名探偵と料理人   作:げんじー

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全てのサブタイトルに、どの話を題材にしているか分かるように書いてみました。
このお話は原作第31巻が元になっています。

今週号のサンデーは爆弾を投下されましたね。でも結局何も進展していないと言う…Time is money.(たいむいずまねー)→??が、伏線なのかひっかけなのか。

前話の感想返しはこれからやっていこうと思います。中々忙しくて…

あ、今回は時系列がかなり滅茶苦茶ですが、ご勘弁ください。やっぱり巻数ごとに話を進めるとこうなってしまいます…


第四十二話 -網にかかった謎-

「んー、美味いなこのハーブティー。それにすっげえいい香りだ」

「ほんまやなあ。これ、新しいブレンドなん?」

「そうそう。世界大会も近いし、色々試してるんだよ」

「あー、そういやそろそろだっけ。確か帝丹小の冬休み明け前々日だからゆっくり応援できるぜ」

「ウチは当日ガッコ休んで会場で応援です。なんや、ウチも緊張してしまうなあ」

「ははは、今から緊張してたら身が持たないよ?」

「…なーんで、本人が一番リラックスしてるんだ?」

「そりゃ、二度目だしねえ。まあ今回はまた面倒な方式でそっちの方は厄介かなー」

「今回の方式?」

 

美國島の一件があって数日、新ちゃんが家に遊びに来たので俺の部屋に案内して紅葉と一緒にまったりしている最中だ。

 

「今回は、前回とはまた変わって審査員は10人の採点方式。なんだけど、それにプラスして観客の人の評価も点数に入るらしくてね。どれだけの人数の観客が担当するのかはわからないけど実際に食べてみたい料理を投票するんだって。だから、実食する審査員と違って五感に訴える工夫がより必要になってくるらしいよ」

「……ああ。それで最近の龍斗のお料理、盛り付けがコースみたいな見栄えのええものになったり、調理中の香りが強くなったんやね。ご近所さんから苦情入ってましたよ?ご飯時に流れてくる美味しそうな匂いを何とかしてくれって。遠くは丁目違いの所から」

 

そう言って半眼で睨んでくる紅葉。ああ、俺が対応しただけでなく他にも苦情が来てたのか。まあ…

 

「ごめんごめん。先に言っておけばよかったね。でも、丁目が違う所まで香りが届いているのなら会場がそれより大きいってことは無いから会場中に届けられるってことだな」

「……なあ、紅葉さん。確かに近所を通った時に「あ、このお宅は今日カレーだな」ってのはオレにも経験あるけどさ。料理の事はからっきしだからわかんねーんだけどよ、調理中の香りってそんな遠くに届くもんなのか…?」

「ウチも家庭料理くらいをちょこっとかじっただやけど、まあありえへんことやな。しかも聞くに、香りが漂ってくるのはある時間帯だけであとはぴたーって止まるらしいんや」

「……なんだそれ?普通、匂いってものはどんどん薄まっていくもんじゃねーのか?」

「いや、そんな怪しむような目で見ないでも。単純に、そういう風に計算してるってだけさ。実食の時まで漂わせるようなものじゃないし」

 

まあ、言ってることがおかしい事は二人が唖然としてるのを見ないでもわかる。でもね?料理歴1000年以上は伊達じゃないんですよ?それくらい出来なきゃ、トリコ世界の宇宙では生きていけません。

 

「はあ。まあ龍斗だからな」

「せやね、龍斗やからな。それで?その非常識なこと、予選でもやったんですか?」

「いやあ、そこまでおかしい事はしてない…よ?……あ」

 

今回は母さんの枠による推薦参加ではなかったのでちゃんと予選を通った。まあ、そっちのがだるかったな。実食があれば負ける気はしないが一次審査はレシピと写真だものな。

だから、気合を入れて作って…でも何となく不安で、調理過程を動画に撮ったものを同封して送ったんだ。

 

「「あ」ってなんだ「あ」って!」

「いやあ、ほら?髪の毛ほどの細さの千切りとか、細胞の破壊をぎりぎりまで抑えた下処理とか、細胞を活性化する下処理とかまあ美味しく食材を頂けるような工夫をばしただけなんだけどね…」

「んなこと、フツーの料理人に出来るわけねーだろ…」

 

はい、おっしゃる通り。分かりやすく目で見える千切りはその速さも相まって、他の参加者が制限時間内にも関わらず見に来てたし。

 

