仮面ライダーアマゾンズ -ϘuinϘuennium-   作:エクシ

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アマゾン。それは最後の始まり。あれから5年……新種アマゾン感染事件は溶原性細胞に対するワクチンを開発した野座間製薬と4Cによって秘密義に組織されたシグマ隊の駆除によって終息を迎えつつあった。そんな中、アマゾン狩りを続けていた悠たちの前にかつて自身が使っていたアマゾンズドライバーを装着した少年が現れ…。


after Z
Episode1「Zipped freshmeN」


子供たちが中庭で遊んでいるのを(こう)は施設の中から黙って見ていた。飲み終わったコーヒー牛乳の紙パックをゴミ箱に投げるも入らない。

 

 

「ちっ。」

 

「あ、学校で買ったもんは持ち込み禁止だぞ。」

 

「んだよ、園長にはチクんじゃねえぞ。」

 

「わかってるよ。でもこの前も怒られてなかったか?」

 

「俺は緋彩(ひいろ)とはちげえんだよ。」

 

 

煌は下に落ちている紙パックを拾って勢いよくゴミ箱に投げ捨てた。制服のシャツを出し、茶色の髪を立てるようにしたワックスの使い方。典型的ないきっている中学生の相貌だ。

 

一方の緋彩と呼ばれた少年は整った髪に学ランのボタンを上まで閉めているような優等生といったところだろう。学生カバンも丁寧に使っているようで煌のものとは比較にならないくらいピカピカだ。

 

 

「エリート学生さんはさっさと部屋で勉強でもしてろ。」

 

「そうさせてもらうよ。お前もアイツらに混ざりたいならそう言えよ。」

 

「はぁ!?なんで俺がガキなんかと…!」

 

「お前は何やかんやで面倒見がいいって園長言ってたぜ。」

 

 

そう言って部屋を出ていこうとする緋彩。扉を開けるとそこには幼稚園から帰ってきた施設の子供が目をこすりながら立っていた。

 

 

「お、おかえり。みんな外で遊んでるぞ?」

 

「うん…でも僕…。」

 

「どうした?泣いてんのか?」

 

「そうじゃなくて…目が…かゆいんだ。」

 

 

そう言って子供はこすっていた目を緋彩に見せた。その目は真っ赤になっておりそこから黒い血管のような模様が浮き出ている。

 

 

「これ…テレビでやってた…やつ!おい煌!」

 

「それどころじゃねえ!外が!」

 

 

外の何人かの子供たちは体から熱を放ち異形の者へと変化していく。そんな様子に泣き叫ぶ別の子供たちを喰らう。

 

 

「ひぃ!」

 

 

緋彩も逃げようとするが外にいた子供が変化したアマゾンに噛みつかれ血がスプリンクラーのように飛び散る。

 

 

「緋彩ぉ!うわああ!!」

 

 

先ほどまでの平穏な日常は崩れていく。これがテレビで報道されていた溶原性細胞とかいうやつによって人間がアマゾンになってしまう現象なのだろう。

 

溶原性細胞を持った親から生まれた子供が母体を通して感染する事例も少なくないと言っていた。ワクチンを打っていたにもかかわらず発症してしまうとは…。

 

死ぬ直前にこんなことを考える余裕があるとは思っていなかった。血が止まらない、意識が遠のいていく。

 

 

「やめろぉ!来るな!くそ!緋彩!緋彩ぉ!」

 

 

煌の声が聞こえる。「俺を呼んでも無駄だ。逃げろ、煌。」そう言いたいがもう声を出す力すら出ない…。

 

目をつぶったその時、施設の窓ガラスが割れる音で緋彩は再び目を開けた。霞んでよく見えないが外からまたアマゾンが入ってきたようだ。

 

 

(あぁ、煌もやられる。)

 

 

しかしそのアマゾンは子供が変化したアマゾンの心臓を一突きにし絶命させた。外からは大量のアマゾンが施設内へ入ってくる。2人を助けたオッドアイのアマゾンは襲い掛かるアマゾンを狩るため再び外へ飛び出していく。

 

緋彩のもとへ煌が駆け寄ってきた。

 

 

「もう大丈夫!もう大丈夫だ!」

 

 

(よかった…でももう俺は…終わりだ。)

 

 

緋彩は静かに目を閉じる。煌の自分を呼ぶ声が意識が遠のくまで聞こえ続けていた。

 

 

 

 

 

 

 

隊服を身に纏った男たちが武器を構えながら倉庫に近づいていく。加藤は輸送用バンの中から指示を出し、それぞれ出口になりえる場所に人を配置し終える。

 

 

『福田隊長、準備完了です。』

 

「よし、準備はいいな。突入!」

 

 

