ダンガンロンパ・H&D ~絶望だよ、全員集合!~ 作:名もなきA・弐
短くなってしまいましたが、どうぞ。
『大せーいかーいっ!!今回、超高校級の幸運である本庄因幡クンを殺したクロは…超高校級の優等生、一関来羽クンでしたー!!』
「あ、あぁぁぁ……」
場違いなほど明るく楽しそうにケタケタと笑うモノクマとは対照的に、犯人として指名された一関君は倒れそうな身体を証言台で辛うじて支える。
私たちは真実を突き止めた、本庄君を殺した犯人を見つけ、結果として生き残ることが出来た。
…それが何だ?
だから、どうしたというのだ。
こんな状況で、大手を振って喜ぶことなど出来るはずもなかった。
全員が一関君の方を複雑な感情の困った視線を向けていたが、やがて坂本君が彼の元まで足早に近づくと胸倉を掴んだ。
「一関っ!てめぇ…てめぇっ!!何でだ、何で本庄をっっ!!!」
「やめろ、坂本っ!」
憤怒の形相で必死に声を搾り出そうとする彼を一関君は焦点の合わない目で彼を見つめている。
坂本君はそんな彼を殴り飛ばそうと握り拳を固めるが桐生君がそれを制止させ、比較的冷静だった一条君が一関君に尋ねた。
「おい、何であのチビを殺した?」
「……」
「言っとくが、だんまりは許さねぇからな。この場にいる全員の前で、はっきりと答えてもらうぜ…!!」
そう睨みつけた彼に対して、一関君はようやく口を開く。
「…動機だよ」
「あっ?」
「俺は、出たかっただけだよ。こんなふざけた場所から…」
感情も何もないその言葉に、坂本君を含む全員が黙って聞く中、間を置いて二ノ瀬さんが尋ねる。
「因幡君を狙ったのは、永久ちゃんの推理通りなの?」
「毎日映画を観ているのは知っていたからな。アナウンスと時間を利用したトリックには丁度良かったし、気の弱いあいつなら自殺に見せかけられると思ったから標的にしただけだ」
「丁度良かったって…てめぇええええええええええええええええっっ!!!」
頷いた一関君の言葉を聞いて坂本君が烈火の如く暴れるが桐生君が取り押さえる。
そんな様子をただ黙って見つめながらも、彼は言葉を紡いだ。
「なぁ、どうして君らはそんな簡単に割り切れるんだ」
「えっ?」
「あんな映像を観た後に、どうして君らは何事もなく生活出来る?どうしてお前らはまだ脱出出来ると思っている、どうしてどうしてどうしてどうして!!出会ったばっかの人間のことを考えられるっ!!?」
最初は淡々と、しかし途中から感情をぶつけてくる彼に私は何も言うことが出来なかった。
あんな映像…恐らくモノクマが私に見せた『動機の映像』のことだろう、まさか…!
