名探偵と料理人   作:げんじー

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このお話は 原作5巻 が元になっています。

女子高生ってどんな会話を普段してるんですかね……

10億円事件はアニオリの方を採用したいと思います。



第十四話 -カラオケボックス殺人事件-

「あーあー、どっかに私の王子様いないかなあ」

「どうしたのよ、いきなり」

「だってさー、蘭には新一君って旦那がいるし、私たちの中でいっちばんそういうのと縁がなさそうな龍斗君には紅葉ちゃんってお似合いの婚約者がいるし。決まった相手がいないのって私だけじゃない!最近新一君に逢ったのが良かったのか蘭も機嫌がいいみたいだし!」

「だから、旦那じゃないって言ってるでしょ!」

「あらややわー似合いの婚約者なんて。そない褒めんといてーな、園子ちゃん」

「園子ちゃんいい子なんだからすぐに見つかるよ。でも相手を選ぶときには慎重にね?」

「はいはい、そこナチュラルに褒めないの。私は小さい時から聞いてるから他意はなくて本気で褒めてるだけって知ってるけど他の子が聞いたら勘違いするわよ?てかそれで中学の時大変だったでしょ?龍斗君」

「ほー、その話詳しく聞かせてもらいたいもんやな?龍斗」

 

あくる日の平日の放課後、偶然いつもの面子に部活や用事がなかったので道草を食うことになり静かな雰囲気の喫茶店でお茶をすることになった。話もそこそこに園子ちゃんがいつもの彼氏欲しい発言が出たという所だ。……俺の中学の時の話は藪蛇だったな。紅葉が頬を膨らませながら怒りに笑ってる。俺は膨らんだ頬を指でつついて潰しながら

 

「単純にいろんな人に告白されてたって話だよ?今だってファンレターとか来てるの、一緒に住んでるんだし知ってるだろ?」

「……!もう、頬つつかんといてーな!!告白って…」

「まあ、龍斗君全部断ってたから女の子に興味ないのかなーって蘭と話してたんだけどね」

「だから今年の1月に紅葉ちゃんが来てホントにびっくりしたんだから」

「そ、そやったんやね。なんやごめんな。でもそういうのアカンと思うで?龍斗。ほどほどにせな」

「こっちも無神経だったしね。でも逆に聞くけど紅葉もモテたんじゃないの?中学までのこと俺らは全然知らないけど」

「あ、私も気になる!大岡家のご令嬢ってパーティに出たらその世代の男どもの視線を独占してたし!」

「私も私も!中学の時ってどうだったの?」

「ウ、ウチ?ウチはな……」

 

何やらガールズトークに盛り上がってしまって俺は話を挟める雰囲気でもなくなってしまったので手にした手帳で今後の予定を確認したりスマホでニュースを見たりしてこっちに話が振られるまで黙っておくことにした。……紅葉はこっちにくるまで告白されても一途にオレの事を想っていたと。……あ、蘭ちゃん園子ちゃん騒ぎすぎ!店員がこっち来てる!

 

「お客様、他のお客様のご迷惑になるので」

「あ、ごめんなさい!」

「すみません、気を付けます」

「も、もう。蘭ちゃんも園子ちゃんも騒ぎすぎや」

「だって、こんなにストレートに惚気られるとはねえ。そこんとこどう思いますかね?旦那様?」

「あら、龍斗君赤いわよ?紅葉ちゃんが来てホント珍しい顔が見れるようになったわね」

「うっさいわい」

「あーあ。なんか話してたらもっと彼氏が欲しくなっちゃったじゃない!それでなんだけど、今度の連休姉貴がうちの別荘で大学時代の人たちと集まるのよね。私も行くんだけど一緒にどう?今日はその招待をしたくて」

「んー、私は大丈夫」

「あー、俺と紅葉は……」

「初日は用事が入っとんね。ウチは実家の、龍斗は」

「俺はチャリティイベントのサプライズゲストで」

「やから、二日目からの朝なら大丈夫やけど」

「じゃあ、二人は次の日に合流ってことで!」

 

―ある意味、二人が後で来るのは都合がいいしね―そう園子ちゃんが呟いたのに俺だけは気付いた。

 

 

 

 

あっという間に連休になり、俺と紅葉は園子ちゃんの別荘に向かって山の中を歩いていた。昨日の夜から続いていた雨は上がっていたが、土砂降りの雨の痕跡は地面のぬかるみという形で残っていた。

 