福田の指示でそれぞれ内部へ入っていく。中には溶原性細胞の感染者たちがウロウロしており、突入してきた男たちを見るとエネルギーを放出させながらアマゾンへと変化していく。

 

 

「ったく、ワクチンちゃんと打っておいてもらわないとね!」

 

『どの企業もワクチンを打つ余裕があるわけじゃないですからね。』

 

「まぁそうだけどさ、こうなっちゃ意味がないわけじゃない?そう思うでしょ、カトちゃん。」

 

「三崎!無駄口叩いてんじゃない!」

 

「はー、マコさんに似てきたな、こりゃ。すいませーん!」

 

 

サブマシンガンでアマゾンたちの急所を狙う三崎。その横からネオアマゾンズドライバーを装着した悠がタイミングを見計らっている。

 

 

「悠お坊ちゃん!」

 

「久しぶりに聞きましたよ、それ。」

 

 

アマゾンズインジェクターをインジェクタースロットに装填した。内部の液体がネオアマゾンズドライバーを通して悠に注入されていく。

 

 

-NEW(ニュ・ー)OMEGA(オ・メ・ガ)-

 

「アマゾン…!」

 

 

緑色の熱を発しつつ、球体のエネルギーフィールドを構築。それがはじけるようなエフェクトがかかり、悠はニューオメガへと変身した。5年前とは違ってニューラングアーマーをはじめとする装甲はネオ同様完全なものになっている。

 

 

「あっち!」

 

「悠が変身する時は離れてくださいっていつも言ってるじゃないですか!」

 

「くぅー!また美月お嬢様に怒られちゃった!」

 

「狩りに集中しろ!」

 

 

福田の叱咤に「やべやべ」という表情を見せる三崎はサブマシンガンの引き金から指を離す。

 

 

-CLAW(ク・ロ・ー)LOADING(ロ・ー・ディ・ン・グ)-

 

 

アマゾンネオクローを装備しニューオメガは先端部分をアマゾンたちの方向へと勢いよく飛ばした。アマゾンたちの腹部を貫通させ3体同時にとどめを刺す。

 

 

「悠!残りの1体は私が!」

 

「頼んだ!」

 

 

福田隊の紅一点 美月が弱った1体に短機関銃で脳天を打ち抜く。傷口から黒い血を噴き出して最後の1体も倒れた。

 

 

「よーし、これで5体全部完了かな。」

 

『待ってください、ここで駆除できたのは4体です!』

 

「ということは1体は外に出たということか!?どこから?」

 

「上…ですね。」

 

 

全員が上を見上げるとそこに穴があけられている。ここから残りの1体は逃げたのだろう。

 

 

「すぐ追いましょう!」

 

 

駆除班の一同は外へ出てニューオメガ以外は加藤が運転する輸送用バンに乗り込んだ。ニューオメガは自身のジャングレイダーに跨ってアマゾンの勘というやつを働かせた。

 

 

「…こっちだ!」

 

 

倉庫は海岸沿いにある。ジャングレイダーも朝早い寂れた港を走っていく。上を見るとクワガタアマゾンが作業員の服を着用しながら空を飛んでいるのが見える。

 

 

「この距離じゃ攻撃が届かない…。」

 

 

どのようにクワガタアマゾンに攻撃を当てるか。アマゾンネオニードルでは対象に届くまでに殺傷能力が軽減してしまうだろう。

 

ジャングレイダーを止め見上げていると近くにヘリコプターが飛んでいるのが見える。扉の部分には”4C”のロゴがでかでかと貼られているのが札森のセンスらしい。

 

扉が開きそこから1体の銀色のアマゾンが飛び降りてきた。

 

 

「あれは…!」

 

-AMAZON(ア・マ・ゾ・ン)STRIKE(ス・ト・ラ・イ・ク)-

 

 

銀色のアマゾンはフットカッターによって回し蹴りのようにクワガタアマゾンを切り裂いて真っ二つにした。

 

クワガタアマゾンの死体は海にボトボトという音ともに落ちる。銀色のアマゾンはニューオメガの近くに着地し、紫色のバイザーを手で拭った。

 

 

「アマゾン…ニューシグマ。」

 

 

かつて駆除班によって狩られたアマゾンシグマにアマゾンネオの装甲とバイザーが装着された相貌をしているアマゾンニューシグマ。向かい合う2体のアマゾンの元にそれぞれ2台のバンが近くに止まる。

 

 

「悠、行くぞ。」

 

「…はい。」

 

 

福田に呼ばれアマゾンズインジェクターを取り外すと冷気を放ちながら悠の姿に戻る。自分が乗ってきたジャングレイダーで輸送用バンに続いてその場を去っていく。

 

