仮面ライダーアマゾンズ -ϘuinϘuennium- 作:エクシ
Episode1「MArtyrs」
9月の曇り空の中、教会に続々と人々が閉じた傘を手にして入っていく。
全員黒いローブを羽織って怪しげな雰囲気を醸し出している中、1人落ち着きのない男が左手を使わずに右手に持った傘をわざわざ置いてからドアノブを右手で回して入ろうした。
「詰まっているから早く行ってもらえる?」
「あー、どうもすいませんね。」
後ろで待っている女性に言われて入っていく男。横の傘立てに自分の傘を置いてから教会の奥まで歩いていった。
中は一面ステンドガラスで覆われており、西洋の立派な教会と言っても遜色ないような美しさなのだろう。しかし蜘蛛の巣があちこちにかかっていることからせっかくの作品が少し汚らしく見えてしまう。
男もキョロキョロと辺りを見回して「綺麗だなあ…これ作るの、いくらかかるんだろ。」なんて呟く。
20人前後の人数が全員教会の中に入ると最後に入ってきた人が扉の鍵を閉め、チェーンを何重にも巻き付けた。その後、扉の横にあるスイッチを押すとチェーンに電気が流れた。
「戸締り完了しました、教祖様。」
最後の人が前の檀に立っている教祖と呼ばれる男性に声をかけると、教祖も頷き両手をあげた。
「では皆さん、ご着席ください。」
教祖に従って人々は木で出来たベンチに腰を掛ける。ステンドガラスの値段を計算するのに頭がいっぱいだった漢も周りが腰を下ろしていることに気が付いて席に着く。
「皆さん、またよく集まってくれました。しかし悲しいお知らせがあります。反矢さんご一家が”奴ら”に襲われてしまい、神の元へ行かれました。」
教祖の言葉に一斉に涙する人々。男も周りに合わせて手で顔を覆う。
「反矢さんは今神に守られていらっしゃいます。皆さん、信じましょう。私たちも”奴ら”に食われることで神の元に行けるのです。恐ろしいでしょう、しかし痛みは一瞬です。私たちはその救いを待つしかないのです。」
教祖の言葉に嗚咽をあげて泣く者たちも現れた。
(どうにかして食われないようにしようって考えは思いつかないのかね、この人たちは。)
男は手で顔を隠しながら思うも一般の人々にとって”奴ら”は恐怖の対象であり抵抗する気すら起きないのだろうと察した。
祈りが始まり泣き止む人たちがいる中、突然協会の扉が吹き飛んだ。爆音に悲鳴を上げる人々たち。赤い光が3つほど煙の中から見える。
「皆さん、覚悟を決めるのです!」
教祖の言葉を聞く前に逃げようとする人々だったが”奴ら”から逃れる逃げ道は”奴ら”が経った今破壊し、瓦礫でふさがれてしまった。
「おいおい…冗談じゃないよ。」
辺りの人々と違って恐怖からではない震え、武者震いをする男が右手で自分の左手のくるぶしを握る。
煙が収まっていくと左腕の銀色の腕輪 アマゾンズレジスターが赤く光っている怪物が3体近づいてきた。
人々の中には勇気を振り絞って鉄パイプで襲い掛かる者もいたがそんな攻撃は効くことなく怪物に無残にも首筋を噛み切り殺されていく。
赤い血は黒いローブに染み込まれたことで目立つことないものの、その出血の量は尋常ではないのがわかる。襲われた人々は即死だろう。
怪物は抵抗する者を一通り襲い尽くすと今度は建物の端の方で震えていた人々にターゲットを変えた。端にいる眼鏡の男性に飛びかかる怪物は男性を襲いながら口から糸を出して拘束する。
「ひゃあぁぁ!!!た…すけて…。」
糸で口を縛った後に首筋に噛みついて肉を千切る。大量の血が噴き出しステンドガラスが真っ赤な血で覆われた。他の人々も自分がこうなるということを想像するだけで手足が動かなくなる。
怪物が眼鏡の男性”だった肉”を食い散らかし終えた後、動けなくなっている人々の方を向いた。
「教…祖…様ぁ…!」
辺りを見回しても教祖はいない。どこからか逃げたのだろうか?そう終わりだと目をつぶったその瞬間、怪物の頭部が何者かによって胴体から切り離された。
それはほんの一瞬の出来事。
人々も何が起こったのかわからなかった。見えたのは黒い影と青い一筋の光。あとの2体の怪物たちも威嚇しながら辺りを見回して警戒をする。