「っもう、このぬかるみ嫌になんねぇ、龍斗」

「そうだな、山荘に着いたら靴の泥洗わせてもらおうな」

「それにしても、鈴木家もこないなとこに別荘たてへんでもええんのに」

「まあ、都会の喧騒を逃れるにしても何かあったら陸の孤島になりそうだよな。地図を見るに、深い渓谷を渡る必要があるみたいだし」

「流石に何かしらの対策はしとるやろ?家族で休暇を過ごすいうても大財閥なんやからいつ外部から緊急の用件が入るかもわからんし」

「電話以外にも無線がある……とか?なんでこんな物騒な話になったんだか」

「龍斗が陸の孤島なんていうからやろ……あ、みえてき……龍斗!」

「ん?」

 

別荘が見えてきたいう紅葉が俺を呼び、先にある別荘を見るように指をさすのでその先を見ると

 

「吊り橋が落ちてる?」

「なんや、さっき話してた緊急事態が起きたんか!?」

「まさかの事態だな……携帯の電波も届かないし。……山荘の中に皆いるみたいだし、もしかしたら橋が落ちたことに気付いてないのかもしれないな。ちょっと呼んでみるか」

「呼ぶ?」

「ああ、紅葉は俺から結構離れて耳を目いっぱい塞いでくれ」

 

俺はそう言い、紅葉に離れてもらった。離れていく紅葉に指示をジェスチャーで出しながら50m位離れてもらい耳を塞いでもらった。よし。

 

『園子ちゃーん!蘭ちゃーん!!山荘に誰かいますかーーーーー!!!』

 

俺は山荘に向けて手加減しながら大声を放った。山にいた鳥は一斉に羽ばたき俺の周りにあった樹は音の衝撃で外側にかしいでしまった。前方にあるターゲットにした山荘にある窓がびりびりと震え、あ、割れた……ま、まあ誰かは気付いてくれるだろ。窓は後で弁償しよう。

 

「え、えらい大きな声やったな、お腹の底からびりびりしたし。離れて耳塞いでウチに向けられたんやないのにそれでもすごかったで?」

 

俺が呼んだ後、近づいてきた紅葉がそういった。んー、加減を間違えたかな?そう思っていると声が俺の物だと気付いた幼馴染み三人組を筆頭に山荘にいた人たちが吊り橋の方に向かってきた。

溪谷を挟んで事情を聴いてみるとどうやら殺人があったらしい。事件自体は解決したにはしたが橋が落ち連絡手段もなくなっていたので、これから下山することになっていたらしい。

 

「なら、俺と紅葉が道を戻って警察に連絡するよ。その方がこの深い山の中を皆だけで下山するより安全だろうし」

『分かったわ、お願いできるー!?』

 

俺は溪谷越しに会話し、警察を呼びに戻ることになった。

 

「と、いうことらしいから悪いけど紅葉」

「そういうことならしょうがないですよ。それじゃあもど……きゃ!いきなりなにするん!?」

 

俺はそういう紅葉を抱き上げて走り出した。

 

「歩いていくよりこっちの方が早いだろ?」

「そらあ、はやいんやろうけど。いきなりはびっくりするんやで?にしても全然揺れへんな」

「気を遣って揺らさないようにしてるからね。……嫌だったか?」

「……ばか」

 

そう呟いた紅葉は赤い顔をして腕を俺の首に回し胸に顔をうずめた。

行きの時は1時間以上かかった道を5分で走破し、俺は警察に連絡した。

 

 

 

 

「それにしてもよかったわね。お姉さん元気になって」

「姉貴、あの事件の後1週間も寝込んでたから。やっと大学院に通えるようになったのよ」

「仕方ないわよ、仲が良かった友達同士の間であんなことになったんだから」

「蘭ちゃんもその包帯男?に襲われたんでしょう?夢に見たりしない?」

「大丈夫!得体のしれない時は怖かったけど犯人が高橋さんって分かったから。高橋さんって言えば園子、名推理だったわよ!事件が解決したのも高橋さんが自首したのも園子のおかげだね!」

「え?」

 

山荘での事件があって1週間、あえて話題に上げないでいたが園子ちゃんのお姉さんの綾子さんが復帰した報告を機にその話になった。事件解決後に山荘に向かった俺と紅葉は新ちゃんを博士の家に呼んで顛末を聞いた。

園子ちゃんを探偵役に解決したらしいのだが、小五郎さんと似た気質を持った園子ちゃんの事だ。

 

「これからはこの女子高生名探偵、鈴木園子の時代よーーーー!!」

 

ハッハッハッと笑いながら胸を張る園子ちゃん―まあこうなるよね。

 

