の落とし穴』が発動されても問題なく動けるはずだが、それ以外の妨害を受けた場合は腹を括るしか無い。

 

「フィールド魔法『ブラック・ガーデン』発動」

 

「ん? うぉぁっ!」

 

【ついに死神が動き出したぁぁあ! だが檻の中を黒い茨のツタで覆われちまって中の様子が良く見えねぇ! おいおいおい、そんな人目のつかねぇ中で一体何をおっぱじめようってんだぁ?!】

 

 ソリッドビジョンでフィールドが変化しざわめきが起こる。なるほど、こうしていれば不快な視線に晒されずに済むのか。

 

「『ヴァイロン・キューブ』を召喚」

 

 白い立方体の物体が召喚された。プレゼントのリボンのようにそれぞれの面に金色のラインが十字に描かれている。正面に埋め込まれた琥珀色の宝玉が輝き始めると両脇からは金色のアームが、底面からは金色のラグビーボール状の浮遊装置が、上面からは小さい鳥の顔ような頭が展開される。

 

 

ヴァイロン・キューブ

ATK800  DEF800

 

 

「チューナーモンスターか……」

 

「そしてこの時、『ブラック・ガーデン』の効果が発動する。モンスターが召喚、特殊召喚された時、そのモンスターの攻撃力を半分にし、そのモンスターのコントローラーから見て相手フィールド上にローズ・トークンを攻撃表示で特殊召喚する」

 

 足下から伸びてきた茨のツタは『ヴァイロン・キューブ』に絡み付くとその力を奪っていく。そして相手の場にその力を養分にして一輪の薔薇の花を咲かせる。

 

 

ヴァイロン・キューブ

ATK800→400

 

 

ローズ・トークン

ATK800  DEF800

 

 

「馬鹿な! 自分のモンスターの能力を下げてまで俺の場にトークンを出しただと? 一体何を企んでいる……」

 

「そして『ブラック・ガーデン』の更なる効果を発動。このカードとフィールド上の植物族モンスターをすべて破壊する」

 

「くっ……」

 

 『ブラック・ガーデン』の崩壊と共にローズ・トークンが弾け飛んだ。茨の檻が無くなり再び観客の視線に晒される。

 

「そして自分の墓地からこのカードの効果で破壊したモンスターの攻撃力の合計と同じ攻撃力のモンスター1体を選択して特殊召喚する。破壊した植物族モンスターはローズ・トークン1体。よって墓地から攻撃力800のモンスター、『シンクロ・フュージョニスト』を特殊召喚する」

 

 甲高い笑い声上げながら墓地からオレンジ色の悪魔が場に現れた。

 

 

シンクロ・フュージョニスト

ATK800  DEF600

 

 

【おぉぉおぉぉ! なんだか良く分かんねぇが、兎に角死神が2体のモンスターを並べたようだぜ! しかも一体はチューナーときやがったぁ! ってことは『怒れる類人猿』ばりの知能指数しか持ち合わせてねぇテメェらでも、次に起きる事ぐらい分かるよなぁ? わからねぇなら一旦ママの子宮に戻って受精卵から出直してきやがれ!!】

 

「レベル2の『シンクロ・フュージョニスト』にレベル3の『ヴァイロン・キューブ』をチューニング。シンクロ召喚、『幻層の守護者アルマデス』」

 

『ヴァイロン・キューブ』と『シンクロ・フュージョニスト』がその形を変え生み出した光の柱から現れたのは古代ギリシャの彫刻のような肉体美を持つ男。身につけているものはうっすら青みがかった胸当てと下がボロボロになっている白の腰巻きのみ。逆立った白髪は炎のように揺らめいていた。

 

 

幻層の守護者アルマデス

ATK2300  DEF1500

 

 

「おぉっと、そうはさせねぇ! トラップ発動! 『奈落の落とし穴』! これにより召喚、特殊召喚された攻撃力1500以上のモンスターは除外だ!」

 

 登場して間もない『幻層の守護者アルマデス』だったが、あっさりと異次元へと続く穴に引きずり込まれ俺の場から姿を消す。攻撃力では『大牛鬼』に劣るため、見逃してもらえるかもと思ったが、そう上手くはいかないらしい。

 

