仮面ライダーアマゾンズ -ϘuinϘuennium- 作:エクシ
地下駐車場にはジャンサーチャーが黄色のジャングレイダーが置かれている。商はエンジンをかけるとジャングレイダーから生物的な音がした。
警備員の追跡などアマゾンの足として開発されたジャングレイダーのスピードにはもろともしない。久しぶりに外に出た商は昼間だというのに肌寒くなったことに驚いた。
(もう冬…?いや秋の終わりか。)
並木道に植えられた銀杏の葉が美しい色をしているのだ。そんな雅な景色を福田から渡されたワイヤレスイヤホンから聞こえる罵声が汚していくような気がする。
『商が逃げたダァ?ふざけんな!俺が駆除してやるよ!』
黒崎隊が追いかけてくるのだろう。あそこの隊は優秀ではあるものの血の気が多い奴が多い。商も人のことは言えないが…。
とにかく今捕まるわけにはいかない。自分が人間を喰うアマゾンを狩るのだ。商はアクセルを回してとにかく4Cから離れられる道を選んで走った。
人通りが少ない路地に入った曲がり角でそこから加速しようとした時、交差点からバイクが差し掛かりジャングレイダーの走行を止めた。
「くそ!4Cか!?」
ライダーはヘルメットを外す。その者の顔を見て商は驚きを隠せなかった。
美しく桜が咲く季節になってから人々の中である噂が流れ始めた。
”人が怪物になる”
ある者は恐れ、ある者は面白がり、ある者は大切な人が突然いなくなったことに悲しみを覚える。
溶原性細胞。今はまだ極秘事項であるが、4Cの駆除隊員たちは皆その細胞に人間が毒されたことで生まれた新種のアマゾンを狩り続けている。
今日も黒崎は札森と隊員たちを連れてアマゾンたちにサブマシンガンを乱射している。
その表情はイライラした気持ちをどこかにぶつけたがっている様子だ。
「黒崎くん、商はまだ見つからないのかね?」
何度も言われた橘の言葉。なぜこんなにもたかが1匹のアマゾンが見つからないのか。
アマゾンズレジスターが反応しないということはまだ覚醒していないということだろうが商は昨年の秋の時点で食人衝動に目覚めようとしていた。
どこかで絶命したということだろうか…?
狩りが終わったバンの中で頭痛薬を数錠口にいれた黒崎の元へ聞くだけでノイローゼになりそうな声が通信で聞こえる。
『橘だ、黒崎くん。アマゾン狩りご苦労。』
「どーも。やっぱ新種でしたよー。」
『腕輪の反応がなかったからね。いやぁ、めんどうな奴が生まれたものだ。もちろん溶原性細胞についても手を付けねばならないが…商のことも後回しには出来ないよ。』
やはりまたその話か。車内で銃を暴発させてやろうかと考えていると、いつもとは違う内容の話を橘はしてきた。
『とりあえずすぐ4Cに帰ってきたまえ。黒崎隊に人員を補給する。』
「? 誰だ?」
『千翼。君も知っているだろう?』
「ふざけんな。あんなやべえ奴と一緒に狩りなんてできるか。」
黒崎は1度千翼を研究棟で見たことがあった。しかしその時はまだネオアマゾンズレジスターをつけていなかったこともあり、黒崎にとって千翼は暴走する他のアマゾンと何ら変わらなかった。
「イユもほかの隊に?」
『あぁ。青山隊だ。福田さんもいますし。』
「よくわかんねえ理由だな。だったらウチの隊はイユを貰う。」
『勝手なことをいうのはやめたまえ。』
「イユじゃねえなら俺は下ろさせてもらう。」
返答しようとすると通信が切れた。舌打ちをして橘はワイヤレスイヤホンを外すと同じタイミングで加納が局長室へ入ってきた。
「橘局長。衛生省長官からの通信が入っています。」
「ちぃ…、また催促か!私が千翼と商を戦わせたことがキッカケで商が4Cから逃走したなどとという説教はもうこりごりだ!すぐに商を見つけさせろ!」
「はい。それと1つ私から提案を申し上げてもよろしいでしょうか?」
無表情を浮かべる加納が何を考えているのか未だにわからない橘であった。