「まあそんなわけで、無事本大会にこぎ付けたのさ」

「ちょくちょく学校を休んでたのはそれやったんですね」

「そういうこと。本番まで黙っておこうと思ったんだけどね。ほら?前回飛び入りで本戦までの仕組みなんて知らなくてさ。それが恥ずかしくて」

「もう。龍斗は変な所で抜けてるんですから。それで?ウチも大会の詳細を聞いたのは今が初めてやけど勝てそうなん?」

「多分、かな。前回と同じだと勝てるとは言い切れないかも」

「前回?」

「まあ、取り越し苦労になるかもだしその時はその時さ」

「??」

「…それにしても。俺が紅葉と話してたからかもだけど新ちゃんは黙って何見てるの?」

 

俺と紅葉が話している間、新ちゃんはTVのニュースに釘付けだった。なになに?「地獄の傀儡師、またも脱走!」って…なにやら、凶悪犯が脱獄したことを伝えていた。しかも、二度目。…んん?なんだ?デジャヴュが。俺はコイツを知っている?「高遠遙一」か……誰だっけ…

 

「ん?ああ、なんか凶悪な奴が脱獄したらしくてな。もし遭遇するようならとッ捕まえてやるって思ってな」

「もう、新一君物騒ですよ?そういうのは遭遇しないことが一番なんやから」

「いやまあ、紅葉さんはそうなんだろうけどオレは探偵だし」

「探偵でもやっぱりそういうのに会っていると聞くと心配になるもんです。ねえ?龍斗」

「へ?ああ、そうだね」

 

紅葉に話を振られて、俺は思考を中断して彼らとのひと時に興じていきいつの間にか「地獄の傀儡師」という言葉は俺の裡から消えて行った。そう、()と遭遇するその時まで……

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

「龍斗ぉ~日焼け止め塗って下さいな♪」

「お任せください、お嬢様」

「やー、龍斗にお嬢様って呼ばれるとなんやこそばゆいわあ」

「ねえ、蘭…」

「そうね、園子……ね、ねえ。龍斗君、紅葉ちゃん。私たち海で遊んでくるから!」

「ん?ああ、じゃあ俺達も終わったらそっちに行くよ」

「あ、おかまいなく。それじゃあ…」

「「ごゆっくり~」」

 

2人はビーチボールを持って海に繰り出していった。

今日は五人で伊豆の海水浴場に泊まりで来ている。親的には別に俺達四人でも良かったのだが(むしろ虫除け&護衛として歓迎されたが)、よく考えれば女性3の男性1だと龍斗君の体裁が悪いのでは?との声がぽろっとでたので今回は伊織さんが同行を申し出てくれた。はあ。遊ぶ時くらい、世間の目を気にせず思いっきりできないものかね…いやその伝手はあるんだけど今回は普通の海水浴場だったし仕方ないか。

伊織さんは海に出ず、ホテルでゆっくりしているそうだ……ホテルに戻った時、何人に逆ナンされたか聞いてみよっと。

 

「(蘭ちゃんたち、気を遣ってくれたんやね…)た、龍斗?手がおろそかになってますよ?」

 

「え?あ、ごめんごめん……それにしても、紅葉。こうやって触ってみると分かるけど少し肩こりとか筋肉のこわばりがひどいんじゃないか?」

「…んっ……それは…最近堅苦しいパーティに…参加したり……模試の勉強とか…本家のお稽古が重なったり……また…おおき…く…あ……っ!」

「…そんななまめかしい声上げないでくれ。最近そう言えば忙しそうにしてたものな。そう言う事なら、オイル塗るついでにマッサージしてあげようか?」

「お、お願いします」

 

オイルを背中に塗っていると分かるが、全身の筋肉が疲労してるな。なのに、肌艶はシミひとつなくすべすべで太ももは柔らかく背中越しに見える大きな…っていかんいかん。

 

「じゃあほら、タオルを顔の下に敷いて。我慢できないだろうからタオルで声を押し殺してね。知り合い(グルメ整体師・マリー)直伝のマッサージだから…()()よ?」

「うう……知り合いって()()()の人やろ?…お手柔らかにな?……それと……」

「ん?」

「え、えっちなのはダメやからな?」

 

この後、めちゃくちゃマッサージをした。

 

 

――

 

 

気絶した紅葉を放置するわけにはいかず(ちゃんと塗りむらがないように日焼け止めを全身に塗った)、ビーチパラソルの中でまったりしていると蘭ちゃんが哀ちゃんを抱えて戻ってきた。

 

「蘭ちゃんと哀ちゃん?どうしたの?」

「龍斗君、哀ちゃんの様子が…!」

 