一方の4Cのロゴがついたバンからは札森が出てきた。

 

 

「帰るよー、グズグズすんな。」

 

 

指示に従いニューシグマはバンに乗り込んだ。立ったままのニューシグマのネオアマゾンズドライバーに装填されているアマゾンズインジェクターを札森は雑に抜き取る。

 

 

「変身解除と。」

 

 

ニューシグマは人間の姿に戻り、無表情で座る隊員たちの中の空いたスペースに座る。札森は自身の言うことを聞くこのシグマ隊を見て鼻で笑った。

 

 

 

 

 

 

 

バンの中で福田はタブレットにメールが1件受信されていたことに気が付いた。

 

 

「…!九州に行っていた二宮隊が戻ってくるようだ。」

 

「お、じゃあ久しぶりにノンちゃんに会えるね。カトちゃんもワカちゃんとしばらくやってたんだったよね?」

 

「別に私は若槻に会いたいとかはありませんが…。」

 

 

運転しながら眼鏡をあげつつ後ろの席の三崎に言う加藤。

 

 

「それと俺たちに面識はないが二宮隊には1体アマゾンもいるらしい。」

 

「え?」

 

 

悠は驚きを隠せない。無理もないだろう、実験体は5年前に全滅し、千翼はもういない。シグマタイプも4C以外では作られていないはずだし、残る可能性は溶原性細胞によって生まれたアマゾンということになる。

 

 

「溶原性細胞の感染者で…理性があるアマゾン…ってことですか?」

 

「詳しくは俺もわからないが…。とにかくその旨を水澤本部長から把握しておくようにとのことだ。」

 

 

悠は美月と顔を見合わせた。今悠と美月はかつて住んでいた豪邸に住んでいる。というのも野座間製薬が溶原性細胞に対するワクチンを開発したことで再び上場企業となって事業拡大が可能となったのだ。

 

令華は”特定有害生物対策部”のトップとして本部長に返り咲いたため、家も取り戻すことが出来たのだろう。その本人は相変わらず家に戻ってくる事はないが。

 

一方野座間製薬がまた大きい組織に戻ったことで4Cの価値は下がった。駆除に関しては野座間製薬の方が優れているし自由に小回りできる金もある。

 

半官半民の4Cでは機動性に欠けると世間からの評価を受け今やテナントを1つ借りて札森が局長として駆除を続けてる…のが表向きの4C。

 

実際は野座間製薬が4Cから手を引いたことで完全に政府機関の1つとなり、莫大な予算を投与してニューシグマをはじめとするシグマタイプのアマゾンを率いて駆除に当たっているらしい。

 

5年前、オリジナルである千翼を狩ってからすぐに福田と美月は4Cを辞めたことから詳しいことを彼らも把握していなかった。

 

 

 

 

 

 

 

二宮隊との集合場所に着いたものの二宮隊の車はどこにも止まっていない。

 

 

「あれー、早すぎましたかね。」

 

「確かに集合時間にはまだ早かったですね。」

 

 

美月の時計は午後1時42分を示している。

 

 

「あらら、新しい時計!これはどうしたんですぅ~?」

 

「いや、これは…!」

 

「僕が買ったんです。美月欲しがってたから。」

 

 

何の恥じらいもなく三崎にいう悠。そんな悠の腕を美月は無言で叩く。

 

 

「おうおうおう~禁断の兄妹愛ですなああ!」

 

「そんなんじゃないです!」

 

「…!あれは!」

 

 

悠は空き地の向こう側に少年が立っていることに気が付いた。

 

 

「誰だ?」

 

「あれは…あぁ。二宮隊の1人ですね、名前は…。」

 

 

加藤を含めた福田隊の隊員たちはその少年が取り出したアマゾンズドライバーに目が留まり黙ってしまう。

 

 

「あれって…!」

 

 

少年はアマゾンズドライバーを腰に巻き付け、アクセラーグリップを捻った。

 

 

-OMEGA(オメガ)-

 

「ウォオオオ!アマゾンッ!」

 

-EVOLU(エヴォリュ)EVO(エヴォ)EVOLUTION(エヴォリューション)!!-

 

 

釣り目のような赤いコンドラーコアが光り、緑色の熱と共に少年の体がアマゾンへと変化していく。悠がドライバーを使わずに変身した際のアマゾン態に非常に似ているが、体には赤い傷のような模様が施されている。

 

 

「君は…。」

 

「アマゾン…殺すぅうう!!」

 

 

アマゾンアナザーオメガと呼べるそのアマゾンはアームカッターを大きくさせながら右手を横に構える。

 

 

「来るぞ!」

 

 

隊員たちはバンの中に戻り武器の準備を整える。まさか二宮隊のアマゾンがここで覚醒するとはだれが考えられただろうか。

 

