名探偵と料理人   作:げんじー

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今回は日常回です。

もう一話日常回を挟んで原作のお話になります。

…もうちょっといちゃいちゃを書きたかった…!

10/10,感想での指摘を反映し、役柄の場面に加筆を行いました。



第三十四話 -日常回-

「それでは、我ら2年B組の学園祭の出し物は「劇」に決定しました!」

パチパチパチパチ!

 

いつものように学校に行き授業を受けクラスメイトとくだらない雑談をする。そんな平凡な学校生活の一日だったが、今日は放課後のHRで担任の巽先生から学園祭の出し物を決めるようにお達しが来た。

 

「それじゃあ、劇の脚本と演出はこの鈴木園子様にお任せあれ!ちょー大作のラブロマンスを作ってきてあげるわ!」

おーっほっほっほー!

 

そう言って立ち上がり、高笑いを披露する園子ちゃん。そんな彼女を周りの人は冷たい目で……なんてことはなく、彼女のお調子者気質はこのクラスには知れ渡っており、皆生暖かい目で見ていた。ま、ちゃんと言い出したことは実行してきたしそう言う信頼感があるから何も言わないんだろうね。

 

「じゃあ、鈴木に任せるという事でいいか?…反対意見もないようだしそのように。鈴木は早めに仕上げて練習に入ること。それでいいか?」

「わっかりましたー、巽先生!」

「それじゃあ、HRを終了する。気を付けて帰るように……ああ、緋勇。お前は校長室にこの後行くようにとお達しだ。それじゃあ、解散!」

 

んん?校長室に呼び出しとな?俺なんかやったっけ?

 

「何々?なんかしたの龍斗君?」

「いやあ、それがね、蘭ちゃん。心当たりが全くない」

「んー。最近龍斗は大人しゅうしてると思うんやけどね」

「おいおい、緋勇!お前何しでかしたんだ?大岡といっつもいちゃいちゃしてるからとうとう校長からお叱りか~?」

「いやあ、いっつもうらやま恥ずかしい思いをしてきたオレ達からしてみたらざまーみろ…いやいや、とても心配ですなあ。ねえ中道君?」

「そうですなあ、会沢君?」

「そこ、うっさいぞサッカー馬鹿コンビ!全く、大体ねえ…」

 

サッカー部の会沢と中道が肩を組んで茶化し、そこに突っ込む園子ちゃん。…おお、すげえ。一言ずつしか言ってないのに怒涛の勢いの園子ズマシンガントークにあたふたしとる。

 

「……ま、行ってみれば分かるでしょう。それじゃあ行ってくるね」

「はい、いってらっしゃい」

 

俺は園子ちゃんの餌食になっている二人を尻目に校長室に向かった。

 

 

 

―コンコンコン

「2年B組の緋勇龍斗です。校長先生はご在室でしょうか?」

『ええ。どうぞ』

「失礼します。……担任の巽先生から呼び出しとのことで参りました」

 

ノックをした後入室した部屋の中には、校長先生が一人机についていた。

 

「はい。その通りです。実は今年の学園祭『お断りします』…はやいですね」

「校長先生…去年もこの時期に打診されましたがその時もお断りしたはずですよね?」

「そうなんですけどね……ほら、保護者会からも言われてまして。『なぜ緋勇龍斗に出店をさせないのか』ってね」

「まあ、そう言われるのは光栄なんですが。絶対、ぜぇええったい、混乱が起きて学園祭がダメになってしまいますよ。承服できません」

「そこは、ほら。当日まで秘密にしておくとか、家族だけに伝えるように徹底してもらうとか…」

「当日までならそれでも大丈夫だと思いますけど。ウチのクラスの皆は口が堅くて義理堅い気のいい奴らばっかりですしね。ただその家族の皆さんとは俺と直接の関わり合いがないので本当に黙っていてくれるかわかりません。口止めしていても親友だけなら、その親友もお母さんだけなら…なんてことになりかねませんし。当日開いてもあっという間にSNSで拡散されますよ。それを見て人が集まって、でもその前に材料が無くなればそこからはパニックですよ?あることない事を無責任に書かれる可能性もある。そんなリスクは…この高校生活、とても満足してるんです。それをメチャクチャにはしたくないんですよ」