「だが、シンクロ召喚には成功した。よって『シンクロ・フュージョニスト』の効果発動。デッキから“融合”または“フュージョン”と名のついたカードを手札に加える事が出来る。さらに『ヴァイロン・キューブ』が光属性のシンクロモンスターのシンクロ素材に使われた事により効果発動。デッキから装備魔法1枚を手札に加える」

 

「速攻魔法『相乗り』発動! 相手がドロー以外の方法でデッキ・墓地からカードを手札に加える度に、カードを1枚ドローする」

 

「くっ……俺は『シンクロ・フュージョニスト』の効果で『簡易融合』を、『ヴァイロン・キューブ』の効果で『ワンダー・ワンド』を手札に加える」

 

「デッキからカードを2回手札に加えた事ため、『相乗り』の効果で2枚ドローする」

 

 ここで『相乗り』とは……そう簡単には勝負を譲ってくれる気は無いか。俺の場はガラ。ここで展開を止めれば次のターンに4000ライフを持っていかれる。ここは動くしか無い。

 

「『ブラック・ガーデン』を発動」

 

「ちっ……まだ動くか」

 

【なにぃぃ! 2枚目の『ブラック・ガーデン』だとぉ?! おいおいここまで実況泣かせのカードはねぇ! 見たいけど見えないのはAVのモザイクだけで十分ってもんだ!】

 

 実況の声が遠くなり、再び場は茨の檻で閉ざされる。

 これで相手の手札は2枚、セットカードも2枚。残りの2枚のセットカードに召喚妨害の札があると苦しいが、いけるか?

 

「さらに1000ポイントのライフを払って『簡易融合』を発動。エクストラデッキからレベル5以下の融合モンスターを融合召喚扱いで特殊召喚する。俺が出すのはレベル4の『カオス・ウィザード』」

 

 巨大なカップ麺の容器から飛び出してきたのは、おなじみの鎌を持った仮面の魔術師。赤と黒のツートンカラーの鎧はこの茨の檻の中だと目立たない。

 

 

八代LP4000→3000

 

 

カオス・ウィザード

ATK1300  DEF1100

 

 

「そして『ブラック・ガーデン』の効果で『カオス・ウィザード』の攻撃力は半分となり、相手フィールド上にローズ・トークン1体を特殊召喚する」

 

 場に出た『カオス・ウィザード』に絡み付く茨のツタ。エネルギーを吸い取られ苦しむ『カオス・ウィザード』とは対称的に、相手の場に咲いた薔薇の花は美しかった。

 

 

カオス・ウィザード

ATK1300→650

 

 

ローズ・トークン

ATK 800  DEF800

 

 

「『ブラック・ガーデン』のもう一つの効果を発動。このカードと植物族モンスターをすべて破壊。破壊されたローズ・トークン1体分の攻撃力800と同じ攻撃力のモンスター、今度は『ヴァイロン・キューブ』を墓地から特殊召喚する」

 

 『ブラック・ガーデン』が朽ち果てると『ヴァイロン・キューブ』が墓地から復活を遂げる。これでシンクロ召喚に必要な札は揃った。カードを発動する様子は無いようだ。

 

 

ヴァイロン・キューブ

ATK800  DEF800

 

 

【『ブラック・ガーデン』の効果はこっからは見えないせいで詳しくはわからねぇが、状況から察するに墓地からモンスターを蘇生させる効果があるみてぇだ! 死神の場にまたチューナーを含んだ2体のモンスターが並んでやがる! 聞いた話じゃ前にここでデュエルした時、死神は1ターンに4回シンクロ召喚をしてたらしいぜ! 1ターンに2回程度のシンクロ召喚は鼻歌まじりにやってのけちまう! やはりこいつもただやられっぱなしで終わる男じゃねぇようだ!!】

「レベル4の『カオス・ウィザード』にレベル3の『ヴァイロン・キューブ』をチューニング」

 

 『ヴァイロン・キューブ』が緑に輝く3つの輪になり空を舞う。その中に入るように飛び出した『カオス・ウィザード』の輪郭は解けていき、体内から4つの光球を飛び出させる。それらがすべて一直線に並んだ時、光が輪の中を突き抜けた。

 

「シンクロ召喚、『アーカナイト・マジシャン』」

 

 光の柱が霧散して中から出てきたのは三日月のようなカーブを描いている白いローブに身を包んだ魔術師。依頼用のデッキでは常に最前線で戦っているエースモンスター。それがようやく俺の場に姿を現した。