悠もネオアマゾンズドライバーを腰に巻きアマゾンズインジェクターをインジェクタースロットに装填する。

 

 

-NEW(ニュ・ー)OMEGA(オ・メ・ガ)-

 

「アマゾン…!」

 

 

熱気を放ちつつニューオメガに変身するとアマゾンズインジェクターを操作し武器を生成する。

 

 

-BLADE(ブ・レ・イ・ド)LOADING(ロ・ー・ディ・ン・グ)-

 

 

2人は武器を構えながら睨み合う。そして同時に動き出し刃を重ねた。

 

 

 

 

 

 

 

社長室の扉からノックの音が聞こえた。

 

 

「どうぞ。」

 

 

中に入ってきたのは黒髪の爽やかな見た目の少年。

 

 

「お呼びでしょうか?」

 

「あぁ、緋彩。またアマゾン狩りを頼んでもいいかな?」

 

「もちろんです。どこですか?」

 

「Z地点のハイフン7.5だ。2体のアマゾンが戦っている。」

 

「かしこまりました。」

 

 

一礼して部屋を出ていく緋彩。目黒は賀閣製薬代表取締役のネームプレートをハンカチで拭きつつジャングレイダーで去っていく緋彩を窓から見下ろしていた。

 

 

 

 

 

 

 

アナザーオメガは本能のまま攻撃を繰り出すもニューオメガによって全てかわされアマゾンネオブレイドによる一閃をうけ後ろへ吹き飛ぶ。隊員たちもニューオメガの優勢さをみて援護射撃を撃たない。

 

 

「大したことなさそうだね。まぁ俺たちがやったらひとたまりもないんだろうけど…さ。」

 

「油断するな、三崎。いつ攻撃の矛先がこちらに向いてくるかもわからんぞ。」

 

「りょーかい。」

 

 

アナザーオメガは福田たちのことなど見えていない様子だった。溶原性細胞の感染者であれば真っ先に人間を狙いに行くはずにも関わらずあくまでニューオメガだけに固執するのはよくわからなかった。

 

アームカッターとアマゾンネオブレイドが再びぶつかり、ニューオメガはアナザーオメガに己の疑問を投げかける。

 

 

「君、本当に新種のアマゾン!?どうして人間を狙わないの?もしかして…実験体の生き残りとか!?」

 

「一緒にすんな、お前らとな!」

 

 

左腕を見るとアマゾンズレジスターどころかネオアマゾンズレジスターすらつけられていない。鷹山仁と同じくアマゾンズレジスターによる投薬なしで理性を保っているのだ。

 

 

「君はいったい…!」

 

「話すことなど何もない!」

 

 

右手のアームカッターでニューオメガに攻撃をしようと手を振りかざした瞬間、ニューオメガとアナザーオメガの双方にアマゾンネオニードルによる射撃が命中した。

 

 

「ぐぅ!」

 

「うぁ!」

 

「なんだ!?」

 

 

隊員たちも攻撃の方向を見る。そこには赤い体にネオアマゾンズドライバーで変身した者に形成される装甲を纏ったアマゾンが立っていた。緑色のバイザーといい体のいろといいアルファをイメージさせる。

 

 

「仁…さん?」

 

「お前…!」

 

 

アマゾンニューアルファというべきそのアマゾンは2人に襲い掛かる。三つ巴の戦いに隊員たちは援護射撃を撃つか迷っていた。ニューオメガを助けるために銃を撃てば片方が隊員たちに襲い掛かってくるかもしれない。ニューオメガの助けを見込めずそのような状況に陥るのは合理的ではない。

 

 

「悠!」

 

 

しかしそんなことを考えず美月は短機関銃でアナザーオメガとニューアルファへ攻撃を与える。

 

 

「…お前…邪魔をするなら消えてもらう!」

 

 

アナザーオメガは美月に向かって襲い掛かろうとしたが、それをニューアルファは止め、アームカッターで腹部を切り裂いた。

 

 

「ぐあ!」

 

 

人間がいくら攻撃してきても絶対に人間は傷つけない。そんな覚悟をニューアルファから感じるニューオメガ。

 

 

「仁さん…?仁さんなんですよね?」

 

 

ニューアルファは黙ったままニューオメガに襲い掛かる。

 

 

-BLADE(ブ・レ・イ・ド)LOADING(ロ・ー・ディ・ン・グ)-

 

-BLADE(ブ・レ・イ・ド)LOADING(ロ・ー・ディ・ン・グ)-

 

 

2体のアマゾンのアマゾンネオブレイドがぶつかり合った。この感じ…。違う、これは仁ではない。

 