「……はあ。やっぱり今年もダメでしたか。分かってましたけどね」

「申し訳ありません、校長先生」

「いいんですいいんです。子供たちが健やかな学生生活を送るためのいらぬ障害の防波堤になるのが先生という人種ですから。保護者会には私から説得しておきますね」

「……ありがとうございます。今度、胃に優しいお茶請けでも差し入れしますね」

「ほっほっほ。それは楽しみです。…申し訳なかったね、放課後に呼び出しなんかして」

「いえ。それでは失礼します」

 

そう言って俺は校長室から退室した。…ふう、本当に俺は恵まれてるな。クラスメイトしかり、教員陣しかり。いい高校だ…ん?

 

「おや、緋勇君。どうしたんだい?こんなところに」

「あ、えっと。校長先生に呼び出しを受けまして」

「おや?君が校長先生に呼ばれるとはね。意外と不良少年なのかな?」

「学園祭でで店をしないかという打診ですよ……えっと。聞いてもいいですか?」

「なるほどね。それで?聞きたいことって?」

 

俺はそれを聞き、()()に近づき首元を嗅いだ。

 

「ちょ、ちょっと緋勇君近い「お久しぶりです、()()()()さん」…よ…?何を言ってるんだい?シャロン?誰の事だい?」

 

俺も彼女の葬式に出た。そこでクリス・ヴィンヤードになった彼女を見た。結局シャロンさんとして話すのは一年ぶりになる…のか?応じてくれればだけど。葬式の時はクリスさんだったしね。

 

「俺、結構…いや()()()で一番鼻がいいんです。あなたからは、そして一年前の葬式でクリスさんと話したとき、10年前に会った時と変わらないシャロンさんの香りがします」

「………」

 

心音は緊張、焦燥、逡巡…そして歓喜?

 

「…ふぅ。保健室に行きましょ?龍斗君」

 

声色はシャロンさんだけど…外見が新出先生だと違和感が半端ないな。あと、声だけで聞くととても淫靡な響きが…げふんげふん。

 

「分かりました」

 

 

 

 

「ちょっと、信じられないわね。体臭を嗅ぎ分けられるってこと?そんなことありえるのかしら?…ああ、変装は解かないけど勘弁してね?もう一回やり直すのも面倒だから」

「…ああ、はい。ご自由に。違和感すごいですけど」

 

彼女の先導で保健室に入り、彼女はそのまま鍵をかけた。……あれ?これヤバいんじゃね?鍵のかかった密室の中、男と女(傍目は男)。誰かが来て、こんなん見られたらあらぬ誤解を生みそう。

 

「あら?何を黄昏ているのかしら?」

「ああ、いや。なんでもないです」

「??」

「えっと!それでなんだけど。どうして新出先生の姿で帝丹高校に?」

「……そうね。休暇、かしら」

「休暇?」

「ええ。実は彼ね。とある崖で事故を起こして。私はその現場に居合わせたのだけれどそのまま彼は浮いてこなくて。まあ、余り褒められた事ではないけれどそのまま彼の場所を間借りしているってわけ」

「…役者の休暇なのに誰かにまた化けるって疲れない?」

「有名人というのも疲れるモノなのよ。それにココには貴方を初め、由希子の息子にその幼馴染みと私にとってはとても大切な子たちがいるしね」

「…なんというか。俺はどうしたらいいのやら」

「できればそのまま見過ごしてくれるとありがたいわね」

 

さてはて。俺はどうすべきなんだろうかね。んー、んーー。

 

「じゃあ、こうしましょう。シャロンさんが…シャロンさんでいいの?」

「そうね、あなたにはそう言ってもらって構わないわ」

「シャロンさんが新出先生の事故を通報しなかったのは悪い事…悪い事?だから。その姿を借りている間は悪いことをしないこと。それを守ってくれるなら俺は黙ってるよ」

「…そうね。それで黙ってくれるのなら約束しましょ」

 

嘘は…言ってないかな。

 

