名探偵と料理人   作:げんじー

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終わらないし、日もまたいでしまうし…申し訳ありません。

あと5000字ほどで終わると思うので完結編までお待ちください。


番外編4(後編) 金田一少年の事件簿:怪盗紳士の殺人

「ん……朝か…にしてもなんか騒がしいな」

 

目が覚めて飛び込んできたのは見慣れた実家の木目の綺麗な天井ではなく、洋風の文様の入った天井だった。時計を見ると6時過ぎ…って、ラベンダー採ってきて剣持さんと別れたのが五時過ぎでベッドに入ったのが五時半過ぎだったから一時間も経ってないな……

俺は二度寝するにもなにやら騒がしいので、寝間着に使っていたトレーナーから普段着へと着替え、昨夜のうちに採取して加工していたラベンダーと貯蔵庫(裏のチャンネル)から出したいくつかのハーブをブレンドして茶筒に保管して部屋を出て食堂へと向かった。

 

「ん?」

 

どうやら小宮山さんが大きな声を上げているのでそっちの方向に行ってみると、あの肖像画が展示されている部屋に皆が集まっていた。俺は後ろにいた七瀬さんに事情を聴いた。

 

「七瀬さん、どうしたんですか?」

「あ、緋勇君!大変なの!さくらさんの絵が!」

 

彼女は空っぽになった額縁を指さす。昨日の夜までは確かにあった「我が愛する娘の肖像」が無くなっていた…ってことは。

 

「いけない!!」

「どうした、金田一!」

「絵とともにモチーフを奪うのが奴の手口なら絵に描かれたさくらが危ない!」

「あっ!!」

 

俺が気づいたことに一も思い至ったのか、皆でさくらさんの部屋を目指した。

先頭を走っていた一が扉を乱暴に開くとそこには窓ガラスは割れ、部屋中が荒らされた光景があった。さくらさんは…いない。

 

「くっそう、遅かったか!!」

「そんな。はじめちゃん、じゃあさくらさんは…!」

「…………!!」

 

っち。油断していたか…?まさか誘拐されるとは。

俺は感覚を広げる。すると、屋敷の裏の森の中に彼女がいることが分かった。心音もしている…よかった、生きている。とりあえず、心音の乱れもないし、呼吸も安定しているから命には別条はない。それに周りに人らしき気配もないし、放置されていると考えてよさそうだ。近くにはポアロがいて吠えているけど身じろぎ一つしないし気絶しているみたいだな。

 

「いや!さくらはまだ連れ去られてからそんなに時間は経っていない!近くを探すんだ!!」

「なんでそんなことがわかる?金田一」

 

それから一が語ったことは以前解決した事件で得た知識だった。なんでも、朝顔の開花時間はある程度計算できるそうで、さくらさんの部屋の踏み荒らされた朝顔の花はその計算式によると五時を少し超えたあたりで踏まれていると考えられるそうだ。

ということは俺が剣持さんと別れる前に荒らされたって事か。俺が館についたころに荒らされていたのなら流石に気づいていただろうし。

 

「なるほど!それじゃあ彼女が攫われてからまだ一時間しか経っていないってわけか!」

「ああ!」

 

さて。どうやって彼女のいる所まで誘導するかね。剣持さんはともかく、あの大河内って警部はあまり露骨に誘導すると俺が犯人とか言い出しかねんし……

俺がどう誘導するかを考えていると、制服警官が大河内警部に犯人の侵入経路が判明したことを報告しに来た。俺達は警官に連れられてその現場へと移動した。侵入経路とは使われていない部屋の窓で、格子によって縦5横3の正方形に区切られたうち、真ん中のガラス部分が割られていた。

 

「部屋に残った窓の破片の様子によると、犯人は外からこのガラスを割って手を入れて鍵を開けて侵入したものと思われます」

「くそ!!あれだけ庭に警官を配備したのにどうやってかいくぐったんだ!?ともかく、大至急非常線を張るんだ!人一人にでかい絵を抱えてちゃあ、そう遠くへといけるわけがない!!それと車なんかの機械の音を聞いてないか、全員に確認しろ!」

 

怪盗紳士がどう逃げたにしろ、まずはさくらさんの回収が先だな…ん?ああ、あの仔を使うか。

 

「待ってくれ、オッサン」

「ん?」

待つ?