長年に渡って戦い続けてきたアルファはこんな甘い攻撃の仕方はしてこない。そもそも彼は武器を滅多なことがない限り使わないのだ。

 

 

「君は…誰だ!」

 

「アマゾンに話すことなどない。消えろ。」

 

-AMAZON(ア・マ・ゾ・ン)STRIKE(ス・ト・ラ・イ・ク)-

 

 

左手を使ってインジェクタースロットを操作しネオアマゾンズドライバーを装着するアマゾンライダーのキック技 アマゾンストライクを発動させようとするニューアルファ。

 

左足を軸足として右足のフットカッターでニューオメガに斬りかかろうとした時、福田隊とはまた別の部隊がニューアルファに向けて発砲した。

 

ニューアルファはバランスを崩し倒れる。ニューオメガは後ろに下がって銃を撃った部隊の方を見た。そこから1人全速力で走ってくる女性。望だ。

 

 

「おらぁ!お前何やってんだ!」

 

 

自分の方に来るかと思わず手で顔を覆っていたニューオメガ…の方ではなく起き上がろうとするアナザーオメガの方に蹴りを入れる望。

 

 

「いてえ!」

 

「煌!先に行くんじゃねぇ!勝手なことすんなよ。」

 

「す…すいません。副隊長!」

 

「ふ…副隊長?」

 

 

ニューオメガの驚く声を聞いて望は声をかける。一方のニューアルファは姿勢を立て直すと今度はアナザーオメガに襲い掛かろうとするも、二宮隊と福田隊がニューオメガとアナザーオメガを囲むような陣形を取った。

 

 

「…ここまでか。」

 

 

ニューアルファは冷気を放ちながら緋彩に戻った。

 

 

「待てよ!緋彩!」

 

 

アナザーオメガも少年の姿に戻り声をかけるも、緑色のジャンサーチャーをしたジャングレイダーに乗ってあっという間に去っていった。

 

それを追いかけようとする少年だったが三崎がその首根っこを掴む。

 

 

「おいこら!なーんで坊ちゃんに襲い掛かったりしてきたんだよ!」

 

「うるせえ!俺はアマゾンを1匹残らず狩るんだよ!。」

 

 

どこかで聴いたことがある台詞。この煌という少年にしても先ほどのアマゾンにしても仁の影を悠に見せてくる。千翼を狩った日から数度戦ったが、最近はパッタリと姿を見せなくなってしまった。

 

 

「お前いい加減にしろ!悠は駆除班の仲間だ!手出したらウチが許さねえからな!」

 

望の一声で静かになる少年。

 

 

「それと、このメンバーで行きてえとこがあんだけど。」

 

 

運転手の加藤はその場所を聞くことなくナビの目的地を検索履歴に残っている霊園に設定した。

 

 

 

 

 

 

 

緋彩は賀閣製薬の本社ビルに着くと社長室へと直行した。34階にエレベーターが到着し扉が開くと金と黒で荘厳な雰囲気を醸し出している廊下が一直線にある。

 

その先の扉を開けば秘書室があり、そこをさらに抜ければようやく社長室…というわけだ。

 

社長室の扉をノックすると目黒の声がした。扉を開けると険しい皮をした目黒が社長室の椅子に腰をかけている。

 

 

「言いたいことはわかるね。」

 

「はい、申し訳ありません。」

 

「分かっていればいいんだ。今回は溶原性や寄生型ではなく野座間のアマゾンだったしまぁいいとしよう。それにしてもまさか賀閣製薬(われわれ)野座間製薬(あいつら)の二の舞になるとはね。」

 

「…。」

 

「君に言っても仕方がないことか。」

 

「…失礼します。」

 

 

出口に向かおうとする緋彩を引き留める目黒。

 

 

「分かってるよ、緋彩くん。彼に関しては安心したまえ。」

 

「…はい。」

 

 

緋彩は社長室の重い扉を開け出ていった。

 

 

 

 

 

 

 

三崎は”志藤家”の墓石に水をかけ、その間に望は火をつけた線香を香炉皿に置いた。2人が手を合わせそれに続いて駆除班の面々が手を合わせていく。

 

最後に煌も手を合わせるが知らない人の墓に参るというのはどうも釈然としないようだ。

 

 

「あの…誰の墓なんすか?」

 

 

バンに戻る道の途中で二宮に尋ねる煌。

 

 

「高井くんが前に入っていた隊長のだ。」

 

「アマゾンに喰われちゃったんすか?」

 

「いいや、アマゾンになっちゃったんだよ。」

 

 

後ろにいた三崎が珍しく真顔で答える。

 

 

「それって…溶原性細胞とかいう?」

 

「うん、溶原性細胞のオリジナルのアマゾンと戦った時の傷が原因でね。」

 