もう1体の怪物が警戒を止めて人々をまた襲おうと近づいた時、先ほどの黒い影がどこからともなく現れ怪物に襲い掛かった。
蜘蛛を模した怪物は黒い影に襲われ手足を捥がれる。そこから流れ出す黒い血を気に留めることなく黒い影は蜘蛛の怪物に噛みついていく。やがて蜘蛛の怪物はただの肉片となって黒い影に食いつくされた。
残った1体の怪物は本能で恐怖したからか教会から逃げ出そうとしたが、背を向けたその瞬間、胴体が真っ二つに切断され、断末魔を上げる事なく床に落ちた。まもなくしてその体は液状に変わる。
黒い影は液状になった怪物の姿を見つめている。自分の左手を握っていた男は黒い影を見ながら呟いた。
「アマゾン…!」
トラロック事件から6か月が経っても世間から野座間製薬へのバッシングは続いている。そんな野座間製薬の子会社 ノザマペストンサービスの”清掃班”として働いていた青山は空きオフィスの清掃を命じられていた。
「あー、青山さん。塩素系洗剤で拭いたところを酸性洗剤でまた拭こうとしないで下さいよ。特定有害生物関連以外で死なれるとこっちがかなり迷惑するんで。」
”政府の狗”に叱られるのはなぜかイラっとくる。一応政府側の警視庁特殊部隊員だった志藤や福田はそんな嫌味な感じはなかったが…。
「お前の言い方はいちいちムカつくな、札森。」
「アンタら野座間製薬が余計なことしてくれたおかげで
「公務員とは思えない口ぶりだな。衛生省の人間ってのはこうも偉そうなやつばっかなのか?赤松もいちいち上から俺たちを見下してくる。」
「衛生省っていうか政府の奴なんてそんなもんですよ。赤松さんは自衛隊の幹部候補でしたけど誤射による事故でウチに飛ばされちゃいましたから卑屈にもなりますよー。」
札森は伸びきっていない髪をかき上げながら青山を見下ろして掃除の続きをさせた。
青山が清掃をしている場所は日本政府と野座間製薬の共同出資によって設立された 「特定有害生物対策センター」 通称「4C」のオフィスになる予定だ。
まだ予算が少なくこの規模の場所しか借りれないと札森は嘆いていたが、数人で構成される4Cにしては大きめのオフィスだと青山は思っている。
「ところで俺と札森、それと赤松、白木さん以外に誰が来るんだ?」
「あー、今んとこそれだけです。」
「は…?」
「あとはリストラにあった野座間製薬元社員の方を雇うって感じですかね、格安で。」
いちいち腹の立つ表情を見せてくる。こんな職場に留まって本当によかったのだろうか?とはいえ実際給料がいい。ギャンブル狂いだった自分を戒めるにはちょうどいい所なのかも知れないと青山は野座間製薬に残ることにしたのだ。
しかし野座間製薬も事業縮小でノザマペストンサービスとして雇われていた青山は居場所がなくなった。そこで4Cへの募集を見てすぐさま飛びついたのだ。
「あ、でもなんか女の子が4Cに入隊希望してましたよ。」
「女だと?確かに白木さんはうちにいるけど…。出来る奴なのか?」
「んーと…あったあった。」
札森がタブレットで4Cに志願していた女性の情報を出し青山に見せる。
「水澤…美月…!水澤本部長の娘さんじゃないか!」
清掃が一通り終わったオフィスにはソファーが2つと小さなテーブルが置かれただけでガラリとしている。そんな中、美月はテーブルを挟んで小さい方のソファーに腰を掛けていた。
「水澤美月です。よろしくお願いします。」
「あ、いや本部長のお嬢さん…ですよね?」
大きい方のソファーに深く腰を下ろしダルそうにしている札森を突く青山は美月に水道水の入ったコップをテーブルに置く。
「これしか今なくて…すいません。」
「そんな、どうぞお気遣いなく。」
「いえいえ…。」
タブレットのタッチの仕方で札森がゲームを始めたことが目に見えてわかる。美月に聞こえないように「いい加減にしろ。」と怒ると札森は溜息をついてトイレに向かった。
「すいません、アイツ不愛想で…。」
「そんなこと…私の母のせいでこんなことになってしまったので仕方がないと思っています。」
「いや奴はそんなやつじゃ…。それより本気ですか?4Cの駆除部隊に入隊希望って。」