「それにしても改めてごめんね龍斗君、紅葉ちゃん。せっかく誘ったのに。警察を呼んで貰って助かったわ。あの山の中を歩いて下山しないで済んだし」

「そうね、警察のヘリコプターに乗るなんて貴重な経験できるなんてね。ねえコナン君?」

「うん、僕、楽しかった!」

 

俺が警察に連絡し陸路での到着の困難さを説明したので、初動からヘリコプターで警察は山荘へと向かった。警察が到着してすぐに包帯男こと高橋良一は自首し、山荘にいた人たちはヘリコプターで下山し事情聴取をとられることになったそうだ。

 

「そういえば、園子。あの太田さんとはどうなったのよ?ロマンスを求めて山荘に行ったんでしょ?」

「ああ、あんな腰抜けダメダメ!それに私には達也がいるし……」

「達也?」

「ホラ!今売出し中のロックバンド『レックス』の木村達也よ!実は私、今度の日曜にライブの打ち上げをメンバーでするらしいんだけどそれに混ぜてもらえることになったのよ!!生達也様に会えちゃうってわけ!」

 

ただの芸能人か、って顔してるな新ちゃん。俺も仕事柄、芸能人関係はある程度名前くらいは知ってるようにはしているけど新ちゃんはホントそう言うのに興味ないよな。

 

「紅葉は『レックス』って知ってる?俺は名前くらいしか知らないけど」

「ウチは知らんかったんやけど、蘭ちゃんが……」

 

「えーーーっ!達也様に会えるの?!」

 

た、達也『様』?そ、そういえば意外とミーハーなところがあったっけか。俺が驚いた表情で蘭ちゃんを見ているのに気付いた紅葉は苦笑しながら、

 

「まあ、そういうことでウチも勧められたんや。こういうのにあんま興味なかったんやけど聞くだけは聞いてみてん。やから、知っとるよ」

「なるほどねえ」

 

「プライベートの打ち上げらしいけど蘭も行く?それにこの前のお詫びってことで龍斗君と紅葉ちゃんも。こういう機会って滅多にないだろうし」

 

まあ確かにただ会うだけなら俺も紅葉もそう難しいことじゃないだろうけど打ち上げに参加って言うのは中々ないだろうな。

 

「俺は面白そうだし行ってみようかな?」

「ウチも龍斗が行くなら」

「じゃあ、今度の日曜日、駅前のカラオケボックスに7時ね!」

 

 

 

 

「「「「「カンパーイ!」」」」」

 

日曜日になり俺達はカラオケ店の一室にいた。メンバーは俺達を除いてバンドメンバーの芝崎美江子さん、山田克己さん、木村達也さん、そしてマネージャーの寺原麻理さんだ。……寺原さんはちょっと紅葉に似ているな。おいおい、せっかく来たのに蘭ちゃんと園子ちゃんはガチガチだな。新ちゃんの方は……マネージャーに見とれてるな。紅葉はっと、

 

「どしたん?龍斗」

「ああ、いやあのマネージャーさん紅葉に少し似てるなってね」

「んー?ほんまやな、うちよりちょっと大人っぽい感じやな。スタイルはうちが圧勝やけど」

 

横目で紅葉を見ていたことに気づかれたのでとっさにそう言った。普段通りって様子だな。

 

「それじゃあ、パーッと盛りあがろーぜ!」

 

 

「―――愛情こそが衝動!!」

 

打ち上げが始まってしばらく、カラオケ店にいるのに歌わない訳にはいかず各々が思い思いに曲を歌った。流石はロックメンバーというのか、ライブ後だというのにガンガン曲を入れていたので俺も曲調が激しいものをチョイスした。

 

「すげえじゃねえか!音圧もプロに負けないくらいあったぞ!」

「確かに!ねえ、軽音部にでも入ってるの?」

「…ッフ。確かにそうだ、どっかのヘタなバンドよりよっぽどましだぜ……」

「「「!?」」」

 

俺が歌い終わった後、口々に褒めてくれたメンバーを見て木村さんはそういった。だいぶ酒が入ってるな。んー?でも今の声……

 

「ちょっと、達也のみすぎよ!このあとトーク番組の収録があるって……」

「うっせえ!ドブス!!引っ込んでろ!!!」

 

酒量を嗜めようとしたマネージャに対して暴言を吐きながらさらに酒を飲む木村さん。…ドブスって。なんでそんな寂しそうに?

 

「ちょっと、龍斗?ウチに似てるって言ってたマネージャーさんがドブスっていわれてんやけど?」

「そう、そうなんだけど様子がおかしい」

「様子て。そら人を罵倒しとるんやからおかしいのは当たり前やろ?」

 

流石に目が余る言葉を聞いて俺に止めてもらうことを期待したんであろう紅葉の言葉を遮り俺は彼の様子を探った。この感じは……寂寥感?