「それで…。」

 

「狩ったよ、僕が。」

 

 

三崎の隣で歩く悠が自分の手を見つめながら言う。煌は腕組みをしながら悠の目の前で立ち止まった。

 

 

「やっぱアマゾンってろくな奴がいねえな。アマゾンになっちまったとはいえ仲間だったんだろ!どこかに閉じ込めておくだとかもっとあっただろーが!」

 

 

望が煌を殴ろうとすると、福田が望の前に入って煌の頬を思いっきり殴った。

 

 

「いって…。何すんだ!」

 

「…志藤さんはこうなることを望んでいた。」

 

「はぁ!?」

 

 

殴られた勢いで地面に転がっていた煌に若槻が手を差し伸べて立ち上がらせた。

 

 

(なんなんだよ、こいつら。)

 

 

煌はノザマペストンサービスに着くまで納得がいってない様子。

 

一方の望はようやく志藤に会えたことへの安心感と最期の瞬間傍にいることが出来なかったことへの後悔の気持ちの両方を感じながら帰りの車内はずっと黙っていた。

 

 

 

 

 

 

 

街の中に流れる川のほとりに洒落たカフェテリアがある。そのテラスでは男女をはじめとする数組の客が景色とコーヒーを楽しんでいた。

 

テラスの中にあるカウンター席に座るサラリーマン風の男の元に彼が頼んだアイスコーヒーが運ばれて来た。

 

彼は絶品だと評判のアイスコーヒーがいかほどの味か仕事ついでに確かめようと思ったのだ。一口飲んでみるとその熱さに思わず声が出てしまう。

 

 

「あっち!おいおい、アイスって頼んだだろ!」

 

「え…確かにアイスコーヒーをお持ち致しましたが…?」

 

「はぁ?これ触ってみろよ!すごく…あつ…い…?」

 

 

右手から熱が発せられている。コーヒーが熱いのではない。今自分の手が熱気と共に別の生き物のような相貌に変わってきたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

ノザマペストンサービスのアジトに置かれたパソコンから機械音が流れる。長くここから離れていた望にとっては懐かしい音だ。

 

 

「はい、駆除班。」

 

『アマゾンの通報です。場所はN地区M川のほとり。カフェテリアにて客がアマゾン化した模様です。』

 

「溶原性か?」

 

『それはまだ確認できていません。』

 

「了解。だそうだ。」

 

 

加藤が通信を切ると全員で行けば機動力に問題があるということで福田が全員に指令を出した。

 

悠と煌は当然出撃。狙撃担当の福田と美月、物理攻撃担当の望と若槻が現場に行く。一方の二宮と加藤、そして片腕というハンディを持つ三崎はアジトで待機することとなった。

 

 

「二宮、情報を逐一報告してくれ。溶原性か寄生型かで戦い方が変わってくるからな。」

 

「了解。よろしくお願いしますよ。」

 

 

福田隊の運転手だった加藤が待機となればバンを運転できるのは隊長である福田だけとなる。ジャングレイダーに乗る悠以外は申し訳ない顔をしながらバンの後ろから乗り込み、福田は運転担当に戻ることとなった。

 

 

 

 

 

 

 

組織というのは巨大な力となり得るが、巨大であるがゆえに身動きがとりにくくなったり、情報の共有が遅れてしまうことがある。しかし今の4Cは約10年前に使っていたオフィスで十分間に合う機関となりかえって身動きがとりやすくなった。

 

…と札森は納得していた。4Cという機関でまともな昇進が可能な役職といえば局長だろう。5年前は臨時の局長代理になった時もあったが、結局前局長である橘が戻ったことでただの副隊長になり下がってしまった。

 

今や札森は局長となった。こんな小さなオフィスの一機関の局長に。

 

 

「ハーア…。ま、今の方が楽でいいけどね。」

 

 

5年前、座り心地が良さそうに見えた椅子は対していいものではなかったが、とりあえずは今の状況に納得している。部下は両手の手で数えるくらいの数ではあるがアマゾンの駆除率は格段に上がっている。

 

 

「そろそろついたー?」

 

『あと3分で到着予定。』

 

「りょうかーい。野座間が来る前にお願いしますよーっと。」

 

 

この無機質な返事には聞き飽きたが絶対服従をするシグマタイプのアマゾンにはかなり満足している。これまで見た中で命令に従わなかったシグマタイプのアマゾンはいなかった。あの男でさえ今は自分の言うことを素直にきく。

 

 

「あ、イユは逆らってたか。」

 

 

1人の暗いオフィスの中、札森は呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

笑顔にあふれていたカフェテリアはキノコアマゾンによって血生臭い惨劇の現場と化した。血が抜かれた人々の死体があちこちに転がっている。

 

