今回はなんか展開が早すぎるかも。最近スランプだァ……。
それでは、我らが第二位の取材をマイペースにお楽しみください♪
博麗神社境内付近の一角。
何十人もの人間、妖怪が参加している今回の宴会の中でも一際異様な雰囲気を放っているその場所では、宴会のメインとも言える男性が一升瓶片手に何やら隣の女性に言い寄っていました。
「東風谷ァ、今すぐここでストリップだ!」
「なんて提案してくるんですか雪走君!」
現人神も度肝を抜くレベルの申し出をさらりと漏らした彼に顔を真っ赤にして反論する守矢神社の風祝さん。確か東風谷早苗という名前でしたか、彼女はまだお酒を飲んではいないようで、素面の状態で男性の応対をしています。発言は嫌がっているのに、どこか嬉しそうなのはいったい何故でしょうか。阿求にはイマイチピンと来ませんよ、えぇ。
今回の取材対象は人気投票第二位を獲得した雪走威さんです。一か月ほど前にふらりと外から迷い込んできた外来人である彼は、持ち前のマイペースさで周囲を上手い具合に翻弄しながらいつの間にか博麗神社の居候として幻想郷内での地位を確立しつつありました。今や人里でも彼のことを知らない人はいないというくらい幻想郷に染まってしまっています。……評判の内容は、ちょっとえっちぃものばかりですが。
配達屋さんの取材も終わったので、満を持して雪走さんの取材を行おうと思っていたのですが……、
「その巨乳をここで見せないでいつ見せるんだJK!」
「私の胸を芸の一種と勘違いしていませんか!? これは、そんな安っぽいものじゃありません!」
「じゃあ今から俺と別室に行って、二人きりで裸になり合おうぜ」
「そ、それは……所謂不倫ってやつですか!?」
「フリン? なんだそれ。新しいお菓子か何か?」
「肉体関係を持ってしまえば霊夢さんを出し抜くチャンス。『博麗神社の』居候から『守矢神社』の居候にジョブチェンジさせることも可能に……!」
なんだか地味に衝撃的な場面に出くわしている気がして、上手く声が出てくれないのですよ。
浮気現場を目撃しているような気持ちに襲われてきた私阿求ですが、こういう時はどうしたらいいのでしょうか。居候さんはアホだから私が話しかけたところでのらりくらりですし、東風谷さんは自分の事で精一杯な感じで話を聞いてもくれそうにないです。若干手詰まり感がビンビンですね。
さてさて、やはりこういう時は。
「博麗の巫女様に助力を請うというのが最善の策というものでしょう」
「マジでやめてお願いだから許してくださいあっきゅん」
「鯛焼き松竹梅フルコースで手を打ちましょう」
「仰せのままに」
「雪走君が一瞬でひれ伏してる!?」
「ははーっ!」と平身低頭する居候さんを東風谷さんが目を丸くして見つめていますが、当の雪走さんにはそんなことに構っている余裕はないようです。浮気しているという自覚はなかったのでしょうが、多少の後ろめたさは感じていたのでしょう。お札を三枚ほど取り出して私に掲げるその姿には恥も外聞もあったものではありませんでした。何故このような人が博麗の巫女に好かれているのか、どうにも理解ができません。
「何気に酷いことを言いますね稗田さん……」
「そういえば貴女も懸想をしている一人でしたね」
「ぶふぅ」
私の漏らしたそんな言葉に、お酒を含んだわけでもないのに何かを吹きだす風祝さん。げほごほと顔を真っ赤にして咽ていますが、いったいどうしたのでしょうか。今日の宴会ではわからないことがたくさんで阿求困っちゃいます♪
「な、なんて嫌な性格をしているのですか……」
「む。それは心外ですよ東風谷さん。私はあくまで自分の良心に従って浮気現場をパパラッチろうと思っただけなのです。『守矢の巫女と博麗の居候が禁断の関係に!』とかいう見出しで新聞を発行してもらえばいい具合に印税と評判が……」
「や、やめてください! 後、お金なら後でしっかり払うので勘弁してください!」
「仕方がありませんね」
こうして稗田家の財産がまた一段と増加していくのですが、まったくの余談です。
さて、それではそろそろ取材の方に移りましょう。予想以上に時間がかかってしまいました。まったく、無駄な時間を取らせないでください。阿求、激おこぷんぷん丸ですっ!
「なんだよその未来的な表現は」
「分かりません。ただ、これは流行ると思います。今年の幻想郷流行語大賞は阿求がイタダキですね」
「なんて黒い阿礼乙女なんだ……」
眉間を抑えて呻く雪走さん。日頃マイペースで通している貴方がそういう態度を取るのは珍しいですね。ツッコミ役になることが少ないからですか?
「何を言う。この世界には俺ほどマトモな人物はいないというのに」
『いやそれはないですね』
「まさかの東風谷まで全否定! おいおい待てよ相棒! あの日契った仲間の証は嘘だったのか!?」
「時と場合によって効果の度合いが変化しますのでご了承ください」
「なんてこったい!」
頭を抱えてウネウネと悶える雪走さんの姿に一瞬背徳的な何かを感じてしまった阿求を誰か許してください。
時に雪走さん。ちょっと質問良いですか?
「ドンと来い超常現象」
超常現象は来ませんが。
今回の取材の本題とも言える内容なのですけど……雪走さんにとって、霊夢さんはいったいどういう存在なんですか?