「あの映像を、信じたのですか…!」
「俺たちを船に閉じ込めるような奴だぞっ!!俺だって信じられなかった、だけどこいつが目の前で爆発した時分かったよ…こいつは、モノクマの言っていることは本当のことだと!だから、だからっ!」
そこで間を置くと、絞り出すように彼は言葉を吐き出した。
「外にいる家族が無事なのか、確かめたかった……無事なのか確かめたかったんだ。俺が優等生になったのは家族のためだったから、母さんや弟たちのために優等生になったのに…」
「私たちよりも、家族を優先したのですかぁ…」
「どう取ってもらっても構わない、俺にとって大事だったのは母さんたちだった。ただ、それだけのは…」
目に涙を溜めながら尋ねた清浄さんへ答えた言葉を遮るように一関君は吹き飛ばされた。
彼の近くにいたのは坂本君…そこでようやく、桐生君の制止を振り切って彼を殴り飛ばしたのだと分かった。
「バカ野郎…!どうして俺たちに話さなかった」
「…言ったところで何も」
「分かんねぇだろっ!?自分が優等生だからって、勝手に思い詰めてんじゃねぇよっ!!何でおれたちを頼らなかったんだよ…バカ野郎、この…バカ野郎……!!」
そこで、ようやく…坂本君が泣いているのが分かった。
彼は…本庄君を殺した一関君のために怒ったのだろうか。
私たちのリーダーとしての役割を担ってくれた一関君、だが彼も普通の高校生だったのだ。
誰よりも家族を大切にし、誰よりも弱い自分を見せずに戦っていた普通の人間だった。
『あー、そろそろ良いかな?そんなベッタベタな三流の青春コントを見るためにこんな裁判を始めているわけじゃないんだよねー』
心底つまらなそうに、言葉を発したのはモノクマだ。
欠伸をすると奴は赤い瞳を一関君へと向ける。
『結局さ、君は外に出たかったら殺した。そんで周りを欺くためにあんなアリバイトリックを思いついた。青臭い殺人鬼の言い訳なんてそんなもんだよ』
「そ・れ・に」とモノクマは楽しそうな声を漏らした。
『家族の安否を確かめたかったのも結局、自分が優等生であるための動機づけが必要だったからでしょー!』
「なっ、ふざけるなっ!俺は家族のために…」
『だって、その大義名分がなきゃ優等生になれなかったもんね!!その自己中心的な性格はまさしくグッドだよ!!でも、簡単に解決出来るような殺人を起こす奴は…この船にはいらないよ』
反論しようとする一関君を気にせずに、モノクマは彼の想いを侮辱するように発言すると声のトーンを落とす。
その様子に、細井さんは怯えた眼差しでモノクマを見つめた。
「も、もしかしてー…」
『そう!待ちに待ったおしおきの時間だよ!!もう恒例行事だしね、さっさと始めるよ!』
「ま、待ってくれっ!せめて、せめて母さんたちが無事なのか…」
『今回は超高校級の優等生である一関来羽クンのために』
その宣言にせめて家族の所在を尋ねようと一関君は玉座の上に立つモノクマに駆け寄るが、無情にも奴は進行を続ける。
『スペシャルなおしおきを用意しました!』
「頼むっ!教えてくれっ!!母さんは…みんなは大丈夫なのか!?おい、おいっ!!」
『では、張り切っていきましょう!おしおきターイム!』
「嫌だ…嫌だああああああああああああああああああああああああっっっ!!!!」
最後まで、何も答えなかったモノクマに…一関君は何も知ることが出来ないまま、ただただ悲痛な叫びを裁判場に響かせた。
【GAME OVER イチノセキくんがクロにきまりました。おしおきをかいしします】
モノクマが木槌で赤いスイッチを押す。
同時にその文字とドット絵のモノクマが同じくドット絵の一関君を連行していく映像が表示された。
そして、まるで何かのショーでも始まるかのように裁判場の照明が七色のスポットライトで照らし始めた。
一関君は逃げようと私たちが使ったエレベーターの元まで走るが、それよりも早く扉から伸びてきた鎖付きの首輪が彼の首を捉え固定すると凄まじい力で首を引っ張る。
一関君の身体は床を引きずられ、涙をまき散らしながら裁判場の外へと引っ張り出され、無機質な扉への先へと吸い込まれると同時に、上空のモニターが映し出された…。
≪ビバリーHELLズ高校白書 『超高校級の優等生 一関来羽 処刑執行』≫
一関君がいるのは緑色の黒板に木製の教室、そして彼が座って…正確には座らされているのは木製の机と椅子。