最初に現場に到着したバンには”4C”のステッカーが貼ってある。中からサングラスをかけた屈強な男たちが6名ほど降りてきた。

 

 

「ヴウウ…?」

 

 

キノコアマゾンはその者たちの臭いが自分と同じアマゾンであることに気が付いたようだ。不思議そうな素振りを見せる。

 

 

「ターゲット確認」

 

「対象を抹消します」

 

 

隊員たちがそれぞれ呟きはじめ、左腕の袖を捲り上げた。それぞれの腕につけられているのはネオアマゾンズレジスター。

 

かつてイユが使っていたものとほぼ同様のものだ。技術の発達によって今やアマゾンズドライバーで変身したアマゾンとほぼ同じスペックを装着者にもたらすことが出来る。

 

 

「「「「「アマゾン」」」」」

 

 

5人の隊員がネオアマゾンズレジスターのクチバシ状のスイッチを押し込むと一斉にアマゾン化が始まる。

 

全員アマゾンシグマとうり二つの姿をしたシグマアマゾンはアマゾンズドライバーは当然腰には巻かれていない。ネオアマゾンズレジスターのランプは赤を示している。

 

そして最後の1人がネオアマゾンズドライバーを腰に巻きながら前に出てきた。男の右耳にはめられたワイヤレスタイプのイヤホンから札森の声がする。

 

 

『じゃあお願いしますよ~。黒崎隊長~。』

 

 

黒崎はサングラスを取りアマゾンズインジェクターをネオアマゾンズドライバーに装填し、内部の液体を注入する。

 

 

-NEW(ニュ・ー)SIGMA(シ・グ・マ)-

 

「アマゾン」

 

 

紫色の炎をあげながら黒崎の体が変化していく。紫色のバイザーにニューラングアーマーを身につけたアマゾンニューシグマに変身を遂げた。

 

 

「狩り、開始」

 

 

ニューシグマの声に反応してシグマアマゾンたちがキノコアマゾンを囲むような陣形を取る。

 

キノコアマゾンがあたふたと周りを見回している間にシグマアマゾンたちは引っかき攻撃や噛みつき攻撃を繰り出す。キノコアマゾンの体からは血が噴き出し、シグマアマゾンたちの目にこべり着く。

 

 

-BLADE(ブ・レ・イ・ド)LOADING(ロ・ー・ディ・ン・グ)-

 

 

ニューシグマの右腕にアマゾンネオブレイドが召喚される。さらにインジェクタースロットを操作して必殺技が発動。

 

 

-AMAZON(ア・マ・ゾ・ン)BREAK(ブ・レ・イ・ク)-

 

 

腰を低くして構えたニューシグマは驚異の跳躍力でキノコアマゾンに斬りかかる。胴体が半分に割れその死体の中から同じく半分に割れた人間の死体が出てきた。

 

 

「…ターゲット沈黙。寄生型アマゾンだったと思われる」

 

『あー面倒だなあ…。ま、うまいことやっとくんで。じゃあ帰ってきてくださ~い。』

 

 

札森の指示を聞いてアマゾンズインジェクターを取りニューシグマから黒崎の姿に戻った。周りのシグマアマゾンたちも冷気を放ちつつ人間の姿になり、アマゾンとサラリーマンの男の死体を踏みつけながらその場を去っていった。

 

 

 

 

 

 

 

アジトで待機していた加藤のインカムに福田から通信が入った。

 

 

『二宮、いるか?』

 

「二宮隊長は今席を離れてます。」

 

『加藤か。まぁいい、たった今現場に到着した。既に駆除は終わっている。やり方から見て4Cだろうな。』

 

「シグマ隊ですか…。それで対象は?」

 

『寄生型アマゾンだった。コアごとやられている。』

 

「相変わらず手段を選びませんね…。了解しました。水澤本部長に報告しておきます。」

 

 

加藤は福田からの通信を切るとすぐに”水澤令華”と書かれたボタンをクリックした。

 

 

『はい、水澤です。』

 

「こちら福田隊 加藤です。たった今、福田隊長から連絡がありました。着いた頃には4Cによって寄生型アマゾンが駆除されていたようです。」

 

『寄生型…ということは人間ごとですか。』

 

「はい、とりあえずこちらに帰還するそうです。」

 

『わかりました。ご苦労様。』

 

 

令華は野座間製薬役員フロアの廊下を歩きながら通話を切った。手には寄生型アマゾンの資料が握られている。

 

寄生型アマゾン。溶原性細胞によって現れたアマゾンが野座間製薬が開発したワクチンによって覚醒を防がれた辺りから現れ始めたアマゾンだ。

 