「どうやら怪盗紳士は外から入ってきたってわけじゃあなさそうだぜ!このガラスの割れ方がすべてを物語っている!」

「そ、それはどういう?」

「まって、剣持警部。とりあえず、一の話は後にしてさくらさんを探しませんか?」

「龍斗の言うとおり。オレの話は後にしてまずはさくらを探そう!こんな厳重な警備でさくらを抱えて脱出するのは難しい。それにこんだけデカイ屋敷だ。死角なんて腐るほどあるだろうし、探せば見つかるかもしれない!」

「…それなんだが、一。一つ心当たりが」

「!!なんだ、どこだそれは!!」

「正確には場所じゃなくてな。こんだけ騒ぎが起きているのに顔を見せない仔がいるだろう?」

「??招待客は全員現場に出てきていたはずだが…?いないのはさくらさんくらいで」

「…っ!そうか!!オッサン、ポアロだ!!ポアロを探すんだ!」

「ポアロだと?」

「ああ!こんだけ騒いでるのにアイツがココに来ないってのはおかしい。考えられる可能性は二つ。一つはさくらがいる所にいる。もう一つは…考えたくはないが犯人に殺されているってパターンだ。一つ目ならアイツが吠えている所を聞いて探せばさくらも見つかる。後者でもポアロの痕跡から犯人の足取りが割れる!」

「な、なるほど!」

「はじめちゃん……」

「オレだってポアロには無事であってほしい。だが今はさくらだ!」

「う、うん…」

 

俺達は屋敷内を警官に任せて外へ出た……それにしても、()()()から嗅ぎなれた匂いがするのはなんでだろうな?もしかして……

 

「とにかく、耳と目を鋭くして探すんだ!」

「うん!」

「ああ!」

「…龍斗。頼りにしてるぜ?」

「任せて」

 

タイミングよく一が俺に振ってくれてたので俺は大義名分を得たとばかりに屋敷周りを一周して探している()の行動をとった。ある程度探したふりをして一と合流した。

 

「どうだ、龍斗?」

「あっちのほうからポアロの吠える声が聞こえた!」

「なんだと!?オッサン!!」

 

俺の言葉に一は剣持警部を呼び、その声を聞きつけた皆も集まって俺が指した方向へと走った。

 

「!!はじめちゃん、あそこでポアロが吠えてるわ!」

「じゃあ、あそこに……さくら!!」

「あ、はじめちゃん!」

 

ポアロが吠えている小屋に一目散に走っていく一。俺は開放していた感覚を閉じた。

中にはヒトの首など容易く切り取れるであろう大きなはさみが突き刺さり、その傍らにさくらさんが眠っていた。まあ、眠っているのが分かるのは俺だけだけど。一はさくらさんを抱き起し、揺り動かす。

 

「さくら、さくら!しっかりしろ、さくら!」

「………」

「お嬢様…!」

「……ん…金田一君?」

「さくら!!良かった…」

「無事でしたか、お嬢様!」

「よかったさくらさん…!?さくらさんその髪!?」

「え…?あ!あたしの髪が!!」

 

七瀬さんに言われて気付いたが、肩にかかるほどあった彼女の髪の毛が20cmほどバッサリと切られていたのだった。

さくらさんのそばには「絵の中の長い髪の少女はもういない――絵のモチーフは確かに頂いた 怪盗紳士」と書かれたカードとさくらさんを眠らせた時に使われたと思われる薬品が染みたハンカチが落ちていた。

 

「くっそ、怪盗紳士め!ふざけたことを」

「ねえねえ、金田一君!」

「醍醐さん」

「どーするのよ。絵、盗まれちゃったじゃない。羽沢さんの言う通り怪盗紳士の狙いはあの絵だったみたいだし」

「………」

「うーん。今のとこ怪盗紳士が一歩リードってところだけど」

「だけど?」

「オレの推理が正しければまだ奴もあの絵を、完全に盗み出したわけじゃないはずなんだ…!」

 