すると、そこに眼鏡とスーツを着たモノクマが現れる。
眼鏡を上げて、汗を流しながら一関君の近くに大量に積まれた書類を置くが身体を拘束されている彼は逃げることも作業に手を付けることも出来ない。
そこから続くようにセーラー服を着たモノクマや学生服を着たモノクマが次々と現れるとあれやこれやとナイフやライター、ハサミなどの大量にある危険物を積んでいく。
やがて何も行動しない彼に激怒したモノクマたちは、椅子に拘束されている一関君を囲むと集団暴力を開始した。
映像では漫画的表現のようになっているが、当人である一関君はアザが浮かび上がり身体中から血を流している。
モノクマたちは爪を出しているため、一関君の切り傷は酷くなる一方だ。
満面の笑みのモノクマたちは最後に大量に積まれてある書類や危険物を彼に向けて一斉に倒した。
すると、その中にあるライターが書類を着火させると一関君は大量の危険物でズタズタになった後に、燃え盛る書類の下敷きとなる。
そんな中で担任風のモノクマは、燃え上がる校舎をバックに生徒たちであるその他のモノクマたちと青春の涙を零したのであった。
モニターに映し出された映像は、まさに地獄絵図…。
優等生としての尊厳を踏みにじるような「おしおき」と呼ぶにはおぞましいほどのそれは、『絶望』と呼ぶに、相応しい光景だった。
『イヤッッッホーーーーーーーーーーーーーッッ!!!!エックストリーーーーームッ!!やっぱり、最初のおしおきはこうじゃなくちゃね!アーッハッハッハッハッハ!!』
「い、嫌あああああああああああああああああああああっっ!!」
「「……っ!!」」
「んだよ、ありゃあ……!?」
モノクマが楽しそうに歓喜の言葉を口にする中、清浄さんは悲鳴をあげ、神楽阪姉妹は言葉を詰まらせて絶句し、一条君は顔を青ざめて呟く。
誰かの泣く声が、誰かの悔しげな声が、誰かが怯えた声が聞こえる。
呆然とする私たちを余所に、モノクマは楽しそうに口を開く。
『オマエラ!!今日の学級裁判は最高に良かったです、ボクとしては「優」の評価を送りたいところですが…ボクの前でツマラナイ青春ごっこを展開したので「可」の評価でーすっ!今後はこのようなことがないよう、しっかりと反省点を活かしてくださいね!!』
「…てめぇ、人の命を何だと思ってやがる…!!」
『あれあれ、喧嘩師がそれ言っちゃう?ボクにとって命は絶望させるのに必要な要素の一つ…ただそれだけだよ』
桐生君の殺気の籠った眼差しにモノクマは照れ臭そうに答える。
全員が身動きの出来ない状況で一歩前に出たのは松成君だ。
「お前は、ボクたちに何をさせたいんだ?」
『前にも言ったじゃん。絶望…ただそれだけだよ、ボクはそれだけが目的で動いているんだからさ。んじゃーねー!!』
それだけを言うと、モノクマは姿を消してしまった。
全員がどうすることも出来ずに黙っている中、最初に行動したのは一条君だった。
「あー!!たく、うざってぇなぁっ!!俺は先に戻るぞ!これ以上こんな狂った場所にいられるかっ!」
頭を掻きむしりながら、一人でエレベーターの方に行くが少しだけ立ち止まると首を私たちの方に向ける。
「もし、くだらねぇ考えをしてる奴がいたら俺のとこに来い。愚痴ぐらい聞いてやる」
吐き捨てるようにそう言って一条君は今度こそエレベーターに乗り込んで行った。
それを聞いた二ノ瀬さんは苦笑いをする。
「アタシたちも戻りましょう」
「だな、何だか…疲れちまったよ」
坂本君の言葉に他の人も次々にエレベーターへと乗り込んでいく中、松成君は立ち止まっている私に話しかける。
「貝原さん」
「…大丈夫です」
「無理をしないで。今だけは…泣いて良いから」
その言葉が私の抑え込んでいたものを決壊させた。
「う、うぅ…ひぐっ、あぁぁぁ……!!」
濁流のような感情に逆らうことなく、私は堰を切ったように泣いた。
松成君がいるにも関わらず、年甲斐もなく泣き叫び、パーカーの裾を強く握り締めて涙を流した。
殺されてしまった本庄君と、追い詰められ、最後には何も知ることなく処刑されてしまった一関君のために…ただ泣くことしか出来なかった。
CHPATER1 才能はかく語りき End →To Be Continued.
残り乗船者数:十三名
何だかんだで第一章終了です。ダンガンロンパらしさが再現できたかどうかかなり不安です(汗)
それでは、第二章をお楽しみいただけたら幸いです。ではでは。ノシ