その名の通り、生き物に寄生することで生きるアマゾン。最大の特徴は寄生される対象が生きたままであることだ。養分を吸い取りつつ宿主を蝕み続ける子のアマゾンは何としても駆除しなくてはならない。

 

 

 

 

 

 

 

旧4Cビルのほとんどは衛生省関連の別機関によって管理されている。しかし研究棟のみシグマタイプのアマゾンの管理のために今も4Cが所有しているため、札森もそこへ向かった。

 

研究棟の中は寂れた外観とは相対して多くの研究者たちによって賑わっている。存在が世の中に明らかになってアマゾンに関する研究をする者も増えたことが影響しているだろう。

 

担当の研究者が札森を迎え入れシグマタイプのアマゾンを管理する部屋に案内した。

 

 

「じゃあまだ作れそうすか?」

 

「はい、毎日全国の拘置所から遺体が運ばれてきますのでそれにアマゾン細胞を移植し続けています。大半は拒絶反応が酷くて肉体が使い物になりませんが…。」

 

「それでも十分すよ。んでネオアマゾンズドライバーを使えそうなやつは?」

 

「駄目ですね。とても作れる気がしませんよ。なぜ黒崎が使えるのかすらわかっていませんから。」

 

 

やはり無理かと札森は落胆する。ネオアマゾンズドライバーを今まできちんと使えたのは千翼と悠だけだ。天城や商は結局副作用によって苦しんでいた。

 

千翼のデータは4Cに残されていたが悠の情報は少ないため、ネオアマゾンズドライバーを使えるものの特徴は未だにわかっていない。

 

数年前、アマゾンとの戦いで黒崎が死にその遺言によって黒崎はシグマタイプのアマゾンとして利用されることとなった。

 

一方悠によって回収されたネオアマゾンズドライバーは4Cによって引き取られ、それを改造することで黒崎の体質に合わせたものになった。

 

そうは言ってもシグマタイプのアマゾンが皆ネオアマゾンズドライバーを使えるわけではない。むしろ使用可能なものなど珍しいのだ。

 

黒崎は何の拒絶反応を起こすことなくそのネオアマゾンズドライバーを使ってニューシグマへと変身し駆除を続けている。

 

札森はオフィスに帰り机の中にしまってある血だらけの封筒を取り出した。封筒のあて名の部分には”遺書”と書かれている。黒崎が駆除に行く際にいつも胸ポケットに入っていたものだ。

 

――これを読んでいるということは俺が死んだということだろう。俺の死後、もしオリジナルから直接入った溶原性細胞が覚醒することなく俺が死んだとしたら俺の死体をシグマタイプのアマゾンにしてもらいたい。そして4Cの戦力として俺を使え。それがイユや千翼を利用し続けてきた俺の責任だ。――

 

札森は鼻で笑いながら再び便箋を封筒へ入れて机へしまった。

 

 

「自分をアマゾンにしてほしいとか…。どうかしてるな。」

 

 

札森は窓から曇り空を眺めていた。

 




こんばんは、エクシです。
新しい章になるということでモチベーションが高まっております笑

アマゾン増えましたねー。謎なアマゾン増やしすぎたかもw
とりあえず整理しておきますね。

アマゾンニューオメガ…水澤悠。所属組織は野座間製薬。
アマゾンアルファ…鷹山仁。行方不明。
アマゾンアナザーオメガ…謎の少年。所属組織は野座間製薬。
アマゾンニューアルファ…変身者不明。所属組織は賀閣製薬。
アマゾンニューシグマ…黒崎武。所属組織は4C。

アマゾンニューシグマの正体、それはシグマタイプのアマゾンとなった黒崎です。最終回で銃を置いた黒崎ですが自分の責任、義務…あらゆるものを背負って新種アマゾンを駆除し続けていた黒崎は死んだ後も戦っていました。

ところで突然現れた”賀閣製薬”とは…?ってなりますよね。
少し捕捉させてもらいますと賀閣製薬は野座間製薬に続いて業界シェアNo.2を誇る企業でした。トラロック事件以降は野座間が事業縮小したのでNo.1になりましたが、再び野座間が溶原性ワクチンの開発によって息を吹き返したのでNo.2にランクダウン…というわけですね。社長は目黒社長です。

また志藤は戦いのさなか、覚醒してしまい悠によって駆除されています。クラゲアマゾンに風穴を開けられ、最後の戦いでも傷ついていた分覚醒が早かったのかもしれませんね。

大事な主要キャラではありましたが、5年間という長い期間を際立たさせるためにもこういうことにしておきました。

ちょっとモチベが下がっていて更新が遅れがちですが頑張りたいのでコメやお気に入り、よろしくお願いします。
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