 

 

アーカナイト・マジシャン

ATK400  DEF1800

 

 

【来やがった! 来やがった! 来やがったぜぇ!! 噂に名高い死神のエースカード『アーカナイト・マジシャン』!! 通称トラウマ・マジシャン! 対戦相手を気絶させた上に小便ちびらせちまったなんて話聞いたときは、どんなおっかないモンスターだと思ったが、見てくれは全然可愛いじゃねぇか! 果たしてこいつは一体どんな鬼畜外道効果を見せてくれるんだぁ?!】

 

「『アーカナイト・マジシャン』はシンクロ召喚成功時、自身に魔力カウンターを2つ乗せる。そして自身に乗った魔力カウンター1つにつき攻撃力を1000ポイント上昇させる。また、『アーカナイト・マジシャン』は光属性。よって再び『ヴァイロン・キューブ』の効果によりデッキから装備魔法を手札に加える事が出来る。俺が加えるのは『ワンダー・ワンド』」

 

「デッキからカードを加えた事よって、『相乗り』の効果によりカードを1枚ドローする」

 

 この際の相手のドローは仕方が無いと割り切る。『ヴァイロン・キューブ』の効果を使わないといてもあったが、今回はデッキの圧縮を優先した。

 

 

アーカナイト・マジシャン

魔力カウンター 0→2

ATK400→2400

 

 

 『月の書』や『強制脱出装置』と言ったフリーチェーンの妨害カードや召喚無効系のカウンターが来ない。となるとあのセットカードの危惧すべき可能性は攻撃反応のみ。

 

「『アーカナイト・マジシャン』の効果発動。魔力カウンターを1つ取り除き相手の場のカードを1枚破壊する。自身に乗っている魔力カウンター1つを取り除き『大牛鬼』を破壊する」

 

 『アーカナイト・マジシャン』の体から出てきた魔力球が杖に装填される。そして緑光を放ち始める杖先から閃光が天に向かって放たれた。するとどこからとも無く発生した暗雲から雷が『大牛鬼』に降り注ぐ。断末魔の叫びを上げるとともに『大牛鬼』はフィールドから消えていった。

 

 

アーカナイト・マジシャン

魔力カウンター 2→1

ATK2400→1400

 

 

【こぉいつはエゲツねぇ!! 氷室のエースモンスターがこうもあっさりと破壊されちまうとは俺も予想してなかったぜぇ! てかそんな予想が立てられるなら、とっくに賭博でぼろ儲けしてこんな暑苦しいところから一抜けしてらぁ!!】

 

「『アーカナイト・マジシャン』の効果発動。自身の魔力カウンターを1つ取り除き、俺から見て右のセットカードを破壊する」

 

「ならばそのカードを発動しよう。トラップカード『凡人の施し』。デッキからカードを2枚ドローし、その後手札から通常モンスターを除外する。俺は2枚ドローして、手札から『牛鬼』を除外する」

 

 外したか……

 残りのセットカードは1枚。こちらの手札3枚のうち2枚は『ワンダー・ワンド』と割れていて、残りの1枚も先のターンセットしなかった事から妨害の札ではないとバレている。この状況が分かっている以上、たかが攻撃力400の『アーカナイト・マジシャン』と言えども攻撃反応型のカードを使ってくるはず。仮に攻撃が通ったとしても与えられるダメージは400。『ワンダー・ワンド』を装備しても900。仕掛けるのは流石にハイリスクローリターン過ぎる……か。

 

「『アーカナイト・マジシャン』に『ワンダー・ワンド』を装備。『ワンダー・ワンド』は装備モンスターの攻撃力を500ポイントアップさせる」

 

 『アーカナイト・マジシャン』の杖が柄に人面が描かれた短いロッドに入れ替わる。氷室の顔がニヤリと歪むのを俺は見逃さなかった。

 

 

アーカナイト・マジシャン

ATK400→900

 

 

 攻撃力900程度のモンスターなど壁にもなら無い事は目に見えている。だが『ワンダー・ワンド』のドロー効果で『アーカナイト・マジシャン』を失えば、召喚権を使ってしまっている以上、壁となるモンスターは出せない。ライフは3000と最上級モンスターの一吹きで消えてしまうような数値だ。なんとかここで防御の札を呼び込みたい。