 

――

 

 

さくらさんを回収し、俺達は本館へと戻ってきて各々が各々の取りたい行動をとるために別れた。俺は剣持警部と一、七瀬さんと窓が割られた部屋へと向かっていた。

 

「にしても、こんだけ警官が警備に動員されているって言うのになんで肝心要の絵が飾ってある部屋には誰一人警備がついていなかったんだろうな」

「それは、だな。大河内警部が「館内に侵入などさせん!館内の警備など無駄だ!」っていってな……」

「ああ……確かにしっかりとした指揮官がいたのならそれでいいんだろうけども」

 

あの大河内警部じゃなあ……

 

「しかしミスったな。一の言う五時過ぎが犯行時刻なら丁度俺と剣持警部が館を離れていた頃で、しかも帰ってきているぎりぎりの時間だ。もし窓が割られた時に館に居ればすぐに気づけたんだけどな…」

「仕方ないさ、緋勇君。私だって現場を離れていたし、他にも大勢警官がいたんだ。その誰一人も気付かなかったのだしね」

「ん?どっか行ってたのか?龍斗」

「ああ。夜に皆と別れた後に寝れなくてな。別れ際のさくらさんの調子が悪そうに見えたから朝一番にラベンダーのバーブティーでもご馳走しようかなって思い立ってあのラベンダー畑に花を摘みに行ってたんだよ。その時に怪しまれるのも嫌だから剣持警部に付き添ってもらったんだ」

「ああ!おれも自分の腕時計で別れ際に確認したが五時過ぎだったな。彼の言う通り、おれ達が帰ってくる直前に犯行は行われたんだろう…それで?本当に怪盗紳士はまだ()()()絵を盗み出してないってのは?」

「ああ!たぶんね!」

「でも怪盗紳士は警察の厳戒態勢を破っていつの間にか中に侵入していたのよ?だったら逆にもうどこかへ逃げてるんじゃ…」

「いや!怪盗紳士は外から侵入したんじゃないよ!怪盗紳士の侵入経路だって言うあの窓がその証拠さ!!」

 

窓の中央が割られている事。それは怪盗紳士が中から身を乗り出し、外から窓を割った()()()()()()ためにしたことだったという。躰を中から出している分、鍵に最も近い部分はもう一枚の窓に重なってしまっているため割れなかった。

そして外から侵入したように見せたのは怪盗紳士は屋敷内に留まっているため、そしてその怪盗紳士は最初から屋敷内にいたのだと言うのが一の推理だ。

 

「そう言う事だったのね!」

「うーん、なんて奴だ!ガラスの割れ方ひとつでそこまでわかっちまうとは…!!」

「寿司代2万3500円分の甲斐があったぜ」

「寿司代?」

「ああ。オッサンに協力する報酬として寿司をごちそうになったんだよ…って、半分以上はオッサンがたいらげたんじゃねえか」

「でも、はじめちゃん。それなら怪盗紳士はこの屋敷のどこに?この建物のどこかに潜んでいるって言うの?」

 

俺は七瀬さんの言葉に、感覚を広げてこの屋敷を精査してみた…うん。この館には警官の人と住人、それに招待客()()いないな。

 

「そんなバカな!この屋敷はしらみつぶしに調べたが猫の子一匹だって出なかったぞ!」

「隠れているとは限らないぜ!奴はすでに堂々と姿を現しているかもしれない!」

「!!」

「まさか!!」

「ああ、パーティの出席者の中に怪盗紳士が紛れ込んでいる可能性もあるって事さ!」

「それに、警官も怪しいんじゃないかな?」

「!!緋勇君、まさか奴が警察になんて」

「俺の馴染み…って言っていいのか、知っている怪盗キッドってやつは良く機動隊とかに変装しますから。油断できないですよ。言ってはなんですが、大河内警部の警備体制はざる過ぎる。紛れ込みやすいと思います」