その後も、彼はメンバーに対して高圧・嫌がらせのような対応を行った。何も言わない俺に対して何か考えがあることを察したのか紅葉はもう何も言わず俺に任せるようだった。……ん?新ちゃんも目に余ったのか彼に近づいて?ああ、気づいたのか。彼の哀しげな様子に。…『おお、ボーズどーした?オメーも歌うか?入れ方教えてやっからよ』『う、うん』…メンバーに対しての雰囲気と打って変わってにこやかな口調に新ちゃんも戸惑っているようだ。あー、これは。

 

「えー、レックスやめちゃうんですか!?」

「ああ、このツアー終わったら俺だけ抜けるんだ。まあ、これで清々するぜ!下手くそなドラムやガキっぽいギター!そしてお高くとまったマネージャーともおさらばってわけよ!!!」

 

その言葉に息を飲む全員。

 

―――――――♪

「おっと、オレの曲じゃねえか!誰がリクエストしたんだ?」

「達也、もう時間よ!トークショーに遅れるわ!!」

「うるせー!俺は歌いたい時に歌うんだよ!!」

「しょうがないわね……スタジオに連絡入れてくるわ」

 

そう言って部屋を出るマネージャーさん。それをうっとうしそうに見ながら木村さんがマイクスタンドに立ち、ジャケットを脱ぎ捨てた!

 

「行くぜ!!『血まみれの女神』!!」

 

 

「へへへ、どうだった?オレの歌?」

「「とってもよかったですーー!!」」

 

1曲を歌い終わり、木村さんは満足げに席に座った。んん?この匂いは――――!!

 

「よお、克己!そのおにぎりオレにもくれよ!」

「……」

「へ、サンキューな!」

 

山田さんが無言で投げたおにぎりを受け取りそのまま木村さんがそのおにぎりを食べる―――前に俺はその手を取りおにぎりを食べるのを阻止した。

 

「お、お?なんだいきなり」

「た、龍斗君?」

「龍斗にいちゃん?」

「木村さん、ちょっといいですか?それから今使ったマイク絶対誰も使わないようにしてくれ。それから今この場にあるものの飲食も止めといてくれ『新ちゃん、彼の右手から青酸カリ特有の匂いがする』」

「!!わかった。ちゃんと見ておく」

 

すれ違うときに新ちゃんにだけ聞こえる声でそう言うと新ちゃんは真剣な顔になりそう返した。

俺の有無を言わさぬ勢いに気圧されたのか次の曲が始まっても誰も歌わず、またおにぎりを持ったまま俺に連れられて黙って部屋を出た木村さん。途中電話をかけているマネージャーさんが木村さんを見て、おにぎりを持っている右手を見て心音を乱していた。……そうか、彼女か。

そのままトイレにつきゴミ箱におにぎりを捨てさせた。

 

「……それで?いきなりナニすんだよ?初対面だけどキレんぞ?」

「その前に触れないように俺が抑えている右手、嗅いで見てくれ。一瞬な」

「なんだよ?……なんか匂うな?」

「この匂いは潮解を起こしたシアン化水素の匂いですよ。あなたの手には青酸カリ、猛毒がついている」

「!!!」

 

俺は匂いを確認させた後、木村さんの手を洗ってもらった。流石に自分が殺されかけたのが聞いたのか顔色を変え、酒も抜けた様子だった。

 

「じゃあ、あのまま食ってたらオレはお陀仏だったってわけか……克己の奴か?」

「いえ、右手についていたならその前にマイクを触っていた芝崎さんにも仕込めますよ」

「そっか……」

「ですが、違いますよ。それを仕込んだのは。木村さんバンドメンバー二人に対しての暴言は叱咤激励だったのでしょう?自分が抜けてもレックスがやっていけるように」

「な、なんでそんなことわかるんだよ!?」

「俺は耳がいいんですよ。人の言葉に乗る感情、それが分かるんです。あなたの言葉には軽視や嘲りなどと言った負の感情を感じ取れなかった。陳腐な言い方ですが応援、心配、寂しさそれに愛情を感じました」

「……」

 

俺の言葉が的を射てはいるが根拠になることが、言葉に乗る感情という曖昧なものだったものに言葉をなくす木村さん。

 

「確かに、オレもシンガーだ。声に感情を乗せるっつうのがあるのは分かる。分かるが、罵倒の言葉にある裏のそんな感情を正確に読み取るなんてありえねーだろ?」

「意外とできるもんですよ?心理学者や詐欺師とかもね」

「だったらオメーはなんなんだよ?」

「ははは、ただの料理人ですよ。まあそれに気づいて素直になれない人なんだなあって思ってたんですけど。流石に目の前で食べ物で毒殺されそうになるのは止めさせてもらいました。そのおにぎりももったいないことをしました……」