 

「『ワンダー・ワンド』の効果発動。このカードと装備対象のモンスターを墓地に送りカードを2枚ドローする」

 

「………っ! おいおい、攻撃してこないのか。つれないヤツだぜ」

 

 『ワンダー・ワンド』に導かれ『アーカナイト・マジシャン』は墓地に消えていく。そしてそれを糧に得た2枚の手札を確認する。

 

「……カードを1枚セットしターンエンド」

 

【おぉぉっとぉ?! まさかのここでターンエンド?! そりゃねぇぜ、それでもテメェ玉ついてんのかぁ? それとも攻めるよりむしろ攻められる方が好きなマゾ野郎なのかい? なんにせよこれで無傷で氷室にターンが回ったぁ!!】

 

『…………マスターが……M……?』

 

 ……サイレント・マジシャン、今のは聞かない事にしておいてやる。そう言う意味を込めた視線をサイレント・マジシャンに向けると慌てた様子で頭を下げ謝ってきた。純粋過ぎるのも考えものだ。

 

「俺のターン! ドロー!」

 

 気を取り直してデュエルに意識を集中させる。これで相手の手札は6枚まで回復された。場にはモンスターが残されていないとは言え、あの枚数の手札を抱えていればモンスターを展開するのは容易だろう。

 

「先のターン、仕掛けるかどうかの判断だが、あれで正解だと思うぜ。リスクとリターンの天秤は圧倒的にリスクに傾いていた。裏世界のトップと言えども、所詮はアマチュアだと思っていたが、なかなかどうしてデュエルを知ってやがる」

 

「…………そいつはどうも」

 

「では答え合わせと行こうか! リバースカードオープン! 永続トラップ『闇次元の解放』! こいつは除外されている闇属性モンスター1体を特殊召喚する。俺はさっき『凡人の施し』の効果で除外した『牛鬼』を呼び戻す! 来い!」

 

 次元の歪みを抉じ開けて『牛鬼』が場に戻ってきた。『牛鬼』がフィールドに戻ってきた事で会場は再び歓声の渦に包まれる。

 

 

牛鬼

ATK2150  DEF1950

 

 

「つまりさっきのターンは仕掛けてきても来なくとも、お前の前にはこいつが立ち塞がったと言うわけだ。どっちみち攻撃は通らなかったぜ。そして俺は『牛鬼』をリリース! 『魔族召喚師』をアドバンス召喚だ!」

 

 『牛鬼』の姿が光に変わると、その光が新たに魔方陣を描き始める。完成した魔方陣からは妖しげな煙が上り、やがて人影が現れる。煙が晴れるにつれて体のシルエットが浮かび上がってきた。しかしそれは人の姿とはまるで似つかぬもの。まず目を引いたのは濁りきった青白い肌と頭から生えた2本の内側に曲がった角。さらに尻尾が生えており、魔族を召喚することを専門に魔術を極めた者の成れの果てがそこにはあった。

 

 

魔族召喚師

ATK2400  DEF2000

 

 

 セットカードは『闇次元の解放』だったのか。それなら確かに相手の言う通り攻撃しても結果は変わらなかったな。

 『魔族召喚師』はデュアルモンスター。もう一度召喚権を使って再度召喚する事でその能力を解放する。これで残り手札は4枚。このタイミングでそいつを出してくると言う事は恐らく……

 

「そして装備魔法『スーペルヴィス』を『魔族召喚師』に装備。このカードを装備したモンスターは再度召喚した状態となる。これにより効果を得た『魔族召喚師』の効果発動。1ターンに1度、手札または自分・相手の墓地から悪魔族モンスター1体を選んで特殊召喚する。この効果で俺は墓地から『牛鬼』を特殊召喚する!」

 

 やはりか。

 『魔族召喚師』によって墓地から引きずり出された壺から『牛鬼』が姿を現す。『牛鬼』をこうも容易く場に揃えると言うのは、これが元プロの手腕と言うヤツか。

 

 

牛鬼

ATK2150  DEF1950

 

 

 これで2体のモンスターの合計攻撃力は俺のライフ3000を上回った。残りの手札でまだ何か仕掛けてくるのか、それともバトルに入るのか。

 