「…かあ。なんてこった」

「確かに龍斗の言う通りだ。だが、警官は除外してもいいと思う」

「なぜ?」

「警官ならわざわざ体を屋敷に残して窓を割る必要なんてないってこった。奴が屋敷から窓を割ったのは窓の外の地面に足跡をつけたくなかったから。もしくは靴に土をつけたくなかったから。警官ならついていても捜査のためとか、警備の途中で寄ったなんていくらでも誤魔化しがきくんだ」

「なるほど」

 

ぱっとそこまで考察できるのは、やっぱり一もすごいな。

 

「それじゃあ、盗まれた絵は今もどこかこの屋敷にあるってことか?」

「ああ。流石にあんなでけえ物を外に運んでいたら誰かが気づくと思うしな。恐らくは屋敷の中。奴の手口からして土とか水に沈める様な絵を痛める方法は選ばないはずだ。きっと人を食ったような大胆な場所に隠しているはずだ!」

 

怪盗って、確かに奇天烈な手を使ってくるわな確かに。

 

「まずはこの屋敷内にいる全員をチェックしてくれ、オッサン!」

「ああ、任せろ!」

「それじゃあ、手分けして怪しそうなところを探すぞ!」

 

一の音頭に、皆行動を開始した。俺は剣持警部にあることを頼むために彼を追った。

 

「剣持警部!」

「ん?なんだい、緋勇君」

「実はひとつ、特に調べてほしいことがあるんですが」

「??なんだい、それは?」

「それは―――ってことです」

「?まあそれくらいならすぐに調べられると思うが」

「よろしくお願いします」

 

俺はなぜそんなことを調べてほしいのかと疑問顔になっている剣持警部と別れて、もう一度窓の割られた部屋まで戻ってきて俺達の話を盗み聞きしていた人へと話しかけた。

 

「別に、隠れてないで一緒に話をすればよかったんじゃないですか?()()()()

「!!え!?…気づいてたの?」

 

ばれるとは思わなかったのか、かなり慌てた様子の醍醐さん。

 

「記者として客観的な立場に立たないといけないのは分かりますが、今は当事者なんですしね。後、俺は()()()()()武道も修めているので気配には敏感なんですよ」

「…あら。それじゃあ、名探偵君より先に怪盗紳士も見つけられるのかしら?()()()()気配ってので」

「うーん。できなくは、ない。と思います。ただ俺の場合は理詰めではなく直観的な感覚で見つけ出すので犯罪の立証は現行犯じゃないと無理なんですよね」

「へえ。すごい自信ね。犯罪者を抑え込めるの?」

「ええ」

 

そのきっぱりとした言い様にきょとんとした様子の醍醐さん。

 

「ただ、俺は料理人を自負としています。直接的に関わってこないのならば探偵や警察にお任せする。それが俺のスタンスです。この場には名探偵の孫で抜群の推理力を持つ一がいるので俺は手出ししません。()()()()()()()()

「っ!…あ、安心って?」

「記事の心配ですよ。しっかりと起承転結があった方が読者に受けはいいでしょう?」

「え?ええ、そうね!それじゃあ私もネタ探しに行くわ!!」

 

そう言って早足で去っていく醍醐さん…ふう。心音も聞いていたけど、これはほぼ確定かな?あとは剣持警部に頼んだことがわかれば……それにしてもあの絵の匂いを覚えておくべきだったな……

 

 

――

 

 

俺はその後、屋敷を散策した後さくらさんの様子が落ち着いたという事で事情を聴く場に同席していた。

 