「はい、私も戦いたいんです、アマゾンと。」
札森の持っていた資料によると美月の母 水澤令華は先日自身の家を売却したそうで美月も寮のある高校に転校させられていた。
しかしそこを自主退学、その理由は「4Cに入隊するため」だそうで…。
「えーっと…そこまで楽しい職場でないことは…?」
「勿論わかってます。」
「高校…行かれたほうがいいですよ?自分も高校は中退しましたけどろくな人生じゃありませんでした。」
青山が苦笑いで説得を試みようとしても美月の顔が変わることはない。
「あの…本当に危ないんですよ。」
「戦う選択肢は…アリだと思う。」
「?」
「その答えが本当なのか…知りたいんです。」
彼女の目はまっすぐ青山の瞳を見つめていた。
「戦う選択肢って一体…」
青山が訪ねようとした時、札森が落ちそうなズボンを手で押さえながらもう片方の手でタブレットを掲げてトイレから飛び出した。
「出ました!出ましたよ、青山さん!」
「汚いからそんなことわざわざ報告しなくていいんだよ。」
「そっちもですけど今言ったのは特定有害生物の方です。」
青山が運転する輸送用バンは赤松が止めたと思われる黒いバイクの後ろに止められた。
アマゾンの目撃通報が入ったのは別荘地として有名なところに佇む古い家だ。既にこの中に赤松と白木が潜入しているようで、中から銃撃音が鳴り響いている。
「ったくあの人たちは勝手に行きますね、ほんと。一応司令塔は俺なんですけどね。」
「司令塔なら司令塔らしくしてくれ。」
「はーい、じゃあ青山さんは赤松さんたちと合流してください。俺と水澤は車の中で待ってますから。」
そういうと札森は車の中に入っていった。本当に何のためにいるのかわからない。
美月を連れてきたことも理解できなかったが既に戦闘が始まっているため、青山は赤松と白木の元へ向かう。
古家の扉を開けるとそこには黒い液体と青く光ったアマゾンズレジスターが放置されていた。
「覚醒前か…。」
奥へさらに進んでくとHK417と呼ばれる狙撃銃の銃撃音がより大きく聞こえる。札森の話だと覚醒前のアマゾンが3体ほどいるとのことだったから、残りは2体ということになる。
青山もM16型の自動小銃を構えてリビングに入るため片手をドアノブに置いた。とその瞬間を狙って青い光を発するアマゾンズレジスターが付いたアマゾンの腕が青山の首を掴んだ。
その手に向けて自動小銃を発砲する青山。
「ぐああ!く…死ねぇぇ!!」
発砲し続けても襲い掛かってきたアマゾンは怯むことなく近づいてくる。いま生きているアマゾンはトラロックに対する免疫があった”良個体”のアマゾン。ただでは死なないのだろう。
ノザマペストンサービスで駆除班でなかった青山は弾丸の消費ペースが未だに掴めず、すぐ弾を切らしてしまうのが悪い癖になっていた。
(やばい、弾丸が尽きる!)
案の定、弾切れを起こしすぐに自動小銃を捨て逃げようとした時、隣の部屋から白木が手にしていたH&K MP7を脇に挟みつつアマゾンに向けて射撃攻撃を繰り出す。
「大丈夫ですか!青山さん!」
「ごめん、白木さん。助かった!」
女性とは思えぬ勇敢さで青山を背にアマゾンに射撃を続ける。まもなくして心臓を捉え、アマゾンはその場に倒れた。
「よく覚醒前のアマゾンを探知できたな。」
「赤松さんが地道な捜査で見つけたみたいです。」
「さすが元エリートってとこだな。」
「あと1体を赤松さんが相手してます。ランクはBですからあまり油断できません!」
「すぐに行こう。」
青山と白木は中庭に出た。そこには女王アリアマゾンと応戦する赤松の姿があった。弾丸が尽きたようで赤松はサバイバルナイフを振り回してなんとか女王アリアマゾンの攻撃から身を守っている。
「赤松!」
「…!やっと来たか!さっさとアマゾン狩るぞ!」
「私の…私の仲間たちをよくも!」
女王アリアマゾンは怪物染みた声で、しかしどこか悲しそうに声をあげた。
覚醒前のアマゾンは正気を保っていることから言葉を発するというのは駆除班にいた”M”の資料から分かっていたが、こうも人間の言葉を発せられると駆除しにくいのが本音だ。
「でもそんなこと言ってられないよな…!」