「どういう存在、とは?」
これといって特定はしません。ただ純粋に、『博麗霊夢』っていう人間が、貴方にとってどういった存在なのかを答えて欲しいのです。
思えば、雪走さんは幻想郷に来た当初から霊夢さんのことを好いていたような気がします。一目惚れにしてもあまりにも惚れすぎているのではないかというほどに、貴方は彼女に心酔していました。普通に考えて、違和感を覚えます。
ですので、そんな唐突かつ急激に心を奪った霊夢さんは、雪走さんにとってどういう立場にある人間なのかを聞いてみたいと思ったんです。
「なぁんか言葉の端々に俺を訝しむような台詞が入ってるよなぁ」
「そ、そんなつもりはなかったのですが……」
「いや、いいんだよ別に。怪しまれるのは当然だってくらい急に惚れていたのは事実なんだし。それに外来人なんて珍しいしな。そんな奴が自然と溶け込んでるってのが不思議だったんだろ?」
「まぁ雪走君は幻想郷住民に負けず劣らず変な人ですからね」
「ちょっと待て東風谷。お前にだけは言われたくないぞ俺は」
「どういう意味ですかっ!」
「そういう意味だよ。……で、霊夢がどんな存在かだっけか?」
はい。記者とか編纂者とか、そういう立場を一切抜きにして個人的に聞きたいことでもありますので。
「うーん、色々あてはまるけど、改めて考えると中々ピンとくるものがなぁ……」
首を捻ってうんうんと考え込む雪走さんは、ちらと無意識に霊夢さんが騒いでいる辺りを見ていました。賢者様や魔理沙さんと一緒になってバカ騒ぎしている霊夢さんは凄く楽しそうで、日ごろ見せないような笑顔で宴会を享受しています。
霊夢さんは視線をやっている雪走さんに気が付くと、満面の笑みを浮かべてぶんぶんと勢いよく手を振り始めます。
『たっけるぅーっ! ちゃぁんと楽しんでるぅーっ!?』
「お前の裸を見せてくれたらもっと楽しめる気がする」
『死ね!』
笑顔で罵倒する霊夢さんに、これまた笑顔を向ける雪走さん。これといった会話をしていたわけでもないのに、二人の間にはなんだか不思議な糸のような繋がりがあるように感じました。
それは一種の友情であり、
それは一種の家族愛であり、
それは一種の愛情なのかもしれません。
霊夢さんを見つめる雪走さんの瞳はどこか悲しそうで、そしてどこか満足そうな感情を湛えているように思えました。
ですから、思わず名前を呼んでしまいます。
「雪走さん?」
「……っと、ごめんなあっきゅん。ちょっくら霊夢に見惚れちまってた」
「い、いえ、そんなはっきり言えるくらいなら至って平常運転ですね」
「? 俺は何時でも霊夢大好き居候だが?」
「そうなんですけどね」
……ホント、どうしようもないほど駄目な人間ですね、この人は。
人知れず溜息をついてしまう私。守矢の二柱に呼ばれてそそくさとこの場を離れていく東風谷さんを見送っていると、雪走さんはポツリとこんな一言を漏らしました。
「……俺にとって霊夢は、『全て』なんだよ」
「『全て』、ですか……?」
「あぁ」
相も変わらず柔和な笑みで霊夢さんの方を見やる雪走さんは、全く表情を崩すことなく言葉を続けます。
「寂しい時は傍にいてくれて、悲しい時は慰めてくれて。嬉しい時は笑ってくれて、楽しい時は手を取ってくれる。……俺って何もできないからさ、いつもいつも失敗してばっかりなんだけど……そんな俺でも、アイツは心の底から受け入れてくれたんだ。……だから、アイツは俺にとっての全てなんだよ。絶対に失いたくない、絶対に傍にいて欲しい、そんな全てなんだ」
「ま、アイツがどう思っているのかは知らねぇけどな」そう言うと、雪走さんは私の方を見てにっこりと優しく微笑みかけてきました。何一つ曇りのない、子供のような純粋な笑顔で。
『本当に子供のような、成長しているのか疑わしくなるほど純粋な人間よね』
今朝、幽香さんが言っていたそんな言葉が思わず脳裏をよぎります。その時はイマイチ意味が分からずに流してしまっていましたが……なるほど、確かに幽香さんの言った通りです。この人の純粋さは、ちょっと常軌を逸しているものがあります。
そもそも、自分を受け入れてくれたから絶対的な信頼を置けるなんて単純すぎやしないでしょうか。
人間関係というのは一枚岩ではありません。信頼の裏には必ず目的があり、友情の裏には利用価値があります。この世界には純粋無垢な関係なんてほとんど存在しないでしょう。それは、今までの歴史を紐解いていくと自然と浮かびあがってくる事実です。
ですが、この人は純度百パーセントの感情を持っている。怒りも、喜びも、悲しみも、全てにおいて純粋な感情を従えています。本当、人間であるのが不思議なほどに。
「……変な人ですよね、雪走さんって」
「あははっ、よく言われるよ」
ケラケラと心の底から笑う彼が、私にはなんだかとっても不気味な存在に思えて仕方がありませんでした。今までに類を見ない彼の異質さが、未知の存在に思えて寒気が止まりません。
「それでは、本日は取材にご協力ありがとうございました」
「いえいえこちらこそ。次はどうせアイツのところだろ? 俺が『愛してる』って言ってたって伝えてくれよなー」
「了解です」
苦笑気味に微笑み、足早に彼の元を離れます。……これ以上彼の近くにいたら、自分の捻くれた思考に我慢が出来なくなっていたでしょうから。
逃げるように、私は最後の取材対象の元へと向かいました。
なんかグダグダでごめんなさい……次回こそはもっと満足のいく出来に!