その言葉に俺は座っていたビーチチェアを哀ちゃんに譲り彼女の様子を見た。

 

「んー……こりゃ、熱中症だな。蘭ちゃん、海の家に行って事情を説明して氷を貰ってきて」

「分かった!」

 

タオルに砂を落とすようにペットボトルに入れて持ってきていた水道水をかけながら蘭ちゃんに答えると蘭ちゃんはそのまま海の家に走っていき、その入れ違いに新ちゃんと博士がこっちに向かってやってきた。あー、ってことは博士が保護者で子供たちを海に連れてきて俺らとバッティングした感じか。

 

「おーい、龍斗。蘭が灰原を抱きかかえて走って行ったんだけど何があった?」

「龍斗君、哀君の様子は?」

 

俺は彼女の状態を二人に話した。そして…

 

「……なるほどね。海で蘭ちゃんと新ちゃんが出会って、そのまま一緒に遊んでいたと。それで蘭ちゃんが砂浜に座っている哀ちゃんの様子がおかしいことに気付いて連れてきたと。俺の所に連れてきたのは博士のいる場所が分からなかったからかな?」

「多分な。龍斗はガキん時からオレ等の怪我とか体調とかに気を配ってくれてたから、蘭もオメーに任せとけば大丈夫だと思ったんだろうよ」

「おーい!!」

 

海の家に行って氷を貰ってきた蘭ちゃんが戻ってきた。氷を置いて蘭ちゃんは海に戻って行ってしまったが…哀ちゃんよ博士や新ちゃんに「イルカから逃げている、鮫じゃ敵わない」なんて言っても分からないと思うぞ。

 

「……哀ちゃん、あの二人にはああいう婉曲というか詩的な表現じゃあ言わんとしてることは伝わらないと思うよ?」

「あなたには…わかるのね」

「なんとなくね。間違っても鮫はイルカより強いなんて言わないさ。タオル変えるよ」

「……っ!冷たい。でも気持ちがいいわ。それにしても隣で寝ているあなたの彼女。何があったの?肌が上気してて、ものすごい色気があるんだけど……あなた、まさか…」

「あ、ははは。いかがわしい事はしてないよ?ただ、疲労解消のマッサージで可愛がり(張り切り)すぎて失神というか気絶というか、ね」

「……そう。それでその場から離れられないって事ね」

「まあ、いいさ。潮騒をきいているだけでも休まるし。それに…」

「それに?」

「海に入ると…ね?獲物を探したくなるというか、漁になってしまうと言うか…」

「……ああ、工藤君とは別の方向であなたもバカだったわね」

 

そんなこんなで途中で目を覚ました紅葉と3人で俺達はまったりとした時間を楽しんだ。途中、どこからかボートを持ち出した子供たちが監視員に怒られたりその監視員と海水客が問答を起こしていたりとしていたが…まあ平和な時間だった。

でも、園子ちゃん。この賑わいの海でビニール製のボートの持ち出しは感心しないぞ?あとで、お説教だな。

 

 

――

 

 

夜になり、俺達は予約を入れていた中華レストラン「東風」に訪れていた。そこでは案の定子供たちもいてそこに合流する形で夕飯を食べることになった。

俺達が入店してすぐ、昼間の監視員…まあ漁師の方だったが来店してきて園子ちゃんの失言から事情を教えてもらった。争ってた相手は、元々荒巻って言う人はこの辺りの漁師ではなく余所から流れてきて底引き網で根こそぎ漁をしているそうだ…あれ?

 

「でもそれって確か農林水産大臣の許可がいるんじゃありませんか?と、いうか余所から来たのなら多分足取りをたどれば余罪がボロボロ出てきてそれで潰せそうな…」

「お、おうニイチャン詳しいじゃねえか?それにあんまそんな顔すんじゃねえよ、ガキ連中とかひいてんぞ」

 

え?ああ、確かに子供たちが怖がってる……ふぅー、冷静に冷静に。でもダメだな、再生屋もかじっていたせいでそう言う事をする輩を見聞きすると感情が昂ぶっていかんな。

 

「ごめんね、みんな」

「い、いえ…」

「怒った時のかーちゃんより数倍こええ顔してたぞ…」

「びっくりしたー。龍斗おにいさんっていっつも優しそうにしてるからそんなに怒るなんて……」

「俺だって怒ることはあるよ?俺は料理人だから、食材になる物を、その環境を大切にしない奴らを…しない人たちは許せないのさ」

「ま、まあ。龍斗クンも落ち着いたみたいだし!その許可ってのを盾にすれば取り締まったりできるんじゃないの?」

「それが無理なんだよ…」

 