「部屋で寝ていたら物音がして、なんだろうって目が覚めると真っ暗の中におっきな男の人が立っていて「声を出すな!」って…そのあとすぐに何かかがされて意識が…」

「でも本当にようございました!お嬢様が無事で……」

「フン!なにが「ようございました!」だ。絵は盗まれるわ、家の中は荒らされるは、こんなに警察がいるのに怪盗紳士にやられ放題じゃないか!」

「はっはっは、天文学者崩れのこそどろがよく言うぜ!」

「な、なにをぅ!」

「やめなさい、春彦!私は娘が帰ってきてくれただけで十分だ!絵なんてまた描けばいい!」

「……フン!本当にお前に絵が書けるのならな!」

「なんだと!?」

「あんなに素晴らしい絵が本当にお前にかけるのか?剛三!他人のモチーフを盗むような奴に…!!」

「「「モチーフを盗む?」」」

 

招待客の高校生組の声が被った。

 

「それは吉良さんの思い込みでしょう?」

「海津さん…」

「違う画家がたまたま似たようなモチーフを扱う事なんてよくあることですわ!」

「…ッケ!」

 

海津さんの言葉に何も言い返さず、吉良さんはまた酒を飲み始めた。

そんな中、きまずそうに話だしたのはハイカーの岸さんだ。

 

「あのう、刑事さん。ボクはこの後どうしたらいいんでしょうか?」

「あー。まだ色々と全員に聞きたいことがあるのでしばらくここにいてくれませんか?」

「えー、参ったなあ。明日バイトあるのに~」

「いや、そんなに待たせんよ」

「え?」

「大河内警部?」

「さっきの彼女の証言で犯人ははっきりした!…緋勇龍斗!お前が怪盗紳士だ!!」

「な!?」

「え!?」

 

おいおい……いや、確かにこん中で大男っていったら俺か剣持警部が当てはまるけどさ。

 

「……それってさくらさんのおっきな男っていうのが根拠ですか?」

「そうだ!昨日から妙に警察に非協力的な態度だったし、お前が怪盗紳士だ!」

 

いや、非協力的じゃなくて貴方…あんたの采配に呆れていただけなんだがな。

 

「……本気で言っていますか?」

「ああ!おい、さっさと手錠をかけろ!取調室でキリきり吐いてもらうからな!」

「おい、あんた!いくらなんでも乱暴すぎるぞ!」

「うるさいな、外野から来た刑事は黙っていてもらおうか!」

 

がちゃん、と。俺の手に手錠がかけられた。

……はぁ。このままだと連行されるか。平蔵さん、目暮警部、もしもの時のために英理さんにでも電話するか?あれ?ていうか、逮捕って現行犯だよな?これって現行犯になるのか?英理さんに電話して聞いてみるか。

 

「大河内警部!いくらなんでもやりすぎだ!そもそも龍斗にはアリバイがある!」

「アリバイだと?」

 

一は俺が犯行時刻と思われる時間に剣持警部と一緒にラベンダー荘から戻ってきている事、そしてその様子を複数の警官が見ていたことを証言したこと、さらには巡回していた警官が五時半過ぎに俺の部屋の明かりが消えたことを証言。警備の穴を縫って小屋の往復を行うのは物理的に不可能であることが分かった。

 

「うぐぐぐ…」

「……はあ。()()いらないですよね?」

――バキっ!

「「「え?」」」

「へえ。手錠なんて初めてかけられましたけど、案外脆いんですね」

 

俺は手にかかっていた手錠の()()()()()を大河内警部に渡し、

 

「岸さんの時もそうですが次からはもっとしっかり調べてから行動に移した方がいいですよ?()()()()()()()()

 

さーて。平蔵さんに次郎吉さん。英理さんに相談しよっと♪

 

「龍斗…すげえいい笑顔してるな……」

 

 

――

 

 

俺と岸さん、一に七瀬さんは談話室に移動していた。

 

「にしても、龍斗も岸さんも災難だったな」

「ほんとうだよう。ボクは腕を掴まれただけだけど、君は手錠までかけられたんだもんね」

「まあ、その手錠をぶっ壊したのには唖然としたけどな…」

「最悪、弁護士に警視監に懇意にしている財界の大物に相談しようかなと思ったけどね。ちょっとあの無能っぷりには辟易するよ…青森県警にはまともな人材はいないのかな?」

「いや、オレの知り合いに俵田って警部がいるんだがその人はかなりまともだぞ。筋が通っていたら高校生の話だってしっかり聞いてくれるし、頭ごなしに犯人と決め付けたりなんかしないしな」