「それじゃあ、約束」

「ええ、約束」

 

そう言って俺達二人は指切りをして別れた。…保健室から出た時周りに誰もいなくてほっとしたのは内緒だ。

 

 

 

 

「あなたは、しっかりと私の事を見てくれているのね…」

 

 

 

 

「おっそーい!大丈夫だった!?」

「何だったの?龍斗君」

「おかえりなさい、龍斗」

「はい、ただいま」

「やっぱりいちゃいちゃ禁止令か?」

 

教室に戻ると紅葉、蘭ちゃん、園子ちゃん、中道、会沢の五人がだべっていた。

 

「違う違う、学園祭で出店をしないかって言われてね」

「おお、そりゃいいじゃねえか!オメーの料理なんてほんっとにたまーにしか食べられないしな!」

「肉だ肉!ガッツリ系の物で頼むな!」

「前提からずれてるぞ、サッカー馬鹿コンビ。断ったよ」

「「えーーー!?」」

 

女性陣は流石に察しているのか納得顔をしていた。俺は中道と会沢に向けて校長先生に話したものと同じ内容を語り納得してもらった。

 

「……なるほどなあ、確かに学園祭が無くなるのは勘弁だな」

「だなあ」

「そういうこと。それで?五人は何を話していたの?」

「あ、そうそう。私の考えている脚本なんだけどね。ウチのクラスの奴らが演じるわけだし。クラスメイトを思い浮かべながらキャラづくりをしようと思っているのよ」

「ふむふむ」

「それで、中世っぽい世界観の王族の恋物語を考えているんだけど。…ああ、会沢と中道は姫を狙う悪党AとBね」

「「なんだよそれ!」」

「まあまあ、本決まりじゃないんだし。ほら、裏方をしたいって子もいるだろうし」

「まあね。…それで姫役を紅葉ちゃんか蘭に頼もうと思っただけど」

「わ、私は嫌よ!?がらでもないし」

「ウチは相手役が龍斗なら構いませんけど。ただ、姫って言うのになんや違和感があってな…」

「紅葉はクイーンを目指してるし、女王のほうが自分でしっくりくるんじゃない?」

「それや!ウチ、お姫様ってのもええけどやっぱり女王の方がええ。そしたら龍斗は王様やな!…いや、確か王と女王って同時におることは稀やって最近世界史で教わったんやった。どないしよ?」

「今調べたら『Queen』には王妃って意味があるみたいだよ、紅葉。まあ、『King』には王って意味しかないから、女王にこだわるなら俺は王配ってやつになるのかな」

「(龍斗のお嫁さんならそっちでもええか…王様な龍斗か…)なら、ウチは王妃様がエエな!」

「ええ!?いや、お姫様の両親ってことにすればイケる?でも龍斗君と紅葉ちゃんっていう美男美女を端役で消費するのはもったいないし…ダブルヒロイン?…ダメだわ、劇の時間内に収まるとは思えないし…うん。それでいこうかしら?」

「ちょ、ちょっと待ってよ!そしたら姫役って私!?」

「あー、そうなるわね。安心しなさい!蘭の相手役は旦那に任せるから!」

「新ちゃんに?」

「……いいわよ。新一、学園祭までに帰ってくるとは思えないし」

「え?」

「ううん、なんでもない!」

「?ま、練習の相手は私がするし帰って来れなかったら私が騎士役をするから」

「お願いね」

 

とりあえず、どうなるかな。園子ちゃんが言うには2,3日中には草案を作ってくるって言ってるけど。

 

「いいねえ、緋勇は。王様だぜ王様」

「オレ達は悪党だってーのに」

「ははは。そこは園子ちゃんと交渉するんだね。中道、会沢」

「へーへー。しかし緋勇の王様か。なんか迫力がないというか」

「あー、確かに。なんつーか、王様ってこう偉そうにしないといけないんだろ?穏やかな性格なオメーにゃきついんじゃねえか?」

「お!ちょっと王様やってみろよ!」

「王様やってみろって。無茶ぶりだな」

「え、なんかおもしろそう!なんかやってみてよ」

「へぇ、王様な龍斗か。どないな感じなんやろ?」

「こう、びしっとやればいいと思うよ。私や新一を怒った時みたいに」

 