青山隊は今日は待機との命令が出ていた。隊長の青山と副隊長の福田以外は今日は休みということで花見に行っているらしい。
「いいですよねえ。俺も行きたかったっすよ。」
「そういうな。誰かがいなきゃな。」
「福田さんも行けばよかったのに。」
「お前1人で留守番させるわけにはいかない。」
そこに加納が入ってきた。福田は読んでいた本に栞を挟んでかけていた椅子から立ち上がる。
「休憩中申し訳ありません。」
「いや休憩じゃなくて待機ね。」
青山の突っ込みに何も反応を示さない。本当にこの時間は給料が出るのか不安になってきた。
「福田さんにご相談があります。」
「相談?」
「黒崎隊に入る気はありませんか?」
「どういうことだ?」
「これから2体のアマゾンが黒崎隊、青山隊に配属されます。」
「イユと千翼か?」
「はい。イユが黒崎隊、千翼が青山隊です。千翼は極めて戦闘力も高く戦い方がフレキシブルですから実力派の黒崎隊にと思いましたが黒崎隊長の意向もあって青山隊へ…ということです。」
そういうと加納は手にしたノートパソコンを開いて青山と福田に見せた。それぞれの隊移動は福田が青山隊から黒崎隊に配属になる理由がズラズラと書かれている。
「…つまり1度シグマタイプと戦闘をした俺を万が一の場合を考えて黒崎隊に呼びたいというわけか。」
「はい、札森は戦闘においてはど素人ですし戦力は増強させたいところです。もしイユが暴走することがあれば機能停止するまで食い止める必要がありますから。」
「機能停止?」
福田の疑問には答えようとしないところは相変わらず気に食わない。
「でも福田さんが抜けられるとなあ。
「青山隊にはもう1名補充します。訓練生ではありますが何度も同じ訓練を自ら志願し行っているような優秀な人材ですので比較的使い物にはなるかと。」
「よかったぁ。」
「青山、世話になったな。」
「こちらこそですよ。」
2人は握手すると福田は加納に黒崎隊の部屋へと連れられた。
「皆さん、本日から福田さんがこちらの黒崎隊に入ることになりました。よろしくお願いします。」
それだけ言うとすぐに出ていく加納。
「これから黒崎隊で世話になる福田だ。よろしく。」
「久しぶりだなぁ、福田ァ。」
「黒崎…。」
「どうやらこの死体アマゾンの世話の仕方を教えてくれるそうじゃねえか。よろしく頼んだぞー。お前はアマゾンが大好きらしいからなぁ。」
「…素直じゃないな。」
「あ?」
「お前はイユが死んだ現場にいたそうだな。もう少し早ければと…」
「黙ってろ。お前は俺の部下だぞ、コラ。」
「…。」
福田はすぐ近くにあった小さなテーブルに読みかけの本を置いた。壁側にはキャミソールを着たイユが壁の方を向いて立っている。その近くまで行くと福田は小声でイユに挨拶をした。
部屋に1人残された青山はいよいよ部屋を離れるわけにはいかなくなった。福田がいればコンビニにフラフラっと行けたのだが…。
「はー、暇だなー。」
「そうも言ってられませんよ。」
急に声がしたので飛び起きるとそこには隊服を着用した女性が立っていた。
「…水澤…美月さん?」
「お久しぶりです。水澤でいいですから…。」
「でも…」
「本日付で青山隊に配属になりました訓練生の水澤です。よろしくお願いします。」
以前会った時とはまた目つきが違う気がする。確か最後に見たのは別荘での戦いの時…。
アマゾンたちの戦いを目の当たりにして新たな決意を胸に訓練を重ねてきたのだろう。
東京都渋谷区。
人通りの多い街中でとうとう溶原性細胞の感染者が覚醒してしまった。
アマゾンズレジスターをつけていないことから当然発信器による探知は出来ない。
だが情報部から得た情報で出現を確認した青山隊と赤松隊はすぐに出動した。ちなみに千翼はコンディションが悪い…とかで未だに青山隊には挨拶すら来ていない。
「赤松、よろしく頼むよ。」