弾を装填し自動小銃で女王アリアマゾンの首を狙う青山。しかし理性を保っている女王アリアマゾンは赤松の首を掴むとそれを盾にして狙撃されないようにした。
「動くな!こいつがどうなってもいいのか!?」
「あ…赤松!」
「怯むな!撃て!俺のことは気にするな!アマゾンを殺すために…犠牲は厭わない!」
「そんな…赤松さん。私…。」
「撃てぇぇ!!」
赤松は叫ぶも2人は銃の引き金を引くことは出来ない。とその時、耳にしていたインカムから札森の声が入ってきた。
『青山さん!もう1匹がその近くに来てます!』
「んだと!?白木!もう1匹が近づいてるって!気を付けろ!」
「……!この臭い…まさか!」
女王アリアマゾンが赤松を盾にしながら辺りを見回す。それは恐怖に怯えているような様子だった。
「?」
女王アリアマゾンが左を向いたその瞬間。音を立てることなく黒い影が赤松のすぐ近くを通ると共に女王アリアマゾンの首が落ち、噴き出す黒い血が赤松の顔面を汚した。
「なんだ!?」
青山はすぐにその黒い影に向けて銃口を向ける。そこには未覚醒を示す発光をしたアマゾンズレジスターをつけたアマゾンが立っており、青山たちの方を振り向いた。
後ろには巨大な尾が付いており、その先には鋭い刃がついている。まさしくそれに名をつけるならば”サソリアマゾン”といえる。
「なんでお前…同じアマゾンを?」
「……。」
サソリアマゾンは女王アリアマゾンの頭部を拾い上げると触覚を引きちぎりムシャムシャと食い始める。やがて頭を全て平らげると今度は胴体の方に近づいていった。
頭部を食らうアマゾンのグロテスクな場面に目を背けたい青山たちもサソリアマゾンの動きに合わせて銃口の向きを変えていく。
サソリアマゾンが横たわった胴体を食らおうとした時、女王アリアマゾンの体は黒い液体に変化した。
「…くっそ。」
冷気を発しつつサソリアマゾンは20代前半とみられる青年の姿に変わっていく。青山は思わず彼に声をかけた。
「お前は…誰だ?」
「…
商と名乗った青年はその場に口から女王アリアマゾンのもう一方の触角を吐き出した。
はじめまして!エクシと申します。
他の小説を読んでくださった方はお久しぶりです!
最近仮面ライダーアマゾンズにはまっていまして…書いてしまいました…!
書きたいのはSeason1から2にかけての空白の5年間です。溶原性細胞関連はもしかしたら出ないかもしれないです。というのもまだSeason2が続いていますから千翼やイユのことで下手に書くと矛盾する点が出てきちゃうかなと思ったからです。よって完結次第、溶原性細胞関連に手を付ける…かも?
さて今回の主役は「アマゾンを食らうアマゾン」です。
アマゾンは人のたんぱく質を欲する生き物ですが、なぜかアマゾンの血肉を欲してしまう尾宿商がサソリアマゾンとなってアマゾンを狩ります。
ちなみに尾宿は”びしゅく”。商とかいて”はかり”と読みます。
商ると書いて”はか-る”と読むこと、さっき知りました笑
4Cのメンバーはアマゾンズファンの方ならおわかりだと思います。
青山…Season2でアロマオゾンの営業所を見に行った部隊の隊長です。最期はご存知の通りです。この小説では元ノザマペストンサービスの清掃班にいたという設定でギャンブル狂いで、更生した後は清掃班をやることで何とか借金を返していたという三崎にちょっと似たやつです。
札森…エステ大好き札森ちゃんです。まだ髪の毛はそこまで伸びてないですね。衛生省の人間だったということで某仮面ライダーエグゼイドが絡んでくる!?と思う方もいらっしゃいますが、残念ながら関係ないです。実在する省庁を書くのは何かなあと思ったのでエグゼイドから拝借した次第です。
赤松…4Cきってのエリートということで元自衛隊の幹部候補生にしました。それがエリートなのかよくわかりませんがとりあえず強いということで!
白木…女性もいれたかったのでオリジナルキャラです。たぶん政府側ですかね。でも政府の人間にも野座間製薬側の人間にも優しいです。たぶん…。
そんな感じで書いていきますのでよかったら感想、お気に入りよろしくお願いします!質問も受け付けます。