「もったいないってオメーな……」

 

俺は男子トイレの扉が少し開いていることを確認して続けた。

 

「ただ、バンドメンバーの事は分かったんですけど。マネージャーさんに対してのことがどうしても分からなくて。『ドブス』って言葉だけは本心であると感じました。結構美人だと思いますけど。……紅葉に似て、紅葉に似て!」

「あ、ああ。紅葉ってオメーの彼女の事か。……確かに今の麻理に似てたな。わりーな、オメーの彼女は美人だと思うぜ?」

「『今の?』」

「ああ、まあオメーには命を助けられたしな。麻理の奴、整形しやがったのさ。俺がプロに引き抜かれるときにマネージャーでもいいからって誘った後にな。人の目なんか気にして!オレは。オレは……」

「なるほど、ね。木村さんあなた」

「へっ、そうだよ!オレは麻理の事が好きだった!だからオレのためと言って顔を変えちまったあいつが許せなくて悲しくて」

……さて、と。もう頃合いかな

「だ、そうですよ?」

 

俺はそう言い、ずっとトイレの前で話を聞いていた彼女を招き入れた。

 

「ま、麻理!!?」

「た、達也。今の話は……」

「ホントの事ですよ。それに、木村さん。あなたに毒を仕込んだのは……」

「……私よ、達也」

「なっ!!!」

「私、私もあなたの事がずっと好きだった!!愛していたわ、バンドを一緒にしていた時からずっと!!だからマネージャーでもいいから一緒に来いよって言われた時はあなたも私の事をって…でも『レックス』を結成してからずっとブスブスって。私の事バカにするために入れたのかって思って!今日もあんな曲……だから、私」

「オレを殺そうとした……か」

「あなたがそんな風に思っているなんて知らなかった!私なんてことを!ごめん達也、ごめん…!!」

「ああ、オレも悪かった。悪かったよ、麻理……」

 

そう言って泣き出し彼にすがった彼女。悲劇をぎりぎりで回避することはできたが、数分後彼女は自首することを木村さんに伝えた。

木村さんは引き留めたが、自分のしたことの責任はとりたいと抗弁した彼女に対して木村さんが折れた形だ。彼の本心が聞けたお蔭か、彼の「待っている」の言葉のためか、警察に連れて行かれた彼女の顔は晴れやかなものだった。

木村さんは突然警察沙汰になったことに驚く、部屋に残った人たちに起きたことそして今までの思いを素直に告白した。

 

 

「なあ」

「はい?」

「ありがとうな、オレを助けてくれて。麻理にオレを殺させないでくれて」

「いえ。これから少しは言動に気を付けてくださいよ?」

「ああ、身に染みて思い知ったからな」

「それじゃあ……式の予定が決まったら俺に是非ご依頼を!」

「そういえば、オメー世界一のパティシエだったな。……ッハ、先の事なんてわかんねーよ!」

 

そう笑いながら言い。事情聴取のために警察署に向かう木村さんを見送った。

 

 

 

 

後日、新ちゃんが俺の家を訪ねてきた。未遂事件後初めて会う形だ。

 

「全く、オメーの鼻のお蔭でオレの前で殺人が起きなくてたすかったぜ」

「俺の前で食べ物に仕込まれた毒殺なんて許すわけにはいかないからね。でも、今回の事件は新ちゃんも気を付けないといけないんじゃない?」

「何のことだよ」

「自分の気持ちには素直にってこと」

「ああ、蘭ちゃんに対してってことやね?」

「紅葉が正解!」

「す、素直ってなんだよ!オレは別に蘭の事なんか……!!」

「そーいうところだよ?今回の事件は行き過ぎにしても言葉による擦れ違いなんて些細なことで起きるんだから」

「せやねえ、けど龍斗程素直すぎるって言うんも考えもんやけどな?」

「おーおー、言うじゃないのー紅葉さん?」

「ああ、そんな頭撫でつけんといて。髪の毛がくずれるやんかーー!」

 

そう言いながらも笑っている紅葉と同じく笑いながらじゃれあってる俺を呆れたまなざしで見ながら新ちゃんはさっき言われたことを考えている様子だった。―あとで電話してみるか―そんな呟きが俺の耳に届いた。

 

 




紅葉と「レックス」のマネージャー(寺原麻理)て似てませんか?

事件を防いでもアフターフォローを考えるのが楽しいですが難しいですね。



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