「あぁ…せいぜい足を引っ張るな。」
「てめえ!」
「まぁまぁそこら辺にしましょうよ。」
止めに入ったのは赤松隊に復帰となった白木だ。商の毒に侵されていたが何とか復帰できるまでになったらしい。しかし未だに決まった時間になると錠剤を服用していた。
しばらくすると福田が運転するバンは渋谷の裏路地に停車した。
「この付近だ。」
後ろから赤松、白木、青山、美月、そして他の隊員たちが下りていく。情報があったのは古いビルの5Fだ。現在はクラブが営まれているようだが、昼間ということもあり営業している様子はない。
”何が何でも民間人には気が付かれないように”
橘からの命令はいつにもまして厳しい言い方であった。これだけ人がいる地区で派手なことをすればまずいことぐらいは分かっている。
いくら世間にバレつつあるアマゾンの存在も政府はまだ公の場では認めているわけではない。
商を逃がした橘としてはこれ以上日本政府に尻を叩かれるようなことは避けたいのだ。
装備を整えた青山隊と赤松隊の面々は静かにビルに入っていく。エレベーターでもしアマゾンと鉢合わせになった時は面倒だと野座間にいた時のマンションでの戦いで学んでいた青山は階段を使うことにした。
しかし妙だ。このビルには空きテナントなどない。他のフロアには敗者や美容室、ホビーショップもあるのになぜこんなにも静かなのだろうか。
「当たり前だ。アマゾンがいるんだからな。」
赤松が青山の通信に答えてくれたのは珍しい。
こちらも珍しく返してやろうかと思ったその瞬間。突然窓ガラスを蹴破ってエプロンを付けたヘビアマゾンが青山に襲い掛かった。
「ぐあ!!こちら青山!対象発見!場所は4Fの廊下だ!」
近くにいた美月はヘビアマゾンの背中にH&K MP7型の短機関銃による射撃で注意をそらせる。
「ナイス!美月さん!」
「水澤でいいです!」
ヘビアマゾンに生まれた隙をついてレガースによる蹴り技でヘビアマゾンに物理攻撃を食らわせる。
溶原性細胞によって生まれたアマゾンには電撃やトラロックなどの成分があまり通用しない。そのため射撃や物理攻撃で体を破壊していくしかないのだ。
「ちぃ!赤松!何してんだ!早く来い!」
『うるせえ!6Fで戦闘中だ!』
なんと、他のフロアにもアマゾンがいるのか。
『むしろ早く片付けてこっち来い!集団覚醒だ!』
溶原性細胞の影響をこのビル全体が受けているのだろう。後に知り得た情報だがこのビルのオーナーが推しているある会社のウォーターサーバーを全フロアに設置していたらしい。
「くそお!」
ヘビアマゾンに集中している間に後ろからウニアマゾンに襲われる青山。ここまでかと思われた時、階段の方向から声が聞こえた。
「アマゾン…!」
オレンジ色の炎をあげながら突然現れた男。それは4Cが必死で追っている商で間違いない。
「商!?」
「久しぶりだな、青山。」
アマゾンニューコッパはウニアマゾンにアームカッターとフットカッターによる切断技を食らわせあっという間に倒してしまった。
「お前どこにいってた!」
「そんな話をしている場合じゃないだろ、すぐ来るぞ!」
今度は美月が相手をしているヘビアマゾンの方へ向かうアマゾンニューコッパ。別のフロアからヒョウアマゾン、カマキリアマゾンとどんどん新種のアマゾンたちが下りてくる。
「やべえ!千翼を呼ぶしかねえか…!」
「その必要はない。仲間がもう1人来てる。」
赤松のいる6Fでも同じようにアマゾンが群れを成し赤松たちに攻撃を仕掛けていた。
「白木!大丈夫か!」
「はい!でもこれはなかなか厳しい…かと!」
「ちぃ…こんな街中じゃ圧裂弾は使えねえ。」
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「アマゾン…!」
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突然鳴り響くアマゾンズドライバーの音。その方向を見ると既にオメガの姿となった悠がアマゾンたちを蹴散らしていた。