新しく来た地元の漁師の人によるとここら辺りじゃ法律は有名無実になっていて取り放題になっているそうだ……おいおい、もしかして漁師皆知り合いだからそこら辺の手続きをやってなかったな…ってことは荒巻ってやつは初犯じゃないなこれ。そういう、「法律」を盾にできない小さな漁場を渡り歩いているクズ野郎か。

 

「それなら、今この漁場で起きている事ではなくそのクズ…荒巻って男の足取りを辿って証拠を集めればいいと思いますよ。やり口からして慣れている感じがします。絶対今回が初めてではありませんよ。この辺りの被害だとそちらも両成敗で引っかかると言うのなら奴の過去の罪を片っ端から積み上げればいいです」

「お、おう。なんかにいちゃん熱入ってきたな」

 

その後、なぜか意気投合してしまった園子ちゃんと熱が入った俺は漁師の方々と一緒に卓を囲んだ。2時間ほど経った後、その荒巻という人物は現れず所在が電話から聞こえた音から波打ち際を散策すると言う漁師の人たちと別れ俺達も部屋に戻ることにした…あ。

 

「ごめん、みんな」

「なーに?」

「どうしたん?」

「んー?どうしたの?」

「ちょっと哀ちゃんの様子を見に行きたくてね。それに食欲ないって言っても少しは食べないとと思ってくすねてた料理も持って行きたいし」

「くすねたって…いつの間に」

「あ、ほんならウチも一緒に行きます。なんや、今日はずっと一緒におったし」

「じゃあ、私達は部屋に戻ってるわね」

 

さーて、行きますかね。

 

 

――

 

 

「……哀ちゃん。小学一年生だからって下がパン一の姿で部屋の扉を開けちゃダメでしょう?」

「……仕方ないじゃないの。この背丈じゃのぞき窓に届かないし、吉田さんだと思ったのよ」

「突然来たのはウチらなんやし、しゃーないやんか。龍斗」

「あー、うん。そだな。それにしても…」

 

俺はベッドの上にあるポテチに目をやった。そして哀ちゃんの方をよく見てみた…うん。

 

「紅葉。やっぱりこれもってきてよかったよ」

「??そういえば、貴方たち何しに来たのよ?」

「ああ、夕飯の差し入れ。食欲がないなんて嘘でしょう?」

 

ベッドの上に転がるポテチを指さしながら言うとばつの悪そうな顔をして首肯した。

 

「……うかつだったわ。他の人ならいざ知らず、貴方に知られたとなると…」

「その通り!子供のなりになったんだから三食しっかり取らないとね。ああ、大丈夫。元はここの中華のお料理だけどこの時間に食べやすいようにさっぱりさせたから」

「調理器具でも持ち歩いているのかしら?でも、貴方たちは私が食べるまで出ていきそうにないし頂くわ」

 

そう言って、彼女は俺の持ってきた差し入れを食べ始めた。うん、勢いからやっぱりお腹は空いていたようだ。雑談しながら部屋の中で待っていたが中々子供たちが戻ってこないので耳を使って調べてみて……脱力した。なーんで殺人事件に遭遇しているのかね?その事を話すと哀ちゃんが蝶ネクタイ型変声機が部屋に置かれていることに気付き、持っていきたいと言う。仕方がないので3人一緒に現場に行き、新ちゃんは殺人事件を無事解決した。心境の変化があったのか、哀ちゃんと蘭ちゃんの関係も進展があって事件以外はいい旅行だったな……それにしても。

 

 

 

 

 

 

「新ちゃん」

「な、なんだ龍斗?」

「なーんで、君は小学一年生を平然と殺人現場なんかに連れているのかな?」

「へ!?あ、いや。それはアイツらが勝手に…っ!!」

「問答無用、お仕置きだ」

「え、あ、いや、、、なんでこうなったーーーーー!?」

 

 

 

 




前話(第四十一話)、人魚→冬休み
今話(第四十二話)、網にかかった謎→伊豆の海、夏。
第二十四話→天皇杯、1/1
二元ミステリー(第??話)→小学校の冬休み明け前日=一月上旬?(世界大会は二元ミステリー前日に)
もう、めちゃくちゃです。はい。

まあ、14-15巻のスキーロッジ殺人事件(小学校の先生がかつらで首を絞めた事件12/21,22)からの16巻のキッド初登場(コナンとキッドの屋上での初邂逅が衛星の話から4/1と分かっている)なんてことがあってるので今更ですが、同じ話で季節が飛んだので前書きに書きました。


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