あれー?なんか断れない感じになったなあ……王様か。何回かあったことあるけど、王様をセリフで表すって難しいな。んー、穏やかな性格だとダメ。国で一番偉い奴。トップ、集団の中で下の者を引っ張っていく、生かしていく…激しい性格…俺様…

 

「それじゃあ…『この国の全ては俺のものだ!天も、地も、その場に生きとし生けるものすべてがだ!我が国民よ、お前たちの命はお前たちの物ではない!すべては俺のものだ!!俺のものである限り、誰一人として飢える事、勝手に死ぬことは許さねえ。黙って俺についてこい!!』…なんだろう、よく分かんないセリフになっちまったけど。こんな感じ、か…?」

 

何故に皆さん固まっていらっしゃりますかな?

 

「ひ、緋勇。オレな。お前の事優男だなと思ってたんだけど」

「ああ、オレもだ。だけどなんつーか。さっきのお前はヤバかった。なんかすげえ迫力?覇気?があったわ」

「そ、そうね。なんかすごい迫力だったわ」

「龍斗君の国の人は本当に飢える事のない、いい一生を過ごせそう」

「あ、ありがとう?でいいのかな。…紅葉?もーみーじー?」

「……ええなぁ。とってもええ。いつもの優しい龍斗もええけどこう、強引に引っ張って行ってくれそうな龍斗も恰好ええなあ…」

「あーあー…」

「な、中道!オレ達は部活に行こう(ここにいて甘々な二人を見るなんて勘弁だ)」

「そ、そうだな会沢!いざ、俺たちの青春のフィールドへ!(大賛成だ。あーなった大岡は妙に色っぽくて敵わん!)」

「お、おお?じゃあな、二人とも」

 

なにやら、小声で話し合ってそそくさと二人は出て行ってしまった。ってか、放課後始まって結構時間たってるんだが今から行ったら怒られるんじゃないか?

 

「じゃ、じゃあ蘭。私たちは続きはハンバーガーでも食べながらしよ!」

「そ、そうね!あ、龍斗君は紅葉ちゃんを連れて帰った方がいいよ。なんか今の紅葉ちゃん危なっかしいし!」

「そう?…じゃあ、俺達は帰ることにするかな。二人とも、頑張ってね。…ほら、紅葉立って。帰るよ?」

「うん…」

 

 

 

 

「ほら、紅葉。しっかり立って。もう学校出て歩道に出たんだから」

「いーやーやー。ウチ位龍斗なら余裕で運べるやろー?」

「まあ、そりゃそうだけどさ。じゃあ、ほら。腕につかまって?」

「うん♪」

 

そういって差し出した俺の左腕を挟み込むように抱く紅葉。…おおう、力いっぱいに抱くものだから胸が…

 

「そ、それで?今日は何を作ろうか」

「(動揺してる龍斗もかわええなあ)せやねぇ。商店街のほうに行ってみて、今日のええ食材を見ながら決めるんいうのはどう?」

「旬の食材を使ったシェフのお任せディナー、みたいな?…たまにはいいか」

「やった!それじゃあ行きましょ龍斗」

 

まあ、こんな格好で二人歩けば当然目立つわけで。顔なじみの商店街のおじさんおばさんに大層冷やかされましたとさ。

 

 

 

 

「はい、龍斗です。博士?どうしたん……え!?新ちゃんが撃たれた!?」

 




はい、龍斗の発言→紅葉沸騰の流れはクラスメイトにも有名な風物詩になっている感じです。
今回初めて、ほぼ原作のない話を書きましたが、楽しんでいただけたしょうか?

ベルモットの扱いにとても困りました。一応、新出先生でいる間は犯罪を犯さないでと約束をしましたが彼女の扱いをどうすればいいのか龍斗自身も決めきれていない感じです。
既知の人物ですし、初遭遇から今までの付き合いで可愛がってもらっている親戚のおばさん、みたいな印象を持ってしまっていますしね。(作者もどうしようか五里霧中です)
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