「あれは…水澤悠!何でここに?」
「わからないですけど…とにかくこのアマゾンたちを駆除してくれるみたいです。」
「とりあえずはまずこのアマゾンたちをどうにかするのが先決か!」
赤松はメリケンサックを手にはめアマゾンたちに打撃を繰り出す。
3人…とはいっても訓練生であることと女性であることから美月はどうしてもアマゾンに対して致命傷を与えられない。そればかりか集団で襲われると最早手も足も出なくなってしまう。
「水澤!」
「任せろ。」
-
アマゾンネオクローで美月に襲い掛かるハゲタカアマゾンを引き離した。そのハゲタカアマゾンは体に引っ掛かったアマゾンネオクローを外すと窓ガラスを割って外へと逃げる。
「まずい!」
外に出すのは絶対に不味い。青山が窓から顔を出したことには既にハゲタカアマゾンを見た女子高生が悲鳴を上げ、サラリーマンが恐怖に怯えながらも”勇敢に”スマートフォンを向けていた。
「やっちまった!」
「どけ!」
窓から飛び降りるニューコッパ。すぐにハゲタカアマゾンの首を捕まえてアームカッターによって頸動脈から切断した。溢れる黒い血を録画したサラリーマンは急いで逃げ去っていく。
「お…おい!待て!」
青山の指示に従うはずもない。上からオメガが飛び降り、2体のアマゾンがそれぞれ商と悠の姿に戻る。
「あれって…水澤悠…?」
2人はジャングレイダーに乗ってあっという間に去っていった。上を見ると同じように赤松が窓から顔を出している。どうやら狩りは終わったようだ。今回はそれで済む話ではなさそうだが。
その日の夜に衛生省はアマゾンの存在を公表した。その日からしばらく昼のワイドショーではアマゾンの話題で持ち切りとなる。
しかしどこにも”人間に感染するアマゾン細胞”の話は聞かず、あくまで某製薬会社の研究機関から逃げ出したアマゾンが人を喰らうことまでしか報道されていない。
「この度は大変申し訳ございません。…………はい、承知しております。………えぇ、しかし商の行方はわかりました!……………………いえそんな言い訳などでは………はい、千翼にあったアマゾンズインジェクターの調整が完了しています。中身はロウ成分ではありませんが高濃度たんぱく質を入れるだけで彼は素晴らしい戦闘力を発揮します。………………もちろんです、では失礼します。」
テレビを見ながら衛生省長官の電話を切る橘。使えない部下を持つとこうも上の人間が損をすると橘は憤りを隠せずにいた。
「大丈夫ですか?」
「大丈夫なわけがないだろう!」
「…失礼しました。」
「いや私の方が悪かった、加納くん。君のような優秀な部下に当たるとは。にしても衛生省も勝手なものだ。私が”あのこと”を公にすれば政府からの目を4Cから衛生省へと変えることが出来るのを忘れたのだろうかね。」
「……。」
疑問文ではない言葉に加納はあまり答えない。その無駄のなさは橘は気に入っていた。この数年、ずっと自分の下で働いている加納。改めて令華からはいい部下を取ることが出来たと橘は噛みしめた。
こんにちは、エクシです。
まず補足的なものをさせて頂きます。
あれから七羽さんはクラゲアマゾンとしてさまよっているところをマモルくんたちに保護されます。
そんで溶原性細胞をアロマオゾンにぶち込んで…って感じですね。
七羽さんとマモルくんたちのつながりは書きたかったところです!
それと今回はM to Nの最終章への導入でした。
季節はまた周りトラロックから3年目の春です。夏が来ればちょうど4年…ということですね。
もうすぐ5年。
とはいえ1年くらいの描写はかかないかなー?
もうそこまで時間が過ぎることはないかと思われます。わかりませんが…。
とにかくこの章が終わるまであと2話!是非読んでいただけると嬉しいんだゾン。