「へっ、冥土の土産だ! 『牛鬼』をリリースして、手札から『大牛鬼』を特殊召喚する!」

 

 どうやら前者だったらしい。

 壺が砕け巨大な蜘蛛の下半身が姿を現した。さきほど倒したモンスターをこうもあっさり出されると言うのはこちらとしては苦しいところだ。

 

 

大牛鬼

ATK2600  DEF2100

 

 

 この判断の場合、俺の新たにセットしたカードが攻撃反応型の全体除去『聖なるバリア―ミラーフォース―』だった時は被害は増えるが、『リビングデットの呼び声』などの蘇生系のカードだった時は『大牛鬼』の能力を使えば俺のライフを確実に削りきれる。一長一短の判断ではあるが、リスクもある分この場合だと勝利と言う絶対的リターンが存在する以上、この判断も十分ありな判断だろう。

 

【ここでこのデュエルで2体目の『大牛鬼』の登場だぁぁ!! どうやらいつになく氷室は絶好調なようだぜぇ!! 早くもこのデュエルの決着がついちまうのかぁぁ?! おいこら、まだ決着はついてねぇんだから項垂れてねぇで、瞼抉じ開けて見届けろや!!】

 

「バトル! 『大牛鬼』でダイレクトアタック!!」

 

 俺のライフを削りきらんと駆け出す『大牛鬼』。ふと牛に迫られる闘牛士とはこんな感覚なのだろうかと思ったが下半身の蜘蛛の足を見て、おそらく別物だろうと確信した。俺を捻り潰そうと『大牛鬼』は腕を振り上げる。だが、このライフをそう易々とくれてやる俺ではない。

 

「トラップカード『ピンポイント・ガード』発動。相手の攻撃宣言時、墓地からレベル4以下のモンスターを守備表示で特殊召喚する。そしてそのモンスターはこのターン戦闘及びカード効果では破壊されない。俺が特殊召喚するのは『召喚僧サモンプリースト』」

 

 俺と『大牛鬼』の間に割り込むように『召喚僧サモンプリースト』が出現する。攻撃のモーションに入っていた『大牛鬼』だが、その拳を『召喚僧サモンプリースト』の前でピタリと止める。先程は容赦なく吹き飛ばした攻撃だったが、その拳は見えない壁に阻まれているようにピクリとも前に進まない。

 

 

召喚僧サモンプリースト

ATK800  DEF1600

 

 

「ちぃっ! そいつで守られてんだったらしょうがねぇ……これでターンエンドだ」

 

【どうやら決着はお預けのようだ! そりゃそうだ! 今日のメインデュエルがこんなに簡単に終わっちゃいけねぇ!! “死神の魔導師”側に賭けてた連中が息を吹き返したようだぜぇ!! 依然フィールドでは氷室が優位に立っているが、死神はこれをどう返してくるのか見物だぜぇぇ!!】

 

「ったく、こんな辛気臭いとこまで来て、見る価値のある面白いもんが見れるのかよ!」

 

「——————」

 

「………………」

 

『…………!!』

 

 また育ちの悪そうな輩が入ってきたようだ。どうやらわざわざこのデュエルを見るためにこの時間から入ってくる観客もいるらしい。

 

『……………』

 

 構わずデュエルを続けようとした時、サイレント・マジシャンがある一点を見つめて固まっている事に気付く。視線の先を追えばそこには先程入ってきた3人組がいた。1人はこちらにも聞こえる声で喋っていたくすんだ金髪の男。獰猛な顔つきで、どこかの円卓から奪ってきたのだろう、1人椅子に腰をかけ足を組みながらこちらを見ている。

 その脇に立つもう1人はそれを諭していたサングラスをかけた男。全体的に長めな褐色の髪で前髪を大きく右に流している。表情は柔らかく金髪の男の横暴も黙認しているようだ。

 そしてサングラスをかけた男の側に立っている最後の1人に目を移した時、視線が固まった。頭から体をすっぽり覆う黒いローブを身につけ、顔には白い仮面を付けているため何者なのかはっきりとは分からない。だが仮面の横から零れ出ている長い赤髪、それは見覚えがあるものな気がした。数少ないはっきりと記憶に残るデュエルをした少女の姿が頭を過る。

 

 ズキリッ

 

 その時、頬に出来た傷に痛みが奔った。

 

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