「…なんでその人じゃないのさ……ああ。いや、わかった」

「わかったってどういうことだい?」

「昨日の夜に大河内警部が「たく、東京者が偉そうに仕切りよって!怪盗紳士は青森県警が絶対とっつかまえてやる!」って呟いてたんだけど、そこら辺の心情を察するに怪盗紳士なんて大物を捕まえたって言う実績が欲しくてその俵田って警部が担当する前に自分から立候補したんじゃない?……ってどうしたの?3人とも?小宮山さんも紅茶を持ったまま固まっちゃって」

「……いやあ。君の声があの警部さんそっくりでさ」

「びっくりしちゃった」

「私も危うく紅茶をこぼすところでした」

「あー、声帯模写の事?知り合いに自在に声を変えられる人がいたからやってみたら出来た」

「出来たって…ンなあほな」

「『ンなあほななんて失礼な』」

「わ!はじめちゃんの声!そっくり!」

「まあ、あんまり人前じゃしないようにしてるんだよね。特に今回はあの警部がいるし。みんな黙っててくれない?」

「そうだねえ。そんなことができるって知ったらまたあの警部さんが騒ぎ出すだろうしね」

「龍斗が怪盗紳士だったらゾッとするな。自在に変えられる声、手錠を紙屑みたいに出来る力。人間離れした五感…本当に違うよな?」

「あのねえ…」

 

まあ一の表情から本気で言ってないことが分かる。

 

「仲がいいねえ。君たちは一緒にここに来たのかい?ボクは紛れ込んでしまってここでは何もすることがないし、肩身が狭い思いだよ」

「そんなことおっしゃらずにごゆっくりしてください、岸様」

「ありがとうございます、小宮山さん」

「オレ達は知り合いだけど今回はたまたまかちあったんですよ」

「へええ。皆芸術に興味があるの?もう少し絵に詳しかったらここは宝の山なんだろうけどね」

「あはは。オレも芸術なんてからっきしで。これが数億!なんて言われても…お♡」

 

一が目を付けたのは滝をバックに横たわる裸婦の絵だった。んー?この女の人…

 

「こーゆーのはちっとわかるかも!」

「もうはじめちゃんたら!」

「…一。顔をよく見てみなよ」

「ん?顔?…あれ?これって海津さん?」

「ええ、その通りでございます。この辺りに飾られているのはみな海津様をモデルにかかれております」

「プロのモデルは使わないんですか?」

「ええ。ご主人様が大の外出嫌いのため、モデルを使うとなると長期間この屋敷に拘束することになりますので。身近なものをモチーフにしたり、庭に作ったりして絵をお書きになっているのです。ここ五年の作品はすべてこの屋敷内で作られたものなんですよ」

「へえ…だから絵の中の風景がどこかで見たことあるって思ったのね!」

「…案外、あの海津って医師とできてんじゃねえの?」

「はははは…そんなまさか……」

「あー!小宮山さんのその反応!図星ですね!」

「いやあ、参ったな」

 

俺達はそんなんこんなで和やかに会話を続け、何事もなかったので自室に戻った。

 

 

――

 

 

「大変だー!皆起きろ!」

 

剣持警部の大声に、俺達はたたき起こされた。

 

「一!七瀬さんも」

「おう、龍斗か!」

「剣持警部の声、俺達が集まって話していた談話室からだよ」

「そっか!行ってみよう!」

 

談話室に入るとなぜか水にぬれた床、そして…

 

「オッサン!なんなんだよ、こんな夜中に…」

「あれを見ろ!金田一!!」

「……な!」

 

そこにあったのは空っぽになった額縁。確かあったのは…!

 

「海津さんの裸婦の絵が無くなってる!」

 




捏造設定
・さくらは薬品を嗅ぎ、意識を失った。
・俵田警部が